母は元気に一人暮らしをしていますが、もう87歳なので、離れて暮らす娘としては日々心配です。
友人に安否確認サービスをすすめられたものの、いろいろなタイプがあるようで迷っています。どう選べばよいでしょうか?できれば、母のプライバシーは守ってあげたいです。
親御さんと離れて暮らしている場合は普段はお元気でも、万一何かあったときはどうなるのかと考えると不安ですね。
一人暮らしの高齢者は多く、今はいろいろな安否確認サービスがあります。役所の事業として行っているのもや、民間の事業者のサービスなどその内容や料金もさまざまです。状況に応じた過不足のないサービスを選択することが、親子ともに安心した日々を送るために重要であると思います。
ここでは、さまざまな安否確認サービスについて、その特徴や種類、選び方のポイントなどを解説していきます。
高齢者の一人暮らしの気になるリスク
ご高齢の親御さんと離れて暮らしていると、生活の様子をこまめに確認することができないので健康面などが心配になりますよね。そんなとき、安否確認サービスを利用すると安心です。
サービスの種類や特徴について見ていく前に、まずは高齢者の一人暮らしのリスクをチェックしておきましょう。
体調不良や思わぬケガ・事故
高齢者の一人暮らしで特に気になるのは、急病や持病の悪化ではないでしょうか。高齢者は若い人と比べると病気になるリスクが高いですし、突然の発作も懸念されます。身体機能は年齢とともに徐々に衰えるので、健康に自信がある方でも他人事ではありません。
また、筋力や反射神経の衰えが、思わぬケガや事故につながることも。高齢者は小さな段差でつまずいたり、バランスを崩して転倒したりすることがあるため、住み慣れた家であってもケガのリスクはつきものです。高齢者の骨折は寝たきりにつながる可能性があり、特に注意が必要です。
火事やガスもれ
高齢になると脳の機能も低下するので、物忘れをしやすくなります。そのため、高齢者の一人暮らしはガスコンロやストーブの消し忘れなどに要注意。ガスコンロをつけっぱなしで電話で話し込んだり、ストーブをつけたまま外出したりすると火事のリスクが高まります。
加齢による物忘れは誰にでも起こり得ます。うっかりミスが重大な事態を招くことがあるため、高齢者が一人暮らしをする際は安全対策を講じておくと安心です。
外出先でのトラブル・徘徊
高齢者の一人暮らしは、外出先での急な体調不良や交通事故のリスクも懸念されます。
また、認知機能の低下が見られる方の場合、徘徊の心配もあるでしょう。認知症の症状と思われる徘徊が始まると、自分の居場所や自宅の場所がわからなくなり、外出したまま連絡が途絶えてしまうケースも。体調不良や徘徊に気付くのが遅れると、命に関わる可能性があります。
このように、高齢者の一人暮らしにはさまざまなリスクがあることを知っておきましょう。
タイプはさまざま!安否確認サービスの種類・特徴
高齢者向けの安否確認サービスにはいろいろなタイプがあります。見守り方や見守り度合いに違いがあるので、それぞれの特徴を確認しましょう。
緊急時の駆けつけサービス
体調不良やトラブルに巻き込まれたときなど、緊急時にボタンを押すと警備員が駆けつけてくれるサービスです。主にセコムやALSOKといった警備会社が提供していて、24時間365日いつでも対応可能なので安心できます。駆けつけサービスだけではなく、健康相談に応じてくれる通話サービス付きのタイプもあるので、具体が悪いときでも心強いでしょう。
ガス・電気の利用状況を通知するサービス
ガスや電気の利用状況を離れて暮らす家族に通知するサービスで、主に電力会社やガス会社が提供しています。通知内容はサービスによって異なりますが、「ガスを全く使っていない」「いつもと電力の使用状況が違う」などの変化がある場合にメールなどで連絡が入る仕組みです。ガスの消し忘れを通知し、遠隔でガスを遮断させられるサービスもあります。
センサー・カメラタイプ
人が通過すると反応する人感センサーや、小型カメラを室内に設置して見守るサービスもあります。
