高齢者と生活する上で目を向けておきたいのがトイレのバリアフリー化です。トイレは生活の中でも利用しないということはありません。往来する機会が多いからこそバリアフリー化をして高齢者が使いやすいようにすることは大切であると考えます。ここでは、トイレのバリアフリー化を考えている方への参考となる情報をお伝えしていきます。
トイレのバリアフリー化の目的
まずは、なぜトイレをバリアフリー化を検討すべきなのか、その目的についてご紹介します。
足腰が弱い
加齢に伴い年々足腰が弱くなっていくのが高齢者。もちろん、年をとっても筋力を維持して元気に過ごされている方もいますが、足腰が強いからと言って必ずしも住宅内で転倒なので事故を起こさずに生活できるというものではありません。 65歳以上の事故はその約7割が住宅内で起こっているとされており、トイレは住宅内での事故が起こる場所としての割合は1.5%です。
高齢者の起こす事故の割合では低いですが、高齢者の介護が必要になる原因として転倒による骨折が多いため、転倒のリスクを伴う場所は1箇所でも少なくすることが望ましいです。トイレは特に家の中でも行く機会が多い場所でもありますので、割合が低くても転倒を起こすリスクはあります。そのため介護度をあげずに、健康寿命を延伸すること、QOL(生活の質)を維持し続けるためにトイレのバリアフリー化は有効です。
車椅子
足腰が弱くても歩いてトイレに行ける場合と異なり、車椅子の場合はなおのことトイレのバリアフリー化の検討が必要となります。日本のトイレはあまり広いつくりではなく、車椅子が入るトイレは非常に少ないものです。ドアも引き戸タイプのトイレも増えてきましたが、開閉式のドアの場合は、車椅子で入ることが難しいものです。 また、トイレは特に排便の場合、時間がかかってしまうため介助の人を待たせると気を使ってしまいゆっくりと排泄ができないということもあります。そのため、介助者の手をなるべく煩わせることなく車椅子に乗車したまま要介護者自身もゆっくりとトイレで排泄をするためにもトイレのバリアフリー化が必要となります。
トイレのバリアフリー化にかかる費用と期間
それでは、トイレをバリアフリー化する場合に、リフォームするとどのくらいの時間と費用が必要となるのかをご紹介していきます。
足腰が弱い
足腰が弱いという場合、バリアフリー化に伴いできることはトイレの様式の変更、手すりの設置です。
トイレの様式の変更
トイレの様式の変更とは、和式トイレから洋式トイレにするというところはもちろん、例えばもともと使用している洋式トイレを立ち上がりやすいように高くする、防臭機能などほかの機能が付加されているトイレの便座に取り換えるという方法もあります。 トイレの様式を変更するという場合、金額はその様式によって大きく異なります。
和式から 洋式へ変更する場合には約50万円前後、便座の高さを変えるなどで洋式から洋式へ変更する場合には約3~10万円ほどかかります。また、洋式の中でも自動で便座が上がり立位を支援してくれるなどさまざまな機能を加えるとなると約10万円から30万円ほどかかることとなります。工事期間はトイレの種類や業者によっても異なります。
手すりの設置
手すりの場合、その用途によってさまざまな種類があります。足腰が弱いため座ったり立ったりという動作の支えをするための手すり、座ったり立ったりという動作に加えて座った姿勢を安定させるための手すりなどです。 どの手すりをどの材質でつけるかによっても金額は変動しますがおよそ1万5000円から3万円前後で設置できると考えるとよいでしょう。
工事期間については業者によって異なりますが最短で1日で設置できることもあるようです。ちなみに、壁の中に下地を入れて補強する場合は時間もお金も余分に必要になります。
車椅子の場合
車椅子の場合、バリアフリー化に伴いできることは前述した手すりの設置やトイレの様式の変更に加えて床材の変更、トイレ内を広くする、ドアの追加が必要となります。
床材の変更
床材は、車椅子で移動をする際には移動のしやすさという点で特に重要視されます。一般的にコルク材や板張り、クッションフロアーは移動しやすい傾向にあるためこれらの素材に変更する方もいます。 床材のはりかえの場合は使用する床材によって費用が異なりますが、2畳当たりの相場価格で20,000円~200,000円ほどの費用が見込まれます。また、床材の材質によっては下地を作らなければならず、費用が追加でかかることもあります。工事期間も床材によって異なり、1枚ずつ手作業で張っていくなど時間を要する場合もあるようです。
