老人ホームの種類による医療行為の範囲について解説

老人ホームに入所する際、どのような医療行為を受けられるかご存じですか?

老人ホームの種類によって、受けられる医療行為は異なります。 ここでは必要に応じた医療ケアを安心して受けるために、医療行為に焦点を当てた老人ホームの選び方についてご紹介します。

老人ホームにおける「医療行為」とは?

「医療行為」とは何のことを指すのでしょうか。 「医療行為」とは、私たちが普段病院などで受けている「処置」に該当します。 その中で「医療行為」は、医師のみが行うことの出来る「絶対的医行為」と、医師以外の医療従事者でも行える「相対的医行為」に分けられます。

「絶対的医行為」とは、医師が自分で行わなければならない程、高度な専門性や技術を必要とするもので、手術や中心静脈カテーテル挿入、褥瘡の壊死組織除去、動脈血採取などの医療行為や薬の処方、病気の診断等が含まれます。

一方「相対的医行為」とは危険性がそれほど高くなく、医師の指示によって看護師などが行うことの出来る医療行為です。

老人ホームの看護師は、医師からの指示を受け、入居者に対して「相対的医行為」を行うことが出来ます。

また、介護スタッフは基本的には「医療行為」を行えませんが「医療的ケア」を行うことが出来、これは日常生活に必要とされる医療的な行為(ケア)のことです。

老人ホーム種類ごとの医療人員配置義務について紹介 老人ホームの種類によっては、入居定員数に対して、医師・看護職員などの医療従事者を配置することが義務付けられています。これは老人ホームで適正な医療を行うために必要な基準です。

ここでは老人ホームの種類ごとの医療職の人員配置義務ついてご紹介します。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは、介護や生活支援を受けながら暮らすことの出来る施設です。 看護師の配置義務が定められていますが、医師の配置義務は定められていません。看護職員は入居者30名未満に対して最低1人、その後入居者が50名増えるごとに、必要な看護師の数が1人追加されます。

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは介護付き有料老人ホームと違い、食事や掃除、見守り等の生活支援サービスを行っており、必要な場合は外部の介護サービスを受けます。

施設が提供するサービスに応じて職員を配置するようになっており、医師や看護師の配置義務はありません。(一方で、必要数は確保する必要があります。)

グループホーム

認知症のある人を対象とした施設で、住み慣れた地域で少人数・アットホームな環境で生活を送ることが出来ます。 看護師も医師も配置義務はなく、看護師については任意となっています。

近年、グループホームに入所する方の要介護度が上昇してきているのに対し、看護師を配置するホームも増えてきているのが現状です。 医療行為を希望される方は施設へ直接問い合わせてみるのもよいでしょう。

老人保健施設

老人保健施設は、在宅復帰を目指し、医師が常勤、看護師が24時間常駐している施設です。

看護師の人員配置は、看護師と介護職員を合わせて「入所者3人に対して1人以上」となっており、看護職員自体の人数は、看護・介護職員総数の7分の2程度が標準とされています。 医師は、常勤で入所者100人に対して1人以上と定められています。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームは終の棲家として、寝たきりなど要介護度3以上の重度の方にも対応した生活施設であり、終身利用が可能です。医療よりも生活に特化している施設といえます。

看護師も医師も配置義務が定められていますが、医師については非常勤も可とされています。

看護職員については、介護職員の人数と合わせて入居者3人に対して最低1人以上が必要です。

上記をまとめると、医療の充実度が高い順から、

老人保健施設>特別養護老人ホーム>介護付き有料老人ホーム>グループホーム>住宅型有料老人ホーム

となります。

介護スタッフは基本的に医療行為NG!

 

介護スタッフは基本的に医療行為は行えず、出来ることが限られています。 ここでは介護スタッフが行える行為と、行えない行為についてご紹介します。

介護スタッフに行うことが出来る行為とは?

介護スタッフは基本的には医療行為を行うことは出来ませんが、状況に応じて行うことの出来る行為があります。それは痰吸引と経管栄養です。

痰の吸引や経管栄養は医療行為に該当し、以前は医師法等により医師・看護師等しか行うことが出来ませんでした。

しかし、平成24年度から「社会福祉士及び介護福祉士法」が一部改正され、一定の研修を受けた介護スタッフに限り、一定の条件の下で痰の吸引等の行為を行えるようになりました。

また、厚生労働省が平成17年7月に発表した「医師法第17条、歯科医師法第17条、及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」には、介護スタッフが行うことの出来る行為についてまとめられています。 厚生労働省が定めている、介護スタッフに行える行為は以下の通りです。

