施設入居で実家が空き家に。空き家のデメリットや管理について教えてください。

老朽化した空き家のイメージ

 

質問

質問者親がグループホームに入居しており、実家が2年ほど空き家になっています。夏には庭の手入れが間に合わず、草木が伸び放題になってしまうこともありますし、建物の劣化も気になるようになりました。火事や台風などで近隣に迷惑をかけてしまわないかということや、不審者が住み着いたりしたりしないかなど、心配事はつきません。 私たち夫婦を含めた子供世代は、それぞれ持ち家があるため今後も住まないと思います。しかし、荷物がたくさん残っていることもあり、対策を後回しにしてしまっている状態です。 空き家にはどのようなデメリットがあり、どのような対策をしたらいいのでしょうか? 教えてください。

 

 

専門家親の施設入居や相続などで問題になる「実家の空き家」。どう処分するかが決まらず、結局空き家のまま数年が経ってしまうこともあります。2018(平成30)年に総務省統計局が行った住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は約849万9千戸もあるとのこと。少子高齢化などの原因により、今後も空き家問題に悩む介護家族は増えていくことでしょう。 この記事では、空き家のメリット・デメリットや空き家にかかる費用、対策方法をまとめています。現在や今後の生活の参考にしてください。  

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まずは空き家のメリットとデメリットをチェック

空き家となった住居のイラスト

まずは、空き家のメリットとデメリットをみていきましょう。

空き家のメリット

実家を空き家のままにしておくメリットは、片づけをゆっくりできること、思い出のつまった実家をそのままとっておけること、適切に管理していれば住宅用地特例により更地にするよりも固定資産税を安く抑えられるという3点でしょう。

空き家のデメリット

空き家の主なデメリットにはこのようなものがあります。

●近所に迷惑がかかる

老朽化した屋根やブロック塀、手入れの行き届いていない庭木が、台風や強風などの際に崩れたり折れたりしてしまう可能性があります。最悪の場合には建物自体が倒壊してしまうことも。周囲の建物などを損傷したり、他人をケガさせたりすることで、損害賠償が生じてしまうかもしれません。

また、不審者が入りびたる、不法投棄が増えるなど、周辺の治安や公衆衛生が悪くなる可能性もあります。伸び放題の草木に放火されてしまったり、タバコのポイ捨てから火事になってしまったりするかもしれません。かつてお世話になったご近所さんに、迷惑をかけてしまうのは避けたいところです。

●家の老朽化が進む

もし将来的に住むことや売却を考えている場合、家の管理や換気が不十分なまま放置してしまうと、老朽化が進んでしまい、資産価値が下がってしまいます。

固定資産税が高くなる

メリットで触れましたが、住宅用地特例により、更地にするのよりも空き家の方が、土地にかかる固定資産税は低く抑えられます。

どれくらい安くなるのかというと、200平方メートル以下の部分については、固定資産税は6分の1です。200平方メートルを超える部分については、固定資産税は3分の1となります。つまり、空き家を更地にしてしまうと、土地にかかる固定資産税は最大で6倍になってしまうわけです。

ただし、固定資産税を抑えられるのは、適切に管理されている空き家だけです。2015(平成27)年5月26日に施行された「空き家対策特別措置法」により、適切な管理がされておらず、周囲への影響が大きい空き家を、「特定空き家」と定義し、改善の指導を行うことにしました。

特定空き家に指定される条件には、次のようなものがあります。

① 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態

② 著しく衛生上有害となるおそれのある状態

③ 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態

④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にある空家等をいう。(2 条 2 項)

(引用元)国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法の概要 

特定空き家に指定されると、行政が介入できるようになります。状況を改善するように市町村長から助言や指導がなされます。それに従わない場合には勧告がなされ、固定資産税の優遇措置が受けられなくなってしまいます。

さらに従わないと、命令がなされて50万円以下の罰金が科せられ、最終的には行政代執行手続きによって強制解体がなされます。その際にかかった費用は、所有者が支払わなくてはなりません。

空き家の管理でかかる費用

空き家にかかる費用のイメージ

続いて、空き家を維持するのに、どのような費用がかかるのかを確認していきましょう。

土地と建物にかかる税金

空き家の土地と建物には、それぞれに固定資産税がかかります。前述のように、適切に管理された空き家であれば、住宅用地特例が適用されて、土地にかかる固定資産税は最大で6分の1になります。また、市街化区域内であれば都市計画税がかかります。

修繕費用

空き家を放置してしまい、周囲に大きな影響を与える危険性が出てくると、「特定空き家」に指定されてしまいます。 周囲に迷惑をかけないためにも、建物の屋根や壁、内装、水回りなどのメンテナンスや修繕、庭などの初期修繕と定期修繕が必要です。

