介護が必要な高齢者だけではなく、介護をしている家族のサポートも、介護保険サービスの目的です。本記事では、利用者本人だけではなく介護家族にもメリットが大きい、短期入所生活介護(ショートステイ)を解説していきます。介護疲れを感じる前に、ぜひ確認しておきましょう。
- 短期入所生活介護(ショートステイ)とは?知っておきたい基本ポイント
- 短期入所生活介護(ショートステイ)を受けられる対象者
- 短期入所生活介護(ショートステイ)のサービス内容
- 受け入れ中止になるケース
- 短期入所生活介護(ショートステイ)でかかる料金
- 短期入所生活介護(ショートステイ)の利用方法と選び方
- 介護保険サービスを利用して介護から離れる時間を作りましょう
短期入所生活介護(ショートステイ)とは?知っておきたい基本ポイント
まずは、短期入所生活介護(ショートステイ)の基本ポイントを確認していきましょう。
介護施設に短期間入所するサービス
短期入所生活介護(ショートステイ)とは、高齢者が特別養護老人ホームやショートステイ専門施設などに短期間入所する介護保険サービスです。入所中の高齢者は、排泄や入浴、食事などの日常生活上の支援や生活機能訓練、レクリエーションを受けて過ごします。
利用者が持っている機能を生かして日常生活を送れるように心身機能を維持する目的に加えて、介護家族の精神的・身体的負担の軽減を図ることも大きな目的です。
冠婚葬祭や出張、家族の病気などの理由で利用するだけではなく、介護家族が一定期間介護から離れられるための時間として利用されています。無理なく介護を続けるためにも、短期入所生活介護(ショートステイ)を利用して、上手にレスパイト(息抜き)を取るようにしましょう。
また、将来的に施設への入所を考えている場合に施設での生活に慣れるために利用したり、退院後に自宅に戻れない方が施設に入所するまで利用したり、乱れた生活リズムを整えるために利用することがあります。
1回当たりの平均利用日数は約半数が3~10日です。30日を超えるロング利用となるケースとしては、特別養護老人ホームなどの施設が空くまでの待期期間に利用する場合や、冬や夏に自宅の生活環境が厳しくなるために長期間利用する場合などがあげられます。
短期入所生活介護(ショートステイ)の2種類の施設
短期入所生活介護(ショートステイ)を行う事業所によって、2種類の施設があります。
ひとつは「併設型」です。特別養護老人ホームや老人保健施設などの長期間入所する大型の施設に併設されており、短期入所生活介護(ショートステイ)の利用者は、施設内の部屋に宿泊します。
もうひとつは、短期入所生活介護(ショートステイ)だけを行う専門施設です。「単独型」と呼ばれています。
短期入所生活介護(ショートステイ)を利用できる日数
短期入所生活介護(ショートステイ)を利用できるのは、連続して30日間までです。31日以降の利用には、介護保険は適用されません。
介護保険には、要介護度ごとに支給限度額があり、その金額内に収まるように利用します。もし、支給限度額内に収まらなかった場合には、超えた分が全額自己負担となります。
また、介護認定期間の半数までという規定もあります。介護認定期間は、新しく要介護認定を受けた方で原則6ヵ月、更新の方で原則12ヵ月です。もしその半数を超えて利用する場合には、あらかじめ市区町村に届け出が必要ですので、ケアマネジャーに相談をしましょう。
短期入所生活介護(ショートステイ)の職員体制
短期入所生活介護(ショートステイ)の施設には、医師、生活相談員、介護職員、看護師(または准看護師)、栄養士、機能訓練指導員が在籍しています。
短期入所生活介護(ショートステイ)の予約方法
短期入所生活介護(ショートステイ)は、予約が取りにくいという残念な特徴があります。約7割の施設で2ヵ月前から予約を受け付けているので、計画的な利用がお勧めです。ゴールデンウィークや年末年始などは、特に予約が取りにくい傾向があります。
とはいえ、家族の急病時など、急な利用ができないというわけではありません。緊急に必要な人のためにベッドを空けている施設や、キャンセルの出た施設などもありますので、まずはケアマネジャーに相談しましょう。
短期入所生活介護(ショートステイ)を受けられる対象者
それでは、短期入所生活介護(ショートステイ)を受けられる対象者を確認しましょう。
短期入所生活介護(ショートステイ)が受けられる人
介護保険サービスの短期入所生活介護(ショートステイ)を利用できるのは、要介護1~5の認定を受けた在宅の方です。要支援1、2の方は介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)が利用できます。
短期入所生活介護(ショートステイ)のサービス内容
続いて、短期入所生活介護(ショートステイ)のサービス内容を見ていきましょう。
短期入所生活介護(ショートステイ)で受けられるサービス
短期入所生活介護(ショートステイ)では、排泄や週に数回の入浴などの日常生活上の支援や生活機能訓練、健康状態の確認といったサービスがあります。食事は、施設に在籍している栄養士が栄養バランスを考えて提供。夜間には職員による巡視が行われています。
