高齢者が転倒してしまうケースは?室内外で転倒を防止する方法や転倒してしまった時の対処法をご紹介します!
- 2024年10月07日 公開

高齢者にとって転倒事故は大ケガにつながりかねないため、注意が必要です。
今回の記事では、高齢者が転倒することの危険性・原因にくわえ、転倒事故を防ぐための対策や、実際に転倒してしまった場合の対処法について解説します。
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高齢者の転倒の危険性とは?
転倒の危険性と聞いて、「転ぶのがそんなに大変なことなのか」と感じた人もいるのではないでしょうか。
まずは、高齢者が転倒するとどのような危険性があるのかについて具体的に確認していきます。
若い人であれば、何かにつまづいて転んだとしても、少しの擦り傷やアザができる程度で済むかもしれません。しかし、それは急に転んでも膝や手をついてケガを最小限にとどめるよう、瞬時に自分自身が対応をしているからです。
しかし、高齢者になると判断力や運動神経の反射速度の低下、閉経による女性ホルモンの減少などにより、とっさに反応できない場面も増えます。
そのため、同じように転んでも高齢者のほうが大きなケガをしやすい傾向にあるのです。
とくに、転倒による骨折で気になるのが生活への影響です。
要介護になるきっかけとしては認知症・脳血管疾患加齢による衰弱などが上位を占めますが、転倒による骨折はそれに次ぐ原因といわれています。
また、高齢者は転んだ瞬間に身体をうまく支えられずに頭部を打ってしまうことも多いそうです。
頭部のケガは命に関わる場合もあるため、記事後半の内容も参考にしながら慎重に対応することをおすすめします。
高齢者が転倒しやすい原因は?

次に、高齢者が若年者に比べて転倒しやすい2つの理由について解説します。
筋力の低下
高齢になると、運動量の低下などにより筋力が低下しがちです。そのため、体勢の維持やスムーズな体重移動が難しく、歩行のふらつきや小さな段差でのつまずきが起こりやすくなります。
さらに、ふらつき・つまずきにすぐに対応できなくなることが増えたり、とっさに反応しても筋力や柔軟性が足りずに身体を支えきれなくなったりする結果、転倒につながってしまうのです。
薬の副作用
年齢を重ねると持病は増え、それに伴い内服している薬も増える傾向にあります。
こうした薬の中には、副作用として立ちくらみ・ふらつきが生じるものもある点に注意が必要です。
薬は基本的に必要に応じて処方されているため、「もしかしたら、ふらつきは薬のせいでは」と感じたら自己判断で内服を止めず、まずは主治医に相談しましょう。
高齢者が転倒しやすいシチュエーションは?

ここまで高齢者本人の身体に起因する原因をご紹介しましたが、転倒には本人の身体機能や健康状態だけでなく、生活環境も大きく関わっています。
次は、日常生活の中で気をつけるべき生活環境について解説します。
室内で高齢者が転倒するケース
まずは、室内で高齢者が転倒しやすい環境や状況について確認していきましょう。
もし自宅がこれらのケースに当てはまる場合は、後述する「転倒を防止する方法」を参考にし、対策を講じることをおすすめします。
リビング
リビングで一日のほとんどを過ごす高齢者は多いでしょう。しかし、慣れている場所であっても、数多くの危険が潜んでいます。
とくに、家電製品の電源コードやカーペット、こたつ布団、床に置きっぱなしの新聞・雑誌などは転倒の原因になりがちです。
廊下・階段
移動距離が比較的長く、また急いでいたために転んでしまったケースがよく見られます。
とくに階段では、こうした環境・状況的な理由にくわえて「段差で足が十分上がらずにつまずいてしまった」という場合もあるでしょう。
さらに、夕暮れ時や夜間など足元が暗く確認がしにくかったり、靴下を履いていたために板の間で滑ったり、歩いていたらスリッパが半端に脱げて転んだりということも起こり得ます。
トイレ・浴室
トイレや浴室では「狭い場所で方向を変える」「ズボンを脱ぐ」「しゃがむ」などいろいろな動きをします。そのため、体勢を変えた際にバランスを崩しがちです。
また、トイレや浴室の入口にある段差や浴室の床などにも注意が必要です。
玄関
玄関は靴を履く、かまちを上がるなどのときに片足を大きく上げることが多い場所です。
足を上げたことでバランスが崩れたり、足が上がり切らずかまちにつまずいたりといったリスクが考えられるでしょう。
また、こうした不安定な状況で足元に玄関マットが敷いてある家庭も多いはずです。
このような環境では、マットがめくれている部分につまずいたり、マットで踏ん張りがきかずに転倒してしまう場合もあるかもしれません。
外出中に高齢者が転倒するケース
次に、買い物や受診など外出時において転倒が起こりやすい状況について解説します。
買い物中
先ほど自宅内でのリスクとしてもご紹介しましたが、出入口のマットや段差、階段での転倒は店舗内でも起こり得ます。
また、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで床に置いてある商品箱にぶつかり、バランスを崩してしまうこともあるでしょう。
歩行中
床や道路が濡れていたり、木の葉などが落ちていたりする状態では、足元が滑りやすくなります。
また、道路では側溝のふちや、歩道と横断歩道の境界など小さな段差が多い点にも注意が必要です。
駐車場
駐車場では「車が来ないか」などいろいろなことに注意が向きます。その結果、足元の確認がおろそかになり、車止めにつまずくケースがよく見られます。
また、車に乗降する際にバランスを崩してしまう場合もあるでしょう。
高齢者の転倒を防止する方法は?

