名前は聞いたことあるけれど具体的にどんな病気かがわからないという方も多いパーキンソン病。65歳以上で発症率の高くなる病気のため、65歳以下の方では家族が罹患したことによってはじめて知ったという方もいるのではないでしょうか。今回はパーキンソン病がどのような病気かについて詳しくご紹介します。
- パーキンソン病とは
- パーキンソン病の主な症状
- パーキンソン病の進行はどう進む?
- パーキンソン病の予防方法
- パーキンソン病症状が現れた時の対処法
- 介護保険を利用できるの?
- 介護の限界を感じたら介護サービスの検討を
- まとめ
パーキンソン病とは
パーキンソン病は主に65歳以上の中高年に多く発症する病気です。身体の運動を調節している神経に命令を送る役割をもつドパミンという物質が不足してしまい、その結果として発症すると考えられています。1817年にパーキンソンさんによって初めて報告されたことからパーキンソン病という名前が付きました。
人口1000人に1人の割合で起こるといわれており、特に50~60歳代で発症する方が多いことが特徴です。原因のわからない進行性の神経障害を示す病気である神経変性疾患という分野の中ではアルツハイマー病に続いて2番目に多いといわれています。
パーキンソン病の原因は現段階で詳しくわかっていませんがいくつかの仮説が提唱されています。1番提唱されているのが前述したように脳の深部、中脳の黒質にあって脳内の伝達物質であるドパミンを作る細胞が徐々に減少して脳内のドパミン量が不足することで発症するということです。ドパミンを作る細胞がおおむね正常の1/5程度まで少なくなると症状が起こることもわかっておりこの説が一番可能性として高いと考えられています。
パーキンソンは前述したように現段階で原因不明の病気となります。そのため、国の難病指定※をされており、医療費の助成など支援を受けることができます。
※国の難病指定とは国は発病の機構が明らかでなく、治療方法が確立していない希少な疾病で長期の療養を必要とするもの。
パーキンソン病の主な症状
パーキンソン病の主な症状は振戦、筋強剛、運動緩慢、姿勢反射障害でパーキンソン病の4大兆候などともいわれています。これに加えて同時に2つの動作をする能力の低下、自由にリズムを作る能力の低下を加えると、パーキンソン病の運動症状はほとんど出ているといっても過言ではありません。
振戦とは初発症状として最も多くみられる症状で、手足や全身などが震える症状です。左右どちらかがより強いことが特徴です。また安静時に震えが強く、動作時には震えが軽快したり消失したりするのが特徴です。
筋強剛とはパーキンソン病の方の腕や足を他者が動かすと歯車のようにぎごぎごと感じることが特徴で、症状の出ている方自身に自覚症状はほとんどありません。
運動緩慢とは動作が遅くなることで、振戦の次に自覚症状として多く見られます。歩行時に歩幅が小さくなる小刻み歩行が見られます。動作の緩慢さは椅子からの起立時やベッド上での体位変換時に目立つことが多くなります。他にも表情が乏しくなる仮面様顔貌、文字を書くとどんどん小さくなっている小字症などが見られることもあります。症状が進行すると咀嚼や嚥下の機能が落ちていきます。
姿勢反射障害とは、倒れるときに自分の体を倒れないようにすることができなくなり、バランスを崩すとすぐに倒れてしまうようになります。
これらはすべて運動機能の症状ですが、運動機能以外にも症状が見られます。
運動症状以外では、非運動症状といい、意欲の低下、認知機能障害、幻視、幻覚、妄想などの多彩な症状が認められます。このほかにも昼間の過眠やレム睡眠行動異常などの睡眠障害、便秘、頻尿、発汗異常、起立性低血圧など自律神経障害、嗅覚の低下、痛みやしびれ、浮腫などさまざまな症状がみられます。
パーキンソン病の進行はどう進む?
