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遠距離介護とは?メリットとデメリット、成功のポイントや遠距離介護事情も解説

  • 2024年10月07日 公開
  • 2025年03月10日 更新

遠距離介護とは、離れた場所に住む親が自宅で自立した生活を送れるように支援することです。しかし遠距離介護の費用感やリスクなどがよく分からずに不安を抱えている方も多いでしょう。

この記事では遠距離介護のメリットや事前に確認すべきことなどについて解説します。

遠距離介護とは?

別居している両親がケガや病気などをきっかけとして介護が必要となった場合に、親が自宅で自立した生活を送れるように遠方から支援することを遠距離介護といいます。

おむつ交換や食事介助などの直接的な介護ではなく、介護サービスの調整や判断を行うことでサポートする形が一般的です。

介護が必要な親が自宅での生活を望む場合、近隣に子どもが住んでいると介護サービスの手続きや調整がスムーズに進みますが、離れた場所に住んでいるとサポートをするのは難しいでしょう。

しかし、親が「住み慣れた家を離れたくない」と希望することは珍しくはありません。また、介護をする家族も仕事や家庭の都合で転居が難しいこともあるでしょう。

家庭の事情によっては、離れた場所に住みながら必要な支援を行う「遠距離介護」という体制を取ることになります。

なぜ遠距離介護を選択するのか

遠距離介護を選択する理由には、さまざまな背景があります。
代表的な理由として、親が住み慣れた環境を離れたくないという希望を持っていることが挙げられます。
特に高齢者は長年住み慣れた家や地域に愛着があり、新しい環境への適応能力が乏しくなってくるため、精神的なストレスを感じやすく、同じ場所に住み続けることを望む傾向があります。

また、介護者側の事情として、仕事や家庭の生活基盤が現在の居住地にあるため、親の住む地域に転居することが難しい場合が多いです。

特に共働き世帯や子育て中の家庭では、生活を大幅に変えることが現実的ではありません。

このように、要介護者と介護者双方の事情が重なり、結果的に遠距離介護という形を取ることになる場合があります。

遠距離介護は物理的な距離を隔てて支援を行うため、十分な計画と効率的な支援体制が必要です。

遠距離介護をする人たちの状況

遠距離介護をする人たちの状況について、厚生労働省の国民生活基礎調査のデータを基に説明します。

「要介護者等」からみた「主な介護者」の構成割合

2001

2004

2007

2010

2013

2016

2019

2022

同居

71.1%

66.1%

60.0%

64.1%

61.6%

58.7%

54.4%

45.9%

別居

別居の家族

7.5%

8.7%

10.7%

9.8%

9.6%

12.2%

13.6%

11.8%

事業者

9.3%

13.6%

12.0%

13.3%

14.8%

13.0%

12.1%

15.7%

その他・不詳

12.1%

11.6%

17.3%

12.8%

14.0%

16.1%

19.9%

26.6%

参照:厚労省「国民生活基礎調査」


調査によると、要介護者の主な介護者として同居している家族の割合は、2001年には71.1%でしたが、2022年には45.9%まで減少しています。
一方で、事業者(介護施設など)による介護の割合は2001年が9.3%で2022年には15.7%となっており、増加傾向にあります。
別居の家族の割合自体は大きな増加とは言えませんが、長期的な視点で見ると徐々に増加していることがわかります。
ライフスタイルや家族の形が多様化するとともに、介護体制も多様化していることがわかります。

また、遠距離介護を行う際の帰省頻度は、要介護者の状態や介護者の生活状況に大きく依存します。
移動にかかる時間や費用がネックになる場合も多く、家族間で十分に話し合い、現実的な頻度を設定することが大切です。

遠距離介護のメリットとデメリットは?

