経鼻経管栄養とは?メリットとデメリットや栄養剤を注入するときの手順、注入時に起こりやすいトラブルなどをご紹介します!


経鼻経管栄養は、鼻から胃にチューブを通して栄養剤を注入する方法です。在宅でも利用可能ですが、トラブルの発生を防ぐためには正しい手順で行うことが重要です。

この記事では、経鼻経管栄養の手順と起こり得るトラブルについてご紹介します。

経鼻経管栄養とは?

経鼻経管栄養は、生命維持のために必要な栄養素を腸を通して投与する「経腸栄養」の一種です。鼻からチューブを通して胃や十二指腸、空腸などに栄養剤を注入することで栄養を摂取できます。

経鼻経管栄養の対象となるのは、嚥下機能が低下している一方で、消化管の機能が正常である方です。脳や神経の病気、口やのどの手術を受けた直後などで対象となることがあります。

咀嚼・嚥下機能が低下しても必要な栄養を摂取できるメリットがあるものの、胃食道逆流症や誤嚥性肺炎などの合併症のリスクを伴います。経鼻経管栄養はあくまでも一時的な処置であり、3週間以内が目安です。

4週間を超えて経鼻経管栄養が必要な場合は、胃ろうなどほかの栄養摂取方法の検討が必要です。

経鼻経管栄養のメリットは?


経鼻経管栄養にはさまざまなメリットがあり、栄養を摂取できなくなったときに検討するケースは少なくありません。

ここでは、経鼻経管栄養の7つのメリットをご紹介します。ほかの栄養摂取方法との違いも押さえながら見ていきましょう。

手術が必要ない

経鼻経管栄養のメリットは、手術の必要がないことです。

胃ろうや腸ろうの場合は腹部に穴を開けて胃や腸に直接チューブを挿入するための手術が必要ですが、患者が受ける身体的・心理的負担は大きいといわざるを得ません。

一方、経鼻経管栄養は鼻からチューブを挿入するため、手術をしなくても栄養剤を注入できます。

いつでも処置を中止できる

経鼻経管栄養には、いつでも処置を中止できるメリットもあります。

口から食事や栄養を摂取できる状態になれば、チューブを挿入しておく必要はありません。

チューブは抜き取りが比較的簡単になっているため、口から食事や栄養を摂取できるようになったときには、経口摂取への切り替えをスムーズに行えます。

誤嚥性肺炎を防げる

経鼻経管栄養によって誤嚥性肺炎を防げる点もメリットのひとつです。

嚥下機能が低下している方は食事を通じて誤嚥性肺炎を起こすリスクがありますが、経鼻経管栄養は胃や腸に直接栄養剤を流すため、誤嚥性肺炎を引き起こさないようにする効果があるのです。

消化管の機能を維持できる

経鼻経管栄養によって注入された栄養剤は消化管を流れることから、身体の自然な働きに近い形で栄養摂取が可能です。

消化吸収のために胃腸を使うことになるため、消化管の働きの維持につながります。また、消化管の機能の維持によって、腸の免疫機能が保たれることもメリットです。

血糖値の急変動が起こりにくい

経鼻経管栄養は、腸ろうや経静脈栄養と比べて血糖値の変動が起こりにくいメリットがあります。

腸ろうは直接腸に、経静脈栄養は血液に直接栄養剤が流れるため、血糖値が急変動することは珍しくありません。

しかし、経鼻経管栄養の場合は鼻から胃に栄養剤が流れていくため、自然に近い流れで腸まで栄養剤が届きます。そのため経静脈栄養などに比べると、血糖値の急激な変動が起こりにくくなるのです。

