親が突然入院して不安…。入院にかかる費用や費用軽減の方法・入院中に確認すべきことを解説
- 2024年10月07日 公開
- 2024年12月23日 更新

高齢の親が急な病気やケガで入院してしまい、退院後に介護が必要となるケースは珍しくありません。入院費用や退院後の生活について不安に思う方もいるでしょう。この記事では、入院費用や医療費を抑えるための制度、退院後に利用できる介護サービスについて解説します。
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目次
親が入院したら、どんなことでいくらお金が必要?
親が病気やケガによって入院した際に発生する費用は、以下のとおりです。

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治療費
病気やケガの治療にかかる費用。検査・投薬・点滴などの費用のほか、手術や術後のリハビリの費用も含まれます。
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入院基本料
1日あたりの入院に関する基本料金。診察や看護にかかる費用のほか、室料・寝具などの費用も含まれます。
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食事代
入院中に提供される1日分の食事にかかる費用。1食あたり490円が標準負担額として一律の金額が定められています。
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差額ベッド代
4人部屋以上の特別な病室を利用した際の費用。病室の区分によって金額が違います。
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先進医療費
厚生労働省が認めた高度な医療技術による治療・手術を受けた際に発生する費用。医療保険の対象外になる場合が多いため、費用が高額になりがちです。
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交通費
家族がお見舞いや付き添いなどで、病院を行き来した際の交通費です。
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日用品などの購入費
入院生活に必要な衣類・消耗品などにかかる費用です。最近ではアメニティセットを販売している業者と契約している病院も増えてきています。
そして、生命保険文化センターの調査によると、治療費・食事代・差額ベッド代・交通費・日用品の購入費を含めた自己負担費用の平均額を、以下のように発表しています。
- 自己負担費用の平均額 198,000円
- 1日あたりの自己負担費用の平均額 20,700円
また、入院期間が長くなるほど費用が高い傾向であるため、費用面の不安を感じる方も少なくありません。
親が入院したときの入院費を抑える方法

病気やケガが発生し、入院できたことで安心する一方、入院費がいくらかかるのか不安を感じる方もいるのではないでしょうか。
本章では、親が入院したときの入院費を抑える方法をご紹介します。
高額療養費制度を申請する
高額療養費制度を申請することにより、入院費を抑えることができます。
高額療養費制度とは、1ヶ月間に発生した医療費が負担限度額を超えた場合、超えた分の費用を公的医療保険から支給する制度です。
高額療養費制度における負担限度額は以下の2つによって区分が決められており、金額に違いがあります。
- 年齢(70歳未満・70歳以上)
- 所得
また、差額ベッド代・食事代・先進医療費は高額寮費制度の適用対象とならないため、申請する際は注意が必要です。
限度額適用認定証を申請する
限度額適用認定証の申請も入院費を抑える方法の一つです。
医療費の支払いが高額になる場合、交付された限度額適用認定証を病院の窓口に提示することによって、負担限度額を超えた分の費用を公的医療保険から支給する制度です。
限度額適用認定証における負担限度額は、高額療養費制度と同様の区分が設定されており、年齢・所得によって違いがあります。
医療保険を請求する
親が入院した場合、加入する医療保険の給付金を請求することによって、入院費を抑えることができます。
医療保険の給付金を請求する際、以下の流れを踏まえて行います。
- 加入している医療保険の会社に連絡する
- 請求に必要な書類を提出する
- 給付金支払いの可否の確認
- 給付金を受け取る
入院途中でも給付金を請求することができますが、請求をかけた時点での入院期間分の給付金しか請求できません。
残りの給付金は退院後に請求することになりますが、その都度請求書・診断書などの必要書類を提出する手間が発生します。
また、医療保険会社は連絡がないと入院した事実を把握することができないため、入院が決まり次第、速やかに医療保険会社へ相談しましょう。
医療費控除を受ける
医療費控除を受けると所得税を軽減できるため、結果的に入院費を抑えることにつながります。
医療費控除とは、1年間にかかった医療費が一定の金額を超えた場合、所得税を軽減できる控除の一つです。
以下の計算式を用いることで、医療費控除の金額を把握することが可能です。
(実際に支払った医療費の金額)ー(保険金などで補填される額)ー 100,000円
また、医療費控除の対象となる具体的な医療費は、以下のとおりです。
- 病院での診療費・治療費
- 入院費用(部屋代・食事代)
- 医師の処方箋で購入した医薬品の費用
- 通院に必要な交通費
- 治療に必要な義足・松葉杖など、医療器具の購入費用
- 治療に必要なマッサージ・リハビリの費用
- 介護保険サービスを利用した際の費用
- ドラッグストアで販売されているかぜ薬や湿布
医療費控除は確定申告を行うと受けることができます。
確定申告書・医療費控除の明細書などの必要書類を準備し、管轄の税務署へ提出しましょう。
高額療養費貸付制度を利用する
高額療養費貸付制度とは、高額療養費制度の支給決定までの間に発生する医療費を貸付できる制度です。
高額療養費の支給決定までには、病院から提出された診療報酬明細書の審査が必要であるため、約3ヶ月の期間がかかります。
その間、高額療養費貸付制度を利用すると、高額療養費制度の支給見込み額の8割相当の金額を無利子で借りることができます。
一時的ではありますが、入院費を抑えるという観点から見ても、高額療養費制度を申請した方にとって一つの選択肢となるでしょう。
しかし、入院時に限度額適用認定証を提示して支払った場合は、高額療養費貸付制度を利用することができません。
また、入院中の食事代や差額ベッド代は対象外となるため、注意が必要です。
親が入院したときに確認すべきこと

