現在、厚生労働省の施策として在宅医療・在宅介護が推進されており、今後もその傾向は続くことが考えられます。また、およそ60%ほどの人が自宅での療養を希望しているため今後も在宅介護をしていくという方は増えてくるかもしれません。在宅介護をするためには家をより介護しやすい形態にリフォームすることが必要です。
今回は、介護リフォームのポイントを詳しくご紹介します。
介護リフォームの目的とは
まずは、なぜ介護リフォームを行うのかその目的についてまとめていきます。
家庭内での事故を防ぐ
65歳以上の高齢者においては、20歳以上65歳未満の人より住宅内での事故発生の割合が高くなっているというデータがあると言われています。特に居室が45.0%と最も多く、次に階段、18.7%、台所・食堂17.0%と続きますが、このデータはあくまで高齢者全体のデータです。四肢に麻痺がある、動きにくい、薬や病状によりふらつきがある、目が見えにくい等体にさまざまな支障を抱える要介護者においてはこの割合はさらに高まることが考えられます。
家庭内での事故を防ぐ
65歳以上の高齢者においては、20歳以上65歳未満の人より住宅内での事故発生の割合が高くなっているというデータがあると言われています。特に居室が45.0%と最も多く、次に階段、18.7%、台所・食堂17.0%と続きますが、このデータはあくまで高齢者全体のデータです。四肢に麻痺がある、動きにくい、薬や病状によりふらつきがある、目が見えにくい等体にさまざまな支障を抱える要介護者においてはこの割合はさらに高まることが考えられます。
さらに、高齢者の家庭内における不慮の事故死については、交通事故よりも多いという報告もあり、その内訳をみると「浴槽内での溺死」「スリップ、つまずき等による転倒」が最も多く、年齢が上がるにつれて発生比率も上昇していく傾向にあります。つまり、家庭内における事故を防ぐことは高齢者の寿命、特に健康寿命の延長につながっていくということが考えられます。要介護者を守るためには介護リフォームは必要不可欠なことでもあります。
要介護者が自由に暮らせるようになる
前述したように居室での事故が多い高齢者。もし事故を起こして要介護度が高まれば家族への負担が増えるといっても過言ではありません。高齢者の安全を確保するためには家族が付きっ切りで介護をされることとなるでしょう。しかし、家族が付きっ切りでそばに居るために要介護者自身が自分でできることが減ってしまい、それによって要介護度が上がってしまったりQOLの質が低下してしまうことも。反対に、自分でできることが増えれば自立心が芽生え、それに伴い活動量が増え、足腰が鍛えられ、ADL,QOLが高まるという好循環につながっていくかもしれません。
家族の負担が軽減される
前述したように家族がつっきりで要介護者のお世話をすれば、事故は防げても家族自身が疲弊してしまいます。
介護は明確な期間は決まっていませんし、24時間365日の介護が必要となります。
そのため、少しでも要介護者ができることを増やし、家族の負担を減らすことで細く長く無理なく介護を続けていくことができるようになるのです。
近年では、安心・安全な住まいで要介護者が生活することができれば、身体活動量が増え、生活満足度が向上し、身体活動量が確保され健康寿命の延伸につながるという報告も挙がっています。
介護リフォームの補助金
介護リフォームにおいては補助金が支給されます。介護リフォームの補助金は介護保険制度の一環である居宅介護(介護予防)住宅改修費という項目で補助金が支給されます。
介護リフォームの補助金を受けるための条件
介護リフォームの補助金を受けるための条件は3つあります。1つは要支援認定あるいは要介護認定を受けているということです。2つ目は介護リフォームを行う住宅が介護保険被保険者証に記載されている住所の住宅であるということです。この介護保険被保険者証に記載されていない住所の住宅をリフォームする場合は、たとえ要介護者が頻繁に出入りをしていたとしても介護リフォームの補助金の対象外となります。3つ目は介護リフォームの補助金対象となっている場所のリフォームであるかどうかです。介護リフォームの補助金対象となる場所は以下のようになります。
- 手すりの取付け
- 段差の解消(屋内だけでなく玄関から道路までの屋外も可能)
- 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更(屋内だけでなく玄関から道路までの屋外も可能)
- 引き戸等への扉の取替え、扉の撤去
- 洋式便器等への便器の取替え
- その他前各号の住宅改修に付帯して必要な工事
上記の場所以外のリフォームを行った場合も介護リフォームの補助金の対象外となってしまいます。
介護リフォームの流れ
介護リフォームはどのような流れで行っていくのでしょうか。その流れをご紹介します。
介護リフォームの旨を担当ケアマネに相談
まずは住宅改修をしたいという旨をケアマネに相談します。ここで詳しく相談ができれば前述した介護リフォームの補助金が支給される条件について知ることができ、条件から外れたリフォームをしてしまい補助金が下りなかった…というようなミスをしないですむでしょう。
申請書類又は書類の一部提出・確認
