ひとり暮らしをしている認知症の母についての相談です。訪問介護の方に週に2回来てもらって買い物や掃除を頼み、週に1回訪問看護の人に来てもらっています。曜日や時間の感覚がわからなくなり、ゴミ捨てや服薬を失敗することがありますが、何とかひとりで暮らしていました。
最近では、部屋の移動中に座り込んでしまうことがあるようです。一回床に座ってしまうと、自力では立てません。そのたびに電話まで張っていき、隣の家の方に来てもらっています。ただ、お隣さんも高齢なため、申し訳なく思っています。廊下に手すりを設置し、室内用の歩行器も用意したのですが、それでも移動中に疲れて座りこみ、立ち上がれなくなってしまうようです。深夜にトイレに行く途中で座りこんでしまった際には、電話を遠慮して朝までそのままでいたそうです。
施設は拒否があり、私も新幹線の距離に住んでいます。24時間、助けが必要な時に対応してもらえるようなサービスはありますか?
24時間、緊急時に呼べるサービスについての質問ですね。介護保険のサービスでは、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と24時間対応できる訪問看護の利用があります。
ここでは、それぞれの特徴や違い、選び方などについて紹介します。現在や今後の生活の参考にしてください。
緊急時に24時間駆け付けてくれる2つのサービス
まずは、緊急時に24時間駆け付けてくれる2つのサービスについてみていきましょう。
<h3>定期巡回・随時対応型訪問介護看護<h3>
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、訪問介護と訪問看護が連携し合い、以下のサービスを24時間365日提供しています。
- 1日複数回の訪問介護
- 訪問看護
- 随時訪問サービス
随時訪問サービスが、今回の質問にある緊急時に対応してくれるサービスに当たります。「転倒して起き上がれない」、「失禁してしまった」などの緊急時に、いつでもオペレーターに通報ができ、必要なサービスが受けられます。
サービス付き高齢者住宅(サ高住)の中には、定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスが付いているものもあります。
デイサービスやデイケアなどの通所系サービス、短期入所サービス、福祉用具貸与などと併用が可能ですが、別の事業所から訪問介護や訪問看護、夜間対応型訪問介護を受けることはできません。
緊急時の対応加算
訪問看護では、事業所によっては緊急時の対応が可能です。契約している事業所が対応しているかどうかを確認しておきましょう。また、定期的な訪問看護を受けずに、緊急時の対応だけをお願いすることはできません。
緊急時には、必要に応じて看護師などが駆け付け、病状のアセスメント、失禁や転倒への対応、痰吸引、不穏の対応、本人や家族の不安への対応などをしてくれます。
契約している訪問看護や看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の事業所が緊急対応をしている場合、緊急対応の有無にかかわらず、「緊急時訪問看護加算」が算定されています。詳しくはケアマネジャーにご確認ください。
訪問介護でも緊急時には、「緊急時訪問介護加算」にて緊急対応が可能です。対応可能な時間帯は事業所によって異なります。また、人出不足などの理由で対応が難しいこともあるので、詳しくは、ケアマネジャーに確認をしましょう。
項目ごとに2つのサービスの違いをチェック!
続いて、それぞれのサービスの違いを見ていきましょう。
対象者
定期巡回・随時対応型訪問介護看護と、24時間対応の訪問看護の対象者の違いを見ていきましょう。
要支援1、2 |
要介護1~5 |
他の市区町村の住民 |
|
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 |
× |
〇 |
× |
24時間対応の 訪問看護 |
〇 (介護予防) |
〇 |
〇 |
24時間対応の看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス) |
× |
〇 |
× |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護や看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)は、「地域密着型サービス」のため、サービスを提供する事業所と同じ市区町村に住んでいる必要があります。違う市区町村の事業所からのサービスは受けられません。
要支援1、2の方は、介護予防訪問看護を受けることができます。
かかる費用
【定期巡回・随時対応型訪問介護看護】
定期訪問の時間帯や回数、随時訪問の有無や回数に関わらず、料金は一律です。料金は訪問看護を受けるかどうかで異なります。
訪問看護サービスを行わない場合 (一体型・併設型) |
要介護1 | 5,697円 |
要介護2 | 10,168円 | |
要介護3 | 16,883円 | |
要介護4 | 21,357円 | |
要介護5 | 25,829円 |
訪問看護サービスを行う場合 (一体型) |
要介護1 | 8,312円 |
要介護2 | 12,985円 | |
要介護3 | 19,821円 | |
要介護4 | 24,434円 | |
