東京都のシルバーパスは、足が悪い人でも利用できますか?使い方や注意点も知りたいです。

質問

足が悪く家に閉じこもりがちな母に、もっと外出してもらいたいです。

シルバーパスを購入すれば、「せっかくだから」と出歩くようになるのを期待していますが、杖をついているので利用できるか気になっています。シルバーパスは足が悪い人でも利用できるのでしょうか。

 

専門家

いつまでも心身を元気に保つためには、定期的に外出する機会を持つことは大切です。しかし、足が不自由になるとどうしても家に閉じこもりがちになってしまいます。

東京都では高齢者の外出を支援するためにバスや都営地下鉄で利用できるシルバーパスを発行しています。シルバーパスは杖を使用していたり足が悪かったりしても寝たきり等で経常的にバスの利用が困難でなければ発行を受けることが可能です。

ここでは、東京都のシルバーパスの概要や利用方法、注意点について解説していきます。

シルバーパスは東京都の「福祉乗車券」

シルバーパスは東京都の「福祉乗車券」

全国の自治体のなかには、その地域に住む高齢者や障害がある人の社会参加を促すために「福祉乗車券」を交付しているところがあります。福祉乗車券があれば、特定区域内の鉄道やバスを自由に利用できるようになります。

東京都では、高齢者福祉の一環として「東京都シルバーパス」という福祉乗車券を交付しています。まず、シルバーパスの対象者や利用できる交通機関を確認しましょう。

満70歳以上の東京都民が利用できる

シルバーパスを利用できるのは「満70歳以上の東京都民」で、70歳を迎える誕生月の初日から申し込めます。たとえば、12月20日に70歳になる場合、12月1日から発行してもらえます。

1日生まれの場合は前月の1日から申込み可能です。ただし、新規のシルバーパスが発行されるのは毎年10月1日からなので、9月中に事前に申し込むことはできません。

また、70歳以上の都民であっても、寝たきり状態など、経常的に交通機関を利用するのが困難な方はシルバーパスの対象外となっています。足が悪く杖をついている方でも、電車やバスを経常的に利用できるのであれば発行可能です。

都営交通と都内の民営バスが乗り放題

シルバーパスを持っていると、以下のような交通機関を利用できます。

  • 都バス
  • 都内の民営バス(東急バス、京王電鉄バス、京成バス、小田急バスなど)
  • 都電
  • 都営地下鉄
  • 日暮里
  • 舎人ライナー

シルバーパスの実施主体は、東京都シルバーパス事業の指定団体である一般社団法人東京バス協会です。そのため、都内を運行するほとんどの乗り合いバスが対象となっています。

都営地下鉄には都営浅草線、都営三田線、都営新宿線、都営大江戸線があり、基本的に都内で運行している範囲が対象となっています。日暮里・舎人ライナーは全区間が対象です。

バスについても都内に停留所がある範囲が対象。なお、高速バスや深夜急行バス、空港連絡バスなど特別料金が設定されている路線ではシルバーパスは使えません。

シルバーパスの負担金と申込方法

シルバーパスの負担金と申込方法

次に、シルバーパスの費用と申込方法について見ていきましょう。

負担金は住民税の課税・非課税によって異なる

まず費用についてですが、シルバーパスを利用するには負担金を支払う必要があります。負担金は住民税の課税・非課税によって以下のように異なります。

  •  課税される方:20,510円(4〜9月に購入する場合は10,255円)
  •  非課税の方:1,000円

シルバーパスの有効期限は発行日に関係なく9月30日なので、住民税の課税対象者が4〜9月に購入する場合の負担金は半年分(10,255円)となっています。

なお、その年度の住民税が課税対象の場合でも、前年度の所得金額が125万円以下の方(経過措置対象の方)については1,000円で購入可能です。

申込方法と必要書類

シルバーパスは都内各所にある専用窓口で申込みましょう。お近くの窓口の場所や取扱い時間などは下記ページよりご確認ください。

東京都シルバーパス常設窓口一覧 - 東京都シルバーパスのご案内

 