トイレの広さを変える、ドアを追加する
トイレ内に介助者がもう一人は入れるよう広くしたり、移動が円滑にできるよう、特にトイレと脱衣所などが併設されている場合には脱衣所側にドアを設置して一方通行で通れるようにするという方法があります。
他にも姿勢が不安定で排泄中の姿勢維持が難しいという方や、介助の際に背中を支える必要があるという方には背もたれを設置するということもできます。背もたれは手すりとともにつけられる場合が多く、手すりの値段の中に含まれていることが多いです。
トイレの広さを変える、ドアを改めてつけるという場合には業者によって費用や工事期間が大きく異なります。広さを変えるというところについてはもともとの家の構造上できない場合もあります。また、ドアについてもトイレのある位置によって着工が難しいということもありますので、必ずできるわけではないということを念頭に置いておくとよいでしょう。
トイレのバリアフリー化に使える補助制度
トイレをバリアフリー化するにあたって使える補助制度は、国から支給される介護保険制度と自治体から支給される補助金制度があります。
介護保険制度では介護保険制度の一環である居宅介護(介護予防)住宅改修費という項目で補助金が支給されます。支給限度基準額は20万円です。工事にかかった費用の最大9割(1割負担の方は最高18万円、2割負担の方は最高16万円、2割負担の方は最高14万円)が支給されます。この支給限度額は要支援、要介護いずれにしても変わりません。
リフォーム全体でかかる料金の上限なので、例えばトイレをバリアフリー化して20万円超え、その後階段のバリアフリーをしたいとなった場合には、これ以上の補助金は支給されません。また、トイレのバリアフリー化をした際に20万円超えてしまった場合は、残りの超えた分は全て実費での支払いになります。 3階級介護度が上がった場合、転居した場合は再度20万円までの支給限度基準額設定されます。
自治体から支給される補助制度については、それぞれの自治体によって制度や受けられる補助、支給限度額や支給対象となるバリアフリー工事の内容が異なります。そのため、ご自身の居住するあるいは居住予定のある自治体へ相談をされることをおすすめします。
介護保険制度と自治体の補助金制度どちらを使えばいいの?
介護保険制度と自治体の補助金制度どちらを使うとお得かというのは前述したように自治体によって条件や支給額が異なるため、まずは支給条件や支給金額を聞いてから判断するのが良いでしょう。 もし、どちらを利用すればいいか悩んだ場合にはどの程度バリアフリー化するかというところがポイントとなります。 自治体によっては補助の対象となる範囲が幅広かったり対象となるお金の金額も多かったりします。もしも、自分の自治体の補助制度が分からない、介護保険制度と比較したいという場合にはまずケアマネジャーに相談してみてもよいでしょう。
まとめ
トイレのバリアフリー化にはできることが様々あり、工事期間や金額面も大きく異なります。そのため、負担を少しでも軽減できるよう補助金を活用することは重要です。トイレをバリアフリー化するためにどのようなことができるのか、どの補助金を利用するとお得にできるかはご自宅のトイレやどのようにバリアフリー化するかによっても違います。
まずは、自治体へ問い合わせたり担当ケアマネジャーに相談するなどして情報を集めてみることがおすすめです。賢くバリアフリー化して快適なトイレを目指しましょう。 トイレをバリアフリー化するためにできることや費用についてご紹介しました。相場価格とはなりますがバリアフリー化を検討する目安となるのではないでしょうか。
もしも目安として参考になったという方はぜひシェアをしていただけると幸いです。
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2001年、介護福祉士養成校を卒業と同時に介護福祉士を取得し特別養護老人ホームにて介護職員として勤務する。
その後、介護支援専門員や社会福祉士も取得し、介護以外でも高齢者支援に携わる。現在はソーシャルワーカーとして、
特別養護老人ホームで勤務しており、高齢者虐待や身体拘束、成年後見制度などの権利擁護について力を入れて取り組んでいる。