高齢になると食が細くなり、食べたいものだけを食べてしまうことが多くなり、栄養が偏ってしまいがちです。高齢者の体重が減った、体力が落ちたと感じたら、それは栄養が足りていないのかもしれません。毎日の食事に栄養補助食品をうまく取り入れて、手軽に健康管理をしてみてはいかがでしょうか。
高齢者と栄養の関係
健康的に体を維持するために必要なエネルギーとたんぱく質などの栄養素が足りない状態を、低栄養といいます。
低栄養状態の高齢者は、どれくらいいるのでしょうか。
厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」を見てみると、低栄養傾向(肥満度を表すのに用いられるボディマス指数(BMI)が20以下)にある65歳以上の人は、男性が12.4%、女性が20.7%となっています。
在宅療養患者に限定すると、この割合は高くなります。国立長寿医療研究センターの「平成24年度老人保健健康増進等事業在宅療養患者の摂取状況・栄養状態の把握に関する調査研究報告書」によると、在宅療養患者である高齢者990名を対象に調査したところ、36.0%が低栄養、33.8%が低栄養のおそれありという結果になりました。
また、年齢が高くなるほどに栄養状態が悪くなり、要介護度が上がるほど低栄養の割合は高くなると報告されています。
こんな人は要注意!
こんな人は栄養素が足りない場合があるので注意していきましょう。
●好き嫌いが多い人
「ついつい野菜を避けてしまう」「お魚が嫌い」…など、昔からの好き嫌いを高齢になってから治すのは難しいものです。
●高齢者だけで暮らしている人
高齢者だけの世帯や一人暮らしをしていると、ついつい同じものを食べてしまったり、簡単な食事で済ませてしまったりすることがあります。
●食欲が落ちてきている人
暑くて食欲が落ちることや、寒くて活動量が減るため食欲が落ちることもあります。
●最近体重が減少している人
「(平常時の体重-現在の体重)÷平常時体重×100」で求められる体重減少率が、1ヵ月で5%以上、3ヵ月で7.5%以上、6ヵ月で10%以上減ると、栄養改善が必要だと考えられます。
栄養が足りているかチェックしましょう
高齢になると年齢が若い時よりも食事は栄養バランスを取り、しっかり食べる事が重要です。
高齢者の食事を見直し、以下の10項目の食品のうち、ほとんど毎日食べているものがいくつあるのかをチェックしてみましょう。
【チェックリスト】
□魚介類
□肉類
□卵(魚の卵は除く)
□牛乳(コーヒー牛乳やフルーツ牛乳は除く)
□大豆製品(豆腐や納豆など)
□緑黄色野菜(ニンジン、ほうれん草、トマトなど色の濃い野菜)
□海藻
□いも類
□果物(生鮮や缶詰など)
□油脂類(油を使った料理、バター/マーガリンなど)
ほとんど毎日食べる食品が9~10項目ある方は、これからもぜひ継続していきましょう。 4~8項目の方は、1項目でも増やすように毎日意識するように心がけると良いでしょう。
3項目以下の場合には、食事が偏っているため、改善が必要です。
栄養補助食品の取り入れ方
毎日10項目の食品を、まんべんなく食べることができるのが理想的ですが、多くの食材をそろえて、毎日調理するのは大変です。高齢者向けの配食弁当の多くは、食品をまんべんなく摂取できるように栄養士が献立を考えてくれていますが、食欲がなかったり、好き嫌いが多かったりすると、お弁当を食べきれずに結局栄養が偏ってしまうことがあります。
また、加齢にともなって飲み込む力が落ち、むせやすくなると、食事をとる、水分をとることで疲れるようになります。食事に時間がかかり、食べられる量がさらに低下するという悪循環が続くと、栄養が不足する状態がさらに進んでしまいます。
そんな時におすすめしたいのが、市販の栄養補助食品です。たんぱく質や微量栄養素、エネルギーを多く含んだ飲料やゼリー状の製品であれば、食欲のないときでも手軽に摂取できます。
こんな時は栄養補助食品を取り入れてみましょう
- 固形物が食べづらい
- 食欲がない
- おやつやデザートとして
- ハーフ食にプラス
続いて、状態別におすすめの栄養補助食品を紹介していきます。
食事の量が減った、食欲がない
食事の量が減った、食欲がない人には、総合的な栄養補給ができる「エンジョイクリミール」と「エンジョイすっきりクリミール」がおすすめです。
1パック(125ml)には、おにぎり1個分(約115g※)と同等のカロリー200kcalと、卵1個分(約60g※)と同等のたんぱく質7.5gなどが配合されています。
※日本食品標準成分表2020年度(八訂)より引用改変
