高齢者のカリウム摂取目安量は?腎機能低下の場合はとりすぎ注意

カリウムは高齢者が気をつけて摂取すべき栄養素の一つです。 カリウム不足は様々な肉体的・精神的症状の原因となりますが、腎臓が弱っている場合にはカリウムのとりすぎが体調不良を引き起こす場合も。

この記事ではカリウムの摂取目安量やカリウムを多く含む食品など、高齢者が適切にカリウムを摂取するための情報をご紹介します。

カリウムとは

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カリウムはミネラル類に分類される栄養素で、野菜や果物をはじめ、肉、魚など、私たちが日常口にするような食品に豊富に含まれています。

カリウムは人間の体内に約200gほど存在し、塩分に含まれるナトリウムを体外に排出して血圧を下げる働きをしています。ナトリウムは高血圧を引き起こすことで知られていますが、カリウムはこのナトリウムを体外に排出して、血圧を低下させてくれる効果があるのです。また、カリウムには神経や筋肉の興奮伝達作用もあります。

高齢者が1日に取りたいカリウムの摂取量

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」で定められている、1日に摂りたいカリウムの摂取目安量・目標量は次の通りです。

こちらは高齢者を含め、18歳以上の人すべてに向けて定められた値です。

 

 

摂取目安量

摂取目標量

18歳以上男性

2,500mg/日

3,000mg以上

18歳以上女性

2,000mg/日

2,600mg以上

 

摂取目安量はカリウム平衡を守るために十分な摂取量で、現在の日本人が無理のなく摂取できる量として目安に設定されています。

一方、摂取目標量は高血圧予防のための目標として定められた量となります。摂取目安量とは異なり、少し意識して摂取しないと達成できない数字です。

腎機能が正常であれば、過剰摂取になる可能性は低いという理由から、上限量は設定されていません(ただし、サプリメントによるカリウムのとりすぎには注意)。

 

※ WHOが2012年に提案した高血圧予防のためのカリウムの摂取目標量は3,510mgです。現在の日本人のカリウム摂取量はこの基準より少なく、3,510mgを目標とすると達成可能性が低いと考えられるため、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の基準はWHOより少し低めに設定されているということです。

高齢者がカリウム不足になるとどうなるか

カリウムは日本人になじみの深い様々な食品からとることができるため、通常の食事をしている場合には、摂取目安量を満たすことは難しくないと言われています。

ただし、水溶性であるカリウムは水にさらしたり茹でたりすると溶け出してしまうため、カリウムを多く含む食品をとっているつもりでも、実際には調理の途中でカリウムが失われていて、十分にカリウムが摂取できていない可能性があります。

また、下痢や嘔吐、利尿薬などの影響でカリウムが体外に排出された場合には、カリウム不足に陥る場合もあります。

高血圧

カリウム不足は高齢者の身体にどんな影響を与えるのでしょうか。

高齢者に限らず、あらゆる年齢層に当てはまることですが、カリウムが不足するとナトリウムの排出がうまくいかず、高血圧の原因となります。

さらに細胞内に余分なナトリウムと水分が蓄積されるためむくみが生じやすくなるほか、筋肉の収縮がうまくいかず心臓発作につながる可能性もあります。

低カリウム血症

「低カリウム血症」もカリウム不足が引き起こす病気として知られています。

低カリウム血症とは、血液中のカリウム濃度が一定の基準以下となった状態のことを差します。脱力感や疲労感、不安感、睡眠障害といった精神的な症状のほか、嘔吐、筋力低下といった肉体的な症状を伴います。

ただし、食べ物からのカリウム摂取が少ないことが原因で低カリウム血症になる人はまれで、ほとんどの低カリウム血症は、下痢や嘔吐、利尿剤、副腎疾患などによって大量のカリウムが強制的に体外に排出されることが原因になっています。

高齢者が食べやすいカ​リウムを多く含む食品

普段食べるような食品に多く含まれているため、普通に食事をしていれば、まず不足することはないと言われてるカリウム。

私たちにとって身近な栄養素とも言えますが、一体どんな食品にどのくらい含まれているのでしょうか。カリウムが多く含まれている食品をいくつかご紹介します。

※ それぞれの食品の名前に併記されている値は、その食品の100gごとのカリウム含有量です。

① 果物

バナナ 360mg、メロン 350mg、キウイフルーツ 300mg、ぶどう(皮付き)220mg、パイナップル 210mg など

果物の中でも特にカリウム含有量が多いのがバナナです。スイカの季節にはスイカもおすすめ。一方、同じくポピュラーな果物であるりんごやみかんは、カリウムの含有量がそれほど多くありません。

