ビタミンD不足で骨粗しょう症に?高齢者がとりたいビタミンD

ビタミンD不足で骨粗しょう症に?高齢者がとりたいビタミンD

ビタミンDは丈夫な骨を作るために重要な栄養素の1つです。

高齢者はビタミンD不足になると骨粗しょう症で骨折するリスクが高まるため、毎日の食事から必要な量をきちんと摂取したいところです。

高齢者のビタミンD目標摂取量や、不足したときにどんなことが起きるか、どんな食材に多く含まれているかなど、高齢者に必要なビタミンDの情報をご紹介します。

ビタミンDとは

ビタミンDは小腸や腎臓でのカルシウムの吸収を促進し、強い骨を作るサポートをするビタミンです。食材から摂取できるほか、日光を浴びることによって体内でも生成されます。

ビタミンには水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンがありますが、ビタミンDはこのうち脂溶性ビタミンに分類されます。

水溶性ビタミンは水に溶けやすく、水に流れ出たり熱で失われる一方で、過剰に摂取した分は尿で排出されるため、過剰になる心配はほとんどありません。

しかしビタミンDなどの脂溶性ビタミンは油に溶けやすい性質をもち、水で洗っても流れ出ないほか、水溶性ビタミンほど熱に弱くありません。ただし、とりすぎると体内に蓄積されるため、過剰摂取への注意が必要です。

高齢者が1日に取りたいビタミンDの摂取量(60代以上の摂取量一覧を記載)

厚生労働省が5年おきに公表している「日本人の食事摂取基準(2015)」によると、18歳以上のビタミンDは男女ともに摂取目安量5.5μg、耐用上限量100μgとなっています。

この値は高齢者の方にも当てはまります。60歳以上のかたの1日あたりの摂取目安量と耐容上限量を表で示すと次のようになります。

 

 

男性

女性

 

摂取目安量

耐容上限量

摂取目安量

耐容上限量

60歳以上

5.5μg 

100μg 

5.5μg 

100μg 

 

ちなみに「平成29年の国民健康・栄養調査」では、日本人の平均的なビタミンD摂取量は60〜69歳で8.2μg、70〜79歳で9.3μg、80歳以上で9.0μgと報告されていて、いずれも摂取目安量5.5μgを上回っています(全ての年代を合わせた平均は7.2μg)。

しかし「日本人の食事摂取基準(2015)」では、5.5μgというのは食品からとるビタミンDの目安量であり、実際に1日に必要なビタミンDの量は15μgと説明されています。

15μgのうち食品分の5.5μgを除いた7.5μgは、日光を浴びることで摂取する計算になっていますが、高齢になるにつれて皮膚によるビタミンD生成の効率が落ちるほか、外出する機会が減る方も多いため、高齢者はビタミンD不足に十分に注意しなければなりません。

高齢者がビタミンD不足になるととどうなるか

ビタミンDが不足すると、小腸や腎臓でのカルシウム吸収率が低下します。カルシウム吸収量が低下すると骨が軟化し、小児の場合は「くる病(小児)」、成人の場合は「骨軟化症」といった病気につながります。

特に高齢者は加齢によって骨量が減少しているため、ビタミンDが長期に不足すると、骨粗しょう症になるリスクがあります。

骨粗しょう症になるとちょっとした動作で骨折して寝たきりになってしまうケースがあるため、高齢者の身体を丈夫に保つためには、ビタミンDをきちんと摂取することが重要になってきます。

※ くる病とは骨が石灰化不全に陥る疾患です。子供は軟骨が石灰化することで成長しますが、くる病になると背が伸びづらくなったり、骨が変形したりといった症状が現れる場合があります。

高齢者かが食べやすいビタミンDを多く含む食品

ビタミンDが含まれている食品は限られており、魚類が代表的で、そのほかにきのこ類、卵類などがあります。

ビタミンDを多く含む食品TOP10

文部科学省の「食品成分データベース」によれば、ビタミンDの含有量Top10の食品は次のようになっています。

 

順位

食品名

成分量

100gあたりμg

1

きのこ類/(きくらげ類)/あらげきくらげ/乾

128.5

2

魚介類/(かつお類)/加工品/塩辛

120.0

3

魚介類/あんこう/きも、生

110.0

4

きのこ類/(きくらげ類)/きくらげ/乾

85.4

5

魚介類/うまづらはぎ/味付け開き干し

69.0

6

魚介類/(いわし類)/しらす干し/半乾燥品

61.0

7

魚介類/いかなご/煮干し

54.0

8

魚介類/(いわし類)/みりん干し/まいわし

53.0

9

魚介類/(いわし類)/まいわし/丸干し

50.0

9

魚介類/にしん/身欠きにしん

50.0

9

魚介類/(いわし類)/たたみいわし

50.0

 

厚生労働省「食品成分ランキング」より引用、参照日:2019年8月25日

TOP10のうちほとんどが魚であることがわかります。第1位のあらげきくらげは不溶性食物繊維の含有量でも第1位にランクインしていて、食物繊維が不足しがちな方にもうれしい栄養豊富な食材です。

高齢者でも食べやすいビタミンD豊富な食品

高齢者でも比較的食べやすく、ビタミンDが豊富な食品を、魚類、きのこ類、卵類にわけていくつかご紹介します。

※ 食品名に併記している値は100gあたりのビタミンD含有量です。

① 魚類 

しらす干し 61.0μg、いかなご(煮干し)54.0μg、いわし(丸干し)50.0μg、身欠きにしん 50.0μg、かわはぎ 43.0μg、紅鮭(焼き)38.4μg、さんま(みりん干し)20.0μg

