訪問看護とは? 医療的ケアが必要な高齢者を支える介護保険サービス

医療的ケアが必要になってくると、本人や家族だけでは自宅の生活に不安が出てくるものです。そんな時に頼りになるのが訪問看護です。本記事では、訪問看護の内容や利用方法を解説します。訪問介護と同様に、在宅介護を支える重要なサービスなので、ぜひ確認しておきましょう。

目次

  1. 訪問看護とは?知っておきたい基本ポイント
  2. 訪問看護のサービス内容
  3. 訪問看護でかかる料金
  4. 訪問看護の利用方法
  5. 訪問看護の利用で在宅介護に安心をプラス

訪問看護とは?知っておきたい基本ポイント

訪問看護サービスの基本ポイント

まずは、訪問看護サービスの基本ポイントを確認していきましょう。

在宅で専門職による看護ケアが受けられるサービス

年齢が高くなると、健康上の問題を抱えていたり、在宅で医療機器や医療器具を使ったりすることも多くなります。本人や家族だけでは、自宅での生活を続けるのが不安に感じるかもしれません。そんな時に頼りになるのが、訪問看護サービスです。訪問介護とは違い、医療処置を行うことができます。

訪問看護では、看護師などが利用者宅を訪問して、医師の指示に基づいた健康状態の確認や医療的なケア、医療器具の管理、排泄や食事といった身体のケアなどを行います。主治医に直接聞きづらい疑問に答えてくれたり、在宅での療養や看護についての相談にも乗ってくれたりするので、利用者本人や家族にとってメリットの多いサービスです。

訪問する職種は、病院や診療所、訪問看護ステーションの看護師、准看護師、保健師、助産師などです。理学療法士・作業療法士・言語聴覚療法士などの専門職が、リハビリを行うこともあります。

在宅介護では、訪問介護や訪問看護など、複数の事業所から様々な職種がサービスに入ります。それぞれがバラバラにサービスを提供するのではなく、ケアマネジャーを中心にやり取りをし、自宅に連絡ノートを置いて職種間の連携を取りながら、利用者の支援を行います。

訪問看護を利用できる対象者は?

介護保険サービスの訪問看護を利用できるのは、要介護1~5の認定を受けた方です。要支援1、2の方は、介護予防訪問看護を利用できます。

有料老人ホームに入居している場合、看護師が配置されている「介護付き」では利用できませんが、「住宅型」や「健康型」であれば介護保険を利用して訪問看護が利用できます。

介護付き有料老人ホームや認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、軽費老人ホーム、では一般的に訪問看護の利用はできませんが、訪問看護ステーションと委託契約している施設であれば利用が可能です。

24時間対応の訪問看護事業所も

24時間対応体制の整った訪問看護ステーションであれば、深夜や早朝の対応や緊急時にも対応が可能です。

症状が急変する可能性のある方やターミナル期の方、深夜や早朝にケアの必要がある方は、24時間対応可能な事業所を選ぶといいでしょう。

訪問看護のサービス内容

訪問看護のサービス内容

それでは、訪問看護のサービス内容を見ていきましょう。

利用者と家族を支える訪問看護

訪問看護では、医師の「訪問看護指示書」に従ったサービスを行いますが、利用者のケアだけではなく、家族の支援も訪問介護の大切な役割です。

在宅介護で最も身近な医療の専門家として、主治医とのコミュニケーションを円滑にしてくれる役割を担い、持病のある方や医療依存度が高い方、ターミナル期の方の在宅での生活を支えてくれます。

