見当識障害の原因とは?具体的な症状や症状別の対処法をご紹介します!
- 2024年10月07日 公開

認知症患者に頻繁に見られる「時間や場所をうまく認識できない」症状は「見当識障害」と呼ばれますが、具体的にはどのような状態なのでしょうか。
今回の記事では、見当識障害の原因や対処法・リハビリなどについて詳しく解説します。
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目次
見当識障害の原因は?
「見当識障害」は認知症の症状のひとつとして知られていますが、原因となる疾患は認知症以外にもいくつか考えられます。
まずは、見当識障害を引き起こす代表的な疾患や障害についてご紹介します。
認知症
認知症は、その原因により大きく3種類に分けられます。
もっとも患者数が多いのは、脳が委縮することで起こる「アルツハイマー型」です。アルツハイマー型では、記憶障害に次いで見当識障害が目立つ傾向にあります。
2番目に多いのが、脳血管疾患によって脳機能の一部が障害される「脳血管性」です。
そして、3番目に多いといわれているのが、レビー小体と呼ばれるたんぱく質が脳に蓄積することで起こるとされる「レビー小体型」です。
レビー小体型認知症では1日の中でも記憶障害の重さに波が見られることが多く、「しっかりしている」と感じられる時間帯もあるため、記憶障害よりも見当識障害が目立つという印象を持つ家族もいるようです。
高次脳機能障害
高次脳機能障害とは、病気や外傷により脳に損傷を受けたために言語・記憶・行動などに障害が生じた状態です。
主な症状としては遂行障害・注意障害などが挙げられますが、記憶障害や見当識障害が見られることもあります。
原因となる傷病や発症時期が明確であり、加齢性ではないことが認知症との大きな違いとされていますが、考え方や分類方法によっては「脳血管性認知症は高次脳機能障害に含まれる」とする医師もいます。
劇症肝炎
肝炎などにより肝機能障害が起こると、通常は肝臓で解毒されている物質が血中に増えたり、体内のアミノ酸のバランスが崩れたりすることで「肝性脳症」という神経症状・意識障害が見られることがあります。
肝性脳症は重度になると意識がもうろうとして昏睡状態に陥ってしまう疾患ですが、軽度であっても見当識障害による異常行動や行動変化が表れ、周囲の人が異常に気がつくことがあるそうです。
見当識障害の症状は?

次に見当識障害を「時間」「場所」「人」の3つに分け、それぞれの具体的な症状をご紹介します。
時間の見当識障害
時間についての見当識障害が起こると、「いま何時なのか」「日中なのか夜なのか」など現在が1日のうちどれくらいの時間帯なのかの把握が難しくなります。
また、現在の季節が分からないといった症状も見られます。
このように現在の時間帯や時刻がうまく認識できないため、到着時間に合わせて外出準備をすることが難しくなって約束の時間に遅れたり、夜中に電話や外出をしたりするなど、自分で適切なスケジュール管理をすることが難しくなるでしょう。
また、季節の把握ができない場合は季節に合った服装を選ぶことも難しくなります。
その結果、夏であっても目についたセーターを着てしまうなど気候と服装のズレが生じ、体調管理にも影響を及ぼす可能性があります。
場所の見当識障害
場所に対する見当識障害は、知っているはずの場所で道に迷う、いま自分がどこにいるのか場所・状況の認識が困難になる症状です。
また、構造の把握も難しくなるため、自宅内で迷ってしまう場合もあるでしょう。
こうした症状を細かく見ていくと、建物や景色を見ても通路や入口を理解できなくなる「街並失認」や、目的地は理解しているにもかかわらず、慣れた道でも進む方向が分からない「道順障害」などに分けられます。
場所の見当識障害では、近所の道から自宅に帰れなくなったり、必要以上に長距離を移動してしまったりといった行動が見られます。
また、病院に行っても視覚的な情報や状況から病院だと認識できない場合もあります。
人の見当識障害
人に関する見当識障害では、家族・親戚・友人など身近な人と自分の関係性が分からない、人の生死に関する記憶が曖昧になるといった症状が見られます。
また、自分の年齢が分からなくなることも人の見当識障害といえます。
このような症状が表れた結果、実生活では家族を他人と間違える、姉妹を母親だと思ってしまう、亡くなった親が存命しているかのように姿が見えないことを心配したり、名前を呼んだりするなどの行動が見られることがあります。
見当識障害とせん妄の違いは?

