階段があるとどうしても車椅子の方や足腰が弱い方は生活するのが大変になってしまいます。そんな方のためにも階段のバリアフリーを考えられる方も少なくないのではないでしょうか。今回は階段のバリアフリーに着目して、ご紹介していきます。
階段・スロープのバリアフリー化の目的
階段やスロープをバリアフリー化する目的は以下の2点があげられます。
足腰が弱い
高齢者は足腰が年々弱くなっていきます。もちろん、年をとっても筋力を維持して元気に過ごされている方もいますが、65歳以上の住宅内での事故が起こる場所として階段の事故は2番目に多く、例えば夜間のトイレや眠い時間、薬剤などの影響によってふらつきやすいタイミングでの階段昇降は転倒のリスクを高める一因になると考えられます。
このことからも足腰の弱っている方のために階段をバリアフリー化を検討してみてはいかがでしょうか。ちなみに階段はのぼりよりも下りで事故の多い傾向にあります。 また、高齢者の介護が必要になる原因として転倒は4番目に多くなっています。そのため現在の状態から介護度をあげず、健康寿命を延伸するためにも事故の原因を減らすことは必要です。階段・スロープのバリアフリー化は高齢者が生き生きと過ごし続けるために必要であると考えられます。
車椅子
車椅子に乗車していると階段やスロープを上ることはかなり難しくなります。ですが、どのような状況であっても自宅で過ごしたいと考える高齢者は多いものです。実際、自宅で介護を受けたいと考えている方は73.5%にものぼり、多くの方が自宅で介護を受けることを望んでいます。そのため、階段やスロープをバリアフリー化し、車椅子を利用している高齢者にも自宅で介護を受けるという望みをかなえるためにもバリアフリーにすると良いでしょう。
階段・スロープのバリアフリー化にかかる費用と期間
それでは次に階段やスロープをバリアフリーにした場合、それにかかる費用と期間についてご紹介します。
足腰が弱い
足腰が弱い方のために階段やスロープをバリアフリー化する手段としては、階段への手すりの装着や階段の架け替え、滑り止めシートの装着があります。 この中で最も短期間ででき、費用を抑えられるのが滑り止めシートの装着です。こちらは、ホームセンターで材料を購入すれば自分でも簡単に行うことができ、階段の長さによって値段は異なるものの数万程度で抑えられることが可能です。
次に費用を安く、そして期間を短くできるのが手すりの取り付けです。また、転倒予防策として手すりとセットで足元にLEDライトを取り付けることもあります。手すりはその素材や長さによっても値段が異なります。例えば長さ3800mmの直線階段に、4000mmのLIXIL手すりをLEDなしで設置する場合は約5万4240円ほど、同じ条件でLEDありの場合は約16万7240円ほどとなります。
また、金属の手すりや木材の手すりと様々ありますが、リフォーム業者によっては高齢者の場合、手すりを触った時のひやっとした感触を少しでも軽減するために、あえて木材の手すりを勧めるところもあるようです。
そして最も期間と費用が掛かるのが階段の架け替え、いわゆる階段のとりつけです。これは、階段の段数を増やすことによって勾配を緩やかにして高齢者が安全に登れる階段を作るリフォームとなります。
このリフォームはかなり難しく、値段も大きく変動します。その理由としてはそもそも階段が段差を増やすだけで勾配を変えられるのかどうかというところにあります。住宅によっては段差を増やすためのスペースがないため段差を増やすことができない、階段の梁にあたってしまうため梁ごと交換しなければならないといった事情が出てきてしまいます。階段の架け替えは最小限の費用に抑えられて20万円前後、費用が膨らんでしまうと50~100万円になってしまう場合もあります。
また、リフォームの内容によって工事期間も異なりますが、工事中は階段を利用することができなくなりますので、もともと2階で生活していた方は1階に生活スペースを移すか、ほかに生活できる住居を確保することが必要になります。
そういった面でも費用が追加されることもあります。 介護保険でのリフォームを検討の方は事前申請が必要になるので、担当の介護支援専門員や地域包括支援支援センター担当職員などに一度相談をするとよいでしょう。
車椅子の場合
車椅子の場合は、車椅子ごと階段を上るということを考慮して主に昇降機の設置、エレベーターの設置が選択されます。
昇降機とは車椅子に乗車したまま、あるいは車椅子はおいて自分のみが座位の姿勢で階段を上り下りすることのできる機械です。階段に直接機械を取り付けたりする必要はありませんので短期間で設置をすることが可能です。
費用は家の強度にもよりますが、家の強度が強ければ50万円ほどで期間半日~1日と短くて済みます。ですが、家の強度が弱かったり階段の材質が昇降機の適用外で合った場合にはフルリフォームを検討しなければならないため相場はおよそ100万円前後となってきます。昇降機は停電時などにも使用することができるため、近年では特に注目の集まっている福祉用具の1つになっているようです。