要介護5 | 29,601円 |
※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。
※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。サービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。
【24時間対応の訪問看護】
24時間緊急対応ができる事業所の場合、緊急対応の有無にかかわらず訪問看護を受けた月に、「緊急時訪問看護加算」が発生します。事業所は、利用者やその家族に書面で説明して同意を受ける必要があります。
サービス種別 |
料金 |
(介護予防)訪問看護 |
指定訪問看護ステーション:574円/月 病院又は診療所:315円/月 |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 |
315円/月 |
看護小規模多機能型居宅介護 |
574円/月 |
※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。
※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。サービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。
実際に緊急訪問を受けた場合には、上記とは他に所要時間に応じた料金がかかります。また、夜間・早朝加算、深夜加算は、その月の1回目はかかりませんが、2回目以降はかかります。
通報方法
定期巡回・随時対応型訪問介護看護では、利用者や家族が緊急用端末を利用し、24時間オペレーターに通報できるサービスです。ボタンを押すだけでオペレーターにつながる端末などが、事業所から配布されます。首から下げておけるペンダント型の端末であれば、質問者さんのように廊下の途中で動けなくなってしまう方でも、早急に通報をすることができます。
24時間対応の訪問看護では、基本的に電話で通報をしてもらうようになります。
来てくれる人
定期巡回・随時対応型訪問介護看護では、介護福祉士、社会福祉士、看護師、ケアマネジャーなどの専門資格を持ったオペレーターが相談を受け、必要に応じて訪問介護員(ヘルパー)による随時訪問の手配をします。
24時間の訪問看護では、看護師などが訪問します。
どちらのサービスを選ぶべき?
ここまで2つのサービスを紹介してきました。それではどちらのサービスを選んだらいいのでしょうか。
こんな場合は定期巡回・随時対応型訪問介護看護を
次のような方は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護を選ぶと良いでしょう。
- 見守りも含めて1日に複数回訪問して欲しい方
- ひとり暮らしやひとりの時間が多く、電話ではなくボタン1つで通報できる方が良い方
- 定期訪問や緊急の回数、夜間の対応が多い方
こんな場合は24時間対応可能の訪問看護を
次のような方は、24時間対応可能の訪問看護を選ぶと良いでしょう。
- 24時間対応可能の訪問看護事業所を利用している方
- 1日に複数回の訪問介護は必要ない方
- 同居家族がいるなど、緊急時に電話で通報ができる方
- 緊急時が少ない方 ・緊急時には医療的なケアが必要だと考えられる方
- 地域に定期巡回・随時対応型訪問介護看護の事業所がない方
- 要支援1、2の方
まとめ
ひとり暮らしやひとりでいる時間帯が多い方は、転倒や失禁などの緊急時の対応が心配になるものです。
1日に複数回の訪問介護が必要な方、緊急時の対応が多い方、ボタンを押すだけで通報をしたい方などには、費用が月額の定期巡回・随時対応型訪問介護看護が向いています。ただし、要介護1以上であること、住んでいる市区町村の事業所しか利用できないなどの制限があります。
病状の急変が心配される方、家族から事業所へ電話連絡ができる方などは、24時間対応の訪問看護が向いています。病状のアセスメントやケアの他に、転倒や失禁、不安への対応などもしてくれますが、回数ごとに所要時間に応じた金額がかかります。緊急時の対応が多い場合には、費用負担が大きくなってしまう点がデメリットです。
お住まいの地域に定期巡回・随時対応型訪問介護看護の事業所があるかどうか、1日に複数回の訪問が必要か、緊急時の訪問が多いかどうか…など、ケアマネジャーに状況や困っていることを説明し、適切なサービスを選ぶと良いでしょう。
※この記事は2022年2月の情報を元に作成しています。

【経歴】
1982年生まれ。
医療福祉系学校を卒業後、約11年医療ソーシャルワーカーとして医療機関に勤務。
その後、一生を通じた支援をしたいと思い、介護支援専門員(ケアマネジャー)へ転身。
2017年1月 株式会社HOPE 設立
2017年3月 ほーぷ相談支援センター川越 開設
代表取締役と共に、介護支援専門員(ケアマネジャー)として、埼玉県川越市で高齢者の相談支援を行っている。
他に、医療機関で、退院支援に関するアドバイザーと職員の指導・教育にあたっている。
医療・介護に関する新規事業・コンテンツ開発のミーティングパートナーとしても活動。大学院卒(経営研究科)MBA取得している。
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