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親が認知症の場合は相続の対策ができない?やっておくべき相続の対策や相談窓口を紹介!

  • 2024年10月07日 公開
  • 2025年03月11日 更新

親が認知症と診断された場合、「相続に関する手続きはどうしたら良いのか」「事前に対策はできるのか」と気になっている方も多いのではないでしょうか。

親が認知症の診断を受けた場合、判断能力が不十分とみなされ相続に関するトラブルが生じるケースが多くあります。

今回は、親が認知症になったときに想定されるトラブルから、活用できる制度や相談窓口について詳しく解説していきます。

親が認知症になっても相続に関する対策はできる?

親が認知症になると、預金や不動産などの資産が事実上凍結されてしまいます。それは、認知症になると自分で意思決定や正しい判断ができない状態にあると捉えられるからです。

そして、資産が凍結されることによって、下記の手続きが法的に認められなくなります。

  • 不動産の管理や修繕・売却
  • 預金口座の解約・振込み・引き出し
  • 生命保険の加入・請求
  • 子ども・孫などへの生前贈与
  • 遺言書の作成
  • 遺産分割協議への参加
  • 議決権の行使(株主の場合)

これらの手続きが認められないと、家族・親族にも影響を及ぼすことがあります。たとえば、不動産を管理していた親が認知症になると、家族の判断で売却ができなくなってしまうのです。

遺言書を作成したとしても、作成時に認知症と診断されていたのであればその内容は認められません。自己判断ができない状態で書いた遺言書と認識されるからです。

そのため、親が認知症になると相続のことで悩む方や、トラブルが生じるケースも少なくありません。

認知症の初期段階であれば、相続対策ができる可能性もある

親が認知症と診断された場合でも、軽度の認知症であれば生前贈与や遺言書の作成ができる可能性があります。

認知症であっても正常な判断能力を有しているかがポイントになり、仮に判断能力がないとされた場合には、相続に関する手続きが無効になってしまいます。

ただし、親である被相続人が軽度の認知症(まだら認知症)の場合、相続に関するすべての手続きが無効になるわけではありません。

正常な判断能力が残っていると認められた場合には、相続手続きが有効と判断される可能性があります。軽度の認知症のケースでは、主治医に診断書を作成してもらったり、受診期間などの証拠資料を保存したりすることをおすすめします。

認知症になると遺言書も無効になってしまいます。しかし、公正証書遺言を作成することで遺言書が有効になる可能性があります。遺言書を残す場合は、公正証書遺言を作成するようにしましょう。

認知症発症後でも、法定後見制度を利用すれば資産管理は可能

認知症を発症すると、状況把握や自己判断が難しくなるため自身での資産管理も困難になります。しかし認知症発症後でも、成年後見制度の1つである「法定後見制度」を利用すれば資産管理が可能です。

法定後見制度とは、被後見人である高齢者の資産を守るための制度です。高齢者は詐欺などのターゲットにされたり、高額商品を売りつけられたりすることも少なくありません。とくに認知症になるとそういった判断が難しくなり、他人の言葉にだまされて財産を失ってしまうこともあります。

不当な取引によって高額な買い物をしてしまったときなどに、後見人が「取消権」を使って取引を無効にすることができるのです。

法定後見制度は高齢者の判断能力の程度によって「後見」「保佐」「補助」の3パターンに分けられます。3つに共通するのは、「資産・財産を守る」のが目的であり、相続には関与できないということです。

親が認知症になった際、法定後見制度を利用すると相続対策を講じられないことに注意しましょう。

親が認知症になることで起こる相続トラブル

相続対策を行わないうちに親が認知症の診断を受けると、相続トラブルが生じる可能性があります。

どのようなトラブルが起こるのか、詳しく解説していきます。

親が望んでいた財産の残し方ができなくなる

認知症と診断された場合、基本的には正常な判断能力が無いとみなされ、相続に関する手続きが無効となる可能性が高いです。

「面倒を見てくれていた長女に自宅を引き継いでほしい」「孫にお金を多く残したい」など、財産の残し方をイメージしていたとしても、正常な判断能力がないとされた場合、その後に遺言書の作成を行っても無効になってしまいます。

