遺品整理では、故人が大切にしていたものや価値があるものを見極めるのは難しいものです。そこで本人が元気なうちから進めて欲しいのが、生前整理や実家の片づけです。それにはどんなメリットがあり、どんな方法で行うのがいいのでしょうか。そのポイントをまとめました。
生前整理と実家の片付け
戦後の混乱期で物がない時代に育った親世代は、「もったいない」「物を大事にしよう」という意識が強く、捨てることに抵抗を感じている方も多いのではないでしょうか。一軒家に長く住んでいる場合は、集合住宅で暮らしている人よりも、収納場所も多く、その分思い出の品が大量に残されていると考えられます。
親が亡くなってしまうと、それらの品は全て遺品として残されます。人によっては、身寄りのない叔父や叔母などの遺品整理をしなくてはいけないこともあるでしょう。整理を任された経験者の多くが、遺品整理はとても大変だったと語っています。
また、住む人が亡くなった後に実家の片づけをするのは、残された家族にとっても辛いものです。
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生前整理とは
残された人が苦労しないためにも、早くから取り掛かっておきたいのが「生前整理」です。いわゆる「終活」のひとつとして認知度も上がってきました。親自身が自分の意思で、あらかじめ遺品や財産、情報などを整理しておく作業のことです。早くから片付けておけば、本人にとっても将来的に暮らしやすい環境を整えることができます。
しかし、物の片づけは、高齢者だけで整理するのは体力的に大変です。そのため子が親と一緒に整理する「実家の片づけ」が大切になってきます。本人が何を大切にしているのかを確認しながら片づけられるのは、とても恵まれているといえるでしょう。
生前整理には終活として行う場合と、介護施設などに入居する前に行う場合があります。ケガをして突然在宅介護が始まる場合は介護ベッドや車椅子になることも。「実家の片づけ」は早めに着手するのがおすすめです。
生前整理ですること
生前整理では、どのようなことをするのでしょうか。
- 不用品の処分など家の整理整頓
- お金の整理
- 不動産の整理
- 財産目録の作成
- デジタル情報の整理(SNSのアカウント情報、スマホやパソコンの中にあるデータ、月額料金が発生しているオンラインサービスなど)
- お葬式やお墓の準備
- エンディングノートの作成
- 遺言書の作成 など
まずは頭の中を整理するためにも、エンディングノートの作成から勧めてみるといいでしょう。
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生前整理のメリット
生前整理のメリットにはこんなことがあります。
- 長年たまった不用品を処分し、安全で居心地の良い環境を整えられる
- 整理を通して、やり残したことを理解できる
- どんな財産が残っているかがわかりやすくなる
- 相続トラブルをふせぐことができる
- 親が何を大切にしているのかを知ることができる
- 不用品の処分などにかかる費用を本人が負担できる
「実家の片づけ」と断捨離の違いは、目的です。物を減らすことが目的ではなく、実家を安全で快適にしながら、今までの人生を片付け、親子で振り返ることを意識しながら進めていきましょう。
生前整理や実家の片づけが難しい理由
やみくもに片付けようとしてもうまくいかない場合があります。その理由はさまざまです。
物が多すぎる
物はどんどん溜まっていきます。何十年も同じ場所に住み続けていれば、その分多くの物が残されます。
実家の物の中には、子の物もたくさんあります。まずはそこから手を付けて、「こんなにきれいになった」と親に見せることで、親が「私も片付けないと」と考えるきっかけになることもあります。
思い出の品がいっぱいある
家族で旅行した時のお土産や、若い頃に着ていた服、記念品、家族のアルバムなどは高齢者にとって懐かしい昔を蘇らせてくれる大切な品です。捨てようとしてもなかなか思い切ることはできません。
また、認知症を発症した際には、思い出の品が症状を改善することがあるので、大切なものは残しておいた方がいいでしょう。
実家は自分のものではない
親がデイサービスに行っている間や入院中に、実家の片づけを一気に進めてしまおうとするのは厳禁です。
自分が育ったからといって、実家は自分のものではありません。あくまでも親の所有物であり、その中にあるものは当然親の許可を得てから処分しなければなりません。それをせずに勝手に物を捨ててしまうとトラブルに発展する場合もあります。つまり自分だけで進めることはできないのです。
