特定疾病とは?

65歳を超えなくても介護保険を利用できるということをご存知でしょうか。この利用できる対象にあたるのが特定疾病です。特定疾病とはどういった病気のことなのか、特定疾病の場合どうやって介護保険を活用していくのかをご紹介します。

特定疾病とは

 

特定疾病とは

まずは、特定疾病とはどういったものかをおさえておきましょう。特定疾病とは、「心身の病的加齢現象との医学的関係があると考えられる疾病であって次のいずれの要件をも満たすものについて総合的に勘案し、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因し要介護状態の原因である心身の障害を生じさせると認められる疾病」と定義しています。

次のいずれかの案件とは、2つあります。1つは65歳以上の高齢者に多く発生している病気ではあるものの、40歳以上65歳未満の年齢層においても発生が認められるなど、罹患率や有病率などについて加齢との関係が認められる疾病であって、その医学的概念を明確に定義できるものです。これは罹患率や有病率などにおいて類似の指標も含まれます。もう1つは3~6ヶ月以上継続して要介護状態または要支援状態となる割合が高いと考えられる疾病です。

特定疾病の範囲

特定疾病として認められる疾病の範囲は以下となります。ここでは特に検索される方が多い疾患について簡単にご紹介します。

末期がん
がんで特定疾病と診断されるのは、医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限ります。いわゆる、「末期がん」といわれる状態です。
関節リウマチ
関節リウマチとは、関節が炎症を起こし、軟骨や骨が破壊されて関節の機能が損なわれ、放っておくと関節が変形してしまう病気です。関節の変形が進むと、日常生活や家事、仕事に支障が出て介助が必要になるなど、生活をする上での機能障害が進行します。末期になると、ほとんど寝たきりあるいは車椅子生活で、身の回りのことが自分ではほとんどできない状態です。

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筋萎縮性側索硬化症(ALS)
筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気です。体のどの部分の筋肉から始まってもやがては全身の筋肉が侵され、最後は呼吸の筋肉(呼吸筋)も働かなくなって大多数の方は呼吸不全となってしまいます。
後縦靱帯骨化症
骨折を伴う骨粗鬆症
骨粗鬆症(骨粗しょう症)とは、骨密度が低下して骨がスカスカになり、骨折を起こしやすくなる病気です。転ぶなどのちょっとしたはずみで骨折しやすくなります。骨折が生じやすい部位は、せぼね(脊椎の圧迫骨折)、手首の骨(橈骨遠位端骨折)、太ももの付け根の骨(大腿骨頚部骨折)など。骨折により、歩行困難、寝たきりになってしまう事があります。

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初老期における認知症(アルツハイマー病、脳血管性認知症等)
初老期(40-64歳などの年齢層)の認知症の総称です。若年性認知とも呼ばれます。 原因となる疾患にアルツハイマー病、脳血管障害、レビー小体病、クロイツフェルトヤコブ病などがあります。末期になると、家族のこともわからなくなり、失禁や筋固縮などの症状が現れます。小刻みな歩行や前傾姿勢などの運動障害が見られるようになり、徐々に寝たきりになってしまいます。

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進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)
上記の中でも発症が多い、パーキンソン病は、脳の異常のために、体の動きに障害があらわれる病気です。手足が震える、動作が遅い、筋肉が固くなる、歩行障害、バランスが取れないなどの症状が出ます。末期になると、車椅子またはベッド上で寝たきりで、日常生活では全面的な介助が必要になります。

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脊髄小脳変性症
脊柱管狭窄症
早老症(ウェルナー症候群等)
多系統萎縮症
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
糖尿病は、インスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖(血糖)が増えてしまう病気です。毛細血管が体の中で非常に集中して多いところが3ヶ所(腎臓、神経組織、眼の網膜)あり、糖尿病になるとこの3ヶ所は「三大合併症」と言われ発生頻度が高い慢性疾患です。末期になると、それぞれ腎不全・知覚障害・失明になってしまいます。

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脳血管疾患(脳出血、脳梗塞等)
閉塞性動脈硬化症

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慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎等)
息をするときに空気の通り道となる気管支や肺に障害が起きて、呼吸がしにくくなる病気です。慢性気管支炎、肺気腫、気管支喘息、びまん性汎細気管支炎など。末期になると呼吸困難になり、酸素ボンベが必要になったりと日常生活に支障が出てきます。

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両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

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なお、がん、関節リウマチ、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病、多系統萎縮症は平成18年に追加および見直しが行われています。

介護保険と医療保険どちらを使うの?

