ビタミンCは高齢者が積極的にとりたい栄養素の1つです。ビタミンCに対していいイメージを持っている方は多いと思いますが、具体的にどんな働きをしているかご存知ですか? この記事では高齢者が1日にとりたいビタミンC摂取量や、不足したときに出る症状、ビタミンCを多く含んでいる食品などをご紹介します。
ビタミンCとは
ビタミンCは水溶性ビタミンの一種で、強い抗酸化作用を持っているほか、コラーゲンの合成に関わったり、免疫力を維持したりなど、私たちの体内で重要な働きをしています。 イヌやネコをはじめ、哺乳動物のほとんどは体内でビタミンCを合成できますが、人間は進化の過程で体内でビタミンCを作る能力を失ってしまったため、食品からビタミンCを摂取しなければなりません。
【ビタミンCのさまざまな働き】抗酸化作用金属が錆びたり、スライスしたリンゴが茶色く変色したりなど、酸化によって物が変化することは、誰の生活においてもなじみのあることかもしれません。この酸化は実は人間の体内でも起こっていて、老化や病気につながります。 ビタミンCはビタミンEとともに活性酸素を除去する役割をしており、体内で起こる酸化に対抗してくれるのです。 コラーゲンの合成に不可欠ビタミンCは皮膚や細胞のコラーゲンの合成に欠かせない栄養素でもあります。コラーゲンはタンパク質の一種で、皮膚の約70%はコラーゲンでできているほか、骨や血管にもたくさん存在し、皮膚、骨、血管を健康に保っています。 免疫力の維持ビタミンCは免疫力の維持にも一役買っています。ビタミンCが産生を促すインターフェロンというタンパク質が、体内へのウイルスの侵入を防ぎます。またビタミンCにはウイルスと闘う白血球をサポートする働きもあります。 |
高齢者が1日にとりたいビタミンC摂取量
厚生労働省が公表している「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、60歳以上の高齢者が1日にとりたいビタミンC摂取量はこのようになっています。
男性 |
女性 |
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推定平均必要量 |
推奨量 |
推定平均必要量 |
推奨量 |
85mg |
100mg |
85mg |
100mg |
※ 推定平均必要量とはその年代の約半数の人の必要量を満たす量のことで、推奨量はその年代のほとんどの人の必要量を満たす量のことです。
※ ビタミンCの推定平均必要量85mg、推奨量100mgという値は、60歳以上の高齢者に限らず、15歳以上のすべての男女に当てはまります(妊婦、授乳婦を除く)。
高齢者でビタミンCが不足するとどうなるか
ビタミンC不足は壊血病を引き起こします。高齢者だけがかかる病気ではありませんが、食事量が減りビタミンCの摂取量が不足しがちな高齢者は特に注意が必要です。
壊血病は全身から出血して最悪の場合死に至る病気です。ビタミンCを十分に摂取せず、コラーゲンが不足して毛細血管がもろくなることで起こります。出血のほか、全身の倦怠感、貧血、筋肉減少、呼吸困難、食欲不振、心臓障害などの症状も伴います。
そもそもビタミンCが発見されたのは、大航海時代に多くの船乗りたちが壊血病で亡くなり、その原因が探られたことがきっかけでした。
壊血病の予防に必要なビタミンCの摂取量は1日6〜12mgとされ、少量のビタミンCで防ぐことができる病気ですが、極端に偏った食生活をしていると、現代でも壊血病を発症する恐れは十分にあります。
ビタミンC不足は壊血病以外に認知症や糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)につながるという研究もあり、こうした面からもビタミンCは高齢者の健康を保つためにしっかりとっておきたい栄養素といえるでしょう。
高齢者が食べやすいビタミンCを多く含む食品
ビタミンCは野菜や果実、いも類、緑茶、藻類などに多く含まれています。ビタミンCを多く含む食品TOP10がこちらです。
順位 | 食品名 | 成分量 100gあたりμmg |
1 |
果実類/アセロラ/酸味種、生 |
1700 |
2 |
し好飲料類/青汁/ケール |
1100 |
3 |
調味料及び香辛料類/パセリ/乾 |
820 |
4 |
果実類/アセロラ/甘味種、生 |
800 |
5 |
し好飲料類/(緑茶類)/せん茶/茶 |
260 |
6 |
果実類/グァバ/白肉種、生 |
220 |
6 |
果実類/グァバ/赤肉種、生 |
220 |
8 |
藻類/あまのり/焼きのり |
210 |
9 |
藻類/あまのり/味付けのり |
200 |
9 |
野菜類/(ピーマン類)/トマピー/果実、生 |
200 |
食品成分データベースから引用
種類別の食品例と高齢者が食べやすい食品
次にビタミンCを多く含む食品について、野菜、果物、いも類、飲み物別にいくつかご紹介します。※食品名に併記した値はその食品100gごとのビタミンC含有量です。
・野菜
乾燥パセリ 820mg、赤ピーマン 170mg、青ピーマン 76mg、めキャベツ 160mg、キウイフルーツ 140mg、なずな 110mg、ブロッコリー 120mg、かぶ 82mg、カリフラワー 81mg など |
・果物
アセロラ 1700mg、グァバ 220mg、キウイフルーツ 140mg、レモン 100mg、柿 70mg、ドライマンゴー 69mg、いちご 62mg、オレンジ 60mg など |
・いも
さつまいも 29mg、じゃがいも 28mg、きくいも 10mg、ながいも 5mg など |
・飲み物
ケールの青汁 1100mg、せん茶 260mg、玉露 110mg、抹茶 60mg、昆布茶 6mg、番茶 3mg ※茶葉100gごとの含有量 |
高齢者が食べやすい食品は?
