老健のメリット・デメリットとは?施設選びに役立つ特徴を徹底解説!
- 2024年10月04日 公開

介護や支援が必要な利用者の在宅復帰を目的とした公的な介護保険施設の一つ「介護老人保健施設(老健)」。
意外と知られていない施設の特徴や利用条件、料金、同様の介護保険施設「特別養護老人ホーム(特養)」との違いなどについて詳しく解説します。
この記事の監修者
介護老人保健施設とは?

介護老人保健施設は医療法人や社会福祉法人などが運営する公的な介護施設のことで、「老健」とも呼ばれます。
医療や介護ケア、リハビリテーションなどを通じて、主に病院での治療を終えたあとも介護を必要とする高齢者が自宅復帰できるようにサポートします。
介護保険が適用される公的な施設であるため、民間の施設よりも費用を抑えることができます。
介護老人保健施設(老健)の特徴
老健にはいったいどんな特徴があるのでしょうか。一つ目の特徴は、入所までの待ち時間が比較的短いという点です。
厚生労働省が「リハビリテーションを提供する機能維持・回復の役割を担う施設」と位置づけているように、老健はあくまでも在宅復帰を主目的とした施設です。
入所期間は通常3~6カ月と定められており、その分、入所者の回転率が高くなっています。
二つ目の特徴は、多くの専門的なスタッフが働いている点です。
利用者の健康を管理する医師や看護師、生活の介護などを行う介護職員、専門的なリハビリを行う理学療法士や作業療法士・言語聴覚士、食事の栄養管理を行う管理栄養士、施設の利用や介護の相談を受ける支援相談員などの専門家がチームを組み、利用者の在宅復帰を支援します。
入所すると、医師による医学的管理のもと、利用者一人ひとりの状態に合わせた看護師や介護職員によるケア、作業療法士や理学療法士等によるリハビリなどのサービスを受けることができます。
看護師や介護職員などの専門職は24時間体制で勤務しているため、利用者は昼夜を問わず安心して生活を送ることができます。
一方、老健は在宅復帰・在宅療養支援のための拠点としての役割も担っており、入所施設としてだけでなく、地域に開かれた在宅ケア支援の拠点施設として介護予防を含めた教育や啓発活動なども行っています。
介護老人保健施設(老健)の入居条件
老健では医療・介護・リハビリ専門職のケアを総合的に受けられますが、誰しもが入所できるというわけではありません。
入所基準は、要介護1~5の認定を受け、かつ病状が安定していて入院治療の必要がなく、在宅復帰のためのリハビリを必要とする65歳以上の高齢者と定められています。
ただし、40歳以上65歳未満でも特定疾病のために要介護認定を受けている場合は利用することができます。
介護老人保健施設(老健)の居室の種類
次に、老健の設備について見ていきましょう。利用者が入所する部屋には、「従来型個室」「多床室」「ユニット型個室」「ユニット型個室的多床室」などがあります。
従来型個室は、壁が天井まである独立した個室のことを指します。一つの部屋を一人で利用するためプライバシーを守ることができ、居室内にトイレが設置されているなどの利便性も兼ね備えています。
しかし、施設によっては部屋から共用スペースまでの距離が遠く、他の入居者と交流する機会が少なかったり、多床室よりも費用が高いといったデメリットもあります。
多床室は病院の病室のように、大きな部屋を2~4人で利用する相部屋です。
それぞれのベッドの間はカーテンなどで仕切られているため一定のプライバシーを保つことはできますが、生活音や匂いの面などプライベートな空間が守られているとはいえない一面もあります。
一方、近年は「ユニット型」と呼ばれる居室を設置する施設が増えてきました。
「ユニット型」とは、自宅の生活環境に近い介護施設で他の入所者と共同で暮らしながら、自分のリズムに合わせた生活を送れるようにする「ユニットケア」という介護手法を取り入れた居室のこと。
部屋には「ユニット型個室」と「ユニット型個室的多床室」があります。