「医療行為には該当しない」とされている行為

  • 体温計を用いた体温測定
  • 自動血圧測定器を用いた血圧測定
  • 酸素濃度測定器の装着(新生児以外で入院治療が必要な患者さんに対する場合)
  • 軽微な切り傷や擦り傷、やけど等の処置(ガーゼ交換を含む)
  • 湿布の貼付
  • 軟膏塗布(床ずれの処置を除く)
  • 目薬をさす
  • 服薬介助(薬を飲ませる行為)
  • 坐薬の挿入
  • 鼻腔粘膜への薬剤噴霧の介助

「医療行為」とされているが規制対象外となっている行為  

  • 耳垢の除去(耳垢塞栓の除去を除く)
  • 爪切り、爪やすり
  • 歯ブラシや綿棒による口腔のケア(歯、口腔粘膜、舌等)
  • ストーマのパウチにたまった排泄物の廃棄
  • 自己導尿補助におけるカテーテルの準備、体位保持
  • 市販の浣腸器を用いた浣腸

これらの行為については「医療的ケア」と言われ、異常が見られない場合であれば医師や看護師に確認して指示をうけることにより介護スタッフも行うことができます。

老人ホームで対応できる医療行為

以上の通り、老人ホームで行われる医療行為は、基本的に看護師や協力医療機関と呼ばれる医療施設と連携し、医療機関の医師の指示のもと行われています。 それぞれの医療行為がどのような対応がなされるかも見ていきましょう。

インシュリン投与

個別に定められた種類・量・回数を食事前に注射器で投与を行いますが、看護師にしか行えません。

その為、1日3回以上の投与の場合、朝・昼・夕の3回となり看護師が日中のみの勤務の場合は、朝食前の投与が困難となります。

状況によっては、主治医と看護師が相談して注射薬を1日に1回のみのものに変更してもらったり、個別に食事の時間をずらしたりして対応することもあります。

胃ろう

ベッド上でも行うことが出来ますが、老人ホームでは寝たきりを防ぐために、食事をとるのと同じように食堂等で行うことが多いです。

胃に送り込む速さや、量など様々な管理が必要で、また皮膚のトラブルが起きやすく、こまめな観察が重要となってきます。

看護師以外にも、研修を受け、適切な環境(指示書や安全委員会の設置など)を整えれば介護スタッフも行うことが出来ます。

鼻腔・経管栄養

こちらも胃ろうと同じく、研修を受けた介護スタッフも行うことが出来、食堂で実施することが多くあります。

鼻から挿入したカテーテルが抜けやすい為、胃に届いているか等の看護師の観察が重要です。 特に、認知症のある方は自分で抜いてしまう恐れがあるため、看護師が24時間常駐していない場合は受け入れが困難になる可能性があります。

ストーマ・人工肛門

定期的にパウチに溜まった排泄物を破棄したり、パウチの交換を行ったりします。 入浴も問題なく、パウチを装着したままでも入浴することが出来ます。

しかし、パウチがお腹から外れてしまったり、皮膚のトラブルが生じた際は看護師による処置が必要です。

在宅酸素療法

呼吸は24時間、365日行われているため、常時安全に作動しているか確認が必要になります。 カニューレが抜けていないか、機械が確実に作動しているか、また定期的なメンテナンスが必要です。

人工呼吸器

機械がしっかりと装着されているか、確実に作動しているか、日常のメンテナンス等が重要です。

皮膚トラブルも起こりやすくなる為、皮膚を清潔に保ち、水分をしっかりと取り除きます。

自分の力で痰を出せない方が多いため、看護師や研修を受けた介護スタッフによる痰の吸引も必要となります。

褥瘡・床ずれ

状態に応じて、軟膏を塗ったり、患部を保護したりして処置を行います。 また定期的に体位交換を行って体圧を分散させたり、栄養状態を改善し、褥瘡悪化やできるのを防ぎます。

排泄物等で患部が汚染された場合などは、介護スタッフには処置が行えないため、看護師に連絡して指示を仰がなくてはいけません。

痰吸引

食事の前後や、痰が絡んでいる際に、吸引気を使用して痰を吸い取ります。

研修を修了した介護スタッフは痰吸引を行うことが出来ますが、実施できる個所は口の中と鼻の中、気管カニューレが入っている方はカニューレ内部のみと決められている為、のどの奥の方まで痰が絡んでしまっている際は吸引することが出来ません。

また吸引の回数が多かったり、夜間も吸引が必要な場合は看護師が常駐しているか、もしくは研修を修了した介護スタッフが吸引を行える体制になっていることが重要です。

人工透析

医療施設において、腎臓の代わりにフィルターを通して血液を濾過(ろか)し、一般的に週3回、1回4時間実施するのが標準とされています。

その為、医療機関への送迎や、認知症がある場合は常に付き添いの必要が生じます。 施設では水分・塩分・タンパク質・カリウム等の食事制限を個別に行います。

気管切開

多くの場合は穴が塞がらないように気管カニューレという管を入れ、必要に応じて人工呼吸器を装着します。

ただし、気管カニューレが抜けてしまったり、硬くなった痰が詰まったりすることがあり注意が必要です。

気管カニューレの管理や痰吸引は、看護師ならびに研修を修了した介護スタッフのみが行えます。

中心静脈栄養(IVH)