遠距離介護のメリットとデメリットについて、詳しく紹介します。

遠距離介護のメリット

介護者の精神的、身体的ストレスが軽減される

遠距離介護では、同居の介護に比べて、介護者が日常的な介護に追われる負担が小さくなります。
同居の介護では、24時間介護を意識せざるを得ないために緊張状態が続き、介護者がストレスを溜めやすい傾向があります。
一方で、遠距離介護では、必要な時だけ親の元へ訪れたり、介護サービスを利用したりするため、介護者が自分の時間を確保しやすくなります。
物理的な距離があることで、過剰な責任感やプレッシャーを抱え込まずに済みます。

適度な距離感が介護者の心身の健康を保つ助けとなるため、遠距離介護には介護者の精神的・身体的負担を軽減する効果が期待されます。

お互いに居住地域を変えなくてよい

介護のために居住地域を変更すると、親子のどちらかが生活環境を大きく変える必要があります。

親が子の近くに引っ越して生活環境が変化すると、大きなストレスがかかります。

友人や仲間と離れることで出かける機会が減少する方も珍しくありません。

「道に迷うか不安」「バスや電車など公共交通機関の利用に慣れていない」ことを理由に引きこもりがちになってしまう方もいます。

親の居住地域を変えると、活動量の低下を招いて介護度を上げてしまうリスクがあるのです。

遠距離介護ではお互いに居住地域を変える必要がないため、このようなリスクは回避できるでしょう。

仕事を続けることができる

子どもが介護のために引っ越しをすると、仕事を退職しなければならないことがあります。

いわゆる「介護離職」は、現代の社会問題にもなっています。介護をしながら転居先で希望する条件の就職先を見つけることは簡単ではないからです。

介護が必要な親を持つ働き盛りの世代の方は、離職によってキャリアアップが叶わなくなる場合もあります。

遠距離介護を選択することによって介護のために退職せずに済み、仕事を続けることができます。

様々な介護サービスを活用できる

介護保険のホームヘルプサービスには「身体介護」と「生活援助」の2種類があります。家族と同居している場合、生活援助は利用できません。

しかし、親だけの世帯の方や一人暮らしの方は、おむつ交換や食事介助などの身体介護だけでなく、ゴミ出しや掃除、買い物、洗濯といった生活援助のサービスを介護保険の制度内で利用可能です。

特別養護老人ホームに入居しやすくなる

公的な入居施設である特別養護老人ホームは、費用が割安で人気の施設です。入居待ちをしている方が多く、申し込みをしても何年も待たなければならないこともあります。

しかし、親だけの単身世帯の場合は特別養護老人ホームの入居優先順位が高くなります。遠距離介護のほうが特別養護老人ホームに入居しやすい点は大きなメリットといえるでしょう。

遠距離介護のデメリット

介護にかかる費用が高い

遠距離である分、親に会いに行く際に交通費がかかります。

近所であれば簡単な買い物やゴミ捨ては子どもが行えますが、生活援助を介護サービスに依頼する分、介護サービスにかかる費用も高くなってしまうでしょう。

罪悪感を抱いてしまう

遠距離介護に対し、罪悪感を抱いている方は少なくないようです。

「親の介護を他人に任せるなんてと周囲から思われているのではないか」と引け目を感じてしまう方もいます。

緊急時の対応ができない

高齢者が自宅で生活していると、「自宅で転倒して骨折してしまった」「急に体調が悪くなった」などのトラブルが起こる可能性があります。

しかし遠距離介護では、親に何かしらのトラブルがあったとしても、すぐに駆けつけることが難しい点がデメリットです。

遠距離介護にかかる費用はどれくらい?

遠距離介護を行う際に最も気になるのが、かかる費用です。
交通費や介護サービスの利用料など、同居介護に比べて割高になる傾向があります。
実際にどの程度の負担が生じるのか、同居の介護との比較も含めて具体的に解説します。

交通費

遠距離介護において最も負担が大きいのが交通費です。
親の住む地域が遠方の場合、飛行機や新幹線を利用する必要があり、往復の費用が高額になることがあります。

遠距離介護の交通費シミュレーション

一例として、東京から九州までの往復の航空券代は、1回あたり約2~5万円程度必要です。
これが年数回の帰省となると、年間で10万円以上の出費になる場合もあります。

また、車で移動する場合にはガソリン代や高速道路の通行料金がかかります。
例えば、片道200kmを月に2回移動する場合、ガソリン代と高速料金で毎月約1万円前後が必要です。

介護が必要な親が入院した場合には頻繁に帰省することが必要となり、交通費がさらにかさむケースがあります。

遠距離介護の交通費負担を軽減する方法

交通費の負担を軽減する方法として、以下の方法があります。

  • 航空会社の介護割引を活用する
    一部の航空会社では介護帰省を対象にした割引料金が設定されています
  • 格安航空会社を利用する
  • JRの会員制サービスなどを利用して割引を受ける
  • 帰省の頻度を少なく、用事はまとめて済ませる