「エンジョイクリミール」には、ヨーグルト味、いちご味、バナナ味、コーンスープ味、コーヒー味、ミルクティー味、リッチミルク味、りんごミルク味と8種類の味があるので、気分に合わせて違う味を楽しむこともできます。
ミルク風味が苦手な方にはりんご味、パイナップル味、ぶどう味、はちみつレモン味の4種類の味がある「エンジョイすっきりクリミール」を選ぶと良いでしょう。
お肉やお魚を食べる機会が減った
お肉やお魚を食べる機会が減った人やミキサー食の人、栄養補助食品が苦手な人には、食事や飲み物に混ぜてたんぱく質補給ができる「エンジョイプロテイン」がおすすめです。
10g(大さじ計量スプーン(15cc)すりきり2杯)あたりに消化吸収されやすい乳清たんぱく質が9g含まれており、そのうちの約2.2gが筋肉のエネルギー源となる必須アミノ酸のBCAAです。水に溶けやすい粉末状の製品で、ほとんど無味無臭なのでおかゆやお味噌汁、牛乳など様々な料理や飲み物に混ぜることができます。
また、たんぱく質を構成するアミノ酸のひとつであるアルギニンは、ベッドの上や車いすなどで同じ姿勢でいる時間が多い方におすすめしたい栄養素です。アルギニンを手軽に摂取したい方には、「エンジョイArgina(アルギーナ)」が良いでしょう。
1パック(125ml)には、おにぎり1個分(約115g※)と同等のカロリー200kcalと、たんぱく質5g(うち2.5gのアルギニン)が配合されています。また、7.5mgの鉄分と10.0mgの亜鉛、ビタミンA・Cが一緒に摂取できるのもうれしいポイントです。オレンジ味とライチ味から選ぶことができます。
※日本食品標準成分表2020年度(八訂)より引用改変
野菜やくだものを食べる機会が減った
野菜や果物を食べる機会が減ってしまった方には、ビタミンやミネラルが補給できる「Sunkistベジたいむ+Ca」や「ビタミンサポートゼリー」がおすすめです。
「Sunkistベジたいむ+Ca」には、1本(125ml)で、1日分*のビタミンD、E、B1、B2、ナイアシン、B6、B12、パントテン酸、ビタミンC(500%)、そして1日分*の半分のビタミンAが配合されています。また、鉄5.0mg、亜鉛11.0mg、カルシウム、ミルクオリゴ糖1.0gも摂取できるのがうれしいポイントです。
* 1日分=日本人の食事摂取基準(2015年版)の50~69歳男性の1日当たりの推奨量・目標量
レッドミックスとグリーンミックスの2種類があり、いずれもフルーティな味わいなので、野菜が嫌いな方でも無理せずに楽しめます。
「ビタミンサポートゼリー」は、食事だけでは不足しがちなビタミンやエネルギーなどを補えます。ゼリー状なので、飲みこむ力が弱くなってしまった方にも安心です。
1個(78g)で、ビタミンC500㎎、エネルギー100kcal、鉄5.0mg、亜鉛11.0mg、シールド乳酸菌®100億個などが配合されています。
みかん味、マスカット味、パイナップル味、はちみつレモン味の4種類の味があるので、その日の気分で味を選ぶこともできます。
手軽に水分補給したい
高齢になると喉の渇きを感じにくくなるので、意識して水分摂取を促す必要があります。しかし、飲みこむ力が弱くなると、とろみがついていない水分は飲みこみにくくなってしまいます。ゼリー状で飲みやすく、日常的にも外出先でも手軽に水分補給できる製品が「リハたいむゼリー」と「アクトウォーター」です。
「リハたいむゼリー」は、水分補給と同時に、1袋(120g)で100kcalのエネルギーとたんぱく質10gも効率的に摂取できます。
マスカット味・もも味・はちみつレモン味・甘夏味の4種類があり、リハビリや運動後の水分補給やおやつとして召し上がれます。
「アクトウォーター」もゼリー飲料です。1袋(300g)に水分やナトリウム(食塩相当量0.70g相当)、カリウムが配合されているので、日常的な水分摂取や、体調不良時、入浴後にもおすすめです。
ほどよい塩味の感じられる、さわやかなライチ風味のさっぱりとした味わいです。
<まとめ>
高齢者を介護していると、「ご飯を食べてくれない」「好き嫌いが多い」「食事や水分を取るのが辛そう」と、不安になってしまうことがあります。体重の減少や体調不良など栄養が足りていないと感じている方には、手軽に栄養が補給できる市販の栄養補助食品がおすすめです。
栄養補助食品は、高齢者の状態や好み、足りない栄養に合わせて選ぶと良いでしょう。ドラッグストアやネットショップで手軽に購入することができます。ネットショップでは、お試しセットがある製品もあるので、活用してみてはいかがでしょうか。
2021年7月更新

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