遺言書が無効となった場合には、誰が何を相続するかを遺産分割協議で決定します。

相続の権利を有するのは民法における法定相続人のため、孫や友人などへの相続はできないほか、遺産分割協議によって決定された内容が必ずしも親の望む結果になるとは限りません。

本人の希望に沿った相続を行うためには、事前に対策を行っておくことが必要です。

相続対策が有効かどうかでの判断で揉める

認知症の症状が出始めたときに相続対策を行うと、後になってその相続対策が有効かどうかの判断で揉める可能性があります。

例として、初期の認知症であった父親から長女が生前贈与を受けたが、後になって次女が認知症であったならば生前贈与は無効であるとし、返還を要請したケースが挙げられます。

トラブルを避けるため、相続対策を行った当時の判断能力について、医師の診断書や介護記録などを用意しておくと、判断能力があったという証明をするのに役立ちます。

また、遺言書の作成に当たっては、自筆証書遺言ではなく、公証人が作成する公正証書が有効と判断されやすいです。

認知症の症状が出てから相続対策を行う場合には、判断能力の有無を証明できる方法を選択し、資料を残しておくことが重要です。

相続税の節税対策ができない

認知症と診断されると、節税対策として有効な生前贈与が困難となり、多額の税金を支払う必要が出てきます。

そもそも、相続税は基礎控除である「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」を超えた場合に課せられるものです。

財産額が大きい場合には、生前贈与を行って財産額を減らすことで負担を軽減できますが、認知症と診断された場合、基本的に判断能力がないとされるため生前贈与は困難になります。

それにより、節税対策が行えないまま相続するケースが多くなってしまうのです。

生活費や介護の費用などが引き出せない

認知症と診断されると口座が凍結され、基本的に本人が預金を引き出せなくなります。

判断能力が低下していると、きちんと理解せずに高額商品を購入する、詐欺被害に遭うなどのリスクが高まるため、金融機関は口座を凍結することで本人の財産を保護しているのです。

また、家族であっても適切に財産を管理するとは限らないため、預金の引き出しはできないことになっています。

しかし、認知症患者の家族が介護費用や生活費を支払っていることは多く、費用を親の口座から引き出せないために立て替えるケースが多く見られます。

立て替えた費用が高額になると家計への負担が大きくなり、貯金を切り崩す必要に迫られる、誰が介護費用を負担するかで相続人同士で揉めるなど、トラブルが生じる可能性もあります。

口座凍結してしまうと、当面の支払いに関する負担が重いほか、成年後見制度の「法定後見制度」しか対処する方法がありません。

そのため、事前に対策を行っておくことが重要となります。

親の認知症によって相続の手続きが無効になることへの予防策は?

親が認知症になると相続の手続きが無効になる可能性があります。そのような場合はいったいどのようにして対処すればよいのでしょうか。

ここでは、親の認知症によって相続の手続きが無効になることへの予防策として、任意後見制度と家族信託の2種類をご紹介します。それぞれのメリット・デメリットを把握して活用を検討してください。

任意後見制度

親の認知症によって相続の手続きが無効になることへの予防策として、任意後見制度の利用が挙げられます。

原則、認知症発症後は相続対策ができませんが、任意後見制度を利用すれば相続に関する対策ができる可能性があります。ここでは、任意後見制度について詳しくご紹介します。

任意後見制度のメリット

任意後見制度のメリットは、相続税対策や資産運用が可能になることです。

任意後見制度は成年後見制度の1つで、後見人を誰にするのか、どのような代理権を与えるのか、どのように財産を管理するのかなどを自由に決められます。任意後見契約はあくまでも本人と後見人との間で交わす契約であることから、公正証書にしっかりと記載しておけば後見人でも相続に関する対策や資産運用ができるようになります。

任意後見制度のデメリット

相続対策ができる面で、任意後見制度は大きなメリットがある制度です。しかし、デメリットがあることも理解して活用することをおすすめします。

任意後見制度のデメリットは下記の通りです。

  • 取消権が付与されていない
  • 任意後見人の代理権の範囲は任意後見契約に記載されている事項に限定される

前述した法定後見制度では、不当な取引が生じた際に取消権を行使して財産を守ることができます。しかし、任意後見制度では後見人に取消権は付与されません。そのため、不当な取引や高額の買い物に対する対処ができないのです。