住宅改修費

遠距離介護では、親が安全に暮らせる環境を整えるため、住宅改修が必要となる場合があります。具体的には、以下のような改修が一般的です。

  • 手すりの設置:廊下やトイレ、浴室に設置することで転倒を防止します。
    費用は1か所あたり1~2万円程度。
  • 段差の解消:玄関や廊下などの段差を小さくしたり平坦にする工事が必要になる場合があります。
    改修費用は1か所で数万円程度が目安です。
  • 滑りにくい床材への変更:浴室の床を滑りにくい素材に変更します。
    費用は10万円程度かかる場合があります。

住宅改修にはまとまった費用が必要ですが、介護保険制度を利用することで補助が受けられます。
住宅改修費用の限度額20万円までが支給対象となり、そのうちの1~3割が自己負担となります。

打ち合わせに同席できない場合には、信頼できる業者やケアマネージャーと事前に打ち合わせを行い、適切なプランを立てることが大切です。
また、改修内容によっては介護保険でカバーされない部分があるため、何を優先するべきかを決め、予算を明確に計画することが重要です。

環境整備費・通信費

遠距離介護では、親の生活を見守るための環境整備が必要です。
見守り家電やセンサー付きカメラの設置費用は、製品によって異なります。
簡単な見守り用カメラであれば数千円台で購入できますが、高額なものでは初期費用で5~10万円程度になる場合もあります。
例えば、ホームセキュリティの駆けつけサービスなどを契約すると追加料金も大きくなります。
さらに、これらを利用するためのインターネット回線や通信費が毎月数千円から1万円程度かかる場合があります。

介護者が親とこまめに連絡を取るための電話代も増加することがあります。
こうした費用は、長期的に見積もるとかなりの金額となります。
これらの環境整備や通信費などを誰が負担するのかも十分に打ち合わせておくことが必要です。

在宅介護にかかる費用とどのくらい差がある?

遠距離介護の費用を理解する上で、まず在宅介護の一般的なコストを把握することが必要です。
生命保険文化センターの令和3年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、在宅介護の月額平均費用は約8万3,000円です。この中には以下のような項目が含まれます。

  • 介護サービス費用:ホームヘルパーやデイサービスの利用料
  • 食費:親の食事にかかる費用
  • 医療費:薬代や通院費用
  • 生活雑費:おむつ代など日常的な介護用品

一方、遠距離介護では、これに加えて既に解説したように交通費・通信費や介護サービス費用の増加分などがコストとして加わります。

さらに、親が緊急入院したケースなどでは、予想外の出費が大きくなることがあります。
遠距離介護による追加費用は、在宅介護と比較して経済的に大きな負担となります。
在宅介護・遠距離介護にかかわらず、予想外の出費が発生する可能性はありますが、遠距離介護の場合は特に備えておく必要があるでしょう。

遠距離介護を成功させるためのポイント

遠距離介護を始める際には不安を感じることも多いです。

特に、緊急時の対応や日常的な見守りが難しいため、計画的な対策が必要です。
ここでは、遠距離介護を成功させるためのポイントを具体的に解説します。

親とコミュニケーションをこまめに取る

遠距離介護では、親とのコミュニケーションの機会が限られます。
そのため、オンラインで話せる環境を整えておくことが重要です。

ビデオ通話は、単なる声だけの会話よりも、親の表情や顔色、さらには家の中の状況を確認できる点が大きなメリットです。
例えば、部屋が片付いているか、親の表情に疲労感が見られるかなど、細かな変化に気づくことができます。

オンライン環境の整備には、親が利用しやすいタブレットやスマートフォンを用意するのが効果的です。
また、機材の操作方法を親に丁寧に教え、簡単に利用できるように調整することで、スムーズに利用できるようになります。
慣れるまで時間がかかる場合もありますが、結果的に介護負担の軽減や親との信頼関係の構築につながるでしょう。

ケアマネージャーとこまめに連絡を取る

遠距離介護では、現地で親の状況を的確に把握することが難しいため、ケアマネージャーとの密な連携が欠かせません。
ケアマネージャーは、ケアプランの作成やサービス利用の調整を担う重要な存在であり、親の生活状況を把握し、支援体制を構築する専門職です。

