民間の介護保険に入った方がいい?メリットやデメリット、選び方

民間の介護保険に入るメリットとデメリットとは?もし自分や家族に介護が必要になった時に、大きな心配の種となるのはお金のことではないでしょうか。民間の介護保険に入るべきかどうか悩んでいるあなたに、民間の介護保険の必要性やメリット・デメリット、そして民間の介護保険の選び方をご説明します。

民間介護保険の必要性

少子高齢化が進む日本において、65歳以上の高齢者の人口は、2025年には総人口の30%以上になると予想されています。

介護が必要な人の数も増加しています。厚生労働省の「平成29年度 介護保険事業状況報告」によれば、要介護要支援)認定者数は公的介護保険制度開始当初の平成12年度には256万人でしたが、平成29年度は641万人と、17年間で約2.5倍になりました。

そんな状況ですので将来に親や配偶者、そして自分も介護が必要になる可能性は高いです。いざそうなった時に十分なお金を用意できるかは、多くの人にとって頭の痛い問題ではないでしょうか。

そんな介護費用への心配を和らげる方法の一つが、民間の介護保険です。民間の介護保険は公的介護保険の存在を前提として作られており、公的介護保険では足りない部分を補完するためのものです。

民間の介護保険への注目は以前より集まってはいるものの、公的介護保険制度が整備されている日本において、民間の介護保険に入る必要性がどのくらいあるのか疑問に思う人は多いようです。

そこで民間の介護保険の必要性について考えるために、(1)公的介護保険制度と民間の介護保険の違い、そして(2)介護にかかる平均的な費用についてご紹介します。

公的介護保険と民間の介護保険の違い

公的介護保険

公的介護保険は平成12年に開始された制度で、わたしたちは40歳になると公的介護保険に加入して被保険者となり、保険料を支払います。

公的介護保険の被保険者は65歳を境に第1号被保険者、第2号被保険者とにわけられ、それぞれ受給要件が異なっています。

  対象者 受給条件
第1号保険者 65歳以上 要介護状態
要支援状態
第2号被保険者 45歳以上65歳未満

要介護状態
要支援状態

ただし、老化に起因する16種類の特定疾病
※いずれかが原因の場合に限定

 

特定疾病の詳細は「 特定疾病の選定基準の考え方(厚生労働省)」でご確認いただけます。

被保険者は要介護要支援)状態に認定されると介護サービス※を受けられます。※介護サービスの詳細については「介護保険制度について(厚生労働省)」p.3をご覧ください。

公的介護保険による介護サービスは無料で利用できるわけではなく、被保険者が費用の1割を負担することになっています(一定以上の所得者は2割または3割)。

介護施設の居住費・食費などは全額自己負担ですが、これらの全額自己負担分に関しても一定の金額以上を支払うと、それ以上かかったお金が支給される「高額介護サービス費」制度や「高額医療・高額介護合算」制度があります。

また介護保険施設入所者で所得・資産が一定以下の場合、施設でかかる居住費や食費の負担額の軽減が受けられる「特定入所者介護サービス費」制度もあります。

民間介護保険は公的介護保険とどう違う?

民間の介護保険は公的介護保険があることを前提に作られており、公的介護保険だけでは不安な部分を補うためのものです。そのため民間の介護保険は公的介護保険とは全くの別物ですが、特に違う点を挙げると次の通りです。

  • 現金支給方式
  • 年齢にかかわらず加入でき・給付が受けられる
  • 65歳以下の人が特定疾病以外で介護が必要になった場合も給付の対象

公的介護保険が介護サービスという現物支給方式である一方で、民間の介護保険は現金支給方式です。保険金の受け取り方としては、介護が必要になった時点で一括支給、もしくは年金支給、またはその両方があります。

民間の介護保険は40歳以上でなければ加入できない公的介護保険と違って年齢にかかわらず加入できます。各保険会社の条件を満たせば、年齢問わず給付が受けられるほか、65歳以下の人が特定疾病以外で介護が必要になった場合も給付の対象となります。これも公的介護保険と違う点です。

介護費用はどのくらいかかるのか

もし介護が必要になっても、介護費用が年金や預貯金で十分にまかなえる程度であれば、保険料を支払ってまで民間の介護保険へ加入する必要は必ずしもありません。

しかし介護に一体いくらかかるのか、なかなかイメージがわかないかもしれません。そこで、生活保険文化センターの平成30年度「 生命保険に関する全国実態調査 」のデータを参照したいと思います。

