介護医療院で行われるリハビリとは?効果や目的など気になる情報を紹介!
- 2024年10月04日 公開

2018年以降、設置が推進されている「介護医療院」は公的な介護施設です。長期的な療養生活が可能な介護医療院で入居後も健康に暮らせるよう、施設におけるリハビリテーションの重要性に関心が高まっています。
この記事では、介護医療院で行われるリハビリの効果や目的などについて詳しく解説します。
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そもそも介護医療院とは?
介護医療院は、長期にわたってケアが必要な要介護状態の方に対して医療・介護サービスを提供する公的な施設です。
介護医療院の沿革
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日本は超高齢化社会への対策として、要介護者が生活する場所の確保を推進してきました。
そのなかで課題として挙げられたのが、施設に入居している高齢者の体調が悪くなった場合や人生の最終段階である看取りの受け入れ先についてです。
また、病状は安定しているものの、介護が必要で自宅に帰れない高齢者がやむを得ず入院している「社会的入院」も問題視されました。
介護医療院は、2017年に介護保険法が改正されたことに伴い、2018年4月に新たに創設された介護保険施設です。それまで医療の必要な要介護高齢者の社会的入院を受け入れていたのは、介護療養型医療施設でした。
しかし、本来は病気やケガを治すための医療機関である病院を介護のために利用することが問題視されるようになり、厚生労働省は介護療養型医療施設を段階的に「介護療養型老人保健施設」や「介護医療院」に転換させて2024年3月までに廃止させる方針を発表しました。
介護医療院の目的

介護医療院は、医療と介護が必要な高齢者の長期療養を受け入れる入居施設です。施設名に「医療院」というワードが入っていますが、医療機関ではなく、あくまでも介護施設という位置づけです。
介護医療院では、介護保険制度に沿って立てられたサービス計画のもと、医療・看護・介護・リハビリが提供されます。介護医療院は医療ケアが必要な要介護者を対象とした施設であるため、病状が変化した場合や終末期ケア(ターミナルケアや看取りケア)にも対応可能です。
一方、生活の場である介護施設という特性から、介護やリハビリも重視されています。
介護医療院のサービス内容

介護医療院は医療法で定められた医療提供施設で、その機能によって「Ⅰ型」「Ⅱ型」「医療外付け型」の3つに分類されます。
いずれの施設も長期入居が可能で、医療と日常生活ケアを一体的に提供しています。それぞれの違いを見てみましょう。
Ⅰ型は、比較的医療依存度の高い要介護者を対象にしており、廃止が決定されている介護療養病床と同等の施設です。
Ⅱ型は、介護老人保健施設と同等の扱いで、医療的ケアを受けながらも在宅復帰を目指したリハビリが重視されています。
医療外付け型は、比較的病状が安定している方を対象にした施設です。居住施設に医療機関が併設されています。
それぞれの施設形態によって、生活環境も異なります。
Ⅰ型とⅡ型は基本的には相部屋で、1部屋の定員は4人以下、1人あたりの床面積は8㎡以上と定められています。介護療養型医療施設の療養室の基準床面積6.4㎡よりも広く設定されており、カーテンではなく家具やパーティションなどで個人のスペースが区切られているため、プライバシーが確保されやすい環境です。
一方、医療外付け型の居室は原則個室です。床面積は13㎡以上と広く、有料老人ホームのようなプライベートな空間が確保されています。
介護医療院は入居施設としてだけではなく、介護療養型医療施設と同様に訪問リハビリテーションや通所リハビリテーション、短期入所療養介護(ショートステイ)などの介護保険サービスの提供も認められています。
介護医療院のリハビリ体制

