帰宅願望や夕暮れ症候群(夕方症候群)の原因と対応・対策はどうすればいいでしょうか?

質問

質問者高齢の親と暮らしています。平日はデイサービスに通っているのですが、すぐに家に帰りたいと言って施設の方を困らせるようです。逆に、家にいても「帰る」と言って外に出ようとします。なぜか夕方が多いのですが、「夕暮れ症候群」というのはこのことでしょうか。自分の家にいても「帰りたい」と言うのはなぜですか?またそういう時には、どんな対応をすれば良いのでしょう。治す方法があれば教えてください。

 

専門家

認知症の人が「家に帰りたい」などの帰宅願望を訴えることは、よく見られる症状のひとつです。帰宅願望は夕方から夜にかけての時間帯に出現しやすいのが特徴で、「夕暮れ症候群」とも呼ばれています。

また、帰宅願望は自宅以外の場所にいる時だけではなく、自宅にいる場合にも起こります。これは本人に「自宅にいる」という自覚がないためです。そのため、周囲の人にとっては理解がし難いことであっても、頭ごなしに否定をする対応は良くありません。

ここでは、帰宅願望に対する知識を深めて適切な対応ができるようにするために、その原因や対応策について解説していきます。  

認知症の帰宅願望とは?

認知症の帰宅願望とは?

「家に帰りたい」と言われると、介護する側はどう接して良いのかわからなくなります。認知症になると、なぜ「帰りたい」と頻繁に口にするようになるのでしょうか。最初に、認知症の帰宅願望について見ていきましょう。

「帰りたい」と要求する行動

帰宅願望とは、「帰りたい」と願い、行動すること。

認知症の周辺行動のひとつとして知られており、「帰りたい」と何度も訴えたり実際にその場所から出かけようとしたりします。

家族が知らないうちに家から出て、帰る場所を探し求め、徘徊するケースも見られます。

本人の中にある「どこか」への帰宅であるため、自宅にいてもこうした言動が現れる可能性があります。

帰宅願望の特徴

帰宅願望は夕方から夜にかけて起こりやすい傾向があるため、「夕暮れ症候群」とも呼ばれます。

デイサービスなどに通っている場合、それまでは普通にしていても、夕刻が近づくにつれて「帰りたい」と言い出すことが多いです。家族と一緒にいても、夕方になると「帰りたい」と言い出して衝動的な行動を起こすこともあります。

本人なりの理由がある

介護する人から見ると「自分の家で何を言っているのだろう」と困惑してしまいますが、帰宅願望が起こるのには本人なりの理由があります。

年齢を重ね、幸せだった子ども時代の思い出がある「故郷に帰りたい」という気持ちが帰宅願望という形で表れているのかもしません。今の場所が自分にとって居心地が良くないと感じていると「安心できるどこかに帰りたい」という方向に気持ちが向きます。

また親や兄弟などの懐かしい人そのものに「会いたい」という気持ちから、「帰りたい」と言っているのかもしれません。 帰宅願望の根底にあるものは、人それぞれです。介護する側は、そうした本人の思いをできるだけ理解する必要があります。

認知症の帰宅願望の原因

認知症の帰宅願望の原因

認知症の帰宅願望の原因となる要素について、見ていきましょう。

自分がいる場所・人についての認知が低下

認知症の人の帰宅願望が起こる要因は、認知症の中核症状である「見当識障害」や「記憶障害」が背景となっていると考えられます。

自分が今いる場所について理解ができないと、不安を感じて逃げ出したくなるという行動につながります。また場所だけでなく、一緒にいる人が誰なのかわからなくなり、恐怖を感じてしまうこともあるでしょう。そうした感情がもとで、安心できる場所に行きたい、家に帰りたいという気持ちが生まれることもあります。 このように「帰りたい」には、さまざまな要因が存在しているのです。

環境や体調・精神の変化に適応できない

認知症の人は、環境の変化に適応するのが苦手です。

そのため、見知らぬ場所・見知らぬ人たちに囲まれていると、帰宅願望が起こりやすくなります。 体調不良が帰宅願望の原因となっていることもあります。

体調の悪さを上手く伝えられず、ストレスを感じていることが「帰りたい」という言葉になって現れる場合もあります。

怒られたり悲しいことがあったりして、精神的な不安を感じている時も帰宅願望が生じやすくなります。気持ちの動揺から逃れる手段として、どこか安らぐ場所を求めている言動であると言えます。

