「食べない」「飲まない」に潜む理由とは?家庭でできる対応方法も解説【駒沢女子大学准教授 工藤美香先生インタビュー:その5】<PR>

高齢者は様々な理由で食事や水分が十分に取れなくなってしまいがちです。日々の食事に頭を悩ませている在宅介護者も多いことでしょう。安心介護では、多くの在宅訪問栄養食事指導の経験がある、駒沢女子大学准教授であり管理栄養士の工藤美香先生にお話を伺いました。今回は、噛む力・飲み込む力が弱くなった高齢者の食事と水分摂取のポイント、体重減少への対策についてご紹介します。 

高齢者が食べない・飲まないときの対策について

まずは、高齢者が食べなくなる・飲まなくなる理由や家族ができる対処法を伺いました。

Q:高齢者は、どのような理由があって食べなくなったり飲まなくなったりしてしまうのでしょうか?

A:活動性が下がってお腹が空かないということもありますが、噛む・飲み込む機能の問題と認知症は大きな理由になっていると思います。

噛む・飲み込む機能の問題とは、よく噛めない食べ物がある、食べたり飲んだりしたらむせるなど、口の中の問題です。

また、認知症によって食に興味がなくなることや食べる動作を忘れてしまうこと、食の好みが変わってしまうこともあります。同じものばかりを買うようになっていないかなど、認知機能のチェックも必要です。

Q:噛む力・飲み込む力が弱くなっていることに気付くポイントはありますか?

A:まずは、食べている状態を見ていただくとよいでしょう。

食べ物は、咀嚼(そしゃく)して細かくして唾液と混ぜ合わせ、ひと塊にして飲み込みますが、噛めない方や舌の動きが悪い方はそれができず、一口含んでもずっともぐもぐしている、口の中にずっと残っている、飲み込むときに上を向くなどの行動をします。

そうした状態・動作が見られた時は、食べやすくなるよう食形態の見直しが必要です。

Q:どのような食事なら食べやすいでしょうか?

A:噛むことができても、舌が動かないと食べ物を食塊(ひと塊)にすることができません。飲み込みが悪いときはある程度まとまりのある食形態にすると食べやすいでしょう。 例えば、あんをかける、マヨネーズを混ぜる、水分にとろみを付けるなどが簡単です。

口の中に食べ物が残る場合は、食材を軟らかく調理したり、軟らかく調理してから細かくしたりなど調理方法の工夫もおすすめです。

市販されているものだと、日本介護食品協議会が定めた規格で、「介護食の区分」を示したユニバーサルデザインフードがあります。「食べやすさ」の目安となる基準を「噛む力の目安」「飲みこむ力の目安」を4つの区分で表示しています。「容易にかめる」、「歯茎でつぶせる」、「舌でつぶせる」、「噛まなくてよい」など「噛む力・飲み込む力」の区分のマークがパッケージに表示されているので、食べる人の状態に合ったものが選びやすいです。 また、食べ物や飲み物に加えて混ぜるだけでとろみがつく「とろみ調整食品」では、加える量による「とろみの付き具合」を示しています。

他には、普通の食品も工夫次第で食べやすくできます。例えば、コンビニで販売されているレトルトパックの鯖の味噌煮を袋ごと温め、袋の上から潰すと味噌と絡みまとまりやすくなります。

自宅で調理する場合は、圧力鍋で野菜を煮ると軟らかくなり、見た目を保ちつつ軟らかい食事を作ることができます。摂食嚥下障害(噛む力・飲み込む力の障害)がある人は日によって状態が変わるので、体調が良いときはそのまま食べ、体調が悪かったり、疲れたりしたときはスプーンで潰して食べると良いでしょう。

ここで気を付けたいのは、嚥下や咀嚼の機能低下が心配だからと言って、むやみに柔らかすぎる食事や、ペースト食を選べば良いわけではないということです。

「誤嚥が怖いから」「柔らかいものを好むから」という理由で、安易にペースト食や流動食を選んでしまうことは、咀嚼や嚥下の機能の衰えにつながります。 その方の食事の状態を見つつ、時には専門職に相談し、適切な食形態を見極めていくことが大切です。

体重減少が気になる場合の対応方法

食べない・飲まない状態が続いた時には健康面への影響も気になるものです。やせ細ってきた、体重が減ってきた時の対応についても解説いただきました。

Q:どれくらい体重が減ったら対応をした方がよいのでしょうか?