ユニット型個室は、共有スペースであるリビングを囲む形で個室が配置された構造となっており、一つのユニットに10人程度が入所するのが一般的です。
完全個室でプライベートな空間を確保しながら、リビングでスタッフや他の入居者と気軽に交流し、リハビリに取り組むことができます。
ユニット型多床室は大部屋を簡易的な壁で仕切って独立した空間を設け、個室のようにして使う部屋のこと。
一部は共有スペースとして使用されます。壁が天井までないのでプライバシーが完全に守られているとはいえませんが、他の入所者の目を気にすることなく生活できるのはメリットです。
介護老人保健施設(老健)の費用
老健は公的な介護保険施設のため、介護保険が適用されます。入居一時金などの初期費用は必要ありません。
月額費用として、介護サービス費の1割(一定以上の所得がある場合は2割、または3割)や居住費、食費、日常生活費などを負担します。
介護サービス費は介護度、居住費は居室のタイプによって異なります。
また法律上、医療保険と介護保険を同時に利用することができないため、入所中に必要となる医療行為や医療機関の受診費用、薬代は基本的に施設側が負担します。
ただし、レントゲンやCT検査、歯科診療など医療保険が適用される医療行為については、自己負担となります。
なお、低所得者の方も安心して施設を利用することができるよう、所得や預貯金額等に応じて減免措置が設けられています。
居住費や食費は負担限度額までが自己負担となるため、該当する可能性がある方はお住まいの市区町村などに相談してみるとよいでしょう。
特別養護老人ホームとは?

ここまで老健について解説してきましたが、老健と同じ公的な介護保険施設の一つに「特別養護老人ホーム(特養)」があります。老健とはいったい何が違うのか、その特徴について見ていきましょう。
施設の特徴
特養は主に地方自治体や社会福祉法人が運営する介護施設で、「介護老人福祉施設」とも呼ばれます。
在宅復帰のためのリハビリを重視する老健とは異なり、入居すると終身介護を受けることができるほか、近年は看取りまで対応する施設も増加しています。
しかし医師の常勤が義務づけられておらず、看護師も日中のみの配置とする施設が多いことから、老健のような医療処置は期待できないかもしれません。
気管切開やたん吸引などの24時間医療行為が必要な場合は受け入れを断られることもあります。
どんな人が利用できるのか?
特養には原則、要介護3以上の認定を受けた65歳以上の高齢者、特定疾病が認められた要介護3以上の40~64歳の方が入所できます。要介護1~5の方が利用できる老健よりも利用条件は厳しくなっています。
ただし特例として、要介護1~2でも認知症や障害、介護者からの虐待、単身独居などを理由に自宅での介護が難しいと判断された場合は入居が認められることがあります。
生活の中でのリハビリが中心
長期的な生活の場としての役割を担う特養には介護スタッフが24時間常駐しているため、食事や入浴、排せつなど日常生活における必要で適切な介護が提供されます。
また、施設では食事や排せつなどを行うのに必要な身体機能を維持するための生活リハビリが中心に行われます。
在宅復帰を目指すリハビリが中心の老健とは大きく異なるポイントです。リハビリ専門スタッフの配置も一人以上と老健より少なく、リハビリの頻度や回数にも基準は設けられていません。
リハビリの一環としてのレクリエーションや季節に合わせたイベントを行うなど、利用者を楽しませるプログラムも実施されています。
居室の種類
特養の居室は老健と同様、従来型の多床室が依然多く稼働しています。
しかし長期的な生活の場である特養ではとくにプライバシーの確保が重要となってくるため、2001年頃からユニット型個室を導入して入所者の心と身体のケアに取り組む施設が増えてきました。
ユニット型個室は多床室よりも料金が割高になりますが、個人のプライバシーを保ちながら他の入所者と共同生活を送り、きめ細やかな介護を受けることができます。
国が普及を推進していることもあり、今後ますますユニット型個室を備えた施設が増加する見込みです。
どんな費用がかかる?