ほとんどの方が受けられる

経鼻経管栄養は、消化器官が正常であればほとんどの方が受けられます。

胃ろうや腸ろうを造設する際は条件が厳しく、希望したからといって必ずしも受けられるとは限りません。

受けられる可能性が高い分、食事がとれなくなったときや嚥下機能が低下したときの対処法として選ばれることが多い傾向にあります。

在宅でも利用できる

在宅で利用できる点も、経鼻経管栄養のメリットといえます。

チューブの挿入は医師や看護師が行いますが、栄養剤の注入や普段のチューブの管理は家族でも行えます。

チューブの入れ替え処置のために通院する必要はなく、訪問診療や訪問看護で医師や看護師が訪れた際に交換ができるのも経鼻経管栄養の特徴です。

自宅でも経鼻経管栄養を受けられるため、自宅で過ごしたい方も受け入れやすいといえます。

経鼻経管栄養のデメリットは?


経鼻経管栄養にはさまざまなメリットがありますが、デメリットもあります。前もってデメリットを把握しておくことで、いざ経鼻経管栄養を開始したときに事故を防げるでしょう。

ここでは、経鼻経管栄養のデメリットを6つご紹介します。デメリットを理解したうえで、経鼻経管栄養を受け入れるかどうか検討してください。

誤ってチューブを抜いてしまう可能性がある

鼻から胃に挿入しているチューブを誤って抜いてしまいかねない点がデメリットとして挙げられます。チューブは鼻や頬などにテープを使って固定しますが、絶対に抜けない保証はありません。

とくに、認知症を患っている方の場合は誤ってチューブを抜いてしまうことがあります。鼻にチューブが入っていることへの違和感によって、チューブに触れてしまうことも少なくありません。

チューブを誤って抜いてしまうと、栄養剤を注入するために再度チューブの挿入が必要です。

栄養剤を注入するまでの時間が空いたり、再挿入のために負担がかかったりすることにも注意しなければなりません。

チューブが肺に入ってしまう危険性がある

チューブが肺に入ってしまう危険があることも、経鼻経管栄養のデメリットのひとつです。

胃ろうの場合は腹部から胃に直接チューブを挿入しますが、経鼻経管栄養では鼻からチューブを通して胃まで挿入します。

挿入の際に誤って気管にチューブが挿入されてしまうリスクを伴いますが、そのような事故を起こさないように医師や看護師は細心の注意を払ってチューブを挿入しています。

定期的にチューブを交換しなければならない

経鼻経管栄養で用いるチューブは細く、栄養剤が詰まりやすいことから定期的にチューブを交換しなければなりません。

汚れたチューブをそのままにしておくと、胃に汚れが流れてしまったり、チューブが詰まって栄養剤が流れなかったりとさまざまなリスクが生じます。

そのため、1~4週間に1回の頻度でチューブを交換する必要があります。

目立ってしまう

前述したように、経鼻経管栄養はチューブを鼻や頬にテープで固定します。鼻から出ているチューブや顔に貼られたテープが目立ってしまうことは避けられません。

胃ろうや腸ろうは衣類で隠せますが、経鼻経管栄養は目立ってしまう点にデメリットを感じる方もいます。

鼻から胃までにかけて違和感がある

経鼻経管栄養を行うと、チューブが鼻腔からのどを通って胃まで挿入された状態で日常生活を送る必要があります。

常にチューブがあるため、鼻やのどに違和感を生じる方も少なくありません。認知症を患っている方の場合、その違和感から自己抜去につながるケースもあります。

口からの食事や嚥下訓練が難しい

経鼻経管栄養のデメリットとして、口からの食事や嚥下訓練が難しい点も挙げられます。

経管栄養を行っていても経口摂取が可能なケースもあり、いずれチューブを抜く方向で嚥下訓練を行うことがあります。しかし、同じ経管栄養の中でも経鼻経管栄養と胃ろうとで違いがある点に注意が必要です。

胃ろうの場合はのどに違和感がないため、口からの食事と併用しやすいメリットがあります。

一方、チューブが鼻腔からのどを通る経鼻経管栄養の場合は、口からの食事の併用や嚥下訓練を行うことが難しくなってしまいます。

在宅で経鼻経管栄養を行うときの手順は?