申込みには以下の書類が必要です。

  •  住民税が課税される方:申込書、本人確認書類
  •  住民税が非課税または経過措置対象の方:申込書、本人確認書類、所得確認書類

申込書は窓口にあります。本人確認書類は運転免許証や健康保険被保険者証など。所得確認書類としては、介護保険料納入(決定)通知書、住民税非課税証明書、生活保護受給証明書のいずれかが必要です。

シルバーパスは原則的に本人が窓口で申込むことになっていますが、代理人による申込みも可能です。代理人が申込む際は、利用者本人の必要書類ほほか、代理人の本人確認書類を持参する必要があります。

シルバーパスが不要になった場合

都外への引っ越しなどでシルバーパスが不要になった場合は、発行窓口に返還してください。シルバーパスを返還すると、負担金の一部が払い戻されます。

負担金の払い戻しは、20,510円または10,255円でシルバーパスを購入した人が対象で、利用月数に応じた月割り金額と手数料(500円)を差し引いた金額が返還されます。基本的な月割り金額は2,000円です。

たとえば、20,510円で購入したシルバーパスを翌月に返還する場合、20,510円−(2,000円×2ヶ月)−500円=16,010円が払い戻されます。発行された月に返還する場合は、1ヶ月分の料金(2,000円)と手数料が差し引かれます。

ただし、8月または9月に返還する場合やパスを紛失した場合は払い戻されません。

紛失したら再発行してもらえる

シルバーパスを紛失してしまった場合、窓口に申し出れば無料で再発行してもらえます。再発行はシルバーパスの有効期間内に1回のみ可能で、申込みから再発行まで1週間程度かかります。

盗難や火災による紛失の場合は、警察署の盗難届受理番号や消防署の罹災証明書が必要です。

なお、窓口によっては再発行の手続きができないところもあるので、事前に電話などで確認しておきましょう。

あらかじめ知っておきたい注意点

あらかじめ知っておきたい注意点

シルバーパスを利用する際は、あらかじめ以下の注意点も把握しておきましょう。

本人以外は利用できない

シルバーパスを利用できるのは申込みをした本人のみなので、家族や他人に貸してはいけません。不正使用が発覚した場合、シルバーパスを回収されたり割増運賃を徴収されたりする可能性があるので注意しましょう。

有効期間は9月30日まで

シルバーパスの有効期間は発行日にかかわらず9月30日までです。先述の通り、負担金は年間20,510円(4〜9月の申込みは10,255円)です。10月に申込んだ人と3月に申込んだ人の負担金は同一となるため、申込むタイミングによって費用感が変わってきます。そのため、タイミングや利用頻度を考慮に入れたうえで申込むことをおすすめします。

利用方法は交通機関によって異なる

シルバーパスの使い方は交通機関によって異なります。たとえば、バスや都電に乗車する場合は乗務員にシルバーパスを提示するだけでOKですが、都営地下鉄や日暮里・舎人ライナーを利用する場合は自動改札機の挿入口に通します(改札に駅員がいる場合はシルバーパスを提示してもOK)。

なお、シルバーパスはPASMOやSuicaのように改札などのカード読み取り部分にかざして通過することはできません。

PASMOやSuicaから離して使おう

PASMOやSuicaを持っている人は、シルバーパスの利用時に誤って運賃が引かれないよう注意してください。駅の改札にシルバーパスを通すとき、交通系ICカードが読み取り部分に近づくとセンサーが感知してしまう可能性があります。そのため、シルバーパスを利用する際は交通系ICカードを近づけないようにしましょう。

シルバーパスを利用して行動範囲を広げよう

70歳以上の都民で、都内のバスや都営地下鉄をよく利用する方はシルバーパスが便利です。シルバーパスがあれば対象の交通機関が乗り放題となるため、利用頻度によっては交通費の負担軽減につながるでしょう。

また、高齢者のなかには家に閉じこもりがちになる人もいますが、シルバーパスを持つことで外出機会が増えることも期待できます。出歩く機会が減ると、足腰が弱ったり体力が低下したりする懸念がありますから、シルバーパスを積極的に利用して行動範囲を広げることをおすすめします。

※この記事は2020年1月時点の情報で作成しています。

 

監修者:寺岡純子

監修者:寺岡純子(てらおか じゅんこ)

主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。