認知症の検査にはどんな種類があるのか?検査を受けられる場所や受ける前の準備などもご紹介します!

 

「親が認知症かもしれないから検査を受けさせたい」と悩んでいる方もいるでしょう。認知症は初期段階のうちに適切な診断を受けることで、進行のペースを抑えられます。今回の記事では、認知症の検査や種類、診断されてから行うべきことについて詳しく解説します。

認知症の診断の流れは?

認知症で行われる診断には、問診と診察、検査の3つがあります。ここでは、認知症の診断を受けるまでの一連の流れや検査項目について解説します。

①問診

問診では、本人と家族からこれまでの経過を聞き取るために、以下のようなことを質問されます。

  • いつ、どのような症状に気づいたのか
  • ここ半年の間で症状は進んでいるか
  • 家族はどのような症状で困っているか
  • 生活環境や家族構成に変化はあったか
  • 既往歴や現在服用している薬はあるか

問診の際、医療従事者に詳しい情報を伝えれば伝えるほど正確な診断につながります。認知症は本人が無自覚なケースが多いので、家族からの客観的な情報が診断精度を高めます。伝えたい情報が多く覚えきれない場合はメモをしたり、お薬手帳を持参したりするなど事前に準備しておくとよいでしょう。

②診察

医師による診察では、血圧測定や聴診、発語、聴力、手足の麻痺・不随意運動の有無、歩行状態などについて調べます。問診で聞き取った内容とこれから行う検査結果をベースに認知症なのか、認知症の場合はどの種類に当てはまるのかを医師が診断します。

③検査

認知症の検査では神経心理検査と画像検査が行われます。そのほか、必要に応じて血液検査や心電図検査を行うこともあります。「HDS-R」などの検査では「ここはどこか」などの質問を行うので、人によっては試されているように感じ、抵抗を覚えるケースがあります。そのため、診断に必要な情報の取得が目的であることをしっかりと理解してもらえるような声掛けが必要です。

認知症検査の種類は?

 

認知症検査には「神経心理検査」と「画像検査」の2種類があります。神経心理検査は聞き慣れない方が多いかもしれませんが、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やミニメンタルステート検査(MMSE)などの検査を指します。ここでは、それぞれの検査内容について詳しく解説します。

神経心理検査

神経心理検査では主に6つの検査が行われます。6つすべての検査を実施するわけではなく、診断を受ける病院やクリニックによって取り入れている検査内容が異なるのが特徴です。3種類取り入れているクリニックがあれば、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やミニメンタルステート検査(MMSE)のみを行う病院もあります。

それぞれの検査項目の内容や、検査に要する時間、認知症に認定される点数の基準についてご紹介します。

改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下HDS-R)は、30点満点のうち20点以下の場合、認知症が疑わしいと判断できます。HDS-Rでは、認知機能にどのような障害があるのかを「大まか」に調べる検査です。場所や日付について答えるなど簡易的な質問が多く、およそ5〜10分で完了します。

ミニメンタルステート検査(MMSE)

ミニメンタルステート検査(以下MMSE)では、字を読んだり図形を書いたりなど、単純な計算や作業を行います。30点満点のうち21点以下の場合、認知症が疑わしいと判断できます。MMSEに要する時間はおよそ10〜15分で、11項目の質問があります。

ウェクスラー記憶検査(WMS-R)

ウェクスラー記憶検査(以下WMS-R)は、国内外問わず使用頻度の高い検査です。言語と図形を使った13項目の問題で構成され、100点を基準として85~115点が標準偏差となります。85〜115点に含まれない場合、認知症が疑わしいと見なされます。WMS-Rの検査時間は45〜60分です。

時計描画テスト(CDT)

時計描画テスト(CDT)は、指示どおりに時計の絵や時間を正確に描けるか調べる検査です。検査する側と受ける側が直接向き合う必要がないので、検査を受ける方の抵抗は比較的少ないといえます。認知症が疑わしいケースでは、時計の円が極端に小さかったり、数字や針の長さ、位置が間違っていたりします。