生前整理・実家の片づけのスムーズなやり方
では、どうすればスムーズに「実家の片づけ」ができるのでしょうか。そのポイントを確認していきましょう。
親とコミュニケーションをとる
実家の片づけをするには親の承諾が必要です。子にとってはごちゃごちゃと物の多い家に見えても、本人にとっては便利で快適な家かもしれません。実家の物は親の所有物ですから、捨てたがらない場合は、無理に処分しないようにしましょう。
むやみに「この家は物が多すぎるから捨てよう」と切り出しても、今までのライフスタイルを変えるのは難しいものです。「孫が遊べる環境を作ろう」や「本当に大切なもの、受け継いで欲しいものを教えて欲しい」など、目的を共有し、コミュニケーションを取りながら進めることが大切です。
時間を見つけてゆっくり進める
高齢者は体力が低下しており、長時間の作業は辛いものです。そのため決して急がず、親のペースに合わせることが大切です。
家の物を整理するのは1日では終わりません。実家に帰るたびに片づける習慣を身につけて、コミュニケーションを取りながら楽しく一緒に作業しましょう。親が少しずつ、自分から整理していくようになるかもしれません。
まずは、安全面を確保するためにも、床に何も置いていない状態を作ることを目標に片付けていきましょう。
保留箱を作る
実家の片付けで大変なのが、保管するものと捨てるものを決めることです。洋服で考えると、もう着られない服を捨てるのは比較的簡単ですが、着られるけれどデザイン的に気に入らず着ていない服を捨てるのは難しいものです。
そんな時には、保留箱にしまっておくといいでしょう。時間をおいて見直し、捨てるか人に譲るか、保管するかを考えます。迷ったら再び保留箱にしまっておきましょう。
思い出のある物は、思い出の品として保管しておきましょう。本人が亡くなった後、保留箱の物は処分して、思い出の品は必要に応じて形見分けをします。
生前整理業者を利用する
生前整理業者とは、実家の片づけを手伝ってくれ、不用品を買い取ってくれたり、処分してくれたりする業者です。
選び方としては、明確な見積書を提示しているか、料金体系が分かりやすいか、民間民間資格ではありますが、生前整理アドバイザーや生前整理認定作業士、生前整理診断士などの有資格者がいるか、廃棄物の取り扱いの説明があるか(一般廃棄物処理業の許可を得ているか)を確認しておくといいでしょう。不用品の買取りをお願いする場合には、古物商の許可を得ているかの確認もしてください。複数の業者と相見積りを通してスタッフと会ってみるのもおすすめです。一緒に片付けをしたいと思えるかどうかが一番大切です。
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処分する方法
捨てる物の中には、まだ価値のある品が含まれている場合があります。買取りもできる生前整理業者に頼むか、リサイクルショップや不用品の買取り業者などに相談するのもいいでしょう。買い取れるものは現金に変えてくれ、買い取れない物もその場で引き取って処分してくれる出張サービスの利用が便利です。
また、布団などの大きな不用品が大量に出た場合には、定額で「トラック詰め放題」という業者もあります。
まとめ
生前整理として、子が親と一緒に行う実家の片付けには、親が大切にしているものを確認しながら、一緒に片付けができるという大きなメリットがあります。親がまだ元気なうちから、少しずつ進めていきたいものです。しかし、物や片付けへの価値観の違いや実家が親の物であることから、なかなかこの思うように進められないことがあります。
親とコミュニケーションを取りながら、親を主体にした片付けを心掛けましょう。すぐに捨てられないものは、保留箱に入れておくのがお勧めです。生前整理業者などを活用しながら、少しずつ進めてください。この記事が、実家の片付けで悩む方のお手伝いになれたら幸いです。
※この記事は2020年9月時点の情報で作成しています
遺品整理・生前整理 思いに寄り添ってお手伝いいたします

- 賃貸物件なので早急に退去しなければならない
- 遠方に住んでいるので作業ができない
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- 気持ちの整理がつかないので思い切って専門業者に任せたい

介護業界・区役所勤務経験を経て、相続コンサルタントに転身。
介護保険訪問調査員など高齢者との1,000件を超える面談実績を持つ。 高齢者にもわかりやすい説明とヒアリング力には定評があり介護にも 強い相続診断士として多くの相談を受けている。
終活や相続・介護と幅広い視野から話すセミナー講師として全国で活動をしている。