日中は、施設ごとに用意されている集団レクリエーションやクラブ活動に参加したり、個別活動を行ったりして過ごします。
短期入所生活介護(ショートステイ)の1日(例)
※上記は一例です。サービス提供事業者、利用時間、サービス内容にもよって異なります。
短期入所生活介護(ショートステイ)で入居する部屋のタイプ
短期入所生活介護(ショートステイ)には、4つの部屋タイプがあります。
●従来型個室
居室が個室になっているタイプです。トイレや浴室は共用で、洗面台は寝室内にあることが多いです。トイレ、ミニキッチンが個室内にあるところもあり、個室内の設備は施設によって異なります。
●多床室
1部屋4床以下の相部屋です。ベッドの間には棚などで仕切りが作られており、プライベートが確保できるように工夫されています。
●ユニット型個室
居室が個室になっているタイプです。10人ほどを1つのユニットとして、共同で食堂や生活室、トイレ、浴室を利用します。
●ユニット型個室的多床室
以前は「ユニット型準個室」と呼ばれていた部屋タイプです。天井と壁との間に隙間があるため、隣室から音や臭気、照明の明かりが漏れるため、完全な個室とは呼べません。10人ほどを1つのユニットとして、共同で食堂や生活室、トイレ、浴室を利用するのはユニット型個室と同様です。
入所前日に用意しておくもの
入所前日には、以下のものを用意しておきましょう。
- 薬(1回分ずつにまとめておく)
- 洗面用具や身だしなみ用品
- 入浴後の着替え
- 上履き
- おむつの替え
- パジャマ、寝間着
- タオル
有料でパジャマやタオルレンタルを用意している施設やオムツやパッドの持ち込みが不要の施設もあるので、事前に確認をしておきましょう。
一人暮らしの方などは、訪問介護の際にヘルパーに準備してもらうことも可能です。
また、お酒やたばこなど、持ち込みたい嗜好品がある場合には、事前に施設に確認をしておきましょう。
医療的ケアが必要な場合に使えるサービス
医療的ケアの必要性が高い方には、介護老人保健施設(老健)などの医療の手厚い施設に短期間入所する、短期入所療養介護(医療型ショートステイ)があります。
入浴や排泄などの日常生活上の支援や機能訓練が受けられるのは、短期入所生活介護(ショートステイ)と同じですが、看護・医学的管理の下でサービスが受けられる点が特徴です。
短期入所療養介護(医療型ショートステイ)とは? 医療的ケアが手厚い短期入所サービス
受け入れ中止になるケース
予約がきちんとできていても、短期入所生活介護(ショートステイ)の受け入れが中止になる場合があります。どんなケースで受け入れができなくなるのかを、事前に確認しておきましょう。
受け入れ中止になる2つのケース
●インフルエンザ発症時
短期入所生活介護(ショートステイ)に出発する前に、必ず熱を測るようにしましょう。施設によって「〇度以上の発熱時は受け入れ不可」や「インフルエンザ発症から〇日間、または解熱後〇日間は受け入れ不可」などの基準が設定されています。
また、入所中に発熱やインフルエンザの診断が出た場合や同じユニット内にインフルエンザ罹患者が出た場合には、サービスが中止されて帰宅となる場合があります。ノロウィルスなど、他の感染症も同様です。
事前に施設の基準を確認してくこと、日ごろから予防を心がけること、シーズン前に予防注射を摂取しておくことが大切です。
●認知症のBPSD(周辺症状)に施設が対応できない時
認知症には、人によって出たり出なかったりするBPSD(周辺症状)があります。どんな症状がどれぐらい出るのかは人それぞれであり、介護する家族にとって大きな負担になってしまうことも少なくはありません。
深夜の徘徊が多いため職員だけでは対応できない場合や、暴言や暴力などがあり、他の利用者の安全が守れない場合には、受け入れが中止になる場合があります。
どの程度のBPSD(周辺症状)に対応できるのかは施設によって異なります。事前に正確な症状を伝え、対応可能かどうかの確認をしておくといいでしょう。
短期入所生活介護(ショートステイ)でかかる料金
短期入所生活介護(ショートステイ)を利用すると、どのくらいの費用が掛かるのでしょうか。その金額を見ていきましょう。
短期入所生活介護(ショートステイ)の1日ごとの基本料金
短期入所生活介護(ショートステイ)は、以下の金額となります。
単独型 | 短期入所生活介護費 従来型個室 多床室 |
要介護1 | 638円 |
要介護2 | 707円 | ||
要介護3 | 778円 | ||
要介護4 | 847円 | ||
要介護5 | 916円 | ||
ユニット型短期入所生活介護費 ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 |
要介護1 | 738円 | |
要介護2 | 806円 | ||
要介護3 | 881円 | ||
要介護4 | 949円 | ||
要介護5 | 1,017円 | ||