中心静脈という太い血管にカテーテルを挿入し栄養や水分を補給するもので、毎日6時間~24時間の点滴が必要になります。

カテーテルが抜けてしまったり、折れてしまったり、また細菌による感染症のトラブルも起きやすいため、十分な管理体制が必要です。

こちらは介護スタッフには行えず、看護師のみ行えます。

カテーテル・尿バルーン

尿道から膀胱にカテーテルを挿入し、尿を体外に排出して蓄尿袋に溜め、2~4週間おきにカテーテルを交換します。

また、定期的に畜尿袋から尿を破棄し、24時間の排尿量の計測を行います。 尿道にカテーテルを挿入したままの状態にするため、感染症を引き起こしやすく、またカテーテルが抜けてしまった場合は看護師の処置が必要です。

ペースメーカー

医療機関への定期健診によって、機器の不具合等をチェックします。老人ホームでの生活には大きな影響は及ぼしませんが、電化製品の種類によっては、電磁波がペースメーカーに悪影響を及ぼす恐れがある為、周囲の生活環境を整えることが大切です。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

病気の進行を見極め、状態によって食事や排泄、移動等の介護を行います。 進行は人によってそれぞれですが、転倒しやすかったり人工呼吸器や痰吸引が必要になったりする場合もある為、医療体制の充実が求められます。

認知症

代表的な症状として記憶障害がありますが、その他判断力の低下、時間や場所・名前などが分からなくなる見当識障害などがあります。

認知症の種類によっては徘徊や暴力、妄想、睡眠障害など、様々な症状がみられ、また転倒や誤食、入居者同士のトラブルによる事故等、予期せぬ事態が起こる可能性も十分に考えられます。

事故が起こった際にすぐに看護師が駆け付けられるように、看護師が常駐していると安心です。 ここまで医療行為について説明してきましたが、人によって必要な医療行為の範囲は幅広く、看護師が常駐していてもこれらの症状に対して全てが対応できるわけではありません。

入居を検討している際は直接施設に問い合わせ、細かく確認する必要があります。

症状別で対応可能な老人ホームの選び方

以上の通り、老人ホームを選ぶ際には、事前に必要な医療行為に対して受け入れを行っているかどうかを入念に調べる必要があります。 以下の3点に注目してその方に合った老人ホームを選ぶようにしてください。

入居者とスタッフの比率はどうか

入居者1人に対してスタッフの人員配置を確認しましょう。 基本的には入居者数に対してスタッフの数が多くなるほど、手厚いサービスを受けられます。例えば、人員配置「3:1」とは、入居者3人に対して1人の介護スタッフもしくは看護師を配置しなくてはならないという意味です。

スタッフが少ない施設でも食事、排泄、入浴などといった基本的な介護を受けることは出来ます。しかし「夜はパジャマに着替えたい」「お風呂の温度は熱めがいい」「毎日外を散歩したい」等といった個別の要望に答えることは難しいでしょう。

人員配置よりも多くスタッフを配置している施設もあるため、施設に直接確認してみてください。

医療従事者が配置されているかどうか

持病があったり等、常時医療を受ける必要のある人は、医療従事者の配置数や勤務時間について確認しましょう。 医療従事者(看護師、医師)が常勤なのか非常勤なのか、また24時間待機しているかどうかによって、受けられる医療が変わってくる為です。

それ以外にも、医師などで医療体制を充実させている施設や、一定の研修を受けた介護スタッフが喀痰吸引や経管栄養などの医療行為を行っている施設もあります。

また、施設を終の住みかとすることを希望している場合には、施設において看取りを行っているかどうかも重要なポイントです。看取りを行っている老人ホームには、24時間対応出来るスタッフの体制や死亡確認が出来る医師がいる必要があります。

協力医療機関との連携情報

常勤の医師や看護師を配置していても、老人ホームだけですべての医療行為を行うことは困難です。そこで必要に応じて、提携先の協力医療機関で医療を受けることが出来ます。

協力医療機関では専門的な医療行為以外にも、緊急対応や健康管理上のアドバイス、定期健診などを行っています。また、入院が必要になった際に入院出来ることもあります。

どのような医療機関と提携し、そこではどのような医療が受けられるかを確認することが大切です。

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周田佳介

監修者:周田佳介

正看護師、介護福祉士、介護支援専門員、認知症ケア専門士、介護職員等によるたん吸引等の研修指導看護師の資格を取得している。
介護医療現場で13年従事し、今なお現役の訪問看護師として勤務している。急性期病棟や慢性期病棟といった医療機関のほか、特別養護老人ホーム、グループホーム、訪問介護事業所などの介護事業所での勤務経験があり、医療・介護の両面から福祉に携わる。