92歳で要介護4の母ですが、特別養護老人ホームへの入居が決まりました。このまま看取りまでお世話になりたいと考えているのですが、特別養護老人ホームを退居しなくてはいけなくなるケースにはどのようなものがあるのでしょうか?

質問

質問者

92歳で要介護4の母ですが、特別養護老人ホームへの入居が決まりました。徘徊などはなかったものの認知症があり、長く同居介護をしてきた私も夫も年を取り、介護が大変になってきていたので、正直ほっとしています。

このまま看取りまでお願いしたいと思っているのですが、特別養護老人ホームから退居を言い渡されるようなことってあるのでしょうか? もしあるのでしたら、あらかじめ知っておきたいです。

専門家

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は、介護保険が適用される施設です。比較的低い経済負担で、24時間体制の介護を受けられるということで人気があります。一般的に「終の棲家」と考えられているので、質問者さんのように看取りまでいるつもりの方は少なくはありません。

ここでは、終の棲家であるはずの特別養護老人ホームで退居が必要になるケースにはどんなものがあるのか、看取りは受けられるのかを中心に紹介します。ぜひ今後の生活の参考にしてください。

 

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)とは

特別養護老人ホームについて知る

まずは、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)とはどのような施設なのかを見ていきましょう。

特別養護老人ホームの特徴

特別養護老人ホームは、常に介護が必要で自宅での生活が難しい方が生活する介護保険施設のひとつです。略して“特養”と呼ばれ、社会福祉法人や地方自治体などが運営しています。 重度の要介護の方や認知症の方を受け入れています。食事や排せつなどの必要な介護を24時間受けられ、生活の場として機能訓練やレクリエーションも提供しています。終の棲家として、看取りに取り組む施設も増えています。 入所時に支払う初期費用もなく、充実したサービスが低価格で利用できるので、非常に人気の施設です。

対象者

特別養護老人ホームは、要介護3~5の方で常に介護が必要な方が利用できます。要介護2以下の方は、原則として利用できません。ただし、市区町村ごとに定められている特例に当てはまれば、入居が認められることがあります。詳しくはケアマネジャーなどにご相談ください。 特別養護老人ホームは、入居まで順番待ちになることがあります。順番は申し込み順ではなく、本人の調査をしたうえで、施設の入所検討委員会にて下記の項目が評価され、順番が決定されます。

  • 認知症高齢者の日常生活自立度(主治医意見書)
  • 本人の要介護
  • 介護者の状況(単身かどうか、介護者がいても在宅での介護が困難かなど)
  • 在宅サービスの利用率
  • 施設サービスなどの利用期間
  • 特記事項(虐待や本人による暴力、経済状況など)

評価の基準や入所検討委員会が開かれる頻度などについての詳細は、それぞれの施設にご確認ください。

特別養護老人ホームでかかる費用

特別養護老人ホームでは、1日ごとに以下の料金がかかります。

  • 基本料金(部屋のタイプや要介護度によって異なる)
  • 食費
  • 居住費(部屋のタイプによって異なる)
  • 個別機能訓練加算などの介護保険の各種加算

ひと月(30日)あたりにかかる金額は、10万円から15万円程度です。

※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。

※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。詳しくは施設にお問い合わせ下さい。

特別養護老人ホームは介護保健施設なため、所得に応じて食費や居住費の負担軽減を受けられる「特定入所者介護サービス費」が適用されます。

特定入所者介護サービス費とは?対象者や申請方法を解説します - 介護の専門家に無料で相談「安心介護」介護の基礎知識

 

その他にも介護保険の各種加算、日用品やレクリエーションにかかった費用の実費が掛かります。

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)で退居が必要なケース

特別養護老人ホームは退去が必要な時がある?

質問者さんのように、特別養護老人ホームは終の棲家として選択されることの多い施設です。

特別養護老人ホームを退居しなくてはいけなくなるケースには、どのようなものがあるのでしょうか。

対応できない医療ケアが必要になった

特別養護老人ホームは医療提供を主目的とした施設ではありません。胃ろうやたん吸引に関しては、特別養護老人ホームでの対応も可能ですが、入居後に人工透析が必要になったり、気管切開をしたりなど、医療ニーズが高まると特別養護老人ホームでの生活が難しくなってしまいます。