室内で高齢者の転倒を防止する方法
室内で高齢者の転倒を防止する方法として、以下の8つをご紹介します。
床に物を置かない
ゴミ箱や新聞など頻繁に使う物は手近に置いておきたいと考える高齢者は多いようです。
しかし、動線上に物をたくさん置くと障害物となります。
日頃よく通るエリアには、なるべく床に物を置かないよう心がけましょう。
コードの配線は壁際に
動線上を家電製品の電源コードが横切るような配置になると、コードにつまずく可能性が高まります。
コンセントと家電の配置を工夫するとともに、配線グッズなども使用して配線は可能な限り部屋を横切らず壁に沿うように配置しましょう。
段差がある場所にすのこやスロープをつける
家の構造上、入口や境界にはどうしても段差ができてしまう場合もあるでしょう。
このようなときは、すのこやスロープを利用して段差を解消することで転倒リスクを下げられます。
足元が見えにくい場所は照明をつける
暗くて足元が確認しにくい場所には、足元用の照明を設置することをおすすめします。
人感センサーつきの商品を利用すれば、夜間、トイレへ行くときにわざわざスイッチをつけなくても、自動的に足元を明るくできます。
照明の明かりに目が慣れてから動くようにしましょう。
廊下や階段、浴室に手すりをつける
廊下や階段、浴室などには手すりをつけることで転倒のリスクを下げられます。
手すりには、壁に取りつけるタイプのほかに床に置くタイプなどもあるため、用途や予算によって種類を検討してはいかがでしょうか。
カーペットやマットの裏に滑り止めをつける
カーペットやマットはふちにつまずきやすいだけではなく、フローリングの上でマットが滑ることでバランスを崩す原因にもなります。
そのため、床とカーペット・マットの間に滑り止めをつけると、リスクを減らせます。
靴を履くときは椅子に座る
靴を履くときは片足立ちになる必要があり、転倒のリスクが高まります。
そのため、玄関に椅子を用意するなど「座って履く」ことを習慣づけることで転倒予防につながるでしょう。
滑りにくいフローリングに替える
フローリングの中には、表面の加工や塗装により滑りにくくなっている商品があります。
転倒の不安を減らすために、床板をこうしたフローリングに替えることもひとつの予防策です。
外出中の高齢者の転倒を防止する方法
外出先での転倒を防止するためには、以下の3つのことを意識するとよいでしょう。
濡れているところは避ける
道路や店舗内などを歩く際は、可能な限り濡れている部分を避けましょう。
とくにマンホールなど金属の上は濡れていると滑りやすくなるため、注意が必要です。
地面に物がたくさんあるときは避けたり、ゆっくり移動したりする
床に物がたくさん置いてあるなど障害物が多い場所では、障害物が集中している場所を避けたり、普段よりもゆっくり歩いて足を高く上げたり、遠くへ伸ばすことをしないように心がけましょう。
段差がある場所はゆっくり歩く
階段や段差では「大丈夫だと思ったのに転んでしまった」というケースも多いようです。
段差がある場所ではゆっくりと、もし階段に手すりなどがあればつかまって歩くことで、転倒リスクを下げられるでしょう。
転倒しにくい身体づくりをする方法
転倒のリスクを下げるためには、下半身の筋肉をつけることが重要です。
足腰を鍛える運動といえば、ウォーキングが一般的でしょう。
しかし、長距離を歩くことは膝関節への負担も大きく、また天候や気温の影響を受けやすいため継続が難しいといった問題があります。
そこでおすすめなのが、「かかと上げ・足上げ・おしり上げ」の3つの運動です。
いずれも室内で椅子につかまったり座ったりしたまま行えるので、足腰に不安がある人でも安心して取り組めるでしょう。
かかと上げ
まず、壁の前や椅子の背もたれの後ろに立ちます。
運動中のバランスを崩さないよう、壁に手をついたり、椅子の背もたれに軽くつかまったりしましょう。
足は肩幅に開き、つま先立ちを5秒キープしたらゆっくりと元に戻します。
この運動を10回1セットとして行うことで、ふくらはぎにあるヒラメ筋や腓腹筋といった筋肉を鍛えられます。最初は無理をせず、少ない回数からはじめましょう。
足上げ
椅子に座った状態で、まずは片方の膝を伸ばします。
片足がまっすぐに伸びた状態を5秒キープしたら、ゆっくりと下ろしましょう。
最初に上げた足を元に戻したら、今度は反対の足を同じように伸ばしてキープし、ゆっくり下ろします。
この運動を行うときのポイントは、上げている足のかかとを90°に保ち、つま先は天井の方へ向いている状態にすることです。
身体がグラつく場合は、両手を椅子のひじ掛けや座面の端について身体を支えると安定します。
体調に合わせて5~10回を1セットとして行うことで、太腿の前側にある大腿四頭筋という大きな筋肉を鍛えられます。
おしり上げ
仰向けに寝た状態で、両足を揃えて膝を立てます。足の裏をしっかり床面につけた状態で、ゆっくりと腰を上へ突き出すようなイメージでおしりを浮かせましょう。
腰がまっすぐになるまで上げたら、5秒キープします。
キープしたあとはゆっくりと腰の位置を戻し、これを10回繰り返します。
この運動では、おしりにある大殿筋という筋肉を鍛えられます。腰痛がある方などは、医師に相談して無理のない範囲で行いましょう。
高齢者が転倒してしまったときの対処法は?

