介護をしている親の、食べ物の飲みこみが悪くなってきました。ムセて辛いので、食事も進みません。どうにか食べられるように、家族ができることはありますか?

食べ物の飲み込みが悪くなった親のイメージ

 
質問

質問者要介護4の親ですが、食べ物の飲みこみが悪くなってきました。水分でも、ときどきむせてしまうことがあります。ムセると辛いからか、最近は食事が憂鬱のようです。

もともと食事が好きな人だったので、見ていてかわいそうになります。どうにか食べられるようになってほしいのですが、家族ができることや家でできるリハビリ方法はありますか。

 

専門家食べ物を嚙み砕いて飲みこむ機能を「嚥下(えんげ)機能」と呼びます。この機能が低下すると、思うように食べ物が飲みこめず食事が憂鬱になってしまいます。また、しっかりと飲みこめずに食べ物が気管に入ると、誤嚥性肺炎の原因になってしまうこともあります。

「年を取ったから仕方ない」とあきらめずに、キチンと飲みこめていない時に起こる症状を知る、病院で診断を受ける、専門家のリハビリを受ける、食事の前の準備体操をする、飲みこみやすいように食事を工夫する…といったことが大切です。ここでは、それぞれの項目について、家族が知っておきたいことについてご紹介します。現在や今後の生活の参考にしてください。

 

「飲みこみにくい」はなぜ起こるの?

「飲み込みにくさ」の相談をする親のイメージ



まずは、なぜ食事が飲みこみにくくなるのでしょうか。その原因から探っていきましょう

嚥下障害とは

口に入れた食べ物などを飲みこみ、胃まで送り込むことを「嚥下(えんげ)」と呼びます。嚥下には舌や歯、のど、食道など様々な器官が関与しており、このいずれかに何らかの異常が生じることで、飲みこみが悪くなることを「嚥下障害」といいます。嚥下機能が低下することで、飲食物が口の中から胃に正しく送りこまれず、食事に時間がかかったり、気管の中に入りこんでムセてしまったりしまいます。

飲食物が間違って気管に入ってしまう誤嚥によって、ムセたり咳が出たりすることが続くと、食事が憂鬱なものになってしまいますし、飲食物と一緒に菌が肺に入ってしまうと、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があるので注意したいところです。

「飲みこみにくい」時に起こる症状

嚥下障害では、以下のような症状が起こります。

  • 食事中にムセる
  • 口からものをこぼす、口の中に食べ物が溜まる
  • 食べるのに時間がかかる
  • 「好きだったお茶を飲まなくなった」など、食べるものの好みが変わる
  • 食べながら疲れてしまい、食べきれない 
  • 食後に痰が絡んだような声になる 

など

嚥下障害が起こる原因

嚥下障害が起こる原因には3つあります。

1.器質的原因

口腔中やのど、食道に食べ物の通過を邪魔する構造上の問題があるケースです。歯周病、口内炎や扁桃炎などの炎症、咽頭や食道の腫瘍などが原因となります。

2.機能的原因

高齢者に最も多いケースです。飲みこむ動作をする際に使う筋肉や神経に異常があるため、うまく飲みこめません。加齢のほか、脳卒中やパーキンソン病、服薬している薬の影響などで起こります。

3.心理的原因

うつ病、認知症、神経性食欲不振などの精神的疾患により起こるケースです。

病院で診断を受けましょう

診断結果のイメージ

飲みこみにくいという症状に気が付いたら、最適な治療やリハビリに繋げるためにも、飲みこむ機能のどこに問題があるのかを調べてもらうと良いでしょう。

嚥下障害を疑った時に受診する病院

嚥下障害では、全身状態の評価も大切です。まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、神経内科、消化器科、歯科、口腔外科などを紹介してもらうと良いでしょう。

飲みこみ外来や摂食嚥下センターなどを設置している病院もあります。

嚥下障害の診断

嚥下障害の診断には、まず全身状態の評価が重要です。問診で原疾患や既往歴、栄養摂取状況などを確認します。そして、身体機能や精神機能の評価や口腔・咽頭・喉頭の診察を行います。

そのあとに「反復唾液嚥下テスト」や「水飲みテスト」など専門機器を使わないスクリーニング検査で嚥下状態を確認し、嚥下障害が疑われたら嚥下造影検査や内視鏡検査など、専門機器を使った検査を受けます。

