認知症の被害妄想にはどのように対処すべきなのか?原因や具体的な症状もご紹介します!
- 2024年10月07日 公開

認知症患者の被害妄想にどのように対処すべきなのかがわからずに悩んでいる方もいるのではないでしょうか。対応方法を知るためには、被害妄想の原因の把握が重要です。
この記事では、被害妄想が起こる原因や具体的な症状、対処法について詳しくご紹介します。
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目次
認知症の高齢者の思い込みが激しくなる原因は?
認知症の高齢者は、どうして思い込みが激しくなるのでしょうか。その原因は、認知症が進行していくことに対する苦しみややるせなさにあるといわれています。
認知機能が低下してくると「家族で出かけたエピソードを忘れていて会話についていけない」「以前はできていたことができなくなった」など悲しい気持ちになってしまうことが珍しくありません。
周囲とうまくコミュニケーションが取れずに「自分のことを誰も気にかけてくれない」と感じると、寂しさが募っていきます。疎外感がストレスや不満につながり、自分が被害を受けたと思い込んでしまうのです。
この思い込みは、決して悪意のあるものではありません。思い込みが激しくなると家族や介護者を責める言動が目立つようになりますが、本人には周囲の人を傷つけようという意図はなく、あくまでも妄想から被害を受けていることを訴えているだけです。
思い込みが激しい認知症患者が抱えている症状とは?

思い込みが激しい認知症患者が抱えている症状には、「妄想」「せん妄」「幻覚」などがあります。それぞれについて詳しく見てみましょう。
妄想
妄想は、現実には起こっていないことや起こりえないことを信じ込む行為を指します。認知症の方は、不安や孤独感から家族や介護者などの身近な人を加害者と見なし、自分は被害者であると信じ込んでしまう場合があります。
「いやなことを言われた」「財布を取られた」など、実際に起こっていないことを事実であると思い込んでしまう被害妄想は、アルツハイマー型認知症の方に起こりやすい症状のひとつです。
せん妄
せん妄は、周囲の状況が理解できずに混乱や興奮が見られる症状です。ソワソワと手足を動かしたり、つじつまの合わないことを話したりします。認知症の方に限らず、末期がんなど終末期の方にも見られる場合があります。
せん妄は、暗く静かな場所など周囲の状況がわからずに孤独を感じやすい環境で多く見られます。また、認知症の方は日中よりも夜間にせん妄を発症するケースが多い傾向にあります。
せん妄は意識障害の一つですので、適切な対応で元の状態に戻ります。
幻覚
幻覚は、現実に存在していないものや音が見えたり聞こえたりする症状です。レビー小体型認知症の方によく見られる症状で、「カーテンの向こうに子どもがいる」「猫の鳴き声がうるさい」など、人物や動物、虫などがはっきりとした幻覚として現れやすいといわれています。
また、症状が現れると不安感が強くなり、大声を出したり暴力を振るったりすることがあります。
認知症の被害妄想の種類は?
一口に被害妄想といっても、その種類はさまざまです。ここからは、認知症の被害妄想の中でも代表的な「物盗られ妄想」「迫害妄想」「見捨てられ妄想」「嫉妬妄想」の症状についてご紹介します。
物盗られ妄想
認知症の被害妄想の中で、特に多いとされている症状が物盗られ妄想です。「財布からお金を抜き取られた」「指輪を盗られた」など金品を盗まれたと訴える様子が見られます。家族や看護師、ヘルパーなど介護に関わっている身近な人がどろぼう扱いされることも少なくありません。
この妄想は、認知症の記憶障害が原因で起こります。買い物したことを忘れて現金が減っているのを理解できなかったり、物を使用したことを忘れて元の場所にないことを不安に思ったりする気持ちが原因と考えられています。記憶障害を認めたくない気持ちから、他人に盗まれたと考えてしまう方もいます。物盗られ妄想は、買い物や身支度などが自分でできる方に起こりやすい症状です。
迫害妄想
迫害妄想は「他人から狙われている」「危害を加えようとされている」などと訴える症状です。見ず知らずの誰かに攻撃されていると感じたり、家族やヘルパーなどの介護者から暴言や暴力を受けていると話したりします。
少し離れたところで家族が会話をしている様子を見るだけで疎外感を覚え、「無視をされている」「私に隠れて何かを企てている」などの迫害妄想につながることもあります。
迫害妄想は、認知症の初期から中期に見られる症状です。認知症の記憶障害が進行していることを認めたくないジレンマや不安な気持ちが原因で起こりやすいとされています。
見捨てられ妄想
家族やヘルパーなどの世話をしてくれている相手に迷惑をかけて申し訳ない気持ちから、自分を邪魔な存在と思い、見捨てられるという妄想につながることがあります。見捨てられ妄想は比較的出現頻度が高い症状です。認知症の進行によって自分でできることが減り、周囲のサポートに負い目を感じる時期に起こりやすくなります。
介護施設への入居がきっかけで、孤独感から「自分はもう家族に必要とされていない」と感じる方もいます。見捨てられ妄想が原因で家族を信用できなくなり、コミュニケーションの機会が減ったり、部屋に引きこもってしまったりする方も珍しくありません。引きこもることが多くなってしまうと、認知症の悪化や躁うつ病にの発症リスクも高くなってしまいます。
嫉妬妄想
嫉妬妄想は、認知症の初期段階で起こりやすい症状です。物忘れを自覚している方は、認知症を認めたくない気持ちや恐怖、やるせなさなどを抱えています。見捨てられ妄想と同様に、自分は必要とされていないという不安感や孤独感が嫉妬妄想の原因であると考えられています。
不安が増大すると、配偶者が訪問看護師やヘルパーに相談している様子を見ただけで浮気をしていると信じ込んでしまうのです。
認知症の被害妄想はいつ終わるのか?
認知症の被害妄想は、身体が自由に動く時期の方や、介護の手間をかけることが多くなった時期の方など、認知症の初期から中期にかけて発症することが多いとされています。発症期間には個人差があり、かなり長い期間被害妄想が続く方もいますが、認知症の進行とともに被害妄想も消失していきます。
認知症の被害妄想にはどのように対処すべきか?

