親が施設入居する際や相続を考えるときに、問題になることがある「実家」。「誰が相続するか」ということだけではなく、「どう処分するか」で悩む人も多いようです。その結果、空き家状態のまま放置されてしまうことがあります。この記事では、空き家のデメリットと対策方法をまとめます。
実家が空き家になってしまう理由
2018(平成30)年に総務省統計局が行った住宅・土地統計調査によると、全国にある空き家は約849万9千戸(空き家率13.6%)となり、2013(平成25)年の空き家率13.5%と比べて若干の増加となりました。
少子高齢化が進む中で、実家の空き家問題に直面する人は今後も増えることが考えられます。
出典:総務省統計局 平成30年住宅・土地統計調査 特別集計
空き家には一軒家と共同住宅の両方がありますが、この記事では一軒家の空き家を中心にまとめていきます。
空き家が放置される理由
空き家が放置されるのにはこんな理由があります。
- 親が施設入居するが、戻る可能性を考えそのままにしている
- 親族間でその土地をどうするかの話し合いがまとまらないまま放置されている
- 実家に住む予定はないけれど、思い出があるために解体できない
- 建物付きで土地を販売しているものの、なかなか買い手が見つからない
- 賃貸に出しているが、借主が見つからない
空き家のデメリット
空き家を放置するデメリットには、主にこんなものがあります。
近所に迷惑がかかることがある
空き家にシロアリなどが繁殖し、近隣の住居に被害が及んでしまったり、老朽化した屋根やブロック塀が崩れ、近隣住民などにケガをさせてしまったりといったこともあります。
また、不審者が住み着いたり、不法投棄が増えたりすることで、周辺の治安が悪くなることも考えられます。
長年お世話になったご近所さんにご迷惑がかかるだけではなく、時には訴訟に発展することもあります。
特定空き家に指定される
2015(平成27)年5月26日に施行された「空き家対策特別措置法」は、適切な管理がされていない空き家について、「地域住民の生命・身体・財産の保護、生活環境の保全、空家等の活用のため対応が必要」としています。
そこで周囲への影響が大きい空き家を「特定空き家」と定義し、改善の指導を行うことにしました。
特定空き家に指定される条件には、次のようなものがあります。
① 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
② 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③ 適切な管理が行われないことにより 著しく景観を損なっている状態
④ その他周辺の生活環境の保全を図るために 放置することが不適切である状態 にある空家等をいう。(2 条 2 項)
(引用元)国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法の概要
特定空き家に指定されると、「特定空き家」とされる原因となった状況を改善するように助言、指導がなされます。指導に従わない場合、勧告がなされて、それでも状況が改善されないときは、固定資産税の優遇措置がなくなったり、罰金が科せられたりするなどの措置命令がとられます。場合によっては、行政代執行手続きによって強制解体がなされます。その際にかかった費用は、所有者が支払わなくてはなりません。
- 所有者は、自己負担で改善する必要がある
- 改善されない場合には,指導→勧告→命令と措置が進み、それでも改善されなければ、行政からの強制対処(取り壊しなど)が行われ、その際にかかった費用は、所有者が払わなくてはいけない
- 固定資産税の住宅用地の特例が適用されなくなるので、固定資産税が最大で6倍になる
というデメリットがあり、金銭的な負担が大きくなります。
空き家と固定資産税
土地や建物には固定資産税がかかります。誰も住んでいない空き家であっても、建物の敷地になっている場合には、住宅用地の特例により、以下のように土地の固定資産税が軽減されます。
- 小規模住宅用地(200平方メートル以下)の固定資産税:6分の1
- 一般住宅用地(200平方メートルを超える部分)の固定資産税:3分の1
つまり、買い手が見つからないうちや利用方法が決まらないうちに空き家を取り壊して更地にしてしまうと、土地の固定資産税が最大で6倍に増えてしまいます。