ここまでの症状を見て「周りの状況がうまく理解できなくなるのは“せん妄”とは違うのだろうか」と感じた人もいるかもしれません。
ここで、見当識障害とせん妄の違いを見てみましょう。
せん妄が起きている間の症状のひとつとして見当識障害が表れることもあるので区別が難しい部分もありますが、下の表に主な違いをまとめました。
|
見当識障害 |
せん妄 |
---|---|---|
意識障害 |
起こらない |
起こる |
初期症状 |
記憶障害が中心 |
興奮・幻覚・妄想が中心 |
進行度 |
徐々に進行する |
突然発症するが一過性 |
原因 |
脳神経や脳血管の障害 |
頭部疾患・外傷・栄養障害・ |
症状の持続 |
一定して症状が見られる |
日中変動が激しく、 |
基本的に、せん妄は意識障害を伴います。また、認知症の見当識障害は記憶障害が見られ始めたあとに徐々に進行するのに対して、せん妄は突然起きる一過性の興奮・幻覚・妄想が症状の中心です。
見当識障害の原因には冒頭でも触れましたが、せん妄も同じく頭部外傷や頭蓋内疾患が原因となることがあります。
ただし、こうした病気以外でも栄養障害や脱水など体内のバランスが崩れた場合にもせん妄は起こります。
またレビー小体型認知症を除く認知症では1日の中での症状の変動は少なく、見当識障害も一定して見られるのに対して、せん妄は1日の中での症状の変動が激しく、不定期に症状が表れることが多い特徴もあります。
家族ができる見当識障害の対処法は?

見当識障害の原因疾患は根治が難しいものも多いため、生活をともにする家族は見当識障害に対処しなければならない場面も多いはずです。
ここからは、見当識障害の基本的な対処法について解説します。
簡単な質問をする
今日の予定や過去の出来事について「誰と行ったか」「いつだったか」など5W1Hを意識しやすい簡単な質問をし、脳を活性化させて日常の中で自分から思い出すきっかけを作ることをおすすめします。
質問する際は、本人の答えが間違っていても否定したり責めたりせず、ヒントになるような会話を加えて答えやすい状況を作ることも大切です。
外に出て気分転換をする
見当識障害のある高齢者は、状況や時間の関係が曖昧な中で不安を抱えやすい傾向にあります。また、見当識障害があることで近所での買い物や散歩も一人で行うことは難しいかもしれません。
数日に一度でも、家族がつき添って本人の行きたい場所や近所に出かけることで気分転換になるはずです。
さらに、外に出ることで天気や日差し、気温を感じられ、時間や季節を意識しやすくなる可能性もあります。
見当識障害の症状別の対処法
今回の記事では見当識障害の症状を3つに分けてご紹介しました。
その3つの症状に合わせて、それぞれの対処法も見てみましょう。
日付や時間が分からない場合
日時の把握が難しい場合は、時計を持ち歩くよう促して次の予定までの時間を一緒に確認したり、カレンダーで曜日や日にちを一緒に確認したりする習慣を作ることをおすすめします。
また、本人や家族の誕生日・季節のイベントなどの話題を会話に盛り込むことも、日付や季節を自分から意識するきっかけとなると考えられます。
自然な会話の中で、こうした工夫を少しずつ加えてみましょう。
場所が分からない場合
いまいる場所を正しく認識させようと本人の言葉を否定したり訂正を繰り返したりすると、かえって不安が大きくなってしまう可能性があります。
まずは、安心できる場所であると感じてもらうために優しく声をかけることが大切です。
また、場所に関する見当識障害の原因として「急な環境変化」「外部からの遮断」が挙げられるため、これを避けることも見当識障害の悪化を防ぐために有効とされています。
意外かもしれませんが、この2つが同時に起こる入院は見当識障害が起きやすい状況です。このような場合は、可能な限り面会に行くなど本人の不安解消に努めると症状が緩和される可能性があります。
人が分からない場合
本人の誤った認識をすぐに否定することは、本人を混乱させたり、自尊心を傷つけたりする可能性があります。その結果、高齢者本人が相手に対して不安や恐怖、怒りを感じてしまう場合もあるでしょう。
このような事態を招かないために、まずは本人がどのように感じているか、不安を感じる部分はあるかなどをゆっくり聞く時間を設けることをおすすめします。
認知症の方を在宅で介護する難しさとは?