定期的な連絡を通じて、親の状態の変化や新たに必要な支援について相談しましょう。
また、親の生活や健康状態に応じて介護サービスを見直すタイミングをアドバイスしてもらうことも重要です。
遠距離介護においては、ケアマネージャーが「現地の目」として頼りになる存在となります。

近所の人との関係性づくり

親が住む地域の近所の人々との関係性を築いておくことは、遠距離介護の成功に大きく役立ちます。
特に、緊急時や日常的な見守りに協力してもらえる可能性が高まります。

例えば、近所の友人や民生委員、自治会の人々に親の状況を伝え、必要であれば連絡を取り合える体制を整えることが効果的です。
古くから「遠くの親戚より近くの他人」という言葉があるように、近隣の方は遠距離介護の大きな助けになる存在です。
近所の方々が親の変化に気づき、必要に応じて子どもに連絡をくれるケースも多いため、信頼関係の構築を意識しましょう。

かかりつけ医に相談する

離れて暮らす親の健康状態を確認するためには、かかりつけ医との連携が不可欠です。
特に、大きな持病がある場合や体調の変動が大きい場合、定期的な診察結果について医師からアドバイスを受ける機会を作りましょう。

通院の同行などが難しい場合は、訪問看護のサービスを利用することで、看護師と医師とが連携しながら情報共有できる体制を整えることが可能です。
親の健康状態を把握する専門職として、医師が遠距離介護でも大きな役割を担います。

住環境を整える

転倒による骨折をきっかけに要介護状態になる高齢者の方は少なくありません。自宅で安全・快適に生活するためには、住居のバリアフリー化が必要な場合があるでしょう。

本人の生活スタイルや自宅の状況から転ぶリスクが高いと感じたら、段差の解消や手すりの設置などのリフォームを検討することをおすすめします。

住宅改造などの一時的な費用の平均は74万円という調査結果がありますが、自治体によってリフォームの助成金制度を活用できる場合があります。

また、日ごろから親と関わっているヘルパーやケアマネジャー、訪問看護師に相談することで、本人の生活にあったリフォームができるでしょう。

リフォームを検討する際には、まずケアマネジャーに相談してください。

様々な介護サービスを活用する

要介護状態ではない方でも、介護予防のために様々なサービスを活用することをおすすめします。

一人暮らしの高齢者の方は、食生活が乱れて栄養不足となったり、外出機会が減り筋力が低下したりする「フレイル」状態になりやすいといわれています。フレイルとは、要介護の一歩手前の状態のことです。

調理や買い物をヘルパーに依頼したり、デイサービスを活用してリハビリをしたりすることは、フレイル予防に効果的です。これらのサービスは、介護保険制度で「要支援」の判定を受けている方も利用できます。

一方、介護度が高くなると自宅で利用できる介護サービスの費用が高くなりやすく、訪問介護だけでは十分にケアしきれない場合もあります。遠距離介護で寝たきりの親の支援をするのは難しいといわざるを得ません。

そのような場合はショートステイやお泊りデイサービスなどの短期入所サービスを時折利用して施設での生活に慣れておくと、将来的な施設入居のイメージが湧きやすくなるでしょう。

親の資産でまかなえる介護を計画する

遠距離介護を長期的に成功させるためには、親の資産を踏まえた現実的な介護計画を立てることが重要です。
親の預貯金や年金収入などを踏まえ、介護費用をどのように賄うかを具体的に検討しましょう。

特に、介護サービスの費用や住環境の整備費用は大きな出費になる場合が多いため、早い段階での資金計画が不可欠です。
たとえば、親の資産が老人ホームの入居費用を補うのに十分かどうかを確認しておく必要があります。

家族で費用を分担する場合には、兄弟姉妹間であらかじめ話し合いをしておくことがトラブルを避けるポイントです。
経済的な負担を明確にし、家族全体で不公平感なく協力することで、遠距離介護がよりスムーズに行えるでしょう。

情報収集

遠距離介護を成功させるためには、自治体や民間企業が提供するサービスや支援制度について、情報収集することが重要です。
自治体の制度やサービスでは、民生委員や地域ボランティアによる見守り、緊急時に対応する通報システムなども利用できます。
こうしたサービスは、多くの場合無料、または所得に応じて費用負担を軽減することができます。

