将来認知症が心配。遺言書を作った方がいいですか?

遺言書は作った方がいいでしょうか。


 自身が年齢をかさねるにつれて意識していくのが自身の死の問題になります。最近では終活という言葉が世間にも浸透してきました。今は意識がはっきりしているけれど今後いつまでも元気という保証がない、と不安な方もいらっしゃることでしょう。また認知症になる前に遺言書を残しておきたいと考えるひともいると思います。では実際に認知症になってから残した遺言書は無効になってしまうのでしょうか。

 認知症になってからの遺言書が有効か無効になるのかは認知症の程度によります。しかしながら、相続開始後に、作成者の遺言能力に問題があったとして、遺言書の効力が争われると、判断能力や意思能力があったことを証明しなければならないことになりかねません。健康なうちに遺言書を残しておくことがベターだと言えます。

 

遺言書は認知症になる前に作りましょう

認知症と遺言の効力

 遺言書の効力が認められるためには、意思能力が必要と解されています。遺言者をする人が、遺言事項を具体的に決定し、その法律効果を弁識するに必要な判断能力すなわち意思能力を有すること要すると解されています。しかし、意思能力は法律で定義されていません。遺言能力は,しばしば遺言紛争の争点となりますが、最終的には、遺言者の年齢、当時の健康状態、遺言してから死亡するまでの間隔、遺言内容の複雑さ(本人に理解できた内容であったか)、遺言者と遺言によって利益を受ける者との関係性、などと勘案して、裁判所が判断することになります。

 認知症を発症していたとしても、そのことのみを理由として意思能力がなかったということにはなりません。

 遺言者が成年被後見人であったとしても、「事理を弁識する能力」を一時回復し、医師2名以上の立ち会いがある場合には遺言書を作成することができます(民法973条)。重度の認知症の状態の人が一時的に意識を回復したとき、2人以上の医者が立会い、判断能力や意思能力があるとされれば、遺言書を作成することも可能です。

遺言書とは?

 遺言書とは、自分の死後に一定の効果が発生することを意図した個人の最終意思で、一定の方式のもとで表示されたものとされています。

 遺言は、要式行為とされており、一定の方式が要求されています。例えば、法律上、同一の遺言証書で2人以上の者が遺言をすることは禁止されています。また、遺言事項は法律で限定されています。

 遺言書を作成する一番のメリットは遺言者自身の意思を反映できる点にあります。自身の財産の何を誰に遺贈するのかをはっきりさせることが必要です。

遺言書が効力を発揮するケース

 遺言書に遺言を残せばなんでもかんでも法的効力がみとめられるわけではありません。遺言書で予め定めておける事項は、以下のようになっています。

  1. 相続分に関すること…自身の財産について法定相続と違う分け方をしたいとき、遺言書を作成することで、法定相続分と違う分け方をすることができます。誰に何を残すのかということを正確に記載しましょう。なお、相続人となる者が、被相続人に虐待行為をするなどした者に対しては、遺言書によって相続排除をすることも可能です。
  2. 身分に関すること…自身の配偶者以外の女性との間に認知をしていない子どもがいる場合、遺言書で認知することも可能です。また子どもが未成年だったときなどは後見人の指定をすることもできます。遺言執行者の指定をすることも出来ます。またお墓や仏壇を引き継ぐ人を決めたり、保険金の受け取りをする人を指定することもできます。
  3. 財産に関すること…遺言書を残さない際は、基本的に相続人以外に相続権は発生しません。しかしながら、遺言書で受遺者を指定すると血縁関係なく遺贈することが出来ます。更に付け加えるとボランティア団体などに寄付するというようなことも可能です。

遺言書の作成にはいくらかかる

遺言書の作成にはいくらかかる?