エレベーターは家庭に取り付けるものでは家庭用エレベーターもしくはホームエレベーターと呼ばれています。らせん階段や踊り場付きの階段では前述した昇降機を利用することができませんので、ホームエレベーターを選択される方もいます。
また、足腰が弱っている段階から長期的に見据えて検討される方も少なくないようです。各階の階段付近に畳1.5~2畳分のスペースを物入れなどとして確保されている家の場合はその部分にエレベーターを作るため費用などが抑えられますが、そういったスペースがなく作る余裕もないという場合には住居の外に外付けのエレベーター棟の設置が必要になります。
費用はおよそ300万円前後となり、新築の際にエレベーターを設置するよりもリフォームでエレベーターを設置する方が価格帯が高い傾向にあります。これに加えて毎年メンテナンス費用に+5万円ほどかかります。
日々の電気代においては月に500~1000円ほどの加算程度で済みます。また、固定資産税が上がることもありますので、税務署に確認しましょう。
※現時点では階段の昇降機やエレベーターは介護保険の住宅改修では対象外となっています。お住いの自治体では、介護保険外サービスとしての住宅改修が対象となるかも知れませんので、自治体や担当ケアマネジャーなどに一度相談してみましょう。
階段・スロープのバリアフリー化に使える補助制度
階段やスロープのバリアフリー化に使える補助制度は、介護保険制度と自治体から支給される補助金制度(介護保険外サービス)があります。
介護保険制度は介護保険制度の一環である居宅介護(介護予防)住宅改修費という項目で、20万円までは自己負担1割の方で9割(一定の所得がある方は、所得に応じて8割または7割)が補助されます。 これはリフォーム全体でかかる料金の上限なので例えば階段をバリアフリー化して20万円超え、その後別のリフォームとなった場合にはこれ以上の補助は出ないと考えてください。
しかし、3階級介護度が上がった場合、転居した場合は再度20万円までの支給限度基準額設定されます。 この支給額は要支援、要介護いずれにしても変わりません。 自治体から支給される補助制度(介護保険外サービス)は、それぞれの自治体によって制度や受けられる補助、支給限度額や支給対象となるバリアフリー工事の内容が異なります。そのため、ご自身の居住するあるいは居住予定のある自治体などへ相談をされることをおすすめします。
関連リンク:高齢者向けにバリアフリーにリフォームしたら補助金はどれくらいもらえる?
介護保険制度と自治体の補助金制度どちらを使えばいいの?
介護保険制度と自治体の補助金制度どちらを使うかというのは前述したように自治体によって条件や支給額が異なるためまずは、この条件や支給額を聞いてから判断するのが良いでしょう。 ですが、このタイミングで1点どちらを使えばいいか明言できることがあります。それは、どのリフォームをするのかというところです。
介護保険制度を利用した補助金制度の場合、階段・スロープの場合手すりの装着と床材を滑りにくい材質へ変更するという工事を行う場合には補助が下りますが、他のリフォームにおいては補助が下りません。
一方、自治体の補助制度では自治体によりますが多くの場合、階段のリフォームであればその内容についての制限がなく、エレベーターの設置や昇降機の設置でも補助が下りることもあります。そのため、エレベーターや昇降機の設置を検討されているという方の場合は一度確認した上で、自治体の補助を視野に入れて考えられることが良いでしょう。
まとめ
高齢者とともに快適に生活していくため、高齢者の介護度を上げずに生活していくために必要不可欠であるのが階段のバリアフリー化。階段のリフォームと一言で言ってもその内容は多彩です。予算と要介護者の自立度、家の構造を加味したうえで最適な方法で階段のバリアフリー工事を検討しましょう。
階段のバリアフリー化はすべてにおいて補助が下りるわけではなく、リフォームの内容によっては補助が下りないこともあります。どういった場合に補助が下りるのか、またどういった内容のバリアフリー化が可能なのかは検討する段階でぜひ知っておいてほしいことです。検討時にはお住まいの地域包括支援センター等に相談しましょう。
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※この記事は2019年9月時点の情報で作成しています。
高齢者向けにバリアフリーにリフォームしたら補助金はどれくらいもらえる? - 介護の専門家に無料で相談「安心介護」介護の基礎知識

ケアマネジャー(介護支援専門員)社会福祉協議会の職員として13年勤務。現在は要介護認定調査員を行っている