なぜ認知症によって性格が変わるのか?原因や前兆、対処法などをご紹介します!

 

よく知っているはずの家族が認知症になって介護を始めたときに、性格や様子の変化に戸惑う介護者もいるといわれています。今回の記事では、認知症を患うと性格が変わってしまう理由や、性格変化への対処法などについて解説します。

なぜ認知症によって性格が変わってしまうのか?

認知症の症状といえば「物忘れ」というイメージが強いかもしれませんが、じつは性格の変化もよく見られる症状とされています。なぜ認知症になると性格が変わってしまうのか、まずはその理由を確認しましょう。

前頭葉の機能が低下するため

大脳のうち「前頭葉」という部位では、理性・社会性・感情の制御などをつかさどっています。しかし、認知症や脳血管疾患・外傷などで前頭葉が障害されると、これらの機能が正常に働かなくなってしまうことがあります。

その結果表れるのが、社会性を意識した行動ができなくなったり、感情を抑えられなくなったりといった症状です。このような症状は、認知症の中でもとくに「前頭側頭型認知症」というタイプで表れやすいといわれています。

認知機能が低下するため

認知機能が低下すると、周囲の状況や話の内容などを正しく理解することが困難になります。このような状況の中で不安やいら立ちが積み重なると、徐々に言動が攻撃的になったり「なぜわかるように伝えてくれないのか」「なぜ言っているのに伝わらないのか」など相手に当たるような言葉も聞かれたりします。

自尊心が傷ついてしまうため

認知症を患うと、できていたことができなくなるという経験が増え始めます。こうしたことが原因で自尊心が傷ついたり、自分の能力や体力に自信が持てなくなったりすることが活動量や意欲の低下につながると考えられます。

性格が変わるといっても、感情の制御ができず怒りっぽくなるとは限りません。「どことなく昼間もぼんやりしていて表情もうつろ」「以前に比べて一人で部屋にいることが増えた」など活動性の低下が見られることもあります。

認知症によって性格が変わる前兆は?

 

ここまでご紹介したような性格の変化は、認知症発症後どのようなタイミングで表れるのでしょうか。認知症の中でもっとも多い「アルツハイマー型認知症」を例に挙げると、初期〜中期以降に性格の変化が表れやすいようです。

性格が変わってしまう理由として不安・いら立ち・自信喪失などがあることからもわかるように、性格が変わる前には「忘れてしまう」「わからない」「うまくできない」といった経験の積み重ねがあると考えられます。

つまり、会話中に内容を理解できていない様子が見られたり、同じ話を何度も繰り返したり、頻繁に見ているはずの人や物の名前を忘れてしまったりするなどの症状が表れ始めたら、性格に変化が現れていないか確認してみましょう。

認知症で性格が変わるとどのようなトラブルが起こるのか?

 

家族から見て「以前とは性格が変わってしまった」というのはそれだけで心配なことですが、実際に介護をしたり生活を共にする中では具体的にどのようなトラブルが起こりやすいのでしょうか。

周囲の人に攻撃的な言動をする

生活の中でもっとも周りへの影響が大きいのは、介護者や家族に対する暴力や暴言です。介護に対する抵抗や拒否が見られることもあり、また被介護者が力の強い男性などであった場合は周囲の人がケガをする可能性もあります。

加えて、ケガなどのトラブルがなかったとしても、介護への抵抗や暴言は家族にとって大きなストレスです。本人との生活や介護に家族が疲れてしまうことで、介護うつや虐待などに発展することも考えられるでしょう。

うつ状態になってしまう

自尊心や自信が失われた状態が続くと、徐々に今まで好きだったことや自分の生活自体への関心も薄くなる傾向にあります。また、ぼんやりとしているもののゆっくり休めずに不眠が見られることもあるようです。

このようなうつ状態になると、生活リズムは崩れやすく、人づきあいも減るため、とくに軽度の認知症を抱える高齢者が家族と離れて一人暮らしをしている場合には注意が必要です。

一見、攻撃的な言動よりも問題が少ないようですが、目立ったトラブルが起きないため認知症の悪化に気がつかず「久々に行ってみたら荒れ放題の家でぼんやり過ごしていた」ということも起こり得ます。

認知症によって性格が変わってしまった場合の対処法は?