② 野菜・芋類

ほうれん草 690mg、にんじん 630mg、きゅうり 610mg、じゃがいも 420mg、さといも 640mg、アボカド 720mg など

③ 肉・魚

ぶた(ヒレ)690mg、にわとり(ささみ)630mg、うし(ヒレ)440mg、マイワシ(丸干し)、さくらえび(素干し)、めかじき(焼き)630mg

カリウムはほとんどの食品に含まれており、ここでご紹介した野菜、果物、肉・魚以外に、豆や海藻、きのこ、ナッツなどもカリウム含有量が多いです。

高齢者がカリウムを手軽に摂取するには?

カリウムを多く含んでいる食品は、野菜、果物、肉・魚、豆、海藻、きのこ、ナッツなど種類が豊富ですので、これらの中から本人の食べやすさや好みに合わせて食品を選ぶのがおすすめです。

ただし、カリウムは水に溶けだしやすいため、食品を煮たときは汁ごと食べるようにしましょう(その場合、塩分を控えめに)。生野菜のサラダやドライフルーツ、野菜ジュースは、カリウムを手軽に効率よく摂取できます。

カリウム入り減塩しおでナトリウム摂取量を減らす?

血圧を下げるためにナトリウムを減らしたいけれど、味の濃いものが好きでなかなか難しいという方は、塩化カリウムを利用した減塩しおを普通の食塩の代わりにしてみてはいかがでしょうか。

塩化カリウム入りの減塩しおは、ナトリウムと同じような塩味を感じさせる塩化カリウムを入れることで、ナトリウムの含有量を減らしています。

腎臓の機能が弱っている場合は、カリウムの過剰摂取によって高カリウム血症になる危険がありますので、血圧を下げるために塩化カリウム入りの減塩しおを検討している場合は、医師に相談してからの使用が安心です。

高齢者はカリウム過剰にも要注意!?

カリウムは不足を心配するだけでなく過剰にも要注意。とくに高齢者はカリウム過剰を心配すべき方が多くいらっしゃいます。

なぜかというと、年齢を重ねて腎臓の機能が低下してしまうと、カリウムがうまく排泄されない場合があるためです。

カリウムが体外に排出されづらくなった結果、カリウム過剰となって、高カリウム血症になることがあります。高カリウム血症になると、手足のしびれや身体のだるさ、ひどい場合には不整脈で命に関わることもあります。

「水にさらす/ゆでる」とカリウムは減る

腎臓が弱っている方は、カリウムの摂取量を意識して減らさなければなりません。

カリウムは水に溶けやすいため、野菜などを食べるときには、包丁で細かく切ってから水にさらしたり、下ゆでしたりすることによって、カリウムの量をを減らすことができます。野菜の煮汁にはカリウムが流れ出ていますので、その汁は飲まないようにしてくださいね。

ちなみに、水にさらしたり下ゆでをすることで量を減らせるのは、カリウムが水に溶ける性質があるためです。電子レンジでの加熱では、ほとんどカリウムを減らすことはできないのでご注意ください。

果物の缶詰のシロップにもカリウムが溶け出しているので、シロップは飲まないようにしましょう。

まとめ

高血圧の原因となるナトリウムを体外に排出し、血圧を下げる働きをするカリウム。バナナやメロンといった果物、ほうれん草、にんじんなどの野菜をはじめ、様々な食材からとれるため、食が細くなった高齢者の食卓にも取り入れやすいのではないでしょうか。

ただし、カリウムの積極的な摂取が全ての高齢者に推奨されるわけではありません。腎臓が弱っている場合は、カリウムを制限しなければならないため、カリウムをたくさんとる必要があるのかどうか、医師とご相談の上で判断してください。

栄養素のことを知ることが高齢者の健康への近道。もちろんカリウムもその一つですが、カリウムがどんな栄養素で、どうしたら効率的にとれるのか、知らない人はまだまだ多いです。この記事が参考になったかたは、ぜひシェアをして拡散をお願いします。

※この記事は2019年8月時点の情報で作成しています。

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監修者:春田 萌

日本内科学会 総合内科専門医、日本老年医学会所属
15年目の内科医師です。大学病院、総合病院、クリニックでの勤務歴があります。訪問診療も経験しており、自宅や施設での介護についての様々な問題や解決策の知識もあります。