過去の記憶・習慣

夕方は社会の動きが慌ただしくなる時間帯です。「夕暮れ症候群」が多く見られるのも、そうした事情が関係していると考えられています。

夕方だから帰宅する、夕方だから買い物に出かける、食事の支度をするなど、過去の記憶や習慣に関連するものです。

主婦であった高齢者が、「もう時間だから家に帰って夕食の支度をしなければならない」と言ってデイサービスの施設を出ようとする例も見られます。

認知症の帰宅願望への考え方

認知症の帰宅願望への考え方

認知症の帰宅願望について、介護する側ではどのように受け止めれば良いのでしょうか。帰宅願望への対応策や考え方について、見ていきましょう。

問題行動だと考えない

まずは、帰宅願望を問題行動だと考えないことが大切です。否定するのではなく、帰宅願望は誰にでも起こり得る感情だと理解しましょう。

住み慣れた場所、安心できる家に戻りたいという気持ちになるのは、普通のことです。そこを察すれば、不安な気持ちになった時に「帰りたい」と訴えるのは自然なことでしょう。

高齢者が帰宅願望を持つ背景には、不安や焦り、居心地の悪さ、恐怖といった色々な感情が関係しています。

「帰りたい」というのが本人にとっては自然な訴えであるのを理解し、抑制や否定をしないという姿勢がとても大切です。

根本原因を考える

帰宅願望の「帰りたい」という言葉の裏側を知ろうとするのは、家族としてとても大事なことです。

認知症の人は、自分がどこにいて何をしているのか理解できていないことが多いです。不安や孤独を抱えていたり、記憶が混乱していたりして、精神的にも不安定な状態と言えるでしょう。

自宅を見知らぬ場所として認識してしまい、居心地の悪さから抜け出そうとすることもあります。

「帰りたい」のは安心したいから。何がそう思わせているのか、その原因を考えることが帰宅願望の改善につながっていきます。

落ち着かせることを優先する

認知症の人に「帰りたい」を連発されると、介護する側がイライラしてしまうこともあります。

しかし、介護する側が焦ったり怒ったりするのは逆効果です。声を荒げて乱暴な態度をとれば、相手はさらに恐怖を感じて不安感を増大させてしまうでしょう。

「帰りたい」のを止めるのではなく、相手の気持ちを落ち着かせるのが優先です。どのように声をかければ安心できるのか、家族で考えて対応していきましょう。

認知症の帰宅願望への対応

認知症の帰宅願望への対応

認知症の帰宅願望に対して、介護する人はどのように対応すれば良いのでしょうか。具体的な対応方法について、見ていきます。

気持ちを否定せず受け止める

「帰りたい」と言われたら、その気持ちを否定せず、まずはいったん受け止めることが大切です。

そこで嘘をついたりごまかしたりすると、逆効果を招いてしまいます。帰りたい理由を聞き、そこから興味のある方向へと会話を進めていきましょう。

そらすのではなく、自然に話をしながら、相手の気持ちが鎮まるようにしていきます。

作業や散歩に誘う

気持ちを落ち着かせた後は、気持ちをそらす誘いかけをするのも有効手段となります。

例えば自宅で「帰りたい」と言われたら、「帰る前にお手伝いをして欲しい」とお願いをしてみましょう。洗濯物をたたんだり新聞をまとめたりといった簡単な作業なら受け入れられやすいですし、一緒に行動しているうちに帰宅願望が薄れてくるかもしれません。

お茶を飲むのも心を穏やかにさせるのには、良い方法です。

どうしても外に出たがるのであれば、一緒に出かけてそのまま散歩に移行するという方法もあります。 相手の言い分に逆らわず、気持ちを切り替えてもらえるような方向で考えていきましょう。

安心できる環境を整える

認知症の帰宅願望は、その場をしのぐだけでは改善しにくいです。くり返さないためにも、心の「不安をなくしていくこと」が重要になります。

家族にとってかけがえのない存在であること、大切に思っていることなどを日頃から伝えるのも効果的です。行動する時は、自尊心を傷つけないように配慮しましょう。

お気に入りの椅子や音楽など、本人の好むものに目を向けて、居心地の良い環境を整えます。仲の良い友人やお孫さんなど、一緒にいると機嫌が良くなる人をキーパーソンとして見つけておくと、心を落ち着かせたい時の頼りになります。

帰宅願望を否定しない

帰宅願望を否定しない

どこかに「帰りたい」という望みは、決して異常な感覚ではありません。認知症の人はその場から逃れたいというやるせない気持ち、寂しく切ない気持ちから、そうした言葉を口にします。家族はその点を十分に理解し、対応していくことが大切です。介護する側は困惑してしまいがちですが、相手の言動を頭から否定するのは良くありません。冷静に対応しながら、「何が望みなのか」を聞き出していくことで、改善へのヒントが得られます。

 ※この記事は2020年2月時点の情報で作成しています。

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監修者:寺岡純子

監修者:寺岡純子(てらおか じゅんこ)

主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。