任意後見制度では、任意後見契約をもって後見人が代理権を持つ仕組みです。記載されていない代理権を行使できません。

また、あとから代理権を付与できない点にも注意が必要です。どうしても代理権を加えたい場合は、法定後見制度に移行しなければなりません。

家族信託

親が認知症になる前であれば、家族信託を活用して相続対策をする方法もあります。ここでは、家族信託の契約関係やメリットについて解説します。

家族信託の契約関係

家族信託は、家族・親族間での契約が基本です。祖父母や両親が認知症になったときの相続対策として、契約を結ぶ人が増えています。

家族信託の契約関係は下記の3つに分けられます。

  • 委託者(親)= 財産を預ける人
  • 受託者(子)= 財産を預かり管理・運用・処分する人
  • 受益者(親)= 財産の運用・処分で利益を得る権利を持つ人

財産の権利を持つのは委託者である親です。契約を結んだ子は、受託者として財産を預かるだけでなく、運用や処分を行うことができます。

本来、認知症を発症した親が所有する不動産の売却はできません。また、認知症の親の銀行口座は凍結されてしまうため、預金をおろすこともできないのです。

しかし、家族信託を活用すれば不動産の処分や預金をおろすことができます。親の持つ財産を介護費用や施設の入居費用にあてられるのです。

家族信託のメリット

家族信託のメリットとして、以下の項目が挙げられます。

  • 資産運用を受託者に一任できる
  • 二次相続以降の資産継承先を指定できる
  • 親が亡くなり相続が発生したあとも信託を利用できる
  • 受益者(親)が亡くなっても受益権の引き継ぎができる

資産があっても、どのように運用すればよいかわからないという人は少なくありません。家族信託では受託者に一任できるため、積極的な資産運用が可能です。運用次第では財産を増やせる可能性もあります。

また、二次相続以降も相続継承先を指定できる点もメリットの1つです。親が残した財産を、次に誰が相続するのか遺言書以外で指定できるのです。

あらかじめ指定することで、親族間のもめごとや遺産を狙った不正取引などのトラブルを防げる可能性があります。

家族信託で資産運用をして出た利益は受益権が適用され、受益者(親)の収益となります。その親が亡くなった際に、受益権は家族信託で契約している受託者(子)に引き継がれるのもメリットです。

家族信託のデメリット

家族信託には下記のようなデメリットがあります。

  • 受益権を持つ親が亡くなった場合には信託した財産に相続税がかかる
  • 田畑など農作物の耕作に用いられる土地は家族信託ができない
  • 親族間の相続トラブルの可能性がある

受益権を持つ親が亡くなった場合、受託者にその財産を受け継ぐ権利が与えられますが、相続税がかかることを忘れてはいけません。

また、信託できる不動産には制限があることもデメリットです。アパート・マンション・ビルなどは家族信託できますが、田畑などの土地は対象外です。

家族信託を決める前に、どのような不動産を信託したいのかを明確にし、対象かどうかを確認しておきましょう。

家族信託をうまく活用すれば、親が亡くなったあとの相続トラブルを回避できます。しかし、家族信託自体がトラブルのもととなるケースもあるので注意が必要です。

たとえば、家族間で話し合いをしなかったり、納得しないうえで契約を結んだりした場合です。子が複数人いる場合、受託者となる子とそれ以外の子で財産権が大きく異なる可能性があります。

また、受託者だから権利が大きくてよいというわけではなく、受託者ならではの責任の重さもあります。親族間での不公平や不満から、トラブルに発展してしまうのです。

これらのデメリットを回避するためにも、契約前に十分な理解と家族間での話し合いが必要です。

親が認知症になる前にやっておきたい相続税対策とは?