特養は介護保険が適用されるため、民間企業が運営する有料老人ホームよりも費用は割安です。
入居一時金を支払う必要もなく、月額の料金として施設介護サービス費や居住費、食費、日常生活費などを負担するだけで済みます。
月額利用料は介護度や居室のタイプによって異なるため、事前にお住まいの市区町村などに確認するとよいでしょう。
また、利用者と扶養義務者の収入、預貯金額などに応じて負担額が軽減される制度も設けられています。
医療面で充実している老健と比べると特養の利用料金は割安になる傾向がありますが、老健とは異なり入居費用に医療費は含まれていないため、訪問診療や訪問看護などの医療を受けた場合には別途費用が発生します。
老健を利用するメリット・デメリット

それでは、実際に介護保険施設を選ぶ際にはいったい何を基準に判断したらよいのでしょうか。
ここからは、実際に老健を利用するにあたってどのようなメリットと、デメリットがあるのかについて解説します。
利用するメリット
老健は、リハビリと医療処置を並行して受けられる介護施設です。その特色を踏まえ、メリットについて詳しく見てみましょう。
リハビリが充実している
老健では食事や排せつなどの介護を受けながら、自宅に戻るためのリハビリに取り組むことができます。
リハビリは週に2回以上、1回20~30分行うという基準が設けられているため、専門スタッフによる質の高い機能訓練を集中的に受けられるのは何よりものメリットです。
その他、起き上がりやベッドから車いすへの移乗、排せつなど日常生活において必要な動作においても、自宅での生活を想定した動作訓練を行ってくれます。
「立つ・座る」といった基本的な動作や、「食事」や「更衣」といった応用的動作などの日常生活を想定したリハビリを受けながら在宅復帰を目指します。
その他コミュニケーションなどのリハビリを行ったりと、より在宅での生活を意識したリハビリが期待出来ます。
利用料金が民間に比べて安い
老健は、民間の老人ホームと比較して月額の利用料金は低く、入居一時金もありません。利用料金は介護度や居室のタイプなどによって異なりますが、約8~15万円です。
前述のように、所得や預貯金額などに応じた減免制度があるので、低所得者の方でも利用しやすい環境が整っています。
常時看護師が勤務している
医師が常勤し、看護師も24時間体制で勤務している施設が多い老健では、手厚い医療ケアを受けることができます。
退院したものの、すぐに自宅での生活に戻ることが不安な方にとって心強い施設といえます。
たとえば、透析後に体調が悪くなりやすい方や、内服管理に不安がある方などにとって、医師や看護師による医療ケア、健康管理、そして夜間でも緊急時の対応が可能な点は大きな安心につながるでしょう。
利用するデメリット
このように老健を利用するメリットは数多くありますが、一方でさまざまな制約もあります。どのようなデメリットがあるのかについても確認しておきましょう。
入所期間が決まっている
老健はあくまでも在宅復帰を目指してリハビリを行う施設のため、入所期間は基本的に3カ月~6カ月と定められています。
3カ月ごとに退所か継続かの判定が行われ、自宅へ戻ることが可能と判断された場合は退所しなければなりません。
ただし、介護保険上は期間の制限はなく、自宅へ戻ることができる状態に達していないなどの場合は期間を延長することも可能です。なかには1年以上リハビリを継続して行う利用者もいます。
生活支援は家族対応
老健では、身体介護として入浴介助や排せつ介助のサービスは受けられますが、洗濯や買い物代行などの生活支援は家族対応が基本です。
そのため入居中の洗濯物は原則、家族が自宅に持ち帰って洗濯しなければなりません。
もし家族が生活支援を行えない場合は費用を払って外部業者へ依頼する必要があります。
余暇活動が少ない
老健は在宅復帰を目的とした施設のため、他の施設と比べると利用者が楽しめるイベントは少ない傾向にあります。
レクリエーションも、楽しむためのものというよりもリハビリの一環という位置づけが強くなっています。
特養を利用するメリット・デメリット