自分自身で作成する場合

 自身で遺言書を作成する際には自筆証書遺言、もしくは秘密証書遺言という方法で遺言を作成することができます。自筆証書遺言の場合、特段費用はかかりません。自筆証書遺言は、以前はすべての文言を遺言者が自筆でかかなければなりませんでした。しかし、最近の法改正で、自筆証書によって遺言をする場合でも、例外的に、自筆証書に相続財産の全部又は一部の目録を添付するときは,その目録については自書しなくてもよいこととされました。

 自筆証書遺言を作成する場合、法律上の要件を満たさなければ遺言書としての効力が認められませんので、注意をする必要があります。自筆証書遺言のほかに、遺言者自らが作成することができる遺言書としては、秘密証書遺言があります。秘密証書遺言の場合は、公証役場にいって遺言を書いたことの証明をする必要があります。公証役場を利用する場合、遺言の対象となる財産によって算出された手数料のほか、遺言加算として11,000円が加算されます。

弁護士事務所など

 遺言書を作成する場合、専門家に相談をして作成をするほうが、安心であるといえます。作成手数料について、一般的には、遺言の対象となる財産によって算出されますので、財産の多寡によって変動します。遺言書としての効力をより確実にするためには、公正証書(遺言公正証書)とすることになります。公証役場に支払う手数料も、遺言の対象となる財産の多寡によって変動します。自筆証書遺言を作成する場合でも、専門家に相談をした上で作成する場合もあります。専門家の協力を得て、自筆証書遺言や秘密証書遺言を作成するということも考えられます。

信託銀行・信託会社

信託銀行や信託会社に、自分がどんな遺言書を残したいのかを相談することもあります。信託銀行・信託会社の担当と事前に協議をし、まとめた内容を、公正証書かすることもあ考えられます。

遺言書作成の注意点

遺言書作成の注意点

自分で作る場合

自筆証書遺言を作成する場合、遺言書としての要件を満たしているか、よく確認をしたほうがよいでしょう。また、基本的に自筆証書遺言は、すべて自筆で書く必要があります。この点、自筆証書遺言は、以前はすべての文言を遺言者が自筆でかかなければなりませんでした。しかし、最近の法改正で、自筆証書によって遺言をする場合でも、例外的に、自筆証書に相続財産の全部又は一部の目録を添付するときは,その目録については自書しなくてもよいこととされました。

専門家に依頼する場合

法定相続人が多数いる場合、遺産となる財産の数や種類が多い場合、自らの判断だけで遺言書を作成するのは、容易ではないといえるでしょう。将来の紛争を予防し、相続を「争族」にしないようにするためには、専門家に相談をして、遺言者の意思がよりよく反映されるようにしたほうがよいといえるでしょう。

さいごに

 今回は認知症のことと、遺言書のことについて説明をさせていただきました。終活などの一環で遺言書を残す場合に確認していただきたいこととしては、

  1. 遺言書は認知症との診断を受ける前に作成した方がよいでしょう。認知症になってからでも、作成は可能ですが、後日の紛争を回避するという点では、早め早めに作成をしておく方がよいと言えます。
  2. 遺言書は厳格な要式行為とされています。また、内容も明確にしておかなければいけません。ご自身で遺言書を作成する際は、遺言書を残す目的をはっきりと明確化してからにしましょう。あいまいな内容ですとせっかく作った遺言書が無駄になる可能性があります。多少コストはかかるかもしれませんが、専門家に相談をして、遺言書を作成するほうが無難でしょう。

以上が確認していただきたいこととなります。遺言書とは自身の死後に自分の意思を伝える大切なものになります。この記事を機会に遺言書についてもっと深く考えたいと思っていただけたら幸いです。

※この記事は2020年6月時点の情報で作成しています。

 

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監修者:鈴木 一
監修者:弁護士 鈴木 一 (虎ノ門協同法律事務所)

1994.03 青山学院大学法学部卒業
2002.10 弁護士登録(第一東京弁護士会)
2002.10〜2004.05 津山法律事務所
2004.09〜2006.01  弁護士法人渋谷シビック法律事務所
2006.2~  虎ノ門協同法律事務所