前述したように、経鼻経管栄養のメリットとして在宅で行える点が挙げられます。しかし、知識や経験のない状態で家族の経鼻経管栄養を行うことに不安を感じる方も少なくありません。

ここでは、在宅で経鼻経管栄養を行う手順をご紹介します。手順をひとつずつ見ていきましょう。

栄養剤を注入しても問題がないか確認する

経鼻経管栄養を行う際には、まず栄養剤を注入しても問題がないか確認する必要があります。事故を防ぐためにも、栄養剤を注入する前にまずは下記の項目を確認してください。

チューブが口の中でとぐろを巻いていないか

栄養剤を注入する前に、チューブが口の中でとぐろを巻いていないか確認します。チューブが渦状になっていると、チューブの先端が食道にすら入っておらず、口の中で巻かれている状態であるからです。

胃の中にチューブの先端がないと、誤嚥のリスクを高めてしまいます。

肺の中に栄養剤が入ってしまうと誤嚥性肺炎になり得るため、きちんと決められた長さが入っているのか、空気を入れたときに気泡音が胃から聞こえるかなどを確認する必要があります。

呼吸の状態は苦しそうではないか

呼吸の状態をチェックして、苦しそうではないか確認します。呼吸が苦しそうな場合は、体温は高くないか、痰や唾液は多くないかなどを見ていく必要があります。

苦しそうな状態で栄養剤を注入すると、余計に苦しくなったり身体に負担をかけたりすることになりかねません。

もし苦しそうな場合は主治医や訪問看護師などに相談するとともに、経管栄養の中止も検討します。

カテーテルチップシリンジ(専用の注射器)で吸引すれば、胃の内容物が引けるか

呼吸状態に問題がなければ、次はカテーテルチップシリンジという経管栄養専用の注射器をチューブに接続し、内筒を引きます。

胃の内容物が引けるようであれば、チューブの先端が胃の中に入っていることが分かります。

胃の内容物が引けないときには、空気を注入すれば気泡音が聞こえるか

胃の内容物が引けないときには、チューブの位置を確認するために空気を注入します。カテーテルチップシリンジに空気を入れて内筒を押したときに、気泡音が聞こえればチューブが胃に入っているサインです。

ただ、気泡音を聞くために何度も空気を送り込むとげっぷの原因となり、嘔吐や胃部膨満につながるため注意が必要です。

栄養剤を注入する

安全に経鼻経管栄養を行えることが確認できたら、次は栄養剤を注入していきます。栄養剤を注入するときの手順をご紹介します。

①上半身を45度に起こし、チューブが胃の中まで挿入されているかカテーテルチップで確認する

栄養剤の注入を行うときには、上半身を医師が指示した角度に起こします。起こした際に、チューブが胃の中まで挿入されていなければなりません。

そこで、カテーテルチップを用いて胃の内容物が引けるか、気泡音が聞こえるかを確認します。注入を開始する前に、唾液や鼻水などの分泌物を取り除くことも大切です。

また、体動が激しかったり筋緊張が強かったりする場合は、注入中の自己抜去を起こすリスクがあります。

リスクが懸念される場合は自己抜去を防ぐためにバスタオルなどで固定する方法がありますが、本人のストレスや負担になりかねないため、注入中は頭側に栄養剤を設置してチューブを見えないようにするなどの対策が必要です。