一方、民間企業による見守り家電や食事宅配サービスなども、親の生活をサポートする上で大いに役立ちます。

これらの情報は、自治体の窓口や地域包括支援センター、インターネットなどを通じて収集できます。
遠距離介護の不安を感じる場合には、帰省時にケアマネジャーや地域包括支援センターに相談したり、自治体のホームページを確認したりするといいでしょう。

また、介護関連の最新情報を得るために、セミナーやイベントに参加することもおすすめです。
これにより、より効率的な支援を選択できるようになります。

遠距離介護を始めるときに準備すること

遠距離介護を始める際には、親の生活環境や介護の負担をできるだけ軽減するために、事前に準備しておくべきことがいくつかあります。
離れて暮らしながら支援を続けるためには、事前の準備・計画が大切です。

ここでは、遠距離介護をスムーズに進めるために特に確認しておきたいポイントをご紹介します。

介護休暇や介護休業制度を確認する

遠距離介護を始める前に、仕事と介護を両立するための「介護休暇」や「介護休業制度」について確認しておくことが重要です。
これらの制度を事前に理解しておくことで、緊急時や集中的に介護が必要なタイミングに活用できます。

介護休暇は、要介護状態にある家族の世話を行うために、年間5日(対象家族が2人以上の場合は10日)取得できる制度です。
これは法律で定められた労働者の権利であり、1日単位だけでなく、半日や時間単位での取得が可能な場合もあります。
短時間でも利用できるため、緊急時の対応に役立ちます。

介護休業制度は、対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割して取得できる制度です。
この期間中、介護を優先して仕事を一時的に離れることが可能です。
介護休業中には「介護休業給付金」を受け取ることができ、金銭的な負担を軽減する助けとなります。
在宅介護の体制を整えるタイミングや、施設探し、病院退院前後など、計画的にまとまった時間が必要な場合に活用することが効果的です。

これらの制度を利用する際には、事前に勤務先の就業規則を確認し、申請方法や条件を把握しておきましょう。
また、上司や人事担当者と相談しておくことで、いざという時に柔軟な対応を得やすくなります。

親の資産を把握する

介護サービスや介護施設の利用料金は親が支払うことが一般的です。

介護が必要になるタイミングで、資産について把握しておきましょう。預貯金額や年金額、加入している生命保険についてだけでなく、借金の有無についても確認しておくと安心です。

また、高齢者の一人暮らしや高齢夫婦の世帯は、詐欺や押し売りなどの被害に遭うリスクがあります。とくに、認知症を持つ方は注意が必要です。

このようなケースを防ぐためには、日ごろからこまめに連絡を取ることはもちろん、必要に応じて成年後見制度の利用を検討することをおすすめします。

成年後見制度を導入しておくと、認知症で判断ができなくなってしまった方の契約を後から無効にできるため、財産を守りやすくなります。

親の生活の様子を把握する

加齢による睡眠障害から、生活リズムが変化する方は少なくありません。

以前とはまったく違う生活リズムで過ごしている親となかなか電話がつながらず、不安になってしまうというケースはよくあります。

親の生活の様子を把握すると、連絡を取りやすいタイミングが分かるようになります。

また、栄養バランスの偏りや運動不足に気づきやすく、健康的な生活を過ごせるようなアドバイスや介護サービスの調整もできるでしょう。

親の人間関係を確認する

親が住んでいる家の近隣の方や友人は「夜になっても電気がつかない」「外出しなくなった」など、些細なことに気がついてくれることが多く、遠距離介護において心強い存在です。

