胃ろう(胃瘻)とは?手術にかかる費用やメリットとリスクについてご紹介します!
- 2024年10月07日 公開

胃ろう(胃瘻)とは、嚥下機能が低下して口から食事をとることが難しくなった方を対象とした医療処置です。胃ろうカテーテルを通して、栄養剤を注入します。
この記事では、胃ろう手術にかかる費用やメリット、リスクについて詳しく解説します。
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胃ろう(胃瘻)とは?
胃ろう(胃瘻)とは、飲み込む力が弱くなり、口から十分な栄養をとれなくなった方に対して行われる栄養補給手段のひとつです。
胃ろうを造設するためには、胃に穴をあけて「胃ろうカテーテル」と呼ばれる管を通す手術を行います。管から直接栄養剤を注入することで、口から食事がとれない方でも栄養摂取が可能です。
胃ろうの手術にかかる費用
胃ろうの手術にかかる費用は、入院する病院の規模や日数、造設する胃ろうのタイプによって異なりますが、10万円程度かかることが一般的です。
治療費が高額となった場合には「高額療養費制度」の申請について自治体の窓口で相談してみましょう。
これは、病院や薬局の窓口などで支払ったひと月あたりの金額が、上限額を超えた場合に返金される制度です。高額療養費制度を利用すれば、収入に応じて定められた範囲で治療費の減免が受けられます。
自己負担の限度額は世帯年収や年齢によって異なり、一般的な年金収入がある70歳以上の世帯上限額は5万7,600円です。収入が多い方の負担金額は月9万円程度です。
胃ろうの対象となる人
前述のように、胃ろうの対象となるのは口から十分な栄養を摂取できなくなった方です。具体的には、飲み込む力である嚥下機能が低下しやすくなる進行性の難病を持つ方や、脳血管疾患の方などが当てはまります。
このような特定の疾患がなくても、加齢によって嚥下機能が低下して必要な栄養がとれなくなると、胃ろうの造設について医師から提案されることがあるでしょう。
そのほか、そのほか、上部消化管のがんなど、急性期を脱したあとに回復が期待される症例などにも、一時的に造設されることがあります。
口からの栄養摂取が可能になれば、胃ろうは塞がれてもとの状態にもどります。
胃ろうを受けた人の平均余命
胃ろうを受けた人の平均余命は、およそ3年です。※1
胃ろうは口から食べられない方への医療処置ですが、「治療」としてだけでなく、「延命措置」としての側面もあります。
老衰により嚥下機能が低下している方に胃ろうを造設することで、経口摂取ができなくても生命の維持が可能になるからです。
ただし胃ろうの対象となりやすい高齢者はもともと持病のある方が多く、平均余命はあくまでも参考程度に捉えておくことをおすすめします。
実際に、平均余命とされている3年よりも長く療養される方は少なくありません。
※1 2010年時点での調査より抜粋
胃ろうを受けるメリットは?

胃ろうを受けるメリットとして「栄養を十分に補給できる」「誤嚥性肺炎を予防できる」「目立たない」「食事を楽しめる」「違和感があまりない」などが挙げられます。
それぞれについて、詳しく解説します。
栄養を十分に補給できる
飲み込む力である嚥下機能が低下して食事がとれなくなると、栄養が不足してさらに筋力が衰えてしまいます。筋力が落ちるとますます嚥下機能は下がり、食事が食べられなくなって老衰が進行してしまうでしょう。
胃ろうを造設することで、このように食事を満足にとれなくなった方でも必要な栄養やカロリーを摂取できます。
誤嚥性肺炎を予防できる
嚥下機能が低下すると、うまく飲み込めずに食事や水分が胃ではなく肺に流れ込みやすくなります。そこから肺炎を引き起こす「誤嚥性肺炎」のリスクがあります。
胃ろうを通して直接栄養剤を注入すれば、誤嚥が起こりにくくなり、誤嚥による肺炎予防に有効です。
目立たない
胃ろうは、お腹の上のほうに穴をあけて胃までカテーテルを通します。洋服を着てしまえば、外からチューブは見えません。
鼻から胃までカテーテルを通す経鼻胃管栄養では、顔周りにチューブや固定用テープが目立ちます。胃ろうは経鼻胃管栄養と比較して目立ちにくいことがメリットです。
食事を楽しめる
胃ろうを造設したとしても、口から食べられないわけではありません。
医師や歯科医師、言語聴覚士などの専門家と相談して、その方の嚥下機能に合った形態や量の食事を引き続き楽しむことが可能です。
「必要な栄養は胃ろうから摂取して好きな食べ物だけは口から摂取している方」や、「嚥下機能に合わせてゼリーやプリンなどの飲み込みやすいものを楽しむ方」もいます。
一方で経鼻胃管栄養の場合は鼻から喉を通って胃までカテーテルが入っているため、食事が難しくなってしまいます。
「経管栄養を受けながらも、口からの食事をあきらめたくない」方には、胃ろうが適しているといえるでしょう。
違和感があまりない
胃ろうは、目立ちにくい場所に造設されており、痛みや違和感が少ない特徴があります。そのため、運動やリハビリを行ったり、外出や入浴したりすることにとくに制限はありません。
これまでの生活スタイルを大きく変えずに過ごせる点もメリットのひとつです。
胃ろうのデメリットやリスクは?