認知症を抱える方を介護するときは、見当識障害に対して介護者が常に落ち着いて肯定的な態度を保つことが求められます。
そうした対応が、被介護者の自尊心が傷ついたり、パニックに陥ったりするのを防ぐことにつながります。
しかし、認知症や見当識障害に対する理解が不十分であった場合、適切な対応を取れずに本人との関係が悪化する可能性もあるでしょう。
また、うまく対応できないことが介護者の介護疲れにつながるかもしれません。
また、家族であるがゆえに本人に対して「もっと元気であってほしい」「もっとしっかりしてほしい」と感じる人もいます。
その結果、知識としては対応を理解できていたとしても望ましい対応ができないときもあるはずです。
とくに認知症による見当識障害やそれに伴う徘徊が見られる場合には、介護が大きな負担となりがちです。
高齢者が安全に過ごし、また介護疲れを溜めないためにも、適切な介護サービスの利用を検討しましょう。
介護サービスにもいろいろな種類がありますが、認知症になると昼夜が逆転してしまうことも多いため、夜間の介護負担を減らしながら充実した介護を希望する場合は施設入居も視野に入れるとよいでしょう。
認知症による見当識障害のリハビリは?

認知症は根治が望みにくい疾患ですが、症状のひとつである見当識障害はリハビリを行うことで軽減する可能性があるといわれています。
見当識障害に対するリハビリには、どのようなものがあるのでしょうか。
医療機関や介護施設で行われ、見当識障害に有効であるとされている主なリハビリが「リアリティ・オリエンテーション」です。
簡単にいうと、会話や活動の中で日時や周囲の状況に関する意識づけをしていくものです。
リアリティ・オリエンテーションには「24時間リアリティ・オリエンテーション」と「クラスルームリアリティ・オリエンテーション」の2種類があります。
それぞれどのようなことをするのか見てみましょう。
24時間リアリティ・オリエンテーション
被介護者とスタッフが1対1で行うもので、現在の時間や場所・話している相手など認識を促したい内容を日常的なコミュニケーションの話題に取り入れる手法が取られます。
クラスルームリアリティ・オリエンテーション
少人数の高齢者が集まり、進行役のスタッフとともに名前・日時・場所・話す内容など現在の状況や参加者に関する情報を確認してから始まります。
その後は、決められたプログラムに沿って全員で話を進めていきます。
集団でのリアリティ・オリエンテーションでは、見当識を高めるだけでなくコミュニケーションの機会が得られます。認知症の高齢者は活動性が低下しやすい傾向にあるため、心身を活性化させる効果も期待できます。
認知症による見当識障害に対応した介護施設を見つけるには?

認知症の介護では家族の支えとともに、専門的な知識を持ったスタッフが介護やリハビリを提供することで症状の進行を抑えられる可能性があります。
そのため、認知症の症状が目立ち始めたら本人は認知症ケア体制が整った施設で過ごし、家族は介護負担を軽減して余裕のある状態で本人が安心できるよう適度に面会の機会を設けることが望ましいと考えられます。
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