 

 骨ごと食べることができる魚は、ビタミンDだけでなくカルシウムも豊富にとれるため、丈夫な骨を作って骨粗しょう症を防ぐためにぴったりの食品です。

骨まで柔らかく煮た魚の缶詰を食べたり、小魚のふりかけをごはんや料理にふりかけるのも、手軽にビタミンDとカルシウムを摂取できておすすめです。

② きのこ類

あらげきくらげ(ゆで)25.3μg、まいたけ(ゆで)5.9μg、エリンギ(ゆで)3.1μg、しいたけ(ゆで)1.1μg、えのきたけ(ゆで)0.9μg、ぶなしめじ(ゆで)0.9μg

スーパーで一年中手に入り、比較的安価なきのこにも、ビタミンDは豊富です。

なかでもあらげきくらげやまいたけ、エリンギに多いため、どのきのこを買うか悩んだときはこれらを選んでみてはいかがでしょうか。

※ 上記は全てゆでた場合の値であり、調理法を油いためや焼きなどに変えることで、100gあたりのビタミンD含有量は多少変化します。

③卵類

ピータン 6.2μg、鶏の卵黄 5.9μg、鶏の全卵 1.8μg、うずら卵の全卵 2.5μg、うこっけいの全卵 1.0μg

鶏の卵だけでなく、日本で食用として馴染みのあるうずらの卵や、ピータン(あひるの卵)にもビタミンDは含まれています。

ただし、ビタミンDを含んでいるのは卵黄のみで、卵白からはビタミンDをとれません。

ビタミンDは油と一緒にとることで吸収率がアップ

脂溶性のビタミンであるビタミンDは油と一緒に摂取すると吸収されやすくなります。

油炒めなど油を使った調理をすることで、油を使わない食べ方より効率的にビタミンDをとることができます。

サプリメントやビタミンDを強化した乳製品

ビタミンDが含まれている食品は、魚類やきのこ類、卵類と限られており、ビタミンDをとるのはなかなか難しいという高齢者もいらっしゃるかもしれません。そんな場合はビタミンDのサプリメントを利用するという方法もあります。

また、ビタミンDを強化した牛乳やヨーグルトなども販売されているため、お店でチェックしてみてくださいね。ビタミンDとカルシウムを一緒に取れますよ。

日常的に日光を浴びることが大切

ビタミンDをとる方法は食事だけに限らず、日光浴によって紫外線を浴びることで体内でも生成されます。

高齢になって外出をする機会が減りがちという方は多いかもしれません。しかし可能であれば毎日外に出て紫外線を浴びることが、ビタミンD不足を防ぐ上で重要です。もし外に出られない場合には、食事から積極的にビタミンDをとるようにしてください。

ただし真夏の屋外での熱中症や、冬場の寒さにはくれぐれもご注意くださいね。木陰にいてもビタミンD生成は可能です。一方、ガラス越しに日光を浴びてもほとんどビタミンDはつくられないため、木陰でもいいのでガラス越しでない外の空気に触れることが大切です。

※ 十分な量のビタミンDを生成するために必要な日光浴の時間は、地域や季節、時間帯などによって異なります。地域ごとの目安は「国立環境研究所 地域環境研究センター」が公表している「ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報」にて確認できます。

ビタミンDのとりすぎは危険?

過剰摂取は高カルシウム血症の原因に

ビタミンD不足が高齢者にもたらす症状についてはすでに見てきましたが、ビタミンDをとりすぎたときは何か問題はあるのでしょうか。

カルシウムの吸収を促すビタミンであるビタミンDは、とりすぎると高カルシウム血症の原因になる場合があります。

高カルシウム血症とは血中のカルシウム濃度が一定の基準以上になった状態のことで、便秘や嘔吐、食欲減退、さらに悪化すると幻覚や錯乱などの脳の機能障害といった症状を伴います。

サプリメントのとりすぎに注意

「日本人の食事摂取基準(2015)」では、高齢者を含む18歳以上のビタミンDの耐容上限量は男女ともに100μgとなっており、通常の食事をしている限り、過剰になることはほとんどないと言われています。

ただし、ビタミンDのサプリメントで日常的にビタミンDを過剰摂取してしまうケースがあります。カルシウムの吸収量が増加して高カルシウム血症につながりますので、サプリメントを飲むときは耐用上限量にお気をつけください。

まとめ

ビタミンDは高齢者の健康維持に欠かせない栄養素です。

強い骨を作るサポートをしてくれるので、丈夫な身体を保つためにビタミンD不足はぜひとも避けたいところ。食事によるビタミンD摂取に気をつけるだけでなく、外出が可能であれば、日光浴も欠かさずに行ってくださいね。

高齢になって食が細くなると、健康な体を保つために必要な栄養をいかに効率よくとるかが重要になってきます。

ビタミンDを多く含む食品を頭に入れておけば、毎日の食事に無理なくビタミンDを取り入れることに役立つことでしょう。もしこの記事が参考になった場合は、ぜひシェアをして拡散をお願いします!

※この記事は2019年10月時点の情報で作成しています。

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監修者:春田 萌

日本内科学会 総合内科専門医、日本老年医学会所属
15年目の内科医師です。大学病院、総合病院、クリニックでの勤務歴があります。訪問診療も経験しており、自宅や施設での介護についての様々な問題や解決策の知識もあります。