ただし、固定資産税は建物にもかかります。建物の固定資産税が相当に高い場合には、更地にした方が、トータルの固定資産税が安くなる場合もあります。
家の老朽化が進む
もし将来的に住もうと思っている場合、維持や管理をせずに放置してしまうと、家の老朽化が急速に進みます。
空き家対策
知っておきたい具体的な空き家対策をまとめます。
親の長期入院や施設への入居で生前に空き家を売る場合
空き家はなにも相続だけで発生する問題ではありません。親の長期入院や施設への入居で、実家が空き家になることがあります。
親が住まなくなってから3年目の12月31日までに売ると、居住用住宅の特別控除が適用されるので、売却益から最高で3,000万円までの控除が受けられます。
親が実家を10年以上所有している場合に受けられる軽減税率もあります。いずれも条件が定められているので、税理士などに相談をするといいでしょう。
自治体の解体助成金を利用する
多くの自治体で、30万円~100万円程度の解体費用の補助が行われています。ただし、解体助成金をうけとるには、自治体ごとに一定の要件があります。
例えば……
- 周囲に危険を及ぼしている建物と認定されるもの
- 対象エリアに指定されている建物であること
- 市区町村税などを滞納していないこと
- 建物には、所有権以外の権利が登記されていないこと
などです。
解体工事の契約書や見積書、空き家の設計図や写真などの必要書類を解体工事前に提出し、申請します。申請方法も自治体ごとに違うため、各自治体の「建築安全課」や「都市整備部局」などの住宅関係の窓口に相談してみてください。
定期借家契約で人に貸す
今すぐには住むつもりはないけれど、将来的には住みたいと思っている場合、空き家のままでいると家が傷んでしまいます。そこで、「定年退職するまで」「転勤から帰ってくるまで」の期限付きで賃貸に出すという方法もあります。それが「定期借家契約」です。詳しくは不動産業者に相談をしてください。複数の不動産会社に相談し、賃貸の収支見込、リフォーム費用、維持コストなどを聞いてみるといいでしょう。
リフォーム費用が大変な場合には、賃料を安くする代わりに借主にDIYを任せるタイプの賃貸契約もあります。
参考:(外部サイト)国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報
家を売る
相続人が誰も住むことを希望していないのなら、家を売って売却益を分けるという方法があります。ただし、相続人の共同名義になっているケースでは、名義人の誰か一人でも反対をしてしまうと売却できません。その結果、空き家のまま放置されてしまうことがあります。
空き家の期間が長くなると家が傷み、修繕が必要になるため買い手が見つからなくなったり、取り壊す必要が出てきたりするため、できるだけ早めに売ってしまいたいものです。事前にしっかりと話し合っておくようにしましょう。
空き家情報バンク
空き家情報バンクとは、空き家の所有者で賃貸や売買を希望している人が空き家情報を登録し、移住を考えている方などにインターネットなどを通じて紹介する仕組みのことです。各自治体が運営しています。
詳しくは、市区町村の都市計画や住宅、移住に関連する課にお問い合わせください。
上記の他にもNPO法人や不動産業者が空き家管理サービスを提供していることがあります。
親が元気なうちから話し合っておく
親が元気なうちから、実家に誰も住まなくなったらどうしたいのかを家族同士で話し合っておくのが、最大の空き家対策といえるかもしれません。あわせて実家の片付けを進めておくといいでしょう。
まとめ
親が持ち家に住んでいる場合に、いつか直面することになるのが実家の相続問題です。家だけに限らず、親が元気なうちから相続や介護について話し合っておくようにしましょう。
そのためにも、空き家のデメリットについて把握しておき、対策を知っておくことが非常に大切です。この記事が、実家のその後を考えるお手伝いになれたら幸いです。
※この記事は2020年11月時点の情報で作成しています。
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介護業界・区役所勤務経験を経て、相続コンサルタントに転身。
介護保険訪問調査員など高齢者との1,000件を超える面談実績を持つ。 高齢者にもわかりやすい説明とヒアリング力には定評があり介護にも 強い相続診断士として多くの相談を受けている。
終活や相続・介護と幅広い視野から話すセミナー講師として全国で活動をしている。