親が肺炎の疑いで入院します。肺炎は風邪の症状が重くなったものなのでしょうか?誤嚥性肺炎は普通の肺炎とは違いますか?入院は長引くのでしょうか。よくわからず不安です。教えてください。

質問

質問者高齢の親と同居していますが、最近元気がなく微熱が続いていることから主治医のすすめで入院をすることになりました。肺炎の疑いがあるといわれており、不安です。特に風邪をひいていたという記憶がないのですが、誤嚥性肺炎とはどのような病気でしょうか。その場合、完治までには時間がかかりますか?また家に戻ってきたときに、特に注意しなければならない点はあるのでしょうか。肺炎というと急変しそうな病気で心配です。素人にもわかりやすく教えていただければ嬉しいです。   

専門家

親御さんに肺炎の疑いがあり、入院のご予定があるとのことでご心配ですね。

通常食べ物や唾液を飲み込むときは、喉頭蓋という器官が気管に蓋をして気管の方に入らないようになっていますます。しかし高齢になるとこの働きが弱くなり、気管にものが入りやすくなります。気管にものが入ることが原因となり、肺で炎症が引き起こされる肺炎を誤嚥(ごえん)性肺炎と呼びます。高齢者の死因では常に上位に入る、恐ろしい病気です。

誤嚥性肺炎を起こす高齢者は、一旦完治しても再び繰り返す傾向があります。そのため飲み込みの状況を確認し、場合によっては飲み込みやすい食事の形態に変更するなどの工夫が必要になります。

ここでは誤嚥性肺炎についての基本的知識や、日常生活を送る上で留意すべき点などについて解説していきます。

高齢者と肺炎

高齢者と肺

風邪をこじらせて肺炎を引き起こすというケースがあることは知られていますが、特に高齢者にとっては死に至る可能性のある恐ろしい病気です。最初に肺炎の基本的な情報を見ていきましょう。

肺炎とは

肺炎は気管支から入った細菌が、肺の中で増殖している状態を指します。肺で炎症が起きると、十分に酸素を取り込むことができず、生命活動に大きな影響を与えます。

一般的な肺炎はウイルスによる風邪や、インフルエンザなどが原因となることもあります誰でもかかる可能性はありますが、特に抵抗力が落ちた人や高齢者・子どもがなりやすい傾向が見られます。

肺炎で命を落とす高齢者が急増

元々肺炎は日本人の死因の上位に入る病気でしたが、抗菌薬の開発により2017年時点では第5位まで下がってきています。

しかし肺炎による死亡者の年齢別では65歳以上がほとんどを占めており、80歳以上の死因では第3位です。

さらに特徴的なのが高齢者の場合、肺炎の多くが誤嚥(ごえん)性肺炎であることです。70歳以上では70%以上、90歳以上では95%近くが誤嚥性肺炎であるといわれています。

肺炎になると、入院を余儀なくされます。軽度の場合には自宅療養というケースもありますが、点滴による治療が主となるためほとんどは入院の指示がされます。

高齢者が入院するリスクとして安静状態が続くために足腰の筋肉が衰えたり、刺激の減少により認知症になったりする可能性があげられます。

肺炎になると糖尿病が悪化することもあり、また心筋梗塞などの心臓の病気や脳卒中にかかりやすくなるといわれています。

誤嚥性肺炎とは?

通常食べ物や唾液を飲み込むときは、喉頭蓋という器官が気管に蓋をして気管の方に入らないようになっています。しかし高齢になるとこの働きが弱くなり、気管にものが入りやすくなります。気管にものが入ることで細菌が肺に流れ込み、炎症が引き起こされて肺炎を発症します。これを誤嚥性肺炎と呼びます。

誤嚥性肺炎では咳や発熱など、一般的な肺炎の症状が見られない場合もあります。

食事などのむせ込みがなくても発症することがあるため、本人や家族が気付かないうちに肺炎になっているケースが多く見られます。

また入眠中に唾液が肺のほうに入りまで垂れて、肺炎となる場合もあります。誤嚥性肺炎は再発を繰り返しやすい傾向があるため、一度治ってもその後の観察が重要です。

高齢者の肺炎の症状

高齢者の肺炎の症状

高齢者の肺炎が疑われるとき、どのような症状が見られるのでしょうか。

一般的な肺炎の症状

一般的な肺炎の場合には、咳や発熱、痰など風邪とよく似た症状が見られます。そのためいつまでも風邪が治らず、咳が続いていると思い込んでいて、重症化してしまうということもあります。

自覚症状としては胸の痛みや息切れ、全身のだるさ、悪寒などがある場合もあります。

高齢者の場合には風邪をきっかけに肺炎になることも多いため、軽症であっても早めに受診しておくと安心です。

誤嚥性肺炎の症状

誤嚥性肺炎でも発熱や咳、また膿のような痰が見られますが、そうした症状がまったくないケースもあります。特に風邪症状がなく、微熱だけが続くということもあるので、日頃から体温や血圧などを測るのを習慣にしておくと発見が早くなります。