 平成30年度「生命保険に関する全国実態調査」によれば、公的介護保険サービスの自己負担費用も含め、介護にかかった費用の平均額(月額)は次のようになっており、平成29、30年度は「15万円以上」かかった人の割合が最も高いです。

(公財)生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査

出典:(公財)生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」より

また在宅で介護を行なった場合の介護費用の平均額(月額)が4.6万円、施設で介護を行なった場合は11.8万円です。

(公財)生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」より場所別の介護費用グラフ

出典:(公財)生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」より

要介護度別では、要介護度が上がるごとに月々の費用が上がっています。

(公財)生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」より介護度別の介護費用

出典:(公財)生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」より

以上のように、要介護度や施設での介護が必要となるかによって介護にかかる費用はさまざまですが、月15万円以上かかるケースが稀ではないことがわかります。

民間介護保険のメリットとデメリット

公的介護保険でさまざまな介護サービスが1割負担(一定以上の所得者は2割または3割)で利用できることを考えると、民間の介護保険は必ずしも必要とは言えませんが、介護サービス以外の生活費や、施設での食費・生活費などで介護費用は意外とかさむものです。

もし将来の年金収入や預貯金・資産では介護費用が支払えるか不安だ…という方は、次に挙げる介護費用のメリットとデメリットをふまえた上で、民間の介護保険への加入を検討してみてください。

メリット

民間の介護保険に入るメリットはまずなんといっても、将来の介護にかかるお金の心配を減らせることです。また公的介護保険との違いのところでも挙げましたが、年齢に関わらず加入できることや、65歳以下の人が特定疾病以外で介護が必要になったときも保障が受けられることもメリットと言えるでしょう。

デメリット

その一方で、民間の介護保険にはデメリットもあります。まず第一に、保険料を支払わなければならないこと。さらに介護が必要になったらいつでも給付が受けられるわけではなく、保険会社が提示する条件を満たしていなければならないこともデメリットと言えます。

 

特定疾病以外で給付が受けられない65歳以下や、そもそも公的介護保険に加入できない40歳以下のうちから介護状態になった際の保障が欲しいという場合は、民間の介護保険を検討するといいでしょう。

また、年金や預貯金では介護費用が足りなさそうだという場合も、民間の介護保険で備えることを考えてみてください。ただし、介護状態になったら必ず給付金が受け取れるとは限らない点には注意が必要です。そうしたリスクをふまえると介護保険でなく預貯金で備えるというのも、一つの選択肢として挙げられます。

一方、年金収入や預貯金で介護費用を十分にまかなえる場合は、民間の介護保険は不要とも言えます。といっても、介護費用が月15万円以上と高額になる可能性が十分にありえますので、年金収入と預貯金で足りるのかどうか、一度時間をとって十分に検討されることをおすすめします。

民間介護保険の選び方

もし民間介護保険に加入しようと決めた場合は、次のことを念頭において選んでみてください。

介護にかかる費用を確認してから保険金額を選ぶ

介護が必要になった時にどのくらいの介護費用かや、年金収入・預貯金で足りない金額を計算した上で、その費用をカバーできる保険を選びましょう。

余裕を持って支払える保険料の範囲で希望に合った認定基準のものを

民間介護保健の保険料の給付基準はさまざまです。要介護(支援)の度合いが低くても保障が受けられるものはありますが、多くをカバーできるものほど保険料は高くなるのでご自身が余裕を持って支払える保険料の範囲でなるべく希望に合ったものを見つけましょう。

まとめ

人生100年と言われる時代になった現在、誰にとっても将来の介護への備えが必要です。 その対策の一つである民間の介護保険は、公的介護保険では足りない部分をカバーしてくれる一方、入っておけば必ず安心というものではありません。預貯金も選択肢に入れ、ご自身のできる範囲で介護に対してどんな対策が可能かの検討をおすすめします。

将来の介護に対する備えはいつ始めても遅すぎることはありません。もしこの記事が民間の介護保険に関する疑問の解決に役立った場合には、ぜひご家族やお友達にもシェアをお願いします。

監修者:天野 洋一
監修者:天野 洋一(あまの よういち)

社会保険労務士。トヨタ自動車(株)勤務を経て、愛知県豊田市で開業。
埼玉県旧浦和市(現さいたま市)出身。2007年千葉大学大学院修了。
クラウドを活用した社会保険、労働保険の電子申請が得意。
ライフワークとして、病気で休職中の方々のリワーク支援や障害年金申請サポートに力を注いでいる。