認知症の被害妄想は不安な感情が原因で出現しやすく、周囲に対する悪意によるものではありません。妄想の内容が事実でない場合にも否定しないことが重要です。ここからは、妄想の内容に合わせた具体的な対処法について説明します。
どろぼうに物を盗られたと言われた場合の対処法
物盗られ妄想への対処方法として、まずは否定も肯定もせずに本人の訴えをよく聞くことが重要です。
被介護者からどろぼう扱いされてしまった場合、否定したくなる気持ちはわかりますが、否定されることで怒りや悲しみが強くなり、妄想がひどくなる場合があります。そのため「どろぼうに物を盗られた」と言われた際には、「大切な物をなくしてしまって困っている」という本人の気持ちに寄り添い、一緒に物を探すことをおすすめします。
なくした物を家族やヘルパーが発見した場合には、見つけやすい場所に置き直し、さりげなく本人に見つけてもらいましょう。他人が見つけてしまうと「あの人が盗んで、慌てて見つけた振りをした」と新たな妄想を引き起こす危険があります。本人に納得してもらうことを意識しながら関わることは、妄想を落ち着かせるために有効です。
暴力・暴言を受けたと言われた場合の対処法
暴言や暴力を受けたと言われた場合は、ただの妄想として聞き流さず、事実である可能性を認識しながらしっかりと話を聞きましょう。対応を誤ると、本人だけでなく犯人扱いされた人の気持ちを傷つける危険があります。担当のケアマネジャーや地域包括支援センターの職員などの第三者に相談しながら冷静に話し合うことをおすすめします。
事実確認をして迫害妄想であることが明らかな場合は、事情を知らない人に誤解されないような対応が必要です。症状が見られたら発言内容や日時をメモしておき、主治医やケアマネジャー、ヘルパーと情報を共有することで、虐待が起きていると誤解されにくくなるでしょう。
本人に見捨てられたと言われた場合や浮気を疑われた場合の対処法
見捨てられたと言われたり浮気を疑われたりする場合には、本人の不安な気持ちが強くなっていることが考えられます。認知症が進行して物忘れがひどくなっていることへの不安や、自分ができることが減ることへの無力感が原因です。
見捨てられ妄想や嫉妬妄想が見られたら、本人の自信を取り戻すことを提案してみましょう。本人が得意なことや無理なくできることを依頼し、自分が役に立つ存在であると感じてもらうことが重要です。料理や洗濯といった家事やガーデニングなどに一緒に取り組んでみることもおすすめです。
認知症の被害妄想で介護に疲れてしまった場合の対処法
認知症の被害妄想は簡単に解決するものではなく、症状が落ち着いたと思っても繰り返すことは珍しくありません。認知症の方の介護では、身体介護だけでなく認知症の症状への対応が必要です。被害妄想で家族が加害者にされている場合は、介護へのストレスが強くなってしまいます。専門的な知識や経験のない家族が認知症ケアを行うのは難しく、介護疲れや介護うつになってしまうリスクがあります。
在宅で認知症の親の介護を続けることが難しい場合には、専門家のケアが充実している介護施設への入居を検討してはいかがでしょうか。
認知症で被害妄想を抱えている親を施設に入居させる方法とは?