こちらでは、親が入院したときに確認すべきことを詳しく解説します。
持病の状態や服用中の薬の確認
親が入院したとき、持病の状態や服用中の薬を確認することが必要です。
持病の状態や服用中の薬を医師に伝えることで、治療内容を決める際に役立つからです。
しかし、親が意識のない状態で入院した場合、本人からは確認できません。
そのため、日頃から持病の状態・服用している薬の内容をノートやお薬手帳に記録し、家族も持ち出せるようにあらかじめ準備することがおすすめです。
またマイナ保険証を利用している場合には、薬情報が記録されていますので活用できます。
医療や介護に関する希望を確認し、整理する
万が一に備えて、日頃から医療や介護に関する希望を確認し、整理することも必要です。
医療や介護を受ける際、親の希望を反映することができるからです。
例えば、入院直後は手続きや準備などで忙しくなり、親の希望を確認するまで手が回らないことがありがちです。
また、介護が必要な状態で退院する場合、どこで生活するのか・誰が介護を行うのか・介護費用の支払いなどを考えなければなりません。
そのため、日頃から医療や介護に関する希望を話し合い、整理した上で親の意見を反映できるようにしましょう。
資産や医療保険・生命保険の状況を確認する
入院するとさまざまな費用が発生し、ある程度まとまった資金が必要です。
そのため、親の資産や医療保険・生命保険の状況をあらかじめ確認し、親自身が医療費を支払えるように準備することも必要です。
親の資産や医療保険・生命保険の状況を確認する際、以下のポイントに注目しながら確認しましょう。
- 銀行の通帳
- 加入している医療保険・生命保険
- 銀行口座や印鑑の保管場所
- キャッシュカードの暗証番号
- 預金口座
- 不動産などの資産
- 月々の返済や支払い
このようなポイントを確認した上で、あらかじめ入院や介護が必要になった際の費用を親自身が支払えるように話し合いましょう。
親の入院の手続きに必要なもの
親が入院となった際、まず行わなければならないことは入院の手続きです。
入院の手続きで必要なものは、以下のとおりです。
- 診察券
- 健康保険証
- 入院申込書
- 誓約書
- 親の通帳
- 入院時預かり金
- お薬手帳
- 保証人確認書
- 印鑑
- 限度額適用認定証
- 介護保険被保険者証
このように、入院の手続きにはさまざまなものが必要ですが、病院によって違いがあります。
また、入院の経緯によっては、必要なものがどこにあるのか分からないことも考えられるため、上記の必要なものを参考に、事前に親から確認しましょう。
親が入院している間にやらなければいけないこと