住宅改修の支給申請書類の一部を利用者は保険者へ提出します。提出する書類は支給申請書、住宅改修が必要な理由書、工事費見積もり書、住宅改修後の完成予定の状態がわかるもの(日付入り写真又は簡単な図を用いたもの)となります。
提出された書類を見て保険者は適当な介護リフォームであるかどうかの判断をします。この間に介護リフォームがなされます。
住宅改修費の支給申請・決定
介護リフォームが終わり、住宅が完成したら利用者は、工事終了後領収書等の費用発生の事実がわかる書類等を保険者へ提出します。提出する書類は住宅改修に要した費用に係る領収書、工事費内訳書、住宅改修の完成後の状態を確認できる書類(便所、浴室、廊下等の箇所ごとの改修前及び改修後それぞれの写真とし、原則として撮影日がわかるもの)、住宅の所有者の承諾書(住宅改修を行った住宅の所有者が当該利用者でない場合)となります。
これによって正式な支給申請になります。保険者は、事前に提出された書類との確認をおこない、工事が行われたかどうかの確認をします。当該住宅改修費の支給を必要と認めた場合、住宅改修費を支給するという流れになります。
介護リフォーム費用と期間の目安
それでは、実際に介護リフォームをした場合の費用と期間の目安についてご紹介していきます。
玄関
玄関周りを介護リフォームするとなると具体的にはスロープを付けて玄関前の段差を解消する、手すりを付けるという方が多いようです。玄関前にスロープを付ける場合の費用はスロープの形状や材質によっても異なります。2mのコンクリートスロープを設置するリフォーム相場は、約2万7,000円前後、木製スロープの場合は手すりの取り付けと合わせて約21万円前後が相場になります。
また、スロープはもともとの玄関の構造によっても値段が変わってきます。安ければ約20万円前後となりますが、スロープを取り付けるためのスペース作りから行った場合には約50万円前後が相場になります。工事期間は規模にもよりますがスロープの取り付けのみ、手すりの取り付けのみですと最短で1~2日で終わります。
玄関の介護リフォーム | 介護の無料相談&ハウツー「安心介護」
トイレ
トイレの回収も元々のトイレがどのような状態であるかによって異なります。和式トイレから暖房便座、洗浄機能等が付加されている洋式トイレへ変更する場合には約22万円~約57万円、L字手すりを取り付ける場合には約2万5000円~約4万5000円、ドアのタイプを引き戸へ変更する場合には約4万円~約10万円、床張り(クッションフロア)とする場合には約2万円~約10万円程でございます。しかしトイレスペース拡張工事や既に洋式便器である場合の暖房便座、洗浄機能等付きの付加は支給対象外となります。
トイレをバリアフリー化するには? - 介護の専門家に無料で相談「安心介護」
浴室
浴室のリフォームは浴槽と脱衣所のリフォームを分けて考えている方が多く、浴室の場合には高齢者でも入りやすいまたぎ高さの浴槽、浴槽内の手すりつけ、腰掛け付きの浴槽を取り付ける方が多いです。又脱衣所の場合は車いすが納まる広い脱衣所スペース拡張や車いすの人でも見える高さの洗面台を検討される方もおられますが支給対象外です、しかし必要とされる場所に手摺りを設置する事は対象とされますので、ケアマネジャーなどにご相談をして頂きたいと思います。
費用は、リフォームする箇所によっても異なります。段差解消工事ですと約5~7万円、床材張替え工事は約10~20万円、浴室ドア交換工事は約6万~20万円、壁手すり取り付け工事は約3万~5万円となります。
浴槽のバリアフリーリフォーム費用として浴槽内の手すり追加工事は約5千~1万円。
しかし暖房設備設置工事や浴室の広さ拡張変更、浴槽内の昇降リフト追加、浴槽交換は支給対象外となります。
浴室の介護リフォーム | 介護の無料相談&ハウツー「安心介護」
階段
階段のリフォームは、自宅内の階段の場合は階段の横に手すりを付ける、他にも滑り止めシートの装着。
手すりの長さによって値段は異なります。長さ3800mmの直線階段に、4000mmの手すりを設置する場合は約5万5000円ほど。夜間の移動の為に足元を照らすためのLED電機の取り付けや階段の増設などをご検討されておられる方もいらっしゃるかと思いますが、こちらは支給対象外となります。
手すりの介護リフォーム | 介護の無料相談&ハウツー「安心介護」
まとめ
介護リフォームはどの家でもどの場所にでもできるというわけではありませんので、条件をよく確認しておくようにしましょう。分からないことがあれば担当のケアマネジャーに確認することがベスト。補助金を利用して要介護者が快適に暮らせるお家を作っていきましょう。
介護リフォームと聞くと要介護者のためのリフォームと思われるかもしれませんが要介護者だけでなく介護者の負担を軽減するためにも必要なリフォームとなります。介護リフォームについて理解したい、補助金の仕組みを知りたいという方が周りにいましたら是非情報をシェアしていただきたく思います。
又、お住まいの地域によっては介護保険外サービスとしての住宅改修を行なっている自治体もございますので、必要な時は地域包括支援センターや自治体にお問合せをして頂きたいと思います。

ケアマネジャー(介護支援専門員)社会福祉協議会の職員として13年勤務。現在は要介護認定調査員を行っている