アルツハイマー病評価スケール(ADAS)

アルツハイマー病評価スケール(以下ADAS)は、認知機能の状態や変化を定期的に継続して評価する検査を指します。単語の再生や確認など11項目で構成され、0〜70点で評価します。失点すると得点として加算されるので、間違えるほど点数が高くなり、症状の進行具合を推測できます。ADASにかかる時間はおよそ1時間です。

高齢者うつスケール(GDS)

高齢者うつスケール(GDS)は、高齢者のうつ病を調べる検査です。15項目の質問で構成され、すべて「はい」か「いいえ」で回答します。15点満点で、5〜10点が軽度のうつ、11点以上が重度のうつと判断できます。答えやすく採点も行いやすいので、およそ5〜7分で完了するのが一般的です。

画像検査

画像検査では、主に4つの検査が行われます。ここでは、それぞれの項目における検査内容について詳しくご紹介します。

CT

CTは、頭部に脳出血や外傷があるかなど、頭部の状態を迅速に調べる検査を指します。患者を横にした状態で丸い筒状の検査スペースに入れ、撮影を行います。X線を利用していて、頭を輪切りにしたような画像撮影が可能です。造影剤を使用することもあります。

MRI

MRIは、脳出血や脳腫瘍の有無、いつ頃発症したのかを調べられる検査です。電磁気が発生する筒の検査台に入り撮影を行います。CT検査を行い、さらに詳しく調べたいときにMRI検査を実施するのが一般的です。検査時間は30分〜1時間ほどで、造影剤を注射するケースがあります。

VSRAD

VSRADは、アルツハイマー型認知症の診断に特化した支援ソフトです。脳の萎縮が特徴的であるアルツハイマー型認知症の特徴を活かし、MRI検査の結果をベースに萎縮度を調べます。「海馬」や「扁桃」などのエリアを調べて4段階で評価し、萎縮度が3以上のときはアルツハイマー型認知症が進行しているため治療が必要とみなされます。

SPECT

SPECTは、脳の血流が滞っている箇所や度合いを調べる検査です。放射性物質がわずかに含まれた検査薬を投与して体内での動きを見ることで、血流の滞りを見極めます。

認知症の診断や検査はどこで受けられるのか?

 

認知症の診断や検査は、主に精神科や心療内科、脳神経外科、神経内科などの診療科で受けられます。病院や診療所、クリニックなど医療機関の種類は問いません。

最近ではもの忘れ外来や認知症外来という専門外来を設けている病院も多くなっています。そこでは日本認知症学会などで専門医の資格を取得した医師から診察を受けられるので、より正確な診断が受けられるでしょう。

また、かかりつけ医はこれまでの本人の経過を十分に把握しています。どのような声掛けをすれば納得して治療を受けてもらえるのか熟知しているかもしれません。より的確な認知症の診断ができたり、本人の状態に合わせた病院を提案できたりします。そのため、まずはかかりつけ医に相談することをおすすめします。

認知症の診断や検査を受ける前に準備すべきことは?

 

診断では、医師からこれまでの経過や現在の状態に関する質問をされる場合がほとんどです。しかし、本人は自分の症状を自覚しにくく、答えられない部分もあります。そのため、受診前に家族内や周囲の人からの情報をまとめて質問に答えられるようにするとよいでしょう。

また、医師の診察や認知機能テスト、画像診断、血液検査などを含めると、保険適用で1割負担の場合、総額で数千円〜2万円ほどかかります。また本人の状態によっては薬が処方されることがあり、薬代で数千円かかるケースもあります。そのため、受診前に上記に挙げた料金を支払える程度のお金を準備しておくとよいでしょう。

認知症と診断されたときにすべきことは?