訪問看護で受けられるサービス

訪問看護で受けられるサービスには、以下のようなものがあります。

  • 病状の観察や健康状態の確認
  • 医師の指示に基づいた医療処置(点滴やインシュリン注射、ドレーン・カテーテルなどの管理など)
  • 療養上のお世話(排泄や入浴の介助、洗髪や清拭、食事の介助など)
  • 認知症のケア(症状の相談や事故予防についてのアドバイスなど)
  • 服薬の確認や指導
  • 医療機器の管理(在宅酸素、人工呼吸器など)
  • 褥瘡(じょくそう)の処置や予防のためのアドバイス
  • 家族への支援やアドバイス
  • リハビリテーション(嚥下機能訓練や寝たきり予防、日常生活の機能訓練など)
  • ターミナルケアの支援(痛みのコントロールや看取りへのアドバイスなど)
  • エンゼルケア(亡くなった直後のケア)
  • 介護予防のアドバイス(栄養状態や運動機能の維持向上についてなど) 

訪問看護サービスの回数について

介護保険には、要介護度ごとに支給限度額があります。その支給限度額内であれば、何回でも訪問看護サービスを受けることはできますが、他の介護保険サービスの利用もあることから、週に1、2回程度になることが多いです。

訪問看護でかかる料金

訪問看護にかかる費用

訪問看護は、サービス提供事業所が訪問看護ステーションか病院または診療所かで料金が変わります。どのくらいの費用が掛かるのか、それぞれの金額を見ていきましょう。

1回ごとの基本料金

要支援1、2の方  介護予防訪問看護ステーションの場合 20分未満  302円 
30分未満  450円 
30分以上1時間未満  792円 
1時間以上1時間30分未満  1,087円 
病院または診療所の場合  20分未満  255円 
30分未満  381円 
30分以上1時間未満  552円 
1時間以上1時間30分未満  812円 
要介護1~5の方  訪問看護ステーションの場合 20分未満  313円 
30分未満  470円 
30分以上1時間未満  821円 
1時間以上1時間30分未満  1,125円 
病院または診療所の場合  20分未満  265円 
30分未満  398円 
30分以上1時間未満  573円 
1時間以上1時間30分未満  842円 

 

※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。

※上記は基本的な利用料「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版です。時間帯(早朝・深夜)やサービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。

※上記は看護師の場合の利用料です。准看護師は上記料金の90%となります。

訪問看護の利用方法

訪問看護サービスのイメージ

最後に、訪問看護を利用する基本手順を確認しておきましょう。

訪問看護の利用方法

要介護1~5の認定を受けている場合、利用手順は以下のようになります。

  1. ケアマネジャーか地域包括支援センターに相談する
  2. ケアマネジャーがサービス提供事業者を選び、ケアプランを作成する
  3. サービス提供事業者が利用者の主治医に訪問看護指示書の発行を依頼する
  4. ケアマネジャーやサービス提供事業者と話し合い、利用頻度、注意事項を確認する
  5. サービス内容が決定したら、サービス提供事業者と契約を交わす
  6. 指定日時よりサービス開始

 

※上記は基本的な流れです。サービス提供事業所やケアマネジャー、利用者の状況によって異なります。

医療保険で利用できることも

介護保険の認定を受けていない方や医師の特別指示が出ている方、厚生労働大臣が定める末期の悪性腫瘍や筋萎縮性側索硬化症などの疾病の方は、医療保険で訪問看護を利用することができます。

介護保険には要介護度ごとに支給限度額がありますが、医療保険では利用金額に上限がないことがメリットです。ただし、医療保険と介護保険の訪問看護を同時に利用することはできません。

まずはかかりつけ医、またはケアマネジャーに相談してください。

訪問看護の利用で在宅介護に安心をプラス

病気や障害があったり、医療器具や医療機器を使用していたり…といった方の生活を、医師の指示書に基づいてサポートするのが訪問看護です。医療的ケアや処置、管理だけではなく、病気の看護や服薬、療養、介護について家族の相談やアドバイスを行います。身近な医療の専門家として、身体的にも精神的にもとても頼りになる存在です。自宅でもっと安心して生活したい!と思ったら、まずはケアマネジャーに相談してください。

 
監修者:鵜沢静香
監修者:鵜沢静香

訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。