特養のリハビリって何?詳しい内容や目的を解説!
- 2024年10月04日 公開

「特養(特別養護老人ホーム)でリハビリはできるのか」「行われる内容や回数はどうなのか」などの疑問をお持ちではないでしょうか。
特養への入居後にリハビリを受けたいと考える方は多いでしょう。
本記事では特養のリハビリ内容や目的、担当する職種などを解説します。
ぜひ最後までご覧ください。
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目次
そもそもリハビリテーションとは?
まずはリハビリテーション(以下、リハビリ)の意味について整理しておきましょう。
突然ですが、あなたはリハビリにどのようなイメージをお持ちでしょうか。
「病気で体力が落ちた状態から回復すること」「骨折手術後に歩けなくなってしまったため、歩行訓練をすること」など身体の調子を以前の状態にまで回復させるイメージがあるのではないでしょうか。
しかし、リハビリの本来の意味は「生活の再建」です。
病気からの回復や訓練のみを意味するのではなく、「その人らしい生活」を送るために必要な一連の活動を指します。
リハビリではトレーニングマシンやゴムチューブなどの器具を使って筋力アップに励むことがありますが、それは一部でしかありません。日常生活における動作の一つひとつもリハビリに通じるのです。
たとえば、トイレに行くときを想像してください。
トイレまで歩いて行き、扉を開ける。ズボンや下着を下ろして便座に座り用を足す。後始末をして便座から立ち上がり、下着やズボンを履いて、扉をあけ、再び部屋まで歩いて行く。
トイレでの排せつという目的を達成するために、立つ、座る、歩く、指先の細かい動きなどあらゆる動作を行います。
以上のような一連の動作の流れや生活そのものもリハビリに含まれます。
そしてこのような取り組みを「生活リハビリ」といいます。特養では個別的な機能訓練よりも「生活リハビリ」に力を入れています。
特養(特別養護老人ホーム)におけるリハビリの意義

続いては、特養におけるリハビリの意義を解説します。
前述のように特養でのリハビリは機能訓練よりも「生活の再建」を念頭に置いた「生活リハビリ」が中心です。
特養は要介護3以上の高齢者が入居する施設です。
要介護者が生活を維持する場所であるため、病気の治療をする病院や自宅復帰を目的とする介護老人保健施設(老健)とは性質が異なります。
たとえばリハビリテーション科のある病院や老健では、理学療法士や作業療法士などリハビリの専門資格を持つ人員配置が義務づけられています。
一方、特養でも機能訓練指導員1名以上の配置基準があります。
機能訓練指導員は理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のリハビリ専門職以外に看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師の有資格者でもつとめることが可能です。
特養のなかには、機能訓練指導員1名で10~100人単位の入居者の対応をする施設もあります。
そのため、1人の入居者にかけられるリハビリの時間は限られ、病院や老健のような個別リハビリは行っていない場合もあります。
ただ実際に個別で機能訓練を行うとすると、60人程度が負担なく行える人数だと考えられます。
60人ほどであれば3日に1度は機能訓練が可能となってきます。
そこで重要となってくるのが「生活リハビリ」です。
たとえば「食事中の座った姿勢を調整して食べやすくする」「ベッドから車いすへ乗り移るなどのときに入居者の力が入りやすい介助方法を考える」などが生活リハビリにあたります。
日常生活で頻繁に行う動作を中心に、改善点や楽に動ける工夫などを考えて実践することが特養のリハビリで大事なポイントです。
特養(特別養護老人ホーム)のリハビリは有資格者が行う?

前述のように特養には機能訓練指導員の配置が義務づけられていますが、リハビリ専門職以外でも従事できます。
また他の職務との兼務が可能なため、看護師として業務を行いながら機能訓練指導員として在籍するケースもあります。
兼務の場合は看護業務に加えて、機能訓練指導員として入居者に対応するのは難しいこともあるでしょう。
特養でもリハビリに力を入れる施設では、理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職を配置したり、関連する病院や施設から理学療法士を派遣して対応したりする場合もあります。
リハビリ専門職を配置する施設でも病院や老健ほど人員体制が充実していないため、個別リハビリの回数は限られます。
そのため「ベッドで寝ている時間が長い」「食事の量が減ってきている」など介護職員や看護職員からの情報をもとに、入居者の対応について専門職の観点から相談に乗りアドバイスするといったケースが多く見られます。
施設ごとに機能訓練指導員が何人在籍しているか、また機能訓練指導員に従事するのはどのような資格を持つ者なのか確認が必要でしょう。
特養(特別養護老人ホーム)のリハビリ内容