 

病院やクリニックで医師の診察を受けて「認知症」と診断された場合、本人だけでなく家族も不安な気持ちでいっぱいになることでしょう。しかし適切に対応することで、本人と家族のペースで慌てずに認知症と付き合っていけます。ここでは、認知症の診断が下されたあとに行うべきことについて詳しく解説します。

本人の意思を明確にする

本人が今後をどのように考え、そして人生の終盤をどのように生きていきたいのかを確認する必要があります。そして確認した内容を実行するには何が必要なのか、本人を含めてしっかりと話し合うことが大切です。希望や意思を十分に把握できていれば、たとえ症状が進み本人の意思決定が難しくなったとしても、迷わずに対応できるでしょう。

かかりつけ医に相談する

認知症は長い期間付き合っていかなければならない疾患のため、地域のかかりつけ医に相談して認知症の経過観察や治療薬の処方を継続して行ってもらいましょう。かかりつけ医が認知症に対応していない場合は、地域の認知症サポート医に相談します。管轄の市区町村ホームページで認知症サポート医を紹介していることがあります。

一方、どのようにかかりつけ医を見つければよいのかわからない方は、市区町村ホームページで確認してみましょう。市区町村ホームページに載っていないケースでは、地域包括支援センターに確認する方法もあります。

親の資産を管理する

認知症の方は詐欺や悪質商法などの被害に遭いやすいので、親の資産状況を把握し、成年後見制度を活用することをおすすめします。

地域包括支援センターでは、介護だけでなく成年後見制度に関する相談にも対応しています。そのため、制度の利用を検討している場合は地域包括支援センターを活用するとよいでしょう。成年後見制度についての説明を聞きたい場合にも丁寧に対応してもらえるので、問い合わせてみてください。

介護サービスを利用するための準備を進める

認知症の方がすぐに介護サービスを利用できるよう、自分が住んでいる地域の市役所の窓口で要介護認定を申請しましょう。また、認知症の方の介護方針を決めるためにケアマネジャーにケアプランを作成してもらうことも大切です。

市役所に要介護認定を申請すると、最寄りの居宅介護支援事業所の情報が記載された用紙を提供してくれます。情報を参考にしながら、ケアプラン作成を行う居宅介護支援事業所を選びましょう。

介護の情報を収集する

認知症の介護では、症状への対処と身体介護を同時に行う必要があります。在宅介護の場合、たとえ介護サービスを活用していたとしても夜間や早朝など家族だけでケアをしなければならない時間帯が発生します。そのため、常に適切な介護を行うことは難しいのが現状です。

また在宅介護では、介護者が介護以外の時間を持てずに介護疲れを起こしてしまったり、夜間介護で睡眠不足に陥ってしまったりすることがあります。早い段階から地域包括支援センターや居宅介護支援事業所を活用して、認知症の方に対応した介護施設を見つける必要があります。

認知症の介護施設探しに時間が取れないときに活用すべき相談窓口は?

 

地域包括支援センターやケアマネジャーに相談したいと思っても、遠距離介護をしている場合や仕事が忙しいときには直接事業所に足を運ぶことが難しく、気軽には利用できないでしょう。

そのような際は、オンラインで介護施設への入居や見学の相談に対応している「安心介護紹介センター」の活用をおすすめします。安心介護紹介センターでは、介護の専門的な知識を持つオペレーターが相談に対応しています。

本人や家族の希望に合った介護施設を見つけやすいので、納得のいく施設を時間をかけずに選べるでしょう。気になる方は、お気軽にご相談ください。

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周田佳介

監修者:周田佳介

正看護師、介護福祉士、介護支援専門員、認知症ケア専門士、介護職員等によるたん吸引等の研修指導看護師の資格を取得している。
介護医療現場で13年従事し、今なお現役の訪問看護師として勤務している。急性期病棟や慢性期病棟といった医療機関のほか、特別養護老人ホーム、グループホーム、訪問介護事業所などの介護事業所での勤務経験があり、医療・介護の両面から福祉に携わる。