親が亡くなり遺産を相続すると、相続税が発生します。相続税対策として生前贈与が行われることが多いのですが、親が認知症になると生前贈与ができません。

「もっと早く対策しておけばよかった」とならないよう、事前にできる対策を知っておきましょう。ここでは、親が認知症になる前にやっておきたい相続税対策をご紹介します。

贈与税の基礎控除

1月1日~12月31日の1年間の贈与額が110万円以下であれば贈与税はかかりません。たとえば10年にわたって毎年100万円、計1,000万円を贈与したとしても贈与税は発生しないということです。生前のうちに現金を贈与することで相続税対策にもなります。

生前贈与のケース別の非課税額

生前贈与と一口にいっても、贈与する財産の内容はさまざまです。内容によって非課税額が異なるため、ケース別にご紹介します。

住宅資金や増改築費用の贈与

生前贈与の目的として、子や孫の住宅資金や増改築費用にあてるケースがあります。この場合、最大3,000万円までの贈与であれば贈与税はかかりません。

教育費としての贈与

子や孫に十分な教育費を残したいと考える人は少なくないでしょう。財産を有効に使ってほしいという願いがあってこその生前贈与です。

このように教育費として生前贈与する場合は、1,500万円までの贈与であれば贈与税がかかりません。ただし、30歳未満の子や孫に限ります。

結婚費用や子育て資金の贈与

結婚費用として贈与する場合、1人につき300万円までであれば贈与税はかかりません。子育て資金の場合は、1人につき最大1,000万円までです。

子や孫が18〜49歳までという制限がありますが、お金がかかりがちな結婚・子育て費用にあてられるとして、生前贈与を検討する人は多いでしょう。

夫婦間での不動産や不動産購入資金の贈与

生前贈与ができるのは、祖父母・両親から子や孫だけではありません。夫婦間でも、不動産や不動産購入資金として最大2,000万円までの贈与であれば贈与税がかからないのです。

ただし、婚姻関係が20年以上続いている場合に限ります。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は贈与額が累計2,500万円以内であれば贈与税がかからないという制度で、60歳以上の贈与者(親・祖父母)が18歳以上の受贈者(子・孫)に生前贈与する際に利用可能です。ただし、相続時精算課税制度を利用する場合は贈与税の基礎控除が使えなくなる点に注意が必要です。

親の相続対策について相談できる窓口とは?

親の相続対策について相談できる窓口には、弁護士事務所・税理士事務所・司法書士事務所・行政書士事務所・銀行などがあります。

相談できる窓口はたくさんありますが、選択肢が多いとどこに何を相談したらよいのか悩んでしまう人もいるのではないでしょうか。ここでは、親の相続対策について相談できる窓口と扱っている内容をご紹介します。

弁護士事務所

弁護士事務所では、複数の相続人がいる場合に相続を円滑に進めるための相談ができます。遺産分割がまとまらないといったトラブルに対し、弁護士が介入することで円滑に進められる可能性があります。

弁護士の仕事は多岐にわたるため、相続を不得意としている方もいらっしゃいます。相続の案件を多数経験している弁護士を選びましょう。

ただし、他の士業より費用が高くなるケースが多いことがデメリットであることも頭に留めておきましょう。

税理士事務所

税理士は税に関係する手続きを専門としているため、相続の際に問題となる相続税の申告や準確定申告の手続きを行う際に活用できます。

司法書士事務所

司法書士は不動産の相続に関する手続きを得意分野としています。司法書士事務所では、相続する不動産の名義変更や、預金や株式などの相続手続きを進めることも可能です。

行政書士事務所

行政書士は、権利義務に関する書類の作成を行っています。行政書士事務所には、戸籍等証明書類の収集代行や、遺産分割協議書の作成などの依頼が可能です。

書類の作成というと不動産登記をイメージする人もいるかもしれません、しかし不動産や相続の登記は司法書士の担当のため、行政書士事務所では対応できないことに注意してください。

銀行

銀行では、本人に代わってさまざまな専門家(税理士・司法書士・行政書士など)に相続に関する手続きを依頼することができます。銀行に依頼することで、自分で各事務所に相談に行く手間を省けるメリットがあります。

便利な反面、銀行を利用した手続きには手数料がかかるのがデメリットです。直接依頼するよりも費用が高くなることに注意しましょう。

また、相続に関する書類の収集は本人が行わなければなりません。銀行に代理手続きを依頼するか、各事務所に相談するかは費用や手間を考慮して決めることをおすすめします。

地域包括支援センター

介護の相談窓口である地域包括支援センターでも、成年後見制度や家族信託など相続に関係する相談が可能です。

親の介護だけでなく、相続の不安があれば地域包括支援センターの利用を検討してください。

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