83歳で認知症の義母を同居して介護しています。現在は要介護3で、週に3日デイサービスに通っています。私も夫も、もうすぐ還暦を迎えますがまだ仕事をしており、日中に1人になる時間が長いので心配しています。私自身も残業になることがあり、仕事が終わってからご飯の準備をすると、食事の時 間が遅くなってしまい、食べながら眠そうにしています。決まった時間に起きることにこだわっており、そのリズムに合わせるのも大変です。
もっと長くデイサービスに預けたり、ショートステイを利用したりして在宅介護を続けたいと思っているのですが、限度額がありなかなか思うようにいきません。悩んでいると、近所の方に小規模多機能型居宅介護はどうかと言われました。
実際に利用する際のメリットやデメリットについて教えてください。

小規模多機能型居宅介護についての質問ですね。通いや訪問、宿泊といった介護保険サービスを組み合わせて、在宅で生活を続けながら、施設のような手厚いケアを受けたいという方に選ばれているサービスです。毎月一定の金額で、回数や時間に制限なく利用できるので、たくさんサービスを使いたいけれど、限度額があるのであきらめてしまっている方には大きなメリットがありますが、ケアマネジャーが変わってしまうなどのデメリットもあります。
ここでは、小規模多機能型居宅介護の特徴やメリット・デメリット、看護小規模多機能型居宅介護との違いなどについて紹介します。現在や今後の生活の参考にしてください。
小規模多機能型居宅介護で受けられるサービス
まずは、小規模多機能型居宅介護の内容についてみていきましょう。
小規模多機能型居宅介護のサービス内容
小規模多機能型居宅介護は、自宅からの「通い(デイサービス)」を中心に、必要な時の「泊まり」と「訪問介護」を組み合わせて、自宅での生活をサポートする介護保険サービスです。「しょうたき」とも呼ばれています。
「通い」の利用者は概ね15人以下、「泊まり」は概ね9人以下と少人数なのが特徴です。小規模でアットホームな雰囲気の中で介護を受けながら生活することができます。
すべて同じ事業所がサービスを提供するので、サービスごとに複数の事業所と契約する必要がありません。また、デイサービスで顔見知りになった介護職員や利用者のいる環境でショートステイを利用できるので、知らない人が苦手な方でも安心して利用できます。
小規模多機能型居宅介護の対象者
要介護1以上の認定を受けた方が対象です。要支援1、2の方は介護予防小規模多機能型居宅介護となります。
また、介護が必要になっても、住み慣れた地域で生活できるように支援する事を目的とした「地域密着型サービス」のため、小規模多機能型居宅介護の事業所と同じ市区町村に住んでいる必要があります。異なる市区町村の事業所のサービスは受けられません。
小規模多機能型居宅介護の費用について
「通い」「泊まり」「訪問」のサービス利用の頻度に関わらず、一定の月額費用となります。
要支援1 | 3,438円 |
要支援2 | 6,948円 |
要介護1 | 10,423円 |
要介護2 | 15,318円 |
要介護3 | 22,283円 |
要介護4 | 24,593円 |
要介護5 | 27,117円 |
※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。
※要支援1、2の方は、介護予防小規模多機能型居宅介護の費用となります。
※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。サービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。
上記の他に施設で利用した食費やおやつ代、宿泊時の部屋代、おむつ代やレクリエーションで利用した材料費などの日常生活費(実費相当額)がかかります。
小規模多機能型居宅介護の利用イメージ
小規模多機能型居宅介護の特徴は、柔軟なサービスの提供です。家族や利用者本人に合わせたサービスを受けることができます。 それでは、利用イメージを見ていきましょう。
1日のイメージ
●「通い(デイサービス)」の日
6:00 訪問による起床介助
8:30 朝ご飯を自宅で食べた後にデイサービスへ
※早く出勤する日は、準備も事業所にお願いする
8:45~16:45 デイサービスで過ごす
17:00 帰宅
※帰りが遅くなる時には、デイサービスで夕食を食べてから帰宅
●「訪問」の日
6:00 訪問による起床介助
11:00 訪問によるトイレ誘導、昼食の準備、配膳
※事業所によっては、デイサービスと同じ食事をお弁当で届けてくれます
13:00 訪問リハビリ(別の事業所によるサービス)
16:00 訪問によるトイレ誘導と水分補給
●「泊り」の日
8:30 朝ご飯を自宅で食べた後にデイサービスへ
デイサービス後、そのまま宿泊
1週間の利用イメージ
月曜日:「通い(デイサービス)」の日
火曜日:「通い(デイサービス)」の日
水曜日:「訪問」の日
木曜日:「通い(デイサービス)」の日
金曜日:「泊まり」の日 土曜日:宿泊後、日中はデイサービスに参加して夕方に帰宅
日曜日:利用なし
メリットとデメリット
それでは、質問にもある小規模多機能型居宅介護のメリットとデメリットをみていきましょう。
メリット
- 「通い(デイサービス)」「訪問」「泊まり」がすべて同じ事業所なので、顔なじみの職員からケアを受けることができる
- 定額で回数や時間に制限なく、24時間365日柔軟なサービスが受けられる
- 通い(デイサービス)は、始まりと終わりの時間に縛りがなく、1時間から利用でき、徐々に慣れることが可能。家族の帰りが遅い日は、夕食を食べてから帰ることもできる
