グループホームで受けられる医療行為をご紹介します!
- 2024年10月07日 公開

認知症の方を対象とした入居施設であるグループホームでは、どのような医療体制が取られているのでしょうか。施設の方針や体制によって、対応している医療行為は異なります。入居を検討している方へ、グループホームで受けられる医療行為をご紹介します。
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目次
グループホームの医療行為とは?

グループホームは、認知症を持つ方が自立した生活を送ることを目指す介護施設です。
入居者は「ユニット」と呼ばれる5〜9人程度のグループにわかれて共同生活を送ります。家庭的な雰囲気のなかで食事の準備・掃除・洗濯といった家事や庭の手入れなどをスタッフのサポートを受けながら行う点が特徴です。
家事やガーデニングなどの作業療法は認知症ケアに効果的とされているため、それらを日常生活に取り入れているグループホームは、認知症を持つ高齢者の生活の場として注目されています。
グループホームにおける「医療行為」の定義

「認知症ケアによいと評判のグループホームへの入居を検討しているけれど、医療行為に対応してくれるのか」と不安に思う方もいるでしょう。
そもそも「医療行為」とは、医師もしくは医師の指示によって看護師が行う治療や処置のことです。グループホームのような共同生活の場には医師や看護師が在籍していないことが多く、対応できる医療行為には制限がある施設がほとんどです。
しかし深刻な高齢化を背景として、医療行為のうち生活支援のために必要な「医療ケア」と呼ばれる処置を介護職員が行えるようになりました。介護職員が医療ケアを行うことで、グループホームをはじめとする介護施設で病気や障害を持つ方も生活できるようになってきたのです。
グループホームにおける医療行為の担当者
グループホームにおいて医療行為を担当するのはどのような職種のスタッフでしょうか。まずは、グループホームの人員配置基準を見てみましょう。
グループホームの人員配置基準
職種 |
配置人数 |
備考 |
---|---|---|
介護従事者 |
日中は利用者3人に対し1人 |
無資格・未経験可 |
計画作成担当者 |
ユニットごとに1人 |
認知症介護実践者研修を修了していること |
管理者 |
施設ごとに1人 |
3年以上の認知症介護従事経験があり、 |
グループホームでは、日中は利用者3人に対して1人以上の介護従事者の配置が定められています。ただし、夜間はスタッフの人数が減る点や、無資格・未経験の職員でも勤務が可能な点に注意が必要です。
計画作成担当者はグループホーム内でケアマネジャーのような役割を担っており、入居者一人ひとりに合わせたケアプランを作成します。
管理者は、施設の運営やスタッフの労務管理などを行う責任者です。認知症介護の経験を持ち、かつ研修を修了しているスペシャリストでもあり、スタッフとして入居者のケアを行うこともあります。
医療行為をするのは介護職員
前述のように、グループホームには医師や看護師といった医療従事者の配置義務がありません。施設によっては看護師が在籍しているグループホームもありますが、専門性の高い医療行為に対応している施設は少ない現状があります。
医療従事者が在籍していないグループホームにおいて、入居者の健康管理をメインでサポートしているのは介護職員です。
グループホームで実施される医療行為

入居者の自立支援を目指す施設であるグループホームで実施される医療行為について見てみましょう。
介護職員ができる医療行為
入居者の身体に被害を及ぼすリスクが低い医療行為については、介護職員の実施が認められています。自動血圧測定器を使用した血圧や脈拍回数の測定、体温測定などの基本的なバイタルサインの測定は、介護職員ができる医療行為です。
高血圧の方は、日常的に血圧を測定して血圧手帳に記録し、かかりつけ医に提示する必要があります。介護職員は、入居者の血圧測定や記録する習慣をサポートするために、声掛けや環境調整を行っています。
内服介助も介護職員が担当する医療行為です。認知症の方の多くは定期的に内服薬を処方されていますが、薬を飲んだか忘れてしまうことも少なくありません。薬の飲み忘れや1日に決められた量以上の薬を飲んでしまうことを防ぐために、介護職員がサポートします。
そのほか、保湿剤を塗るなどのスキンケアや簡単な傷の処置、湿布の貼付、出血などのリスクがない方への坐薬の挿入なども介護職員が行うことが認められています。
グループホームでは認知症ケアの一環として「自分でできる部分はやってもらい、できない部分をスタッフがサポートする」という関わりが行われているところが特徴といえるでしょう。
研修を受けた介護職員ができる医療行為
さらに、研修を受けて知識や技術を身につけた介護職員ができる医療行為もあります。医療行為のうち、喀痰吸引(かくたんきゅういん)と経管栄養(けいかんえいよう)については、介護職員のうち研修を修了して「認定特定行為業務従事者」と認められた者が実施できます。
また医師が認めた利用者であることや、安全が確保される体制整備などが必要になります。
喀痰吸引とは、痰を自力で出せない方が窒息や肺炎を起こさないよう、カテーテルを口や鼻から挿入して吸引を行う医療行為です。痰の吸引は、迷走神経反射やそれによる呼吸停止を起こすリスクがあるため、研修を受けた介護職員が慎重に行う必要があります。
経管栄養は、胃ろうや腸ろう、もしくは経鼻栄養カテーテルを通じて栄養剤を胃や腸に直接注入する医療行為です。栄養剤を投与するスピードが速すぎると、消化不良や嘔吐につながり、下痢や誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こす危険があります。栄養剤の注入速度を調整する必要があるため、研修を受けた介護職員でなければ実施できません。
看護師ができる医療行為
人工肛門や人工膀胱ろうを増設している方のパウチ交換や、糖尿病の治療法の1つであるインスリン注射、心不全や慢性呼吸不全の方が行う在宅酸素療法(HOT)の管理、点滴静脈注射など、看護師ができる医療行為は多岐にわたります。
看護師は医療的な知識を持つ専門職として、医師または歯科医師の指示のもと医療行為を実施しています。
比較的介護度が低いグループホームの利用者に床ずれが発症することはまれですが、風邪などで体調を崩して寝ている時間が増えるとスキントラブルが起こる可能性があります。床ずれのケアは、専門知識をもって傷の深さや細菌に感染しているかなどを判断し、医師の指示を受けて適切な薬剤や皮膚保護剤を選択する必要があるため、介護職員の実施は認められていない医療行為です。
また感染予防対策なども看護師の重要な役割になっています。
グループホームでは医療ケアを必要とする場合にどのような対応ができるのか?