A:1ヶ月に5%、6ヶ月で10%くらいの体重減少がある場合、対策が必要です。 本人はしっかり食べているつもりでも、いつの間にか食事量が減り、体重減少につながっていることがあります。大幅に体重が減ってからでは、なかなか改善しないので、定期的な体重測定を心がけましょう。

定期的な体重測定が難しい時は、ズボンや洋服のゆるさなど見た目の変化、今までできていたことができなくなった、外出頻度が減った、遠出が減ったなどの行動面の変化がないか注視すると良いでしょう。

Q:食事量が減っている場合には、どのように対応したらよいでしょうか?

A:本人の嗜好に合わせた食事ができると食欲につながりやすいです。

食べたいものが思いつかない場合には、昔好きだったものを問いかけてみると、想起のきっかけになるでしょう。

また、少量で栄養が補給できる栄養補助食品の活用もおすすめです。ゼリーや飲料など好みに合わせて選ぶことができますし、栄養補助食品で栄養を補給しながら食べたいものを食べてもらうことで、全体の食事量増加につながりやすいです。

栄養状態は一度悪くなると、改善するのはとても大変です。食事量が減少しているサインに気づいたらすぐに対処できるよう、食べられるもの、好きなものを日頃から把握しておきましょう。遠方から介護されている方は、地域の民生委員さんや地域包括支援センターへ相談しておくことをおすすめします。

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高齢家族の水分摂取について

食べない・飲まない時には、水分摂取も減りがちです。ここでは、水分不足で体に起こること、家族ができる水分不足の対策を見ていきましょう。

Q:水分が不足すると何が起こりますか?

A:体の水分量が減ると、脱水状態になります。

脱水の症状としては、口や喉などの渇き、発熱、倦怠感、脱力感、意識障害、血圧低下などがあげられます。

私たちの身体にはたくさんの水分が含まれていて、成人で体重の約60%、高齢者は約55%が「体液」と呼ばれる水分でできています。高齢者は、成人に比べて体の水分の割合が少なく、脱水傾向になりやすいといえます。

体の水分量が減ると体重減少も見られます。7日以内に4%(50㎏の方だと2㎏以上)の体重減少が脱水傾向の目安といわれています。 飲み物からの水分摂取はもちろん、食事にも水分が含まれているため、食事量減少を防ぐことでも脱水傾向の予防に繋がります。

Q:体重以外で水分不足に気付くポイントを教えてください

A:ハンカチーフサインというものがあります。

手の甲を指でつまんで2、3秒後に離した時、脱水傾向だと皮膚がハンカチのように持ち上がったままになるというものです。また、脇の湿り具合や肌の乾燥具合も水分不足に気付きやすいポイントです。

他には、トイレの回数や尿の色を観察する方法もあります。水分量が十分な時はトイレの回数が多く尿の色は薄黄色ですが、脱水傾向にある時はトイレの回数が減り、尿の色が濃くなります。

※腎機能の低下がある場合は、脱水傾向でも色が濃くならない場合があります。

Q:日常の中でできる水分補給のコツや、避けた方がよいものを教えてください

A:水分は1日の中で少しずつ摂るのが望ましいです。

シチューやスープなどの料理を増やしたり、水分量が多く含まれる果物や野菜を加えてみたりすると食事から摂取できる水分が増えます。例えば、大根おろしは取り入れやすいでしょう。また、料理の味を濃い目にしてお茶を飲んでもらったり、おやつと一緒にお茶を飲んだりするのもおすすめです。

飲み物の種類では、強い利尿作用があるアルコールは脱水つながるので注意が必要です。カフェインが含まれる飲料にも利尿作用がありますが、他に飲めるものがない場合は、気にせず飲んで大丈夫です。糖尿病がある場合は、血糖値に影響するため糖分の多い飲料の飲み過ぎを避けてください。