センサータイプは寝室やトイレ、浴室など部屋ごとに設置することができ、感知するとご家族のパソコンや携帯電話などに通知が入ります。そのため、長時間感知しないときは「動けないのかもしれない」と、異変にいち早く気付くことができます。
カメラタイプはリアルタイムで生活の様子を見守ることが可能です。録画機能や会話機能が付いているタイプもあるので、過去の行動確認もできますし、顔を見ながらコミュニケーションを取ることも可能です。
電話や家電による見守りサービス
人感センサーが付いた電話や、電気ポットの利用状況で安否を確認できるサービスも便利です。
人感センサー付きの電話は、人を感知すると家族に通知が届く仕組み。ご本人が不在時に反応するとアラームが鳴るタイプであれば、防犯対策にもなります。
電気ポットタイプはポットの電源を入れた時間や給湯した時間が通知され、利用頻度の変化で親の様子をうかがい知ることができます。
宅配食サービスで安否確認
宅配食サービスは、配達員がお弁当を直接ご本人に手渡しするので、配達のたびに安否を確認することができます。応答がない場合は緊急連絡先や家族に連絡するサービスも付いていて、ゆるやかに見守りたい方におすすめです。
お弁当は栄養バランスが考えられ、低カロリーかつ塩分控えめなものが多く、高齢者の方の健康に配慮されています。配達回数を選べるサービスもあるので、ご本人のライフスタイルに合わせて利用可能です。
外出時に携帯できるタイプも
外出先での急病や事故が心配な場合は、小型で携帯できるタイプがおすすめです。位置情報を家族と共有できるGPS機能が搭載され、緊急時にボタンを押すと警備会社に連絡が入り、必要に応じて警備員が駆けつけてくれます。通報機能がなく、見守りに特化したタイプもあります。
どう見守る?安否確認サービスを選ぶポイント
ご紹介したように、安否確認サービスには多種多様なタイプがあります。その中から、適切なものを選ぶためのチェックポイントをお伝えします。
まずは、ご本人の希望を確認しよう
前提として確認しておきたいのが「ご本人が見守りに同意してくれるか」という点です。安否確認サービスはご家族にとっては便利ですが、ご本人からすると「監視されているみたい」とネガティブな印象を持たれることが少なくありません。
まずは安否確認サービスの必要性や、さまざまなタイプから選べることを丁寧に説明し、ご本人が納得されたうえで具体的な検討を進めましょう。
見守り度で選ぶ
「どの程度の見守りが必要か」については、ご本人の身体状況やご意向によって異なります。持病があったり、認知症の兆候が見られたりする場合は、見守り度が高く緊急時に対応しやすいカメラタイプや警備会社と連携しているタイプがおすすめです。
なるべくプライバシーを守りたい場合は、ゆるやかな見守りができるガス・電気の利用状況通知サービスや家電タイプ、宅配食サービスがよいでしょう。
費用で選ぶ
安否確認サービスはタイプによってかかる費用も変わってきます。月額費用のほか、機材の購入費や初期設定費が万単位でかかるサービスもあるので、予算と照らし合わせて選びましょう。コストを抑えたい場合は、利用回数が選べる宅配食サービスから始めてみるのもおすすめです。
使い勝手で選ぶ
どんなに便利で適切な見守りができるサービスでも、ご本人が使いこなせなければ意味がありません。サービスによっては、「緊急時のボタンはここ、通話したいときはここを押す」など、機器の仕組みを理解しておく必要があります。「ご本人が簡単に操作できるか」「見やすいか」など使い勝手についてもあらかじめ確認しておきましょう。
お互いの安心感につながる安否確認サービス
高齢者向けの安否確認サービスには多種多様な種類があります。見守り度合いや使い勝手はサービスによって異なるので、ご本人の身体状況やご意向を確認し、お互いが安心して使えるものを選びましょう。
適切なサービスを利用すれば、離れて暮らしていても日々の安否を確認できて心強いです。いざというときにも対処しやすいので、親御さんの健康面や安全面が気になる方は利用を検討してみてはいかがでしょうか。
※この記事は2019年10月時点の情報で作成しています。
主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。