医療従事者の配置が義務づけられていないグループホームの医療ケアの対応範囲は、施設によってさまざまです。介護職員ができる医療ケアについても対応している施設がある一方で、ほとんど対応していない施設もあります。
医療行為が必要な方や今後必要となる可能性の高い方は、入居を検討している段階からその処置が必要な時間帯や実施を認められている職種を確認しておくことが大切です。また、グループホームは日中と比較すると夜間は人員が手薄になるため、夜間の医療ケアの対応状況も合わせて確認しておくとよいでしょう。
夜間の人手が少ない時間帯に見守りシステムという病院のナースコールのようなものを設置している施設や、看護師と緊急時の対応を相談できるよう連携体制を取っている施設もあります。しかし、夜間は研修を受けた介護職員や看護師が常駐している可能性が低く、日常的に夜間の医療行為が必要な方はグループホームへの入居は適さない場合がほとんどです。
また、入居者の体調が悪化した場合の対応についても確認する必要があるでしょう。一般的に、認知症の方は自分の体調の変化に気づきにくいとされています。本人が気づかないまま症状が進行してしまい、急激な病状悪化が起こって初めてスタッフが気づくことも珍しくありません。
このような緊急時には、救急搬送なのか、提携している医療機関への受診となるのかは、施設によって方針が異なります。
高度な医療行為が必要な場合グループホームでの入居を続けられるか?

近年、グループホームに訪問看護ステーションを併設した施設や、看護師による医療行為への対応を売りとしたグループホームの設置も進んでいます。しかし、そもそも認知症の方の集団生活の場であるグループホームには、専門性の高い医療行為の実施を想定して人員を配置している施設は多くありません。
そのため、経管栄養や痰の吸引などの医療行為には対応していない施設がほとんどで、体調の変化によって高度な医療行為が必要になった方は退去を求められる場合があります。
入居の検討段階から施設の人員体制や医療機関との連携状況についての情報収集を行い、退去を求められる処置はあるかについて確認しておきましょう。
グループホームで看取りまで対応できる場合もある

人生の最終段階において、最期まで病院で最大限の治療やケアを受けたい方がいる一方で、最期は住み慣れた環境で穏やかに過ごしたいと考え、延命治療を望まない方もいます。近ごろは、このような「尊厳死」を希望する方も多く、看取り対応を行うグループホームも増加傾向にあります。
看取り対応を行うグループホームは「看取り介護加算」として、通常の介護報酬に料金を上乗せして入居者から徴収することが認められています。看取り介護加算の算定条件として、看護職員と24時間連絡が取れる体制の確保や、本人や家族などに看取り指針を説明して同意を得ていること、看取りについて職員研修を実施していること、看取りの際に利用する静養室の設置などが定められています。
尊厳死を考えている方は、施設の検討時に看取りまで対応できるグループホームの情報を集めておくと安心です。施設のホームページやパンフレットに「看取り加算」についての記載があるか、看護師の配置状況や協力医療機関との連携はどうなっているのかなどについて確認してみましょう。
医療ケアが充実している施設の種類をご紹介します

グループホームは認知症を持つ高齢者の生活の場としての役割がメインで、高度な医療行為が必要な方には退去を勧告する場合があることは前述のとおりです。
専門性の高い医療行為が必要になっても住み慣れた施設での生活を続けたい方や、施設での看取りを希望する方は、医療体制が充実している介護施設を選ぶとよいでしょう。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)は、60歳以上の方を対象とした安否確認と生活相談サービスがついたバリアフリー対応の賃貸住宅です。
一般型と介護型に分けられており、介護型(特定施設)に指定されている施設では医療依存度の高い利用者を受け入れて看取り対応をしているところもあります。
介護型のサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)では常勤の看護師が配置されているため、グループホームよりも医療体制は整っているといえます。しかし、施設によって対応可能な医療行為は異なるため、事前の確認が必要です。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームとは、介護保険制度において要介護1以上の認定を受けている方を対象とした民間の入居施設です。
介護付き有料老人ホームでは、看護師を入居者30人に対して1人以上、50人増すごとに1人以上追加で配置するよう定められています。また、協力医療機関との提携も義務づけられているため、グループホームと比較すると対応可能な医療行為が充実している傾向にあります。
グループホームの医療体制に不安を覚える方は、介護付き有料老人ホームを検討してもよいでしょう。
どの老人ホーム・介護施設にしたら良いかお悩みの方へ
満足のいく老人ホームの生活は、どの施設に入居するかで大きく異なることがあります。
安心介護紹介センターの入居相談員は、高齢者の住まいにまつわる資格を有しており、多くの老人ホームの中から、ご本人やご家族のご希望に沿ったぴったりな施設を選定してご紹介させていただきます。
施設のご紹介から、見学、ご入居まで無料でサポートさせていただいておりますので、ぜひご利用ください。