親が入院している間に、退院後の生活に向けてさまざまな準備をやらなければなりません。
本章では、親が入院している間にやらなければいけないことを3つご紹介します。
介護認定の区分変更や取得を検討する
退院後の生活に向けて、入院中に介護認定の区分変更や取得を検討しましょう。
入院によって親の心身状態が変化し介護が必要な状態になった場合、退院後の生活を見据えて、以下の申請を検討する必要があります。
- 要介護認定を受けている場合:区分変更申請を検討する
- 要介護認定を受けていない場合:要介護認定申請を検討する
入院中に区分変更申請や要介護認定申請を希望する場合、病院の医療ソーシャルワーカーや医師に相談することができます。
しかし、以下の3つに当てはまる場合、申請をすることができません。
- 入院した直後
- 手術した直後
- 病気やケガの状態が不安定で、短期間で大きく変わるリスクがある
また、要介護認定が決まるまで約30日かかるため、退院の1ヶ月前に申請するとちょうどいいでしょう。
勤務先の介護休暇などの制度の確認
親の入院が長期になる場合や介護が必要となった場合、勤務先の介護休暇などの制度を確認しましょう。
介護休暇とは家族が要介護状態となった際、介護を行うために利用できる休暇制度です。
介護休暇を利用できる対象者は、家族を介護する男女の労働者と定められており、対象となる家族も以下のように定められています。
- 配偶者
- 父母
- 配偶者の父母
- 子ども
- 兄弟・姉妹
- 孫
また、育児・介護休業法では、以下のような介護に役立つ制度も利用ができるとされています。
- 介護休暇
- 介護休業
- 勤務時間の短縮
企業の中には、独自で介護休業を定めている場合があるため、職場に確認して計画的に介護休業を利用しましょう。
退院後の生活についてを決めて準備する
親の病気やケガの状態によっては介護が必要となり、生活の場を自宅か介護施設か検討して、退院後の生活に向けた準備を行うことが必要です。
例えば、自宅での生活を選ぶ場合、以下の介護サービスを利用できます。
- 訪問介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 通所介護
- 通所リハビリテーション
- 福祉用具貸与・購入
- 介護保険住宅改修
上記の介護サービスの中から、希望する介護サービスをあらかじめ決めておきましょう。
そして介護施設への入居を選ぶ場合、体の状態や今後の暮らし方に合う種類の施設を探します。
老人ホーム・介護施設の種類は以下の通りです。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- グループホーム
- 介護付き有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- 住宅型有料老人ホーム
- ケアハウス
- 介護医療院
しかし、介護施設ごとに他の入居者の状態や雰囲気・料金などの違いがあるため、候補となる施設を探し出したあとは、すぐに見学に行きましょう。
さらに、希望に合った介護施設があったとしても、満室ですぐに入居できない可能性もあるため、入居までの期間は短期入所生活介護(ショートステイ)の利用がおすすめです。
もしショートステイを利用する場合には、介護保険限度額を超えない日数が対象になります。超えてしまった場合には自己負担が発生するため注意が必要です。
こちらの記事では老人ホーム・介護施設の種類を詳しく説明しています。
> 老人ホームの種類と選び方のポイントとは?
親が入院してから退院するまでの期間