特養では病院や老健のように、入居者一人ひとりに個別リハビリの時間を設けることは難しい場合がほとんどです。
そこで日常生活の場面で行う「生活リハビリ」が重要となります。
ここでは、実際に特養で行われているリハビリの内容を5例ご紹介します。
食事中の座った姿勢を整える
食事で栄養をとり入れることは生きるために必須であり、生活の質を向上させる重要なポイントです。
食事が上手に食べられない、食べる量が少ないなどの場合は食事時の座った姿勢に問題があるケースが考えられます。
たとえば、ベッドの上での食事は上半身が後ろに傾き、食べ物を口に運びにくくなるでしょう。
またあごが上がるためムセやすくなり、誤嚥性肺炎を発症する危険性も増してしまいます。
車椅子や椅子に座ってクッションなどで姿勢を整えることで食べ物を運びやすくなり、正しい姿勢で飲み込みやすくなります。
食事の美味しさを感じて楽しく食べることができれば、食べられる量が増え、体重減少を防止できるでしょう。
ベッド上でのポジショニング
ベッドで寝るときの姿勢は褥瘡(床ずれ)予防や、身体の緊張をやわらげるために重要です。
寝るときの姿勢を枕やクッションなどで整えることを「ポジショニング」といいます。
要介護3以上の方が入居する特養には「自分で寝返りが打てない」「痛いところがあっても姿勢を変えられない」方もいます。
そこで身体の一部分に圧力が集中しないように分散させることが大事です。
とくに尾てい骨やかかとなど骨の出ている部分は褥瘡が起こりやすい部位のため、注意しなければなりません。
褥瘡が発生すると治癒までに時間がかかり、傷口から感染症を引き起こすリスクも上がります。
そのため何よりも予防が大事なのです。
そして褥瘡の予防には寝るときのポジショニングが必須です。
また適切なポジショニングは筋肉の緊張をやわらげます。
介助する側にとっても、余計な力みがない方のほうが介助しやすいでしょう。
ポジショニングは入居者、介助者お互いにとって大事な生活リハビリなのです。
口腔ケアの徹底
口腔内を清潔にすることは誤嚥性肺炎予防のために重要であり、味覚の感じやすさにも影響します。
自立した方であれば食後の歯磨きを行えますが、特養の入居者には自分で歯磨きや口腔ケアができない方もいます。
口腔ケアを怠ると不潔になり、歯茎からの出血なども重なると食事量の減少を招くケースがあります。
食後には必ず歯間の食べかすや、汚れを落とすことが大事です。
口元に手が届く入居者や入れ歯が洗える方なら、自分で行えるように工夫している施設もあります。
車椅子や椅子に座る機会を増やす
車椅子や椅子に座る機会を増やすことは寝たきり予防にとって重要です。
介護業界には「寝たきりは寝かせきり」という言葉があります。
寝かせきりにしている時間が長いほど、寝たきりに近づいていくということです。
特養の生活リハビリでは食事は車椅子や椅子に座って食べる、トイレに行ける人はトイレでの排せつを誘導するなど、ベッドから離れる機会を作る工夫がされています。
また集団で行う体操や、音楽を流すなどのレクリエーションで座る機会を作っている施設もあります。
役割や趣味を活かす
身体の動きや認知機能を維持するためには、入居者の残された能力を最大限活かすことが大事です。
そのためには家庭での役割や、入居前にしていた趣味などが役立ちます。
入居者のなかには、以前は主婦をしていて家事はすべてやっていたという方がいます。
そのような入居者には施設で使うタオルやゴミ袋をたたんでもらったり、テーブルを拭いてもらったりなど家事に近い作業を行ってもらうケースがあります。
また、絵を描くことが趣味の方や囲碁・将棋が好きな方もいます。
このような役割や趣味を活かした取り組みは入居者が主体的に動くきっかけになり、活動する時間を増やせます。
入居者側、介護者側がお互いに「なんでもやってもらう介護」から「やれることは自分でやる」という意識を持つことが生活リハビリのポイントです。
特養(特別養護老人ホーム)のリハビリ回数や頻度

特養におけるリハビリの回数や頻度は施設によって様々です。
1日1回20分ほどの個別リハビリを週2〜3回行う場合や、個別リハビリの時間はなく生活リハビリのみを行っている施設もあります。
生活リハビリの場合は、入居者の状態に合わせて日常生活のなかで残された能力を維持できるように取り組みます。
そのため1日に何回、1回に何分行うのか、明確に回数と時間を決めるのは難しいでしょう。
たとえば寝たきりを予防するために車椅子や椅子に座ることを目標とした場合、トイレや移動のたびにベッドから離れるため、その回数だけリハビリをしていることになります。
また、食事の際の座る姿勢を整えることや、スプーンや箸を使う力の維持を目標とした場合は毎回の食事がリハビリになります。
特養には機能訓練指導員1名以上の配置義務がありますが、機能訓練指導員のみで多くの入居者のリハビリに対応するのは困難です。
そのためスタッフ間の連携が欠かせません。
生活リハビリに力を入れる施設では、看護師、介護職員、理学療法士や作業療法士などの機能訓練指導員がそれぞれの専門性を活かして、情報交換しながら入居者に適した支援を行います。
連絡ノートを使った情報共有や、10分程度の話し合いを業務の合間に行うことで連携を強化している施設もあります。
特養への入居を検討する方は、施設がどのように生活リハビリを取り入れているのか、確認しておくとよいでしょう。
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満足のいく老人ホームの生活は、どの施設に入居するかで大きく異なることがあります。
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