- 泊りは、ショーステイのように1~2ヵ月前の予約が必要ではなく、直前でも空きがあれば利用できる
- 少人数なのでアットホームな雰囲気で手厚いサービスを受けられる
- 少人数なので利用者同士も顔見知りになりやすい
デメリット
- 併用できるサービスに限りがあり、今まで利用していた訪問介護、デイサービスやデイケア、ショートステイ、訪問入浴介護の事業所は利用できない。(訪問看護、訪問リハビリ、きょたくりょう要管理指導、福祉用具貸与、住宅改修は併用可能)
- 今までのケアマネジャーから、小規模多機能型居宅介護のケアマネジャーに変更になる
- 登録定員が1事業所当たり25名以下なので、希望しても契約できないことがある
- 「通い」「泊まり」の定員が決まっているため、希望しても利用できないことがある
- ・サービスの利用回数が少ない場合には割高になってしまう
こんな方に利用がおすすめ
- 状態の変化が激しい、家族の生活が不規則などの理由で、柔軟にサービスを利用したい方
- 新しい職員や環境になじむのが難しい方
- 柔軟なサービスで介護者の負担を減らしたい方
- 限度額を気にせずに介護サービスを利用したい方
こちらもチェック! 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
「通い(デイサービス)」「泊まり」「訪問」を組み合わせた介護保険サービスには、医療ニーズが高い方を対象とした、看護小規模多機能型居宅介護があります。あわせてチェックしておきましょう。
看護小規模多機能型居宅介護の特徴
看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)は、「通い(デイサービス)」を中心に「泊まり」「訪問介護」「訪問看護」を組み合わせた介護保険サービスです。「看たき」とも呼ばれています。2015(平成27)年までは、「複合型サービス」と呼ばれていました。
低額で回数や時間の制限なく柔軟なサービスを受けられること、同一の事業所がサービスを提供していることは、小規模多機能型居宅介護と同様です。「訪問看護」の時だけではなく、「通い(デイサービス)」や「泊まり」」を利用している際にも、医師の指示に基づいた医療的なケアを受けられます。
退院直後の方やがん末期で自宅での生活を希望している方、酸素吸入を利用しているなど医療ニーズの高い方、認知症の方、病状が不安定な方などでも、住み慣れた自宅や地域での暮らしを続けられるように利用者本人と家族の両方を支えます。医療ニーズの低い方から、看取り期の方まで利用できるサービスです。
看護小規模多機能型居宅介護の対象者
要介護1以上の認定を受けた方が利用できます。「地域密着型サービス」のため、看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)の事業所と同じ市区町村に住んでいる必要があります。
看護小規模多機能型居宅介護の費用について
要介護1 | 12,438円 |
要介護2 | 17,403円 |
要介護3 | 24,464円 |
要介護4 | 27,747円 |
要介護5 | 31,386円 |
※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。
※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。サービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。
まとめ
小規模多機能型居宅介護は、同一の事業所から通い(デイサービス)のサービスを中心に、利用者や家族の希望や状況に合わせて、訪問や宿泊のサービスを利用できる介護保険サービスです。より医療ニーズが高い方を対象とした、看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)もあります。
サービス時間や回数などが柔軟に組み合わせられるので、状態が安定していない方や、仕事や育児をしながら介護をしている方におすすめです。利用者にとっても顔なじみのスタッフや利用者に囲まれたアットホームな環境で支援を受けることができます。ただし、地域密着型サービスで利用定員が限られているため、希望してもすぐには利用できないことがあります。
限度額の問題で思うように介護サービスが利用できていない方、介護と自分の生活の両立が難しい方、もっと温かい環境で介護を受けさせたいという方は、一度ケアマネジャーに相談してみてはいかがでしょうか。
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【経歴】
1982年生まれ。
医療福祉系学校を卒業後、約11年医療ソーシャルワーカーとして医療機関に勤務。
その後、一生を通じた支援をしたいと思い、介護支援専門員(ケアマネジャー)へ転身。
2017年1月 株式会社HOPE 設立
2017年3月 ほーぷ相談支援センター川越 開設
代表取締役と共に、介護支援専門員(ケアマネジャー)として、埼玉県川越市で高齢者の相談支援を行っている。
他に、医療機関で、退院支援に関するアドバイザーと職員の指導・教育にあたっている。
医療・介護に関する新規事業・コンテンツ開発のミーティングパートナーとしても活動。大学院卒(経営研究科)MBA取得している。
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