厚生労働省「令和2年度 患者調査」によると、高齢者世代の親が入院してから退院するまでの平均在院期間は、以下のとおりです。
- 65歳以上:40.3日
- 70歳以上:41.7日
- 75歳以上:45.0日
また、疾患別で見ると、年齢が上がると同時に、在院期間が長期化する傾向となっています。
高齢になると重症化リスクが高くなり、長期間の療養が必要となっていることが、以下の表から読み取ることができます。
【疾患別】入院してから退院するまでの平均在院期間(単位:日)
主な傷病 |
65歳以上 |
70歳以上 |
75歳以上 |
---|---|---|---|
全体 |
40.3 |
41.7 |
45.0 |
結核 |
66.8 |
66.0 |
67.7 |
ウィルス性肝炎 |
20.5 |
22.7 |
27.6 |
胃の悪性新生物 |
22.9 |
23.1 |
26.4 |
結腸及び直腸の悪性新生物 |
17.6 |
18.5 |
20.4 |
肝及び肝内胆管の悪性新生物 |
21.5 |
22.8 |
24.6 |
気管、気管支及び肺の悪性新生物 |
22.3 |
24.3 |
26.6 |
糖尿病 |
40.7 |
44.8 |
51.1 |
脂質異常症 |
21.7 |
22.8 |
24.5 |
血管性及び詳細不明の認知症 |
313.7 |
312.1 |
312.3 |
統合失調症等 |
1,147.7 |
1,255.1 |
1397.2 |
気分(感情)障害 |
193.5 |
205.0 |
208.4 |
アルツハイマー病 |
274.6 |
275.7 |
270.8 |
高血圧性疾患 |
53.4 |
55.1 |
55.7 |
心疾患 |
27.6 |
29.7 |
33.7 |
脳血管疾患 |
83.6 |
86.9 |
93.2 |
肺炎 |
41.0 |
42.1 |
43.1 |
慢性閉塞性肺疾患 |
55.1 |
57.0 |
60.3 |
う蝕 |
2.4 |
2.4 |
2.6 |
歯肉炎及び歯周疾患 |
3.7 |
3.8 |
4.0 |
肝疾患 |
28.6 |
30.6 |
35.0 |
骨折 |
46.2 |
47.7 |
50.3 |
親が入院したときに相談できる窓口

親の入院や退院後の生活に不安がある場合、さまざま専門家や窓口に相談することで解決につながります。
こちらでは、親が入院したときに相談できる窓口を3つご紹介します。
医師・看護師
親の入院について不安がある場合、医師・看護師に相談することがおすすめです。
医師は患者の状態から治療内容を判断し、看護師などの医療従事者と連携しながら治療を行います。
また、看護師は医師の指示をもとに、診療の補助・日常生活動作の介助など、入院生活におけるサポートを行います。
このように、医師・看護師は親の状態を把握しながら治療を行っているため、親の病気やケガの状態・予後について不安を感じる方は、医師・看護師に相談しましょう。
病院の医療相談室
親の入院生活や退院後の生活について不安がある場合、病院の医療相談室に相談することがおすすめです。
病院の医療相談室とは、患者や家族が抱える悩み・不安に関する相談に応じ、解決までのサポートを行う部署です。
医療相談室には医療・社会福祉などの知識や制度に精通した医療ソーシャルワーカーが所属しており、以下のような相談に応じることができます。
- 退院後の行き先に関する相談
- 退院後の在宅生活に関する相談
- 医療・介護に関する申請手続きの相談
- 入院費などの医療費に関する相談
その後、相談を受けた医療ソーシャルワーカーは必要に応じて、病院内や外部の医療・介護に関する関係機関や自治体等と連携し、解決策の提案・調整などを行います。
親の入院生活に関わる悩みや退院後の生活について不安がある方は、病院の医療相談室へ相談しましょう。
地域包括支援センター
退院後の親の介護について相談したい場合、地域包括支援センターも相談先の一つです。
地域包括支援センターは、市町村に住む高齢者の医療・保健・介護などの相談窓口となる機関です。
保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員などの専門職が配置されており、高齢者・家族からの介護に関する相談を含め、以下の業務を担っています。
- 介護予防ケアマネジメント
- 総合相談
- 権利擁護
- 包括的・継続的マネジメント
また、相談内容に応じて、介護保険など各種制度の申請手続きや退院後の介護サービス利用に向けた調整も行うため、退院後の親の介護について不安がある方は、地域包括支援センターへ相談しましょう。
どの老人ホーム・介護施設にしたら良いかお悩みの方へ
満足のいく老人ホームの生活は、どの施設に入居するかで大きく異なることがあります。
安心介護紹介センターの入居相談員は、高齢者の住まいにまつわる資格を有しており、多くの老人ホームの中から、ご本人やご家族のご希望に沿ったぴったりな施設を選定してご紹介させていただきます。
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