特定疾病は40歳から64歳までの方は第2号被保険者という扱いになるため介護保険を利用することができます。介護保険を利用する条件としては特定疾病に罹患しておりなおかつ介護が必要であると認められた場合に利用することができます。ですが、特定疾病に罹患していながらも介護の必要性は認められないという場合には医療保険の対象になります。

また、末期がん、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症においては厚生労働大臣が定める疾病等とも重複しており、これらの疾患の場合は医療保険を利用して訪問看護を受けることができます。

結論としては、厚生労働大臣が定める疾病等と重複しておらず介護が必要と認められる(要介護および要支援の認定が得られた)場合には介護保険、介護が必要と認められない場合には医療保険と考えておくとよいでしょう。

介護保険を利用することのメリット

介護保険を利用することのメリットは、65歳以上でなくても介護保険を利用できるというところです。介護保険を利用することで、負担額が少なく介護サービスが受けられるのは最大のメリットになります。

介護保険を利用するためには?

介護保険を利用するためには前述したように介護認定を受け、要介護もしくは要支援と認定されることで利用することができます。ですが、厚生労働大臣が定める疾病等に該当してしまうと訪問看護など一部サービスは医療保険を利用することとなります。つまり、介護保険と医療保険が併用できるということです。

上記には特定疾病と重複するものをご紹介していますが、厚生労働大臣が定める疾病等は以下の通りになります。

  • 末期がん
  • 多発性硬化症
  • 重症筋無力症
  • スモン
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 脊髄小脳変性症
  • ハンチントン病
  • 進行性筋ジストロフィー症
  • パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であって、生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る)
  • 多系統萎縮症(線条体黒質変性症,オリーブ矯小脳萎縮症 及びシャイ・ドレーガー症候群
  • プリオン病
  • 亜急性硬化性全脳炎
  • ライソーゾーム病
  • 副腎白質ジストロフィー
  • 脊髄性筋委縮症
  • 球脊髄性筋委縮症
  • 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
  • 後天性免疫不全症候群
  • 頸髄損傷
  • 人工呼吸器を使用している状態

特定疾病で入居できる介護施設とは?

特定疾病介護保険を利用することで入居できる介護保険は特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護付有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)、軽費老人ホーム(特定施設入居者生活介護)、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)となります。

ですが、施設によって入居条件が異なります。そのため利用したい施設に直接問い合わせ特定疾病により介護保険を利用していることなどを事前に伝えるとよいでしょう。

まとめ

特定疾病に罹患された方は、介護認定を受けることができ、介護保険を利用することができます。

ですが、特定疾病に罹患されている方であっても厚生労働大臣が定める疾病等と重複している場合は医療保険を併用することも可能です。介護保険を利用することで介護施設へ入居することも可能です。

65歳未満で介護保険を利用できるのは特定疾病のみです。特定疾病の診断が下され介護が必要である方は一度介護認定を検討してみてはいかがでしょうか。

特定疾病介護保険が利用できますが、これは介護が必要であると認められ介護認定がされた場合です。なので、特定疾病になれば介護保険が利用できるということではないのです。このように、特定疾病についての細かい内容は周知されていない傾向にあります。

ぜひ、この記事を読んで特定疾病についてご理解いただけた方は、シェアをしていただけますとありがたいです。

※この記事は2019年7月時点の情報で作成しています。

監修者:陽田 裕也
陽田 裕也 (ひだ ゆうや)

2001年、介護福祉士養成校を卒業と同時に介護福祉士を取得し特別養護老人ホームにて介護職員として勤務する。
その後、介護支援専門員や社会福祉士も取得し、介護以外でも高齢者支援に携わる。現在はソーシャルワーカーとして、 特別養護老人ホームで勤務しており、高齢者虐待や身体拘束、成年後見制度などの権利擁護について力を入れて取り組んでいる。