 

家族が認知症によって性格が変わってしまった場合にはどうしたらよいのでしょうか。ここでは、3つの対処法をご紹介します。

一度距離を置く

暴言や暴力など活動性が上がるタイプの性格変化では、介護を負担する家族に大きなストレスがかかることが予測されます。そこで懸念されるのが、ストレスにより本人に厳しく当たるなど家族関係が悪化してしまうケースです。

そのような際には、介護サービスを利用して介護の負担や本人と関わる時間自体を減らし、一度本人と距離を置くことをおすすめします。

一緒に作業を行う

認知症になると、今まで当たり前のようにできていた日常の動作や、好きだった趣味であっても「次に何をすればよいのか」「どうしたらよいのか」とわからなくなったり、できなかったりすることが増えてしまう傾向にあります。

しかし、会話をしながら適度に声掛けをすることで不安や迷いが軽減され、一人ではできなくなっていた家事や趣味にも積極的に取り組めるようになるかもしれません。

できないことが増えると「しっかりしてもらわなくては」と一人でできるようになることを求めてしまう家族も少なくはありませんが、まずは完璧に行うよりも行動することへの不安を解消していくことが大切です。

周囲の人に相談する

認知症になった家族の介護負担を一人で抱え込むと、被介護者との関係が悪化したり、介護疲れをしてしまったりする場合もあるでしょう。介護の方針を明確にして負担を減らすためにも、周囲の人に相談することをおすすめします。

介護に協力してくれる家族や親戚だけでなく、介護の専門家である担当ケアマネジャーや、本人の状態や内服薬などを詳しく把握しているかかりつけ医なども重要な相談先です。

認知症の介護について相談できる窓口は?

 

認知症で本人の性格が変わったと感じた場合に大切なのは、本人との距離感や適切なサポート、介護疲れを溜めないための相談相手です。ここでは、認知症介護の相談ができる窓口を4つご紹介します。

地域包括支援センター

地域包括支援センターは、高齢者に関する総合相談窓口です。高齢者の生活支援・権利擁護の一環として、認知症の方が医療・介護サービスを円滑に利用できるように支援を行うことも業務のひとつです。

地域包括支援センターに介護・医療などを相談することで、抱えていた悩みや課題が具体的なサービス利用などに結びつき、解決の糸口が見つかるはずです。

居宅介護支援事業所

居宅介護支援事業所では、ケアマネジャーが介護サービスの選択や利用をサポートします。本人の状況をよく知る担当者が相談に乗ってくれるため、生活機能・認知機能に合った介護サービスの提案を受けることも可能です。

自宅での介護に大きな負担を感じて施設を検討する場合にも、家族状況や本人の希望、認知症の状態に合った施設を紹介してもらえるでしょう。

認知症疾患医療センター

認知症疾患医療センターでは認知症の早期発見・診断や治療方針の選定、医療の提供などを重点的に行っています。県から指定を受けた医療機関であり、今回ご紹介する相談先の中では唯一の医療系窓口です。

認知症の専門知識を持ったスタッフが治療や介護に関する相談に乗ってくれるため、「未診断だが認知症かもしれない症状に困っている」という場合なども医療・介護に関するサポートを円滑に受けられます。

安心介護紹介センター

認知症の高齢者は生活リズムが崩れやすく昼夜が逆転してしまい、夜間に見守りが必要なケースもあります。また、一人で暮らす老親を頻繁に訪問することはできても、そばに居られないときは不安という場合もあるでしょう。

このようなときは施設入居の検討をおすすめします。介護施設検索サイト「安心介護紹介センター」では、画面上で施設を検索するだけでなく、介護の専門知識を持ったオペレーターがオンライン相談に乗ってくれます。

また、詳細な条件での検索も行えるため、認知症自体の受け入れ可否だけでなく「幻聴・幻覚」「介護拒否」など状態や症状別に受け入れ可能な介護施設も検索できます。

地域包括支援センターや居宅介護支援事業所と比較して紹介できる施設数・地域も多いため、多くの候補の中から本人の希望に合った施設を探せるでしょう。

どの老人ホーム・介護施設にしたら良いかお悩みの方へ

満足のいく老人ホームの生活は、どの施設に入居するかで大きく異なることがあります。

安心介護紹介センターの入居相談員は、高齢者の住まいにまつわる資格を有しており、多くの老人ホームの中から、ご本人やご家族のご希望に沿ったぴったりな施設を選定してご紹介させていただきます。

施設のご紹介から、見学、ご入居まで無料でサポートさせていただいておりますので、ぜひご利用ください。

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周田佳介

監修者:周田佳介

正看護師、介護福祉士、介護支援専門員、認知症ケア専門士、介護職員等によるたん吸引等の研修指導看護師の資格を取得している。
介護医療現場で13年従事し、今なお現役の訪問看護師として勤務している。急性期病棟や慢性期病棟といった医療機関のほか、特別養護老人ホーム、グループホーム、訪問介護事業所などの介護事業所での勤務経験があり、医療・介護の両面から福祉に携わる。