人員体制は、介護医療院の分類によって異なります。それぞれの人員体制について見てみましょう。
【介護医療院の人員配置(入居者数対専門職数)】
人員配置 |
Ⅰ型 |
Ⅱ型 |
医療外付け型 |
---|---|---|---|
医師 |
入居者48人に対して1人配置(施設で3人以上) |
入居者100人に対し1人配置(施設で1人以上) |
併設する医療機関が診療所の場合にあっては |
リハビリ専門職 |
適当数 |
適当数 |
|
薬剤師 |
入居者150人に対して1人配置 |
入居者300人に対して1人配置 |
|
看護職員 |
入居者6人に対して1人配置 |
入居者6人に対して1人配置 |
6対1 |
介護職員 |
入居者5人に対して1人配置 |
入居者6人に対して1人配置 |
6対1 |
介護支援専門員 |
入居者100人に対して1人配置(施設で1人以上) |
入居者100人に対して1人配置(施設で1人以上) |
適当数 |
Ⅰ型は医療依存度の高い方を対象とした施設であるため、医師・薬剤師・介護職員の配置人数がⅡ型よりも多くなっています。
そして注目すべき点は、Ⅰ型とⅡ型の介護医療院のリハビリを行う職員の人員配置は「適当数」とされていること。さらに医療外付け型においては、併設される医療機関の職員が適切なリハビリを行う場合には配置しないことが認められていることです。
リハビリ職員の配置が義務ではない介護医療院ですが、長期間の療養が想定されている施設であるため、心身機能の低下を予防するリハビリは重要です。
そのため、施設内に複数人のリハビリ専門職を配置している施設もあります。施設にリハビリ職員がいない場合は、看護師や介護スタッフが生活リハビリやレクリエーションを行っています。
介護医療院でリハビリを担当するスタッフ

長期入居施設である介護医療院は、リハビリを提供して入居者の身体機能の維持・回復を目指すことが求められています。ただし、リハビリ専門職は適当な数を配置すればよく、施設によってリハビリを担当するスタッフの職種や人数が異なる点は押さえておきましょう。
ここでは、介護医療院でリハビリを担当するスタッフの特徴についてご紹介します。
リハビリの専門性が高いスタッフ
リハビリの専門職というと、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)といった職種を思い浮かべる方は多いでしょう。それぞれの職種が行うリハビリについて解説します。
理学療法士
理学療法士は、身体の動作のうち起き上がる、立ち上がる、歩く、寝返るなど大きい動作のリハビリを行う専門家です。
平行棒を使用する歩行訓練や階段昇降、ベッドから車いすに移る訓練などといった、その方の状態に合わせたリハビリを理学療法士が選択して実行します。
また、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害、ALSや多系統萎縮症をはじめとする神経難病など、病気の進行とともに身体機能が低下しやすい方に対しては、筋力の低下を予防するリハビリだけでなく、全身の血流を促進して神経を刺激し、病気の症状を緩和したり、状態の悪化を予防したりしています。
つまり、理学療法は機能の回復だけでなく、健康の維持や悪化の予防を目指す方のリハビリに適しています。
作業療法士
作業療法士は、食事や家事、着替えなどといった日常生活の作業を通してリハビリを行う専門家です。日々の生活に必要な動作を行うことがリハビリにつながるという意義のもと、ときには手芸やレクリエーションなどを取り入れることもあります。
また、作業療法士は病気やケガが原因で起こった機能低下の改善だけでなく、精神的な障害を抱えている方や認知症の方のリハビリの専門家です。作業療法は、日常生活動作の訓練をしながら、会話を通して精神的な支援が必要な方に適しています。
言語聴覚士
言語聴覚士は、脳卒中後に言葉の障害が見られる方に、コミュニケーションの回復を目指すリハビリを提供します。
脳卒中後の失語症は、「言葉の理解は難しいが、絵や写真であれば理解できる」「話そうと思っても、言葉が浮かばない」など、症状はさまざまです。
言語聴覚士は、専門的な知識をもとに症状の本質や対処法を明らかにし、残された機能でコミュニケーションをとる方法を提案します。
また、飲み込む力である嚥下(えんげ)機能が低下している方に、摂食能力の回復を目指すリハビリを提供することも言語聴覚士の役割の1つです。言語聴覚訓練は、コミュニケーションや嚥下訓練が必要な方に適したリハビリテーションです。
リハビリ専任以外のスタッフ