食事や水分のとろみについて

水分補給のコツに続いて、飲み込む機能が衰えてきた場合の水分摂取・とろみ付けについても解説いただきました。

Q:とろみの必要性や適切な付け方について教えてください

A:飲み込む機能が弱っていると、飲み物が喉を通り過ぎる速さと気管にふたをするタイミングが合わず、気管に入ってむせることがあります。今まで飲めていた飲み物で、飲みこみにくい、むせるなどの症状がある場合にはとろみをつけましょう。

水やお茶はむせるけど牛乳は大丈夫など、ものにより症状が異なる場合もありますので、見極めも大切です。水分でも少し濃度があるものだと水やお茶よりもむせない場合があるので、試してください。それでむせなければ、お茶や水に牛乳程度の濃度のとろみをつけるとよいでしょう。

日本摂食嚥下リハビリテーション学会では、とろみの段階を「薄いとろみ」「中間のとろみ」「濃いとろみ」の3つに分けています。その方に合ったとろみを見極めるには、薄いところから試して、むせない濃さを見つけてみてください。

見極めが難しい場合には、専門職に相談し、飲み込みの評価をしてもらいましょう。

家庭であれば、ティースプーン1杯(大体3ml)ぐらいの水やお茶を飲んでみることで、飲み込みの問題を見つけることができます。この際、牛乳などたんぱく質を含む飲み物は避けましょう。誤って気管に入った場合に、細菌が繁殖して肺炎を引き起こすリスクがあります。

Q:とろみ付けにはどんなものが使えますか。

A:簡単で使いやすいのはとろみ調整用食品です。

他には、食材で濃度を付けることも可能です。例えば、マヨネーズや生クリーム、ペースト状の練りゴマ、潰した芋やカボチャなどが使えます。アボカドも粘性があり、まとまりやすいです。

ご飯粒もご飯粒を汁物と一緒に煮ることでもとろみが付きます。ただ、ご飯粒は冷めると固くなりとろみの濃度が変わるので食べるタイミングに注意が必要です。

Q:すべての水分、食事にとろみを付けた方がよいですか?

A:すべての水分・食事にとろみをつける必要はありません。サラサラでむせたり飲み込みにくかったりするものに付けましょう。

一方で、とろみ付けが必要ない料理でも注意は必要です。野菜から水分がでたり、片栗粉が水っぽくなったりと時間経過で状態が変わることがあるためです。また、スイカなどの果物も噛むと口の中でじゅわっと水分が出るのでむせやすく、注意が必要な食材といえます。

こうした心配をしたくない場合は、時間が経っても変化しにくいとろみ調整用食品が安心です。私が訪問していた方の中には、とろみ調整食品を使った味噌汁の方がおいしいと言う方もいました。

とろみ調整食品は、ドラッグストアや調剤薬局、ネット通販などで購入できます。

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栄養状態が悪くなる前に対策を

食事量が減る原因のひとつである、噛む力・飲み込む力の低下がみられる場合には、食事の形態の見直しが大切です。大切なのは、栄養状態が悪化してしまう前に対策すること。こまめに体重を計測したり、ズボンのサイズが合わなくなったなどの変化を気にかけたり、食欲が落ちても食べられる物を探しておいたりなど、日頃からできる対策をしていきましょう。

また、高齢者が陥りやすい水分不足については、飲み物だけではなく、食べ物から水分を摂取することも大切です。少量ずつこまめに水分補給をして、脱水を予防しましょう。

食事や水分摂取の中でむせが心配な方は、とろみ調整用食品や食材を活用して、適切な濃さのとろみを付けましょう。適切なとろみが分からないという方は、専門職やケアマネジャーなどに相談してください。

管理栄養士 工藤美香
工藤 美香先生(管理栄養士・ 在宅訪問管理栄養士)

病院・施設・在宅の栄養管理に長く携わっており、急性期病院勤務時にはNST(栄養サポートチーム)の中心メンバーとして活躍。現在は駒沢女子大学 健康栄養学科の准教授として、臨床栄養学概論や臨床栄養学などの指導を担当するほか、日本在宅栄養管理学会理事も務めている。

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