認知症の方とうまくコミュニケーションを取る方法は?会話をするときのポイントをご紹介します!
- 2024年10月07日 公開

認知症が進行すると徐々にコミュニケーションを取ることが難しくなるといわれていますが、それはなぜなのでしょうか。今回の記事では、認知症の方とのコミュニケーションが難しい理由や対処法、コミュニケーションに活用できる手法などをご紹介します。
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目次
認知症の方とうまくコミュニケーションが取れない理由とは?
家族が認知症を患ってから、意思の疎通がスムーズではなくなったと感じる人は多いようです。
認知症が進行すると、なぜコミュニケーションが難しくなるのでしょうか。
言葉がうまく出てこない
脳の中でも、前頭葉の「ブローカー野」と呼ばれる部位が障害されると「運動性失語」という症状が見られる場合があります。
運動性失語とは言葉や書いてある文字は理解できるものの、文章の構築が困難な状態です。
例えば、言われたことに対して「こう答えたい」という気持ちはあるものの、その内容を表現するために必要な単語を思い出せず、また思い浮かんだ言葉を文章に組み立てられないのが運動性失語の特徴です。
話しかけた側としては、なかなか返事がこなかったり、返事の単語や文章が間違っているため内容を推測しにくいと感じることも多いでしょう。
言葉の意味を理解できない
左側頭葉にある「ウェルニッケ野」が障害されると「感覚性失語」という症状が現れる可能性があります。
感覚性失語では、運動性失語とは逆に流暢に喋ることはできるものの言葉や文字の理解が難しいといわれています。
そのため何かを説明しても伝わりにくく、本人は「何を言われているかよく分からない」という不安や戸惑いを抱えがちです。
また、家族にとっては「何度も言ったのに伝わっていない」というストレスにもなりやすい症状です。
話がかみ合わない
スムーズに会話をするには、自分が言った内容や相手から言われたことを記憶しておく必要があります。しかし、認知症により記憶力や集中力が低下すると数分前の会話を忘れてしまうこともあるでしょう。
その結果、認知症の方は同じ内容の話を何度も繰り返すことも多く、また話し相手が一度言ったことに対しても初めて聞いたような感覚を持っている場合があり、会話が成立しにくくなります。
さらに、見当識障害により現在の日時や季節・話している相手と自分の間柄などがうまく把握できないことも会話がかみ合わなくなる原因のひとつです。
話すことへの意欲がなくなる
上記のような症状により、認知症の方は「自分の思っていることがうまく伝えられない」「言われていることがよく分からない」という不安やストレスを抱えがちです。
こうした状況が続くと、会話をすること自体に恐怖感や億劫さを感じてしまう高齢者も多いでしょう。
会話への意欲や積極性が低下することで、コミュニケーションを取ることがさらに困難になると考えられます。
認知症の方とコミュニケーションを取れなくなるとどのような問題があるのか?

コミュニケーションがうまく取れなくなると、家族や介護者は「守ってほしい約束事が伝わらない」「簡単な説明も理解してもらえない」などの悩みを抱えながら介護を行うことになります。
周囲の人が介護にストレスを感じることもコミュニケーション不良によって引き起こされる問題のひとつですが、本人もまた「何も分からない」のではなく悩みやストレスを抱えている点も重要です。
コミュニケーションがうまく取れないことで認知症の高齢者の自尊心が傷ついたり、会話への恐怖心が募ったりした結果、急に部屋に閉じこもって支援や介護を拒否したり、攻撃的な言動が見られたりするようになることもあるでしょう。
また、このように会話がなくなったり閉じこもりが見られたりすると、他人との交流がなくなり認知症の症状も悪化していきます。
認知症の方とコミュニケーションを取る方法とは?