②事前に常温に戻しておいた栄養剤をイリゲーターに移す

栄養剤を常温のままイリゲーター(経管栄養専用のボトル)に移します。

栄養剤が冷たいと腸管が刺激されて蠕動(ぜんどう)運動が起こり、下痢を誘発することがあります。そのため、必ず常温に戻した栄養剤を注入するようにしてください。

③イリゲーターと鼻のチューブをつなげる

イリゲーターに栄養剤を移したら、チューブをつなげます。

イリゲーターにはストッパー付きのチューブを取りつけた状態で栄養剤を入れ、そのチューブと鼻のチューブを接続します。

④チューブのストッパーをゆっくりと緩めて、栄養剤を注入する

イリゲーターに接続しているチューブにはクレンメというストッパーが付いています。そのストッパーをゆっくり緩めることで、栄養剤の注入が開始されます。

ストッパーをゆっくり緩めないと、栄養剤の注入速度が速くなってしまい、腹部膨満や下痢・嘔気・嘔吐などの消化器症状を引き起こしかねません。

⑤薬がある場合は、白湯で溶かしておいた内服薬を鼻のチューブから注入する

内服薬がある場合は、白湯で溶かして鼻のチューブから注入します。

簡易懸濁(けんだく)法というぬるま湯で溶かす方法もありますが、薬の種類によっては適さない場合もあります。薬の溶かし方は医師や薬剤師に確認しておくと安心です。

⑥注入終了後、白湯を注入して栄養剤や内服薬を洗い流す

注入終了後は、白湯をチューブに通して栄養剤や内服薬を洗い流します。チューブに注入物や内服薬が残っていると、詰まりや腐敗の原因になる場合があるからです。

詰まり防止のためにも、しっかりと洗い流すことをおすすめします。

⑦30分〜1時間程度は半座位のままにしておく

注入後は、逆流や嘔吐を防ぐために30分~1時間程度は半座位のままにしておきます。

体位変換やおむつ交換のような刺激も逆流や嘔吐を引き起こすリスクがあるため、注入直後は避けるようにしましょう。

栄養剤を注入する際の注意点

口腔内が汚れていると、誤嚥性肺炎のリスクを高めてしまいます。そのため、必ず口腔ケアを行って清潔を保つことが重要です。

口腔ケアについては、経鼻経管栄養の場合、注入直後は嘔吐のリスクがあるため避けてください。口腔ケアのタイミングは、注入前か注入後2時間以上経過してからがおすすめです。

また、入浴の際にはチューブが抜けないように注意する必要があります。固定テープが剥がれないように気をつけて洗顔や更衣などをしてください。

固定テープは入浴後に新しいものに貼り替えるようにしましょう。

経鼻経管栄養によって起こるトラブルとは?


経鼻経管栄養は適用されるケースが多い一方で、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。

たとえば、チューブが詰まって栄養剤が十分に注入できなかったり、胃に挿入されているかが分かりにくかったりするなどです。

気泡音の聴取のみではチューブが胃に挿入できているかが分かりにくく、チューブが気道に入ってそのまま栄養剤を注入し、患者が呼吸困難に陥った事例があります。

在宅における経鼻経管栄養は家族も処置を行えますが、トラブルを防ぐためにもできる限り看護師などの専門的な知識や経験がある方に行ってもらうことをおすすめします。

経鼻経管栄養に対応している介護施設を見つけるには?


経鼻経管栄養は在宅でも可能ですが、栄養剤の準備や注入前後の観察など家族の負担が大きい処置です。そのため、介護施設への入居を検討する方は少なくありません。

経鼻経管栄養は医療行為であるため、適切な処置を受けるためには医療体制が整っている施設を選ぶ必要があります。

自分の予算や充実したサービスを提供している医療体制の整った介護施設を見つけるために、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談してみましょう。

また、より広い地域で介護施設を探したい場合は「安心介護紹介センター」の活用をおすすめします。

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周田佳介

監修者:周田佳介

正看護師、介護福祉士、介護支援専門員、認知症ケア専門士、介護職員等によるたん吸引等の研修指導看護師の資格を取得している。
介護医療現場で13年従事し、今なお現役の訪問看護師として勤務している。急性期病棟や慢性期病棟といった医療機関のほか、特別養護老人ホーム、グループホーム、訪問介護事業所などの介護事業所での勤務経験があり、医療・介護の両面から福祉に携わる。