また、ケガや病気で入院した場合、入院期間が3ヵ月以上になると原則として退居手続きがとられます。

要介護度が改善された

特別養護老人ホームは、原則として要介護3以上の常に介護が必要な方向けの施設です。要介護度が改善されると、他の施設の利用を考える必要があります。

他の入居者の安全が確保できない

認知症の症状、泥酔などによる暴言や暴力など、「他の入居者の心身や生命、生活に危険を及ぼす可能性がある」と判断されると退居となります。

その他のケース

また、それぞれの特別養護老人ホームで定めている「禁止行為」を行ってしまった場合にも、退居を求められます。 禁止行為としては、指定場所以外での火気の使用、施設の物品の持ち出しや損壊、他の入居者への宗教・政治活動、ペットの飼育などがあります。入居の前にどのような行為が禁止されているのかを確認しておきましょう。

また、利用料金の滞納や入居時の申請に虚偽が発覚した場合にも退居となります。

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)での看取り

特別養護老人ホームでは看取りはしてくれる?

終の棲家として、看取りに力を入れる特別養護老人ホームが増えています。その詳細をみていきましょう。

特別養護老人ホームの看取りとは

公益社団法人全国老人福祉施設協議会では、特別養護老人ホームの看取りを「近い将来、死が避けられないとされた人に対し、身体的苦痛や精神的苦痛を緩和・軽減するとともに、人生の最期まで尊厳ある生活を支援すること」と定義しています。

特別養護老人ホームでは、避けられない最期に向けて、慣れ親しんだ施設の介護職員や医師、看護職員が連携をとって看取りのための介護を提供します。

入居時に確認したいこと

看取りを行っている施設では、看取り介護指針を作成しています。特別養護老人ホームに看取りまで考えて入居する場合、あらかじめ次のような項目を確認しておきましょう。

  • 施設の看取りに関する考え方
  • 終末期にたどる経過とそれに応じた介護の考え方
  • 看取りに際して行う医療行為の選択肢
  • 夜間や緊急時を含む、医師や医療機関との連携体制
  • 入所者などへの情報提供や意思確認の方法
  • 家族への心理的支援に関する考え方

また、特別養護老人ホームでは、看護師が24時間常駐しなくてはいけないわけではありません。そのため、看取りに十分な体制が取れない施設もあります。あらかじめ確認しておきましょう。

看取りにかかる料金

特別養護老人ホームで看取りを行った場合、死亡日からさかのぼって「看取り加算」がかかります。 これは死亡日を含めて45日までに施設が提供した介護を評価するものです。最終的に亡くなったのが医療機関や自宅でも、施設にいた期間は看取り加算が適用されます。

【看取り加算】

  • 死亡日含む31日から45日前まで: 72円/日
  • 死亡日含む4日から30日前まで: 144円/日
  • 死亡日2日3日前まで: 680円/日または780円/日
  • 死亡日当日: 1,280円/日または1,580円/日

※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。

※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。

詳しくは施設にお問い合わせ下さい。

まとめ

原則として要介護3以上で常に介護が必要な方が入居する特別養護老人ホーム。介護保険施設のひとつで、低価格で充実したサービスが受けられます。

終の棲家として看取りまで期待する本人や家族も多く、看取りに取り組む施設も増えています。看取りの体制や、看取りへの考え方などを入居の前に確認しておくと良いでしょう。

特別養護老人ホームでは、施設では対応できない医療的ケアが必要になったり、他の利用者の身体や安全、生活に危険を及ぼしたり、要介護度が改善されたりすると退去となります。その他、施設ごとに禁止行為を定めているので必ず確認しておきましょう。

在宅介護から施設に入居する際には、いろいろとわからないことや不安なことも多いと思います。この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。

ケアマネジャー:森裕司(株式会社HOPE)
ケアマネジャー  森 裕司(もり ゆうじ)

【経歴】 1982年生まれ。
医療福祉系学校を卒業後、約11年医療ソーシャルワーカーとして医療機関に勤務。
その後、一生を通じた支援をしたいと思い、介護支援専門員(ケアマネジャー)へ転身。
2017年1月 株式会社HOPE 設立
2017年3月 ほーぷ相談支援センター川越 開設
代表取締役と共に、介護支援専門員(ケアマネジャー)として、埼玉県川越市で高齢者の相談支援を行っている。
他に、医療機関で、退院支援に関するアドバイザーと職員の指導・教育にあたっている。
医療・介護に関する新規事業・コンテンツ開発のミーティングパートナーとしても活動。大学院卒(経営研究科)MBA取得している。

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