この記事でご紹介したような対策を行っても、ふとした瞬間に転倒が起こってしまうことがあります。
その場合、近くにいた人はどのような対応をするべきなのでしょうか。
声をかけて意識があるかどうか確認する
同行していた家族であっても、急に転倒した場面を見ると慌ててしまい「どこをどれくらい強く打ったか」などの把握は難しいかもしれません。
まずは、声をかけて意識の有無を確認しましょう。
無理に身体を動かさない
意識があったとしても、一人で立ち上がれない場合や痛みで動けない場合などは、無理に身体を動かさないほうがよいといわれています。
身体を動かすことでケガが悪化する可能性もあるため、無理は禁物です。
また、一人で立ち上がれない状態の人を床や地面から立ち上がらせるためには、ある程度の技術や人手が必要となることが多いでしょう。
無理に立ち上がらせようとすることで、介助者が体勢を崩してケガをする危険性もあります。
身体の状態を把握する
転倒したときは気持ちも動転しており、また一瞬のことで記憶が曖昧かもしれません。
本人の気分が落ち着いてきたタイミングを見計らい、痛みの度合いやケガの状況などを確認することをおすすめします。
すぐに起き上がれなかったり出血が多かったりする場合は病院に行く
痛みが強くすぐに起き上がれないときや出血量が多い場合は、医療機関の受診をおすすめします。
その際、本人の状態によって自家用車やタクシーを利用するか、救急車を呼ぶことも検討しましょう。
頭部を打った場合はしばらく様子を見る
目立った外傷がなくとも、頭部を打った場合は硬膜下血腫の可能性があります。
そのため、少なくとも48時間は注意深く本人の体調や歩き方、ろれつなどを観察することが重要です。 硬膜下血種とは、頭蓋内の血管が傷ついて血が溜まってしまう状態のことを指します。
この溜まった血が脳を圧迫すると、頭痛・吐き気・めまいなどのほか、ろれつが回らない、ふらつきなどの症状が現れることがあります。
万が一、上記のような症状が数日以内に現れたら、「時間も経っているし転倒とは関係ないのでは」と放置せずに医療機関を受診することをおすすめします。
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