検査を通して摂食嚥下障害を正しく診断することで、最適な治療やリハビリの計画が立てられます。

リハビリで「飲みこむ力」を向上させましょう

介護士が寄り添うイメージ

飲みこむ機能を取り戻すには、毎日のリハビリが大切です。それでは嚥下障害のリハビリにはどのようなものがあるのでしょうか。

介護保険でリハビリを受けましょう

嚥下機能を維持または改善するためには、専門家によるリハビリテーションが欠かせません。

介護保険の訪問リハビリテーション、または通所リハビリテーションにて、専門家によるリハビリテーションを受けましょう。言語聴覚士(ST)をはじめ、歯科医師や看護師、理学療法士などの様々な専門家がリハビリテーションを提供しています。

まずは、ケアマネジャーに相談しましょう。

家庭でできる嚥下訓練も

嚥下機能を鍛える訓練には、家庭で家族と一緒にできるものもあります。詳細は以下の記事を参考にしてください。

自宅でできる!高齢者の嚥下リハビリテーション - 介護の専門家に無料で相談「安心介護」介護の基礎知識

 

特に食前の「準備体操」は、食事中の誤嚥を防ぐ効果もあります。ただし、がんばりすぎると食事の前に疲れてしまうので、専門家に相談をしながら適度に取り入れてみると良いでしょう。

飲みこみが悪くなってきたら気を付けたいこと

飲み込みの悪さに気づくイメージ

最後に、飲みこみが悪くなってきたときに、家族が気を付けたいことを上げていきます。

食事にかける時間を決めましょう

食事が飲みこみにくくなってくると、食べるだけで疲れてしまいます。疲れてくると余計に飲みこみが悪くなってくるので、1回の食事は30~45分で終わらせるようにしましょう。

かかりつけ医や訪問看護師、言語聴覚士などと相談し、「食事中に2回ムセたら止める」など、中止の目安を決めておくと安心です。

食事の時間を決めて、1日のリズムを作ることも大切です。1度にたくさん食べられない場合には、食事と食事の間に水分補給やおやつの時間をつくると良いでしょう。

その人にあわせた食事の形状を

必要以上に飲みこみやすいものを食べていては、余計に嚥下機能が低下してしまいますし、食べる楽しみも損なわれてしまいます。サラサラしたものや口の中でバラバラになる細かいものには、トロミをつけるなどの工夫をしながら、その人の噛む力に合わせた食事を選ぶことが大切です。

食事の形態については、言語聴覚士(ST)や栄養士、ケアマネジャーなどに相談をしてみてください。必要に応じて、食事宅配サービス(宅食・配食サービス)や市販品を活用するといいでしょう。

食事中の姿勢に気を付けましょう

誤嚥を起こしにくい食事の姿勢は、椅子に座った時に、両足の足裏が床や足台にしっかり接地し、膝の曲がりは90度くらい、少し前かがみになっている状態です。また、アゴが上がっていると、気管に物が入りやすくなってしまいます。アゴが上がらないように、テレビを見上げる位置に置かないこと、高い位置から食事の介助を行わないことに気を付けましょう。

タイプ別に解説!誤嚥を起こしにくい姿勢とは - 介護の専門家に無料で相談「安心介護」介護の基礎知識

 

また、一度に飲みこめる量を口の中に入れること、口の中が空になってから次の一口を入れることなどが大切です。

口腔ケアを行いましょう

嚥下障害によりきちんと飲み込めないと、口の中に食べカスなどが残りがちです。放置して口の中で細菌が繁殖すると、歯周病になったり、唾液と一緒に細菌を誤嚥したりすることで細菌が肺に入って誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。

食後は毎回きちんと歯磨きや入れ歯のケアをし、いつも口の中をきれいにしておくことが大切です。

 

高齢者の口腔ケアの方法は?誤嚥性肺炎の予防に口腔ケアが重要 - 介護の専門家に無料で相談「安心介護」介護の基礎知識

まとめ

高齢者にとって、食事は1日の楽しみのひとつです。しかし、飲みこみが悪くなってムセこんでしまうようになると、食事を楽しめなくなってしまいます。

飲みこみが悪くなることを嚥下障害と呼びます。嚥下障害のある方、飲みこみが悪くなってきた方は、訪問リハビリを利用して嚥下障害のリハビリテーションを受けることが可能です。詳しくはケアマネジャーに相談してください。また、家庭で家族と一緒にできるものもあります。特に食事の前に行う準備体操は、食事中の誤嚥予防にもなります。

この記事が「飲みこみにくい」に悩む方々の参考になれれば、うれしいです。

医師:谷山由華
監修者:谷山 由華(たにやま ゆか)

医師:谷山 由華(たにやま ゆか)

【経歴】
・防衛医科大学校医学部医学科卒業
・2000年から2017年まで航空自衛隊医官として勤務
・2017年から2019年まで内科クリニック勤務
・2019年から内科クリニックに非常勤として勤務、AGA専門クリニック常勤

内科クリニックでは訪問診療を担当。内科全般、老年医療、在宅医療に携わっている