介護施設の中には、認知症で被害妄想を抱えている方の入居を受け入れていない場合があります。被害妄想があると施設での集団生活に支障があると考える施設は少なくありません。施設探しには、専門の窓口や担当者に相談することをおすすめします。
担当のケアマネジャー
利用者のケアプランを作成している担当のケアマネジャーは、本人の身体状態や生活スタイル、好みについて熟知しています。本人のことを理解している専門家として、希望に合った施設を提案してくれるでしょう。
ただし、介護施設への入居が見捨てられ妄想につながる場合があります。施設に入居する説明の際には、家族だけでなくケアマネジャーにも立ち会ってもらうことをおすすめします。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、介護に関する地域の公的な相談窓口です。紹介可能な施設数は比較的少ないものの地域の介護資源の情報に強く、優良な介護施設を紹介できるため、施設探しについて安心して相談できます。
安心介護紹介センター
安心介護紹介センターでは、介護の専門知識を持ったオペレーターがオンラインで入居施設探しや見学相談に対応しているため、介護に忙しい方でも自身のスケジュールに合わせて施設選びができます。
安心介護紹介センターは、全国の介護施設を紹介しています。地域包括支援センターよりも多くの施設情報を持っているため、希望条件に合った施設が見つけやすくなるでしょう。
認知症の被害妄想の症状がある親に合う施設を選ぶポイントは?

被害妄想の症状がある親が入居する介護施設を選ぶ際には、環境の変化によるストレスへの配慮が必要です。環境が変わることで不安が強くなり、被害妄想がひどくなるリスクがあります。
認知症ケアが充実している生活しやすい介護施設を選べば、入居後のストレスを軽減できます。認知症の親やその家族が安心できる施設の特徴について解説します。
レクリエーションが充実している施設
認知症の方には、レクリエーションが充実している施設がおすすめです。施設生活は自宅での生活と大きく異なるため、入居してすぐの時期は不安を募らせ被害妄想が現れるリスクがあります。
認知症ケアには、レクリエーションの工作や塗り絵などの手を動かす動作は有効と考えられています。また、レクリエーションを通して職員やほかの入居者と交流するため、家族と離れる寂しさを感じにくくなる効果も期待できます。
精神科の専門医が往診に来る施設
精神科の専門医は認知症診療に詳しく、認知症の進行を遅らせる治療や被害妄想の症状に適した薬剤調整についても相談できます。
施設によっては、一般的な内科の医師に限らず精神科の専門医とも連携している場合があります。認知症の親を施設に入居させる際には、精神科の専門医の往診を受けられる施設を選ぶと安心です。
セキュリティー体制が整っている施設
施設のセキュリティー体制は、施設選びにおいて重要です。認知症になった場合に現れやすい症状のひとつに徘徊があることはご存じですか。施設に入居して間もない時期には環境の変化から不安感が強くなり、徘徊してしまう方もいます。
実際、過去に静岡県で認知症の入居者が施設の窓から外に出て徘徊してしまい、その後、命を落としてしまうという事故が起こっています。このようなケースを防ぐためには、セキュリティーへの意識が高く、設備や見守り体制が充実している施設を選ぶことをおすすめします。
どの老人ホーム・介護施設にしたら良いかお悩みの方へ
満足のいく老人ホームの生活は、どの施設に入居するかで大きく異なることがあります。
安心介護紹介センターの入居相談員は、高齢者の住まいにまつわる資格を有しており、多くの老人ホームの中から、ご本人やご家族のご希望に沿ったぴったりな施設を選定してご紹介させていただきます。
施設のご紹介から、見学、ご入居まで無料でサポートさせていただいておりますので、ぜひご利用ください。