認知症を抱える家族とコミュニケーションが取りにくくなってきたと感じたとき、再びうまくコミュニケーションを取るためにはどのような方法があるのでしょうか。今回は、認知症の方とのコミュニケーションを図るうえで注目される「バリデーション」という手法についてご紹介します。
バリデーション
製造業などの現場でバリデーションといえば「作業工程や計画の検証」を指しますが、認知症介護におけるバリデーションとはどのような手法なのでしょうか。
バリデーションでは、従来「問題行動」とされてきた徘徊や暴言・大声、一見つじつまが合わないような言動などに対しても「すべてに意味がある」ととらえて接することを重視します。
それでは、家庭でも実践できるバリデーションの手法をいくつか見てみましょう。
リフレージング
「リフレイン」とは「同じフレーズの繰り返し」という意味です。そこから、会話の中で相手の話から重要と思われる言葉を拾い、相づちのように相手に対して繰り返し言うことをリフレージングといいます。
例えば「そのとき夫が〇〇と言ったの」という言葉に対しては「旦那さんが言ったのですね」や「〇〇と言っていたのですね」などと返答します。
リフレージングを効果的に行うには、声のトーンや大きさ・話すスピードを相手に合わせることが大切です。
話のキーワードを相手が繰り返すことで、認知症の方も「自分の話を理解してくれている」という安心感を得られるはずです。
オープンクエスチョン
「はい」「いいえ」の二択で答える質問を「クローズドクエスチョン(閉じられた質問)」というのに対して、自分の言葉で自由に答える質問を「オープンクエスチョン」といいます。
認知症の方の発言や行動の理由がとらえにくいときや、希望を聞きたいときなどはオープンクエスチョンを用いることをおすすめします。これにより、高齢者自身がどのように感じているかを聞き取りやすくなるでしょう。
ただし、自由に答えるためには言葉の選択・状況の把握などが必要であり、回答が難しい質問ともいえます。そのため質問をする際には「誰と行かれたのですか?」「いつされたのですか?」など5W1Hを用いて答えの範囲をある程度限定するといった工夫が必要です。
また「なぜ」という質問は漠然とし過ぎていて答えに困ったり、何度も「なぜ」と繰り返されることで責められていると感じてしまったりとマイナスになる場合もあるため注意しましょう。
レミニシング
本人がする過去の話などに対して質問することで、本人にその出来事を話してもらう方法をレミニシングといいます。
繰り返し話している過去の出来事は、本人にとって重要な指針や感情、本人の中で未解決の感情と深く関わっている可能性があるため、それを語ってもらうことで本人の理解や感情の共有につながる可能性があります。
ミラーリング
言葉による意思疎通が困難になっている場合には、本人の動作や感情を真似るミラーリングという手法を用いることもあります。ミラーリングという名前の通り、鏡のように本人と向き合って行うのがポイントです。
認知症の方が笑顔を見せたりため息をついたり、立ち上がったりといったタイミングで同じように行動することで、認知症の方は「感情を共有できている」と感じ、孤独感や不安を軽減する効果が期待できます。
ただし、言葉でのコミュニケーションが可能であり、自分の認知機能低下を自覚し不安に感じているような認知症の初期段階の方は「ばかにされている」と感じる恐れがあるため、活用するタイミングに注意が必要です。
アイコンタクト
高齢になると、認知機能・注意力の低下などにより「いま誰と話しているのか」が認識しにくい場合があります。また、意思疎通に自信を失っている高齢者の方には「あなたの話を聞いていますよ」と態度で表すことも大切です。
そのため、コミュニケーションの際は正面で視線の高さを合わせ、アイコンタクトを取ることをおすすめします。相手が自分の話を聞いていると実感できることで、自分の話が受け入れられているという安心感にもつながります。
タッチング
話の内容や目的に応じて、相手を安心させるように肩から腕にかけてなで下ろしたり、手のひらで頬をなでたり、頭頂部から後頭部にかけてなでたりする手法を「タッチング」といいます。
ただし、タッチングは認知症の方に嫌がられることもある手法です。これはバリデーションが欧米で提唱された手法であること、日本では他人とのスキンシップがあまり行われないことなども背景にあると考えられます。
タッチングを試して高齢者の方が拒否的な反応を示した場合は、頭や腕でなく手先のみの接触に抑える、タッチング自体を中止するなどの対応が必要です。
認知症の方とコミュニケーションを取るときのポイントは?