胃ろうのメリットについて解説しましたが、デメリットやリスクについても確認しておきましょう。
手術が必要になる
胃ろうの手術は30分程度で終了するため、身体への負担は少ないといわれています。しかしリスクがゼロというわけではありません。
とくに胃ろうが適用される、嚥下機能が低下して体力が落ちている方には胃ろう手術でも身体にダメージを与える可能性があります。
また、認知症で手術の必要性が理解できない方は、不安や恐怖を感じてしまうでしょう。
胃ろう造設のための短期間の入院でも、認知症の方にとっては大きなストレスとなり、せん妄状態となることで、認知症状が悪化してしまうリスクがあります。
そのほか、自分の身体に穴をあけることに抵抗を感じる方には、手術そのものがストレスとなることも考えられます。
定期的なメンテナンスが必要になる
胃ろうは造設手術を受けたら永久に使用できるものではなく、定期的なメンテナンスが必要です。チューブを数カ月に1度のペースで交換する必要があり、交換の際に痛みを感じることもあります。
自宅で胃ろう管理を行っている方は、要介護状態の親を病院に連れていく負担がかかる点がデメリットとなるでしょう。
なお、胃ろうのタイプによって交換の頻度や費用は異なりますが、1回の交換あたり1~2万円の治療費がかかります。胃ろうの管理を行ううえで、金銭的な負担は避けられないでしょう。
細菌性肺炎を引き起こす危険性がある
胃ろうによって誤嚥性肺炎のリスクは低下しますが、その一方で細菌性肺炎を引き起こす危険性があります。これは食事の機会が減り、唾液の分泌量が少なくなることによって起こります。
唾液による自浄作用が低下すると、口の中の常在菌が増えます。この口腔内の常在菌や上気道の分泌物を誤嚥すると、細菌性肺炎となってしまうのです。
細菌性肺炎を予防するためには、こまめな口腔ケアを行う必要があります。
逆流の危険がある
胃ろうの栄養剤は半固形化のものや液状のものが使われますが、液状のものは逆流しやすい点がデメリットです。
胃ろうから栄養剤を注入しているときの姿勢が悪かったり、注入スピードが速すぎたりすると逆流のリスクがあります。
栄養剤の逆流は、嘔吐や誤嚥につながります。嘔吐や誤嚥は窒息や肺炎を引き起こす危険があり、場合によっては命に関わるため注意が必要です。
投与時の体位やスピードを適切に管理することで誤嚥は予防できるため、正しい方法で投与することを日々心掛け、管理を継続することが重要です。
在宅で胃ろうの人を看護できるのか?

在宅で胃ろうを持つ親を介護している方は少なくありません。訪問看護や訪問介護を利用しながら、栄養剤の注入やカテーテルの管理を行っています。
しかし、これらの訪問サービスは時間が限定的であるため、すべての介護を依頼するのは難しいのが現状です。
サービスの利用例をご紹介します。
- 訪問看護に昼の栄養剤注入を依頼する場合
訪問看護師に口腔ケアを行ってもらい、体位を調整して栄養剤の注入を開始。栄養剤の注入が終了したら、家族がカテーテルを外し、体位をもとに戻します。
- 訪問介護に夜の栄養剤注入を依頼する場合
家族がある一定の研修を修了した訪問介護職員の到着時間に合わせて夜の栄養剤注入を開始。訪問介護が注入の終了を確認したらカテーテルを外し、片づけやおむつ交換、口腔ケアを行います。
経管栄養は食事と同様に、1日3回に分けて注入することが一般的です。1回あたりの注入時間は個人差がありますが、60~120分程度かかります。
上記の例のように家族が一部のケアを行うケースが多く、すべての注入やカテーテル管理を看護師や介護職員に依頼することは現実的ではありません。
また、胃ろうの人は介護度が高く、おむつ交換や入浴介助などが必要となるケースが多いため、家族だけでは十分な介助ができない場合もあります。
在宅で胃ろうの親の介護をすると家族に負担がかかってしまうでしょう。
胃ろうの人が手厚いケアを受けるためには?

胃ろうの人の在宅介護が難しいと感じたら、介護施設への入居を検討することをおすすめします。
しかし、すべての介護施設が胃ろうに対応しているわけではありません。希望条件に合った施設に問い合わせても、胃ろうに対応していなかったり、空きベッドがなく断られてしまったりすることもあるでしょう。
介護施設への入居を検討する方は、まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談することをおすすめします。地域の介護施設に詳しい専門家に胃ろうに対応できる介護施設を紹介してもらいましょう。
胃ろうに対応してくれる介護施設には、喀痰吸引等研修を修了し「認定特定行為業務従事者認定証」を取得している介護職員が配置されている場合があります。
介護に慣れた専門スタッフから手厚いケアを受けられるでしょう。
しかし、ケアマネジャーや地域包括支援センターは担当エリア以外の施設の情報は持ち合わせていないことがほとんどです。
近隣に希望条件に合った介護施設が見つからない場合には、「安心介護紹介センター」を活用して胃ろうに対応している介護施設の情報を収集してみてください。
安心介護紹介センターでは、介護施設に詳しいオペレーターが全国の施設情報から希望条件に合った施設探しをお手伝いします。
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