介護医療院では、上記で紹介した専門性の高いスタッフだけではなく、柔道整復師や看護師、介護職員もリハビリを行うことがあります。
柔道整復師
柔道整復師は、スポーツや日常生活で生じた捻挫・打撲・骨折・脱臼などのケガを、元の正常な状態に戻す施術を行う専門家です。
国家資格である柔道整復師には、本来ならば医師が行う骨折や脱臼の整復固定といった医療処置を行うことが認められています。
職業の特性上、接骨院で働く整復師が多いですが、介護施設で勤務している柔道整復師もいます。介護施設で働く柔道整復師は、転倒を予防するようなテーピングやマッサージ、運動療法、温熱療法など、ケガの治療を希望している方の運動機能の回復をサポートします。
看護師・介護職員
看護師や介護士はリハビリの専門家ではありませんが、施設での生活をサポートするなかでリハビリを意識した関わりを行っているため、すべての入居者にケアを通してリハビリを提供しています。
介護サービスは、食事や排せつ、入浴の介助など多岐にわたります。日常生活動作のすべてを介助するのではなく、日頃から本人ができることは行ってもらうように促します。
その他、入居者にレクリエーションを実施するなどして、機能低下を防ぐ役割を担っています。
公的な介護保険施設として地域とのつながりを持つことも期待されている介護医療院は、イベントを開催して地域の住民やボランティアとの交流の場を設ける取り組みを行うことが推進されています。
地域の人との交流も、入居者にとってはリハビリの1つといえるでしょう。このようなイベントは、主に介護職員が担当しています。
介護医療院のリハビリ間隔・頻度

介護医療院では、リハビリの間隔・頻度についての規定はなく、施設によってリハビリ内容や回数は異なります。
しかし、多くの介護医療院では理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といったリハビリの専門家が在籍し、本格的なリハビリが提供されています。リハビリ職員の人数やサービス提供の頻度が一定の水準を超えている介護医療院は施設の収入が増えるしくみのため、複数人の体制がとられていることが多いようです。
リハビリに積極的に取り組んでいる介護医療院は、とくに入居後3カ月間は集中してリハビリを提供しています。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のいずれかによるマンツーマンの個別リハビリが1回20分以上、週に3回以上提供されます。
4カ月目以降は頻度が下がる施設もありますが、リハビリは継続的に提供されます。
実際のリハビリ内容例

それぞれの専門家が行うリハビリ内容例をいくつかご紹介します。
理学療法のリハビリ例
理学療法士は、歩行訓練や筋力トレーニングだけでなく、関節可動域訓練を行っています。関節可動域訓練は、関節が硬くなる「拘縮(こうしゅく)」を予防したり、関節の動く範囲を拡大したりする目的で行われるストレッチやマッサージです。
関節可動域訓練では、痛みや関節の動く範囲を確認しながら、無理なく関節を動かせるよう手足の曲げ伸ばしを行います。
作業療法のリハビリ例
作業療法では細かい動作のトレーニングとして、箸で豆を運ぶ練習や、新聞紙をちぎって丸めるなど、日常生活で使われる身近なものを使用します。
その他、作業療法の一環として、脳卒中の後遺症によるマヒがある方と料理をすることもあります。
作業療法士は、これまで行えていたことができずに喪失感を抱いている方に対し、新しい手段を伝えたり、できるまで一緒に取り組んだりといった精神的なサポートも行っているのです。
言語聴覚療法のリハビリ例
言語聴覚療法では、脳卒中の後遺症や、筋力低下によって食べ物を噛んだり、飲み込んだりすることが困難になった方に嚥下訓練を行います。
飲み込みの練習は、窒息や肺炎を起こさないように安全に行うことが重要です。
言語聴覚士は、首や唇、舌などの飲み込みに関連する筋肉を動かす体操を行い、食事の様子を観察して嚥下機能を評価するだけでなく、飲み込みやすい食事の固さや形態をアドバイスするなど、さまざまな方向から食事のサポートを行います。
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