併設型 | 短期入所生活介護 従来型個室 多床室 |
要介護1 | 596円 |
要介護2 | 665円 | ||
要介護3 | 737円 | ||
要介護4 | 806円 | ||
要介護5 | 874円 | ||
ユニット型短期入所生活介護費 ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 |
要介護1 | 696円 | |
要介護2 |
764円 |
||
要介護3 | 838円 | ||
要介護4 | 908円 | ||
要介護5 | 976円 |
※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。
※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。サービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。
介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)の1日ごとの基本料金
介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)は、以下の金額となります。
単独型 | 短期入所生活介護費 従来型個室 多床室 |
要支援1 | 474円 |
要支援2 | 589円 | ||
ユニット型短期入所生活介護費 ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 |
要支援1 | 555円 | |
要支援2 | 674円 | ||
併設型 | 短期入所生活介護 従来型個室 多床室 |
要支援1 | 446円 |
要支援2 | 555円 | ||
ユニット型短期入所生活介護費 ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 |
要支援1 | 523円 | |
要支援2 | 649円 |
※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。
※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。サービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。
その他の料金
上記の金額の他に、部屋代と食事代がかかります。利用する施設によって金額が違うので、あらかじめ確認しておくといいでしょう。 国が定めた基準費用額は、1日当たり以下の通りです。
- 食費:1,392円
- 従来型個室(特養など):1,171円
- 従来型個室(老健、療養など):1,668円
- 多床室(特養など):855円
- 多床室(老健、療養など):377円
- ユニット型個室:2,006円
- ユニット型個室的多床室:1,668円
また、利用者の所得に応じた軽減制度があります。詳しくは担当のケアマネジャーにご確認ください。 その他、おむつ代や洗濯代などの日常生活費(実費相当額)がかかります。
短期入所生活介護(ショートステイ)の利用方法と選び方
最後に、短期入所生活介護(ショートステイ)を利用する基本手順を確認しておきましょう。
短期入所生活介護(ショートステイ)の利用方法
要介護1~5の認定を受けている場合、利用手順は以下のようになります。
- 担当のケアマネジャーか地域包括支援センターに相談する
- ケアマネジャーがサービス提供事業者(施設)を探し、利用日の調整をする
- 施設と利用日が決まったら、ケアマネジャーがケアプランを作成
- サービス提供事業者(施設)と面談し、利用者の状況を確認したうえで契約を交わす
- 指定日時よりサービス開始
※上記は基本的な流れです。サービス提供事業者やケアマネジャー、利用者の状況によって異なります。
短期入所生活介護(ショートステイ)の選び方
短期入所生活介護(ショートステイ)は通所介護(デイサービス)と異なり、場所が離れていたり、日程によって利用できる施設が限られたりするため、なかなか事前に見学をするのは難しいことがあります。ただし、希望すれば見学をすることも可能です。
部屋の様子や職員や施設の雰囲気を確認したうえで利用できれば、家族も安心して任せることができます。
介護保険サービスを利用して介護から離れる時間を作りましょう
短期入所生活介護(ショートステイ)は、介護家族の出張や病気、冠婚葬祭などで介護ができない場合だけではなく、介護から離れる時間を作るレスパイト(息抜き)が必要な場合に利用できる介護保険サービスです。
介護をする人が精神的にも身体的にも疲れてしまっては、介護を受ける高齢者が自宅で暮らし続けるのも難しくなるでしょう。介護をされる人のため、そして何よりも自分のために、上手に短期入所生活介護(ショートステイ)を利用しましょう。

訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。