ビタミンCを含む食品は野菜、果物、いもなど多様で、高齢者でも食べやすいものが少なくありません。
これらの食品を毎日の食事メニューに取り入れるのはもちろん、ビタミンC含有量が多い飲み物を飲むのも手軽でオススメです。例えば、せん茶はビタミンCを含んでいますし、食物繊維やビタミンKも豊富です。
高齢者本人の好みにあわせて、ビタミンC豊富な食品や飲み物を組み合わせ、ビタミンCをたくさんとりましょう。
水に溶けやすいので調理方法に工夫を
食材を細かく切る、やわらかく茹でるなど、高齢者が食べやすいよう調理方法に工夫をしている方は多いかもしれませんが、ビタミンCを効果的にとるためには、ビタミンCが失われにくくするための調理方法の工夫も大切です。
というのもビタミンCは水に溶けやすく、包丁で切って水で洗ったり、煮たりするだけでビタミンCが大きく失われるためです。食品が水に接する時間を少なくしたり、煮汁ごと飲むなど工夫することで、ビタミンCの損失を少なくできます。
いも類に関してはでんぷんがビタミンCを保護しているため、ほかの食品と比べてビタミンCが残りやすいと言われています。
ビタミンCと一緒にとると効果的な栄養素
ビタミンCは、ほかの栄養素と組み合わせることで、さまざまな効果が期待できます。例えば、ビタミンCと鉄やカルシウムを一緒にとると、鉄やカルシウムの吸収率がアップして、貧血を予防したり、強い骨を作ったりするのに役立ちます。
さらにコラーゲンと組み合わせると美肌効果、葉酸やビタミンB12と組み合わせると貧血予防効果が期待できます。
また、ビタミンCと一緒にビタミンP(ヘスペリジン)を摂取することで、ビタミンCを安定して、体内に効率よく取り込めます。
ビタミンPはミカンの白い袋や皮などに多く含まれているため、ミカンを食べるときは白い袋ごと食べると、ビタミンCをより効果的にとることができますよ(ミカンの可食部100gあたりのビタミンC含有量は35mgです)。
ストレスやアルコールには要注意
日々ストレスを感じていたり、お酒をたくさん飲む高齢者は、ビタミンCをしっかりとっているつもりで知らず知らずのうちにビタミンC欠乏に陥っている可能性があります。
ビタミンCはストレスを受けた時に体内で分泌されるホルモンの合成に関わっていて、ストレスを感じるとビタミンCが大量に消費されます。
またアルコールを肝臓で分解する際に、「アセトアルデヒド」という有害物質が出てくるのですが、そのアセトアルデヒドを分解するためにビタミンCが使われます。
そのためストレスが多くかかっている方や、お酒をたくさん飲む方は、そうでない方と比べてビタミンCをより積極的に摂取する必要があります。可能であれば、なるべくストレスを避け、お酒を控える生活が好ましいです。
ビタミンCに過剰摂取の心配はある?
水溶性ビタミンであるビタミンCは、とりすぎても尿に混じって体外に排出されるため、通常の食事による過剰摂取の心配はありません。
しかしいくらビタミンCが体にいいからといって、サプリメントを大量にとることはオススメできません。ビタミンCの摂取は通常の食品からを基本とし、サプリメントなどからの摂取は1g/日未満に抑えることが推奨されています。
まとめ
抗酸化作用やコラーゲンの合成、免疫力の維持といった働きをするビタミンCは、高齢者がいきいきとした生活を送るために欠かせない栄養素です。
ビタミンC含有量の多い食品は幅広く、高齢者の食卓にも並べやすいものが多いと思いますが、デザートに果物を取り入れたり、調理方法に工夫することで簡単かつより効率的に摂取できますので、試してみてくださいね。
せっかくビタミンCをたくさん摂取しても、ストレスやアルコールによってビタミンC不足になることもありますので、くれぐれも気をつけてください。
体にいい栄養素として有名なビタミンCですが、その働きなどを詳しく知らない方はまだいらっしゃいます。より多くの方に知ってもらうためにぜひシェアをお願いします。
※この記事は2019年9月時点の情報で作成しています。

日本内科学会 総合内科専門医、日本老年医学会所属
15年目の内科医師です。大学病院、総合病院、クリニックでの勤務歴があります。訪問診療も経験しており、自宅や施設での介護についての様々な問題や解決策の知識もあります。