家族から見て何となく元気がなかったり、食欲がなかったりという場合も要注意です。中には喉がゴロゴロと鳴るだけで、ほかに目立った症状がないという場合もあります。

異変に注意

高齢者が肺炎にかかっていると急激に悪化し、命の危険に関わる可能性もあります。風邪の症状が数日続くときには、医師に相談することをおすすめします。

また口数が少なくなったり笑顔が出ないという様子が見られたりするときにも、誤嚥性肺炎の疑いがあります。

高齢者は誤嚥性肺炎を起こしやすいという意識をもち、少しでも変わった様子があれば早めに受診を促しましょう。

高齢者の肺炎の入院期間

高齢者の肺炎の入院期間

高齢者が肺炎で入院した場合、退院までどの程度の期間となるのでしょうか。一般的な例から推測していきます。

肺炎の治療

入院中の肺炎の治療の主な方法としては、抗生物質(化のう止)の投与があります。ペニシリン・セフェム ・マクロライド・キノロンなどの系統の薬品で点滴投与を行います。

肺炎は再発を繰り返すことで、次第に抗生物質が効かなくなるケースもあります。

強い薬を使えば使うほど、身体にも負担がかかります。

肺炎を繰り返さないためにも、身体全体の抵抗力の向上が大切です。

肺炎の入院期間

肺炎の入院期間は標準的に見ると2週間程度ですが、急性期病院に誤嚥性肺炎で緊急入院した患者の調査では、平均入院期間が24.8 日に及んでいるという報告もあります。

入院期間中は肺炎が治まるまで24時間点滴を行い、数日おきにレントゲンやその他の検査を受けて経過をみます。

高齢の患者の場合には入院による機能の低下を防ぐため、必要に応じてリハビリを受けるケースもあるようです。

高齢者の肺炎は合併症のリスクも高い

誤嚥性肺炎の場合には入院日数が20日以上となる例が多く、入院が長引くほどに合併症のリスクも高くなります。

安静状態のため筋力が低下し、生活意欲が失われるといった傾向も見られます。また高齢者は抵抗力が弱いため、院内感染などの危険性もあります。

慢性疾患が悪化したり薬による副作用を発症したりするなど、さまざまな症例が見られ、また精神的な落ち込みも大きな問題となります。

肺炎予防のポイント

肺炎予防のポイント

高齢者の肺炎は生命の危険に直結します。日常生活で肺炎にならないための、予防策を知っておく必要があります。

肺炎の怖さを知る

高齢者の肺炎を防止するためには、日頃から家族がその危険性への理解を深めることが大切です。

軽くても風邪症状があったら早めの受診をすすめ、肺炎の可能性がないかを確認するようにします。医師に相談し、生活や食事についてのアドバイスをもらうようにしましょう。

高齢者に多い誤嚥性肺炎は、脳梗塞などの脳血管障害やパーキンソン症候群、認知症などで起こしやすい傾向があります。

そうした疾患のある家族に対しては日頃からよく注意して観察し、わずかな変化も見逃さないように心がけます。

誤嚥性肺炎にさせないために

日常生活の中のちょっとした工夫が、誤嚥性肺炎を回避する有効策になります。

飲み込みがうまくいかない場合やむせ込みが多いときには、とろみ飲料やとろみ食を活用していきましょう。今は味を変えずに簡単使えるとろみ剤が販売されています。いつものお茶や食事に加えるだけで、飲み込みが楽になります。高齢者は唾液の量が少なくなるため、水分を多く含んでいるような食事にしたり、嚥下しやすい形態に工夫すると良いでしょう。

食事中に注意が散ると、せき込む原因となります。テレビは消す、会話は食後にするといったことで、食事に集中する環境を整えられます。

胃液の逆流を防ぐためには、食後2時間程度は横にならないように注意する必要があります。高齢者は食事の後すぐに横になりがちですが、家族が協力し合って声かけを行い、身体を起こした状態を保つようにしましょう。

嚥下機能の低下を防ぐためには、なるべく声を出すことが大切です。ことわざや詩歌の音読など、楽しみながら機能訓練を実施すると良いでしょう。

就寝中の唾液の流れ込みを防ぐために、寝台の頭部を高めにするのがおすすめです。枕では外れてしまう可能性があるので、上半身全体を上げられるように工夫します。

感染リスクの防止に努める

肺炎は手洗い、うがいの徹底によって感染のリスクを低くすることができます。風邪やインフルエンザの季節には、ウイルス吸い込まないためにもマスクの着用を習慣づけましょう。

身体全体の抵抗力を向上させるために、栄養バランスの良い食事やビタミンCの摂取をすることも重要です。軽い運動で全身の血流を良くするのも、肺炎対策につながります。

誤嚥性肺炎の場合、口腔ケアも予防策となります。口腔内の細菌を減らすことで、唾液が流れ込んだ場合の危険性を低下させられます。

定期的に歯科検診を受けさせ、食後や就寝前の歯磨きを徹底します。口腔ケア商品を活用して、清潔の向上に努め務めましょう。

風邪・誤嚥対策で肺炎予防を

高齢者の肺炎は風邪などの病気のほか、日常生活の過ごし方によっても発症する場合があります。一度かかると再発しやすく、身体に大きな負担がかかります。入院生活が長引くと、生活機能が低下し、合併症を起こす危険性もあります。

肺炎にならない、また再発させないためには、家族による生活の管理も大切です。毎日の状態をよく観察し、異変に気付いたらすぐに受診するようにしましょう。

※この記事は2019年11月時点の情報で作成しています。

 

監修者:寺岡純子(てらおか じゅんこ)

監修者:寺岡純子(てらおか じゅんこ)

主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。