パーキンソン病は進行性の疾患ですので、徐々にですが進行していきます。一昔前までは10年後には寝たきりになる病気ともいわれていましたが、専門医により適切な処置が行われれば現在は治療の進歩により発症後も約10年は発症前と同様に普通の生活が持続できるようになりました。それ以降は個人差によると考えられています。
パーキンソン病は症状が進行すると徐々に動作が緩慢になっていきます。例えば歩行の観点で見てみると最初は普通に歩けていたのが片足を引きずるようになる、そのうち歩幅が狭くなる、やがてすくみ歩行といい歩行時に足が地面に張り付いて離れなくなり、方向転換するときや狭い場所を通過することが出来なくなります。そして歩行が困難になり最初は屋外から車いすを使用するようになり、やがて屋内でも使用するようになります。
パーキンソン病の重症度と進行の指標 ホーンヤールの分類とは
パーキンソン病の症状の重症度および進行の評価はホーンヤールの分類によって評価されます。
症状が片側のみで症状によって日常生活が障害されない場合はⅠ度、症状が両側に出ているが介助がなくても日常生活が送れる場合をⅡ度、明らかな歩行障害が現れており、バランスを崩し転倒しやすいもののなんとか介助なしで日常生活は可能な場合をⅢ度、日常生活が自力では困難で多くの介助を必要とする場合をⅣ度、車椅子またはベッドで寝たきりで日常生活のすべてに介助が必要な場合をⅤ度と評価しています。
また、一般的に振戦が主症状だと進行は遅く、動作緩慢が主症状だと進行が速いともいわれています。平均寿命はパーキンソン病でない人と比較しても2~3年ほどしか変わらないともいわれています。
パーキンソン病の予防方法
パーキンソン病は発症の原因が現在も研究中ということもあり、病気そのものを予防する絶対的な方法はありません。
ですが、近年の研究によるとカフェインがパーキンソン病を予防すると考えらえています。ですが、メカニズムはまだはっきりとしておらず現在も研究が進められています。 そのため、現時点ではパーキンソンを確実に予防する方法はないと考えておくとよいでしょう。
パーキンソン病症状が現れた時の対処法
前述したようにパーキンソン病となっても発症後約10年は普通の生活ができるとされていますが、そのカギとなるのが早期発見、早期治療です。
現在パーキンソン病そのものの進行を止めるための治療は確立されていません。対処療法といい現在出ている症状を遅らせることで日常生活が比較的維持されます。
パーキンソン病症状が見られたらまずは医療機関を受診して、検査を受け、治療をすることが良いでしょう。治療は薬物療法で、基本的に脳内のドパミンを補完する薬剤を年齢や症状に合わせて処方されます。
なお、パーキンソン病の症状が出たからと言ってパーキンソン病とすぐに医師から診断されるわけではありません。パーキンソン病の症状と類似し、パーキンソン病と間違いやすい病態としてパーキソニズムというものがあります。これは、脳血管障害、薬の副作用、パーキンソン病以外の神経変性疾患の初期症状、遺伝性疾患の症状の一部として起こるもの、正常圧水頭症によって起こるなど原因はさまざまです。また、パーキンソン病の薬を投薬しても効果がないあるいは短期間で効果が出なくなります。
このパーキソニズムとパーキンソン病を鑑別をするためにも症状が見られたらまずはかかりつけ医を受診しましょう。
介護保険を利用できるの?
パーキンソン病は特定疾病でもあるため、要介護認定を受け、介護が必要な状態であると判断されれば介護保険を利用することができます。特定疾病にも認定されているということで40歳以上65歳以下であっても要介護認定を申請することができます。
要介護認定を申請できるのは40〜65歳未満のホーン・ヤール重症度1、2度のパーキンソン病患者で、難病に認定されていない方です。
ホーン・ヤールの分類3度以上で、生活機能障害度2度以上の方は難病医療費助成制度を受けることができます。こちらは医療保険に分類されます。
医師からパーキンソン病と診断され、介護保険を利用したいと考えている方は介護認定を申請してみましょう。
介護の限界を感じたら介護サービスの検討を
家族がパーキンソン病になってしまったら家族で協力して介護をしていきたいと考えている方も多いのではないでしょうか。しかし、家族にも自分自身の生活もありますし、進行性の病気ということもあり症状はどんどん重くなっていきます。そうすると介護に限界を感じてしまうかもしれません。限界になる前に、無理をせずに介護保険サービスの利用を検討してみましょう。
要支援に認定された方の場合は介護予防サービスとして居宅サービス、要介護と認定された方は介護サービスとして居宅サービスと施設サービスを受けることができます。
例えば居宅サービスを利用して一時的に施設で過ごしてもらったり、日中だけデイケアに行きリハビリテーションなどを受けることもできます。また、自宅に訪問してもらうい介護やリハビリテーションを受ける訪問介護や訪問リハビリテーションというサービスもあります。サービスの内容や頻度は介護度と心身状況によってプランが立案されます。介護サービスを検討されるという方は担当となっているケアマネジャーに相談してみましょう。
まとめ
現在も原因不明で難病指定されているパーキンソン病。徐々に症状は進行していきますが早期発見、早期治療を行うことで約10年は発症前と変わらぬ生活を続けることができるともいわれています。そのため、パーキンソン病症状が見られたらまずはかかりつけ医を受診してもらい、専門医を紹介してもらいましょう。そして専門医から診断をしてもらい治療を開始するとよいでしょう。また、徐々に進行する病気のためずっと介護する家族も疲弊してしまうかもしれません。家族だけで介護しようとせず、介護保険などを利用して無理なく長く付き合っていくことがポイントです。
パーキンソン病と聞くと症状が進み寝たきりに…というイメージを持ってしまうかもしれませんが、実際は薬剤で治療をしつつ長く付き合っていく病気です。この記事を読んでパーキンソン病という病気が分かったという方はぜひシェアをしていただき、同じようにパーキンソン病という病気について悩んでいる方と共有してくださると幸いです。
※この記事は2019年7月時点の情報で作成しています。

2001年、介護福祉士養成校を卒業と同時に介護福祉士を取得し特別養護老人ホームにて介護職員として勤務する。
その後、介護支援専門員や社会福祉士も取得し、介護以外でも高齢者支援に携わる。現在はソーシャルワーカーとして、 特別養護老人ホームで勤務しており、高齢者虐待や身体拘束、成年後見制度などの権利擁護について力を入れて取り組んでいる。