中には「ゴミ捨てができなくなってきているみたいだから、まとめて出してあげる」など、協力的な人もいます。

異変があったときには連絡してもらえるよう、帰省の際に近隣の方や親が親しくしている方たちに挨拶をしたり、連絡先を交換したりしておくことをおすすめします。

親の意思を確認する

遠距離介護を始める前に、親にどのような生活を希望しているか、寝たきりになった場合にはどこで過ごしたいかを確認しておきましょう。

遠距離介護ではコミュニケーションを取る機会は少ないため、事前にしっかりと話し合っておくことが重要です。

近年は、「もしも手帳」や「エンディングノート」を無料で配布している自治体が増えています。

もしも手帳とは、体調が悪くなったときにどのような医療を希望するかについて、あらかじめ記入しておく手帳です。

エンディングノートは、もしも手帳よりもさらに詳しく、財産や葬儀についても記入する欄があります。

このようなツールを通して親の意思を確認しておくと、体調が急変した際や介護度が変わった際にも、本人の希望に沿った医療や介護が実現しやすくなるでしょう。

家族内の役割分担をしておく

前述のように、遠距離介護は入院などの緊急時に負担が大きくなってしまいます。親の急な体調の変化で帰省することは、精神的にも金銭的にも大きな負担となるためです。

緊急時に備えて、可能な限り家族の中で役割を決めておくと介護疲れのリスクを回避できるでしょう。また、担当のケアマネジャーにも家族の役割について伝えておきましょう。

周囲の人との関係性づくり

遠距離介護を行う上で、親が住む地域で周囲の人々との関係性を築いておくことは非常に重要です。
特に、近隣住民や親しい友人、民生委員などの存在は、親の日常生活を見守る心強い味方になります。

近所の方々が親の日常に気づきやすいのは、「夜に電気がついていない」「ゴミが長期間出されていない」などの小さな変化です。
こうした異変に気付いて連絡をもらえるよう、帰省時に近隣の人たちと挨拶を交わしたり、連絡先を交換しておくと安心です。
また、「何か困ったことがあればお知らせください」と伝えておくことで、気軽に助けを求められる環境を作ることができます。

周囲の人々との関係性を築くことで、遠距離介護を行う家族だけでなく、親自身も安心して生活を送れるようになります。

要介護認定を申請する

遠距離介護のためには、早めに要介護認定を申請しましょう。
要介護認定を受けることで、介護保険サービスを利用し、在宅介護の体制を作ることができます。

親が住む市区町村の役所の窓口や地域包括支援センターで要介護認定を申請します。
申請書の記入後、自治体の職員等が訪問調査を実施します。
この調査と、主治医の意見書を基にした審査を経て、介護度(要支援1~2または要介護1~5)が決定されます。

もしも日常生活に支障がない場合には非該当となる場合もあります。その際には使える介護サービスが限られてきますので、地域包括支援センターや役所の担当者へ相談してみましょう。

認定を受けるまでには1~2カ月程度かかるため、介護が必要になったと感じたら早めに相談することが重要です。

介護保険サービスを活用することで、遠距離介護の負担を軽減し、親が安心して生活を続けられる環境を整えることができます。

親の遠距離介護で活用したいサービス

遠距離介護では、親の日常生活をサポートするために様々なサービスを活用することが重要です。
自治体や民間企業が提供する見守りサービスや、生活の負担を軽減するためのサポートを組み合わせることで、親の安全と安心を確保できます。

見守りサービス

見守りサービスは、一人で暮らす親の安全を守ります。
自治体では、民生委員や公共機関による見守り活動を行っている場合があります。
高齢者向けの配食サービスが、お弁当を手渡しすることで見守りを行う場合もあります。
また、緊急時にボタン一つで通報できる緊急通報システムを設置することで、迅速な対応ができ、一人暮らしの高齢者の安心につながります。

ただ、このような見守りサービスについては、監視されているようで煩わしいと感じる方もいます。
親の性格や生活スタイルに合わせて適切なサービスを選ぶことがポイントです。

見守り家電

最近では、センサー付きの見守り家電も広く利用されています。
たとえば、電気ポットの使用状況や冷蔵庫の開閉状況、トイレの使用頻度を記録するセンサーを取り付けることで、日々の行動パターンを確認することができます。
異常が検知された場合には、スマートフォンに通知が届くため、遠方に住む介護者でも迅速に対応が可能です。

さらに、見守り家電と見守りサービスを組み合わせるサービスなどもあり、より細やかにサポートできます。

遠距離介護の負担が大きい場合は施設入居を検討しよう

遠距離介護の体制を整えても、介護の負担が大きくなり、在宅での生活を続けることが難しくなる場合があります。
認知症の進行や頻回な医療ケアをはじめ、在宅生活が困難になった場合には、施設への入居を検討することも必要です。