ここまで認知症の方とコミュニケーションを取るための具体的な手法をご紹介してきましたが、認知症の方とコミュニケーションを取る際にはどのような態度や姿勢がポイントとなるのでしょうか。
傾聴する
傾聴とは、ただ「聞く」のではなく相手の立場を理解するために話に耳を傾けることを指します。相手の話を聞く際には、自分自身の常識や価値観は一旦置いて相手を知ろうとする姿勢が重要です。
会話を無理にリードしようとしない
会話をする際は認知症の方のペースに合わせて聞くことを中心とし、「もう少し詳しく教えてほしい」というタイミングで相手の話を掘り下げる質問をするなど聞き手の発話は必要最低限に留めることをおすすめします。
このように認知症の方が話しやすいペースで会話を進めることで、会話に対する不安の解消が期待できます。
受け入れる
認知症の方との会話では、つじつまが合わない話や誤った認識に触れる場面も多いはずです。しかし、それを最初から否定・修正しようとするのではなく、まずは「認知症の方自身がそう感じている」ことを受け入れる姿勢が重要です。
認知症への理解を深める
認知症を患うと、家族の名前や身近な人との関係性が分からなくなったり、家に居ながら「帰りたい」という言葉が聞かれるなど、家族や介護者が戸惑う場面は多いでしょう。
しかし、その場合に周囲の人が慌てたり、発言を否定したりするような反応をすると認知症の方は不安を感じてしまいます。落ち着いて対応するためにも、認知症の症状や接し方などへの理解を深める必要があります。
認知症の方とコミュニケーションが取れないときの対処法は?

ここまでご紹介した手法やポイントに気をつけながら認知症の方とコミュニケーションを取っても、思うように会話が進まない場合もあるはずです。そのようなときは、どう対処したらよいのでしょうか。
相手の反応を待ってみる
会話を続けよう・盛り上げようとして介護者が話しかけ過ぎているかもしれません。あまりに次々と話題や質問を振られると、認知症の方が会話についてこられなくなってしまう場合があります。
このようなときは、一度会話のペースを落として相手からの反応をゆっくりと待ってみましょう。その間に、介護者はこれまでの会話のペースを思い返し、必要に応じて見直すことも必要かもしれません。
話しやすい話題を振る
介護者が確認したいことや伝えたいことだけでなく、本人が比較的興味を持っている最近のニュースや幼少期の頃の話、青年期の頃の一大ニュース、認知症になる前に行っていた趣味の話なども話題に選んでみることをおすすめします。
認知症の方でもスムーズに話せる話題を選ぶことで、本人も積極的に会話ができている楽しさを味わったり、コミュニケーションに対する苦手意識を軽減できたりすると考えられます。
一度話すことを中止する
本人の様子をよく観察し「話したいけれどうまく伝えられない」のではなく「疲れや気持ちの問題から話したくない」という場合は、一度会話を中止する必要があるかもしれません。
コミュニケーション自体に拒否的なタイミングで無理に会話を続けようとすることは、かえってコミュニケーションに対する苦手意識や嫌悪感を強めてしまう場合があるので注意が必要です。
認知症の方とのコミュニケーションのトラブルを解消するには?

認知症が進行することで、認知症を患う以前のようなコミュニケーションは徐々に困難になっていきます。
このような状況の中で、常に対応に注意しながら穏やかに接することは、家族の方にとって大きな負担となる可能性があります。ストレスが溜まったり、体調を崩したりする場合もあるかもしれません。
また、介護者の体調面だけではなく、ストレスから高齢者に厳しい態度を取ってしまうケースもあります。その結果、高齢者自身も不安やストレスを感じてしまい、認知症の症状悪化につながることもあるでしょう。
もし自宅での介護に行き詰まりや負担を感じ「このようなトラブルになってしまうのではないか」と不安を感じた場合などは、認知症ケアを行える施設への入居の検討も選択肢のひとつです。
認知症の方が安心して生活できる施設を見つけるためには?

介護者の対応が認知症の症状を悪化させる可能性があるように、施設入居に際しての環境変化やスタッフの対応も症状悪化の原因となり得ます。このような事態を避けるためにはどのように施設を探せばよいのでしょうか。
施設を探す際は、公的な高齢者の総合相談窓口である地域包括支援センターや、すでに本人のケアプランなどを作成しており生活・身体状況などを把握しているケアマネジャーなどが主な相談窓口です。
加えて、老人ホーム検索サイト「安心介護紹介センター」なども活用することで、より多くの候補の中から希望に合った施設を探せるでしょう。
どの老人ホーム・介護施設にしたら良いかお悩みの方へ
満足のいく老人ホームの生活は、どの施設に入居するかで大きく異なることがあります。
安心介護紹介センターの入居相談員は、高齢者の住まいにまつわる資格を有しており、多くの老人ホームの中から、ご本人やご家族のご希望に沿ったぴったりな施設を選定してご紹介させていただきます。
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