火災保険など

たとえ住まなくなったとしても、火災や自然災害で近隣に被害を及ぼしてしまうことを考えて、火災保険などの各種保険には入っておいたほうが良いでしょう。

水道光熱費

空き家になった状態の実家でも、時々片づけに訪れたり、家族で集まったりするのであれば、電気や水道が使えるようにしておく必要があるでしょう。電気代や水道代は、実際に使っていなくても基本使用料がかかります。

空き家の対策方法とは

空き家の対策を提案する営業のイメージ

それでは、実家が空き家となってしまったらどうしたらいいのでしょうか。

売却する

他の誰も住むことを希望していないのなら、建物ごと売却してしまうという方法があります。空き家の期間が長くなると、家が傷んで買い手が見つからなくなってしまうため、できるだけ早めに売ってしまいたいものです。

空き家が複数の相続人の共同名義になっているケースでは、名義人の誰か一人でも反対してしまうと売却できません。

質問者さんのように、親の施設入居で実家が空き家になっているケースも多いでしょう。住まなくなってから3年目の12月31日までに売ると、居住用住宅の特別控除が適用されるので、売却益から最高で3,000万円までの控除が受けられます。また、親が実家を10年以上所有している場合に受けられる軽減税率もあります。いずれも条件が定められているので、税理士などに相談をするといいでしょう。

更地にする

住宅の管理が難しい場合、特定空き家に指定される前に更地にしてしまう方が、近隣に迷惑をかけずに済むでしょう。また、土地の売却もしやすくなるかもしれません。

多くの自治体には、空き家の解体に対して30万円~100万円程度の費用補助制度があります。ただし、解体助成金を受け取るには、自治体ごとに一定の要件があります。申請方法も自治体ごとに違うため、各自治体の「建築安全課」や「都市整備部局」などの窓口に相談してみてください。

賃貸にする

今すぐに住むつもりはないけれど、定年退職後などに住みたいと思っている場合、空き家のままにしておくと家が傷んでしまいます。将来的に住むつもりがあるのなら、賃貸にするほうが良いでしょう。

「定年退職するまで」「転勤から帰ってくるまで」など、期限付きで賃貸に出す「定期借家契約」という方法もあります。詳しくは不動産業者にご相談ください。複数の不動産会社に相談し、賃貸の収支見込、リフォーム費用、維持コストなどを聞いてみるといいでしょう。

空き家情報バンクを利用しましょう

空き家情報バンクとは、空き家の所有者で賃貸や売買を希望している人が空き家情報を登録し、移住を考えている方などにインターネットなどを通じて紹介する仕組みのことです。各自治体が運営しています。詳しくは、市区町村の都市計画や住宅、移住に関連する課にお問い合わせください。

上記の他にも、NPO法人や不動産業者が提供している空き家管理サービスもあります。

まとめ

空き家には固定資産税が軽減される、思い出を守れる、ゆっくり片付けができるといったメリットはありますが、きちんと管理をしていないと、家が傷んで資産価値が下がってしまいます。また、傷んだ家屋や手入れをしていない庭木が、強風や自然災害時などに近隣の家屋や人に被害を与えてしまうことも。倒壊の危険性、衛生面や治安の悪化を引き起こすなど、周囲に大きな影響を与えてしまうと、特定空き家に指定され、固定資産税が最大6倍となってしまいます。

資産を守るためにも、長年親しくしてきた近隣の住民の方とのトラブルを避けるためにも、しっかりと空き家対策をしたいところです。売却する、人に貸す、更地にする…など、早いうちから家族間で話し合っておきましょう。

 

※この記事は2022年3月時点の情報で作成しています。

ケアマネジャー:森裕司(株式会社HOPE)
ケアマネジャー  森 裕司(もり ゆうじ)

【経歴】 1982年生まれ。
医療福祉系学校を卒業後、約11年医療ソーシャルワーカーとして医療機関に勤務。
その後、一生を通じた支援をしたいと思い、介護支援専門員(ケアマネジャー)へ転身。
2017年1月 株式会社HOPE 設立
2017年3月 ほーぷ相談支援センター川越 開設
代表取締役と共に、介護支援専門員(ケアマネジャー)として、埼玉県川越市で高齢者の相談支援を行っている。
他に、医療機関で、退院支援に関するアドバイザーと職員の指導・教育にあたっている。
医療・介護に関する新規事業・コンテンツ開発のミーティングパートナーとしても活動。大学院卒(経営研究科)MBA取得している。

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