限界を感じるその前に、施設について情報収集し、早めに行動できるようにしておきましょう。
代表的な民間施設の形態を紹介します。

費用相場

入居対象者

特徴

介護付き
有料老人ホーム

入居費用:0円~数千万円

月額費用:12~35万円程度

主に要介護1~5で
自宅での生活が困難な方

  • 24時間介護スタッフが常駐している。
  • 食事や排せつ、入浴などの介護サービスが受けられる。
  • 医療面のサポートも充実。

住宅型
有料老人ホーム

入居費用:0円~数千万円

月額費用:12~35万円程度

主に介護認定が軽度で
比較的自立度の高い方

  • 自由度が高く、プライバシーが守られる環境。
  • 介護サービスが必要な場合は外部事業所と契約。
  • 介護度が比較的軽い方が対象。

サービス付き
高齢者向け住宅

入居費用:0円~数千万円

月額費用:5~25万円程度

自立または介護認定が軽度で
比較的自立度の高い方

  • バリアフリー設計の賃貸住宅。
  • 見守りや生活支援が受けられる。
  • 介護サービスが必要な場合は外部事業所と契約。

グループホーム

入居費用:0円~数千万円

月額費用:15~20万円程度

認知症で自宅での生活が
困難な方

  • 少人数制で家庭的な環境。
  • スタッフが24時間サポート
  • 地域密着型でアットホームな雰囲気。

介護付き有料老人ホーム

介護スタッフが24時間常駐しており、食事や入浴、排せつなどの介助が受けられます。
生活全般に介護が必要な方を中心に受け入れており、手厚い介護を受けることができます。

医療面のサポートも充実している点が特徴です。

住宅型有料老人ホーム

比較的自立している高齢者向けで、介護サービスが必要になった場合は外部の事業所と契約し、サービスを受けられる仕組みです。
自由度が高く、生活支援を受けながらもプライバシーも重視されています。

サービス付き高齢者向け住宅

高齢者を対象としたバリアフリー設計の賃貸住宅で、見守りサービスや生活支援が受けられます。

住宅型有料老人ホームと同様、自立した方や軽度者が主な対象で、介護サービスは必要に応じて外部事業所が対応します。

グループホーム

認知症の方を対象とした少人数制の共同生活型施設です。
アットホームな環境で、スタッフのサポートを受けながら共同生活を送る居住形態です。

施設入居を検討する際には、介護度、経済状況、本人の希望などを考慮しながら、適した施設を選ぶことが重要です。

どこの施設も同じ、ということはありません。
複数の施設を見学し、体制やサービス内容を比較した上で選択しましょう。

状況に応じて呼び寄せの検討も

遠距離介護が難しいと感じる場合には、親を現在の住まいから子の居住地の近くに呼び寄せることも一つの選択肢です。
自宅にスペースがあれば、同居するという方法もあります。

ただし、この決断には慎重な検討が必要です。

呼び寄せのメリット・デメリット

メリット

  • 親と子どもの距離が近くなるため、緊急時の対応が迅速に行える。
  • 日常的に親の様子を確認しやすく、安心感が得られる。

デメリット

  • 親が住み慣れた地域を離れることへのストレスが大きい。
  • 新しい環境に適応できない場合、引きこもりや健康状態の悪化につながる可能性がある。

呼び寄せた方がいいケース

遠距離介護を続ける中で、日常生活が難しくなった場合は、呼び寄せを検討する必要があります。
特に、認知症の進行や頻回な転倒など、定期的な訪問では対応しきれない場合は、近くで見守れる環境を整えることが大切です。

ただし、親が地元に強い愛着を持っている場合は、環境の変化がストレスになることもあります。
特に認知症の方は環境の変化に弱いことが多く、混乱やストレスによって急激に認知症が進行することもあります。
無理に引っ越しを進めるのではなく、親の意向や専門職の意見なども含め、慎重に判断することが大切です。

同居ではなく「近居」の選択肢もある

呼び寄せる際には、親と同居するだけでなく「近居」という選択肢もあります。
近居とは、親を子どもの住む地域に引っ越させつつ、別々の住居で生活することを指します。
遠距離介護との対比で「近距離介護」と呼ばれることもあります。

近居であれば、親と子がそれぞれの生活スタイルを維持しながら、必要なときにすぐにサポートできるため、精神的な負担を減らせます。
また、親の住まいとしてサービス付き高齢者向け住宅などを検討すると、より快適な生活が可能になります。

親の希望をよく聞きながら、同居と近居のどちらが最適かを慎重に選びましょう。

どの老人ホーム・介護施設にしたら良いかお悩みの方へ

満足のいく老人ホームの生活は、どの施設に入居するかで大きく異なることがあります。
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