老健ではなく特養を利用する場合にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
詳しく解説します。
メリット
自宅での生活が困難で、常に介護が必要な高齢者が入所できる特養には、次のようなメリットがあります。
終身で入所できる
まず、原則として終身にわたって入所できる点がメリットとして挙げられます。近年は「終の棲家」として、看取りまでを行う施設も増えてきました。
重度介護者が入所できる
特養では入所者3人に対し介護職員を一人置くことが基準とされているため、食事や排せつのすべてを介助してもらう必要のある利用者も手厚い介護を受けることができます。
そのため、認知症や自宅での療養が難しい寝たきりの方でも入所が可能です。
高度な医療処置が必要になった場合は特養での入所継続が難しくなることがありますが、体調が安定していれば介護度が高くなっても入所を継続できます。
利用料金が民間に比べて安い
公的な介護保険施設である特養では入所一時金が不要で、民間の有料老人ホームよりも安価で利用できる点も大きな魅力でしょう。前述のように費用の減免制度もあります。
また、老健では生活支援は家族対応、もしくは外部業者へ委託する必要がありましたが、特養ではそれもサービス内に含まれるため、追加料金がかかりません。
デメリット
一方、特養を利用するにあたっては次のようなデメリットもあります。
すぐに入所できない
一番のデメリットは、申し込んでもすぐには入所できない点にあるといえるでしょう。利用料金が安く、長期間の入所が可能な特養は入居希望者が多い人気の施設です。
実際、厚生労働省が発表している「特別養護老人ホームの入所申し込み状況(要介護3~5)」によると、全国で約32万人以上の方が入所申し込みをしていますが、入居の順番待ちをしています。
2015年に新規入居の基準を原則要介護3~5の方に限定したことで待機者の数は若干改善されましたが、依然として入所を待ち望む人は大勢いるのが現状です。
受けられる医療に限度がある
特養は医療機関ではなく、あくまでも「生活の場」であるため、受けられる医療行為には限度があります。
気管切開の管理やバルーンカテーテルの交換などの医療処置は訪問診療や訪問看護に対応を依頼する必要があり、処置の内容によっては対応が可能な施設へ転居せざるを得ません。
要介護3以上の人しか申し込みができない
特養への入所を申し込めるのは、原則として要介護3以上の方です。
要介護1または要介護2の方でも特例として入所が認められることもありますが、老健と比較すると入所のハードルは高いといえるでしょう。
また、地域単位で定期的に開催される「入所判定委員会」で優先度や緊急性が高いと判断された方から入所が決定するため、早めに申し込めば待機時間が短くなるというわけではないことに注意が必要です。
利用目的にあった施設選びが重要

公的な介護保険施設である老健と特養はいずれも介護保険が適用されるため、民間の施設よりも月々の料金を抑えることができますが、それぞれ受けられるサービスが異なります。
利用者の在宅復帰を目的とした老健は長期滞在ができないため、病状が安定していて少しでも早く自宅での生活に戻りたいと考える高齢者には最適の施設といえます。
一方、要介護度が高く、自宅での生活が困難な方には長期滞在が可能で、日常生活における手厚い介護を受けることができる特養が向いているでしょう。
大切なのは、どのような介護・ケアを望むのかをよく考えることです。
そして施設の特徴やメリット、デメリットをしっかりと把握し、自分たちにはどの施設が適しているのかを判断しましょう。安心した療養生活を送るためには、目的にあった施設を選ぶことが重要です。
どの老人ホーム・介護施設にしたら良いかお悩みの方へ
満足のいく老人ホームの生活は、どの施設に入居するかで大きく異なることがあります。
安心介護紹介センターの入居相談員は、高齢者の住まいにまつわる資格を有しており、多くの老人ホームの中から、ご本人やご家族のご希望に沿ったぴったりな施設を選定してご紹介させていただきます。
施設のご紹介から、見学、ご入居まで無料でサポートさせていただいておりますので、ぜひご利用ください。