高齢者に多い骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは?

高齢者がなりやすい病気として耳にする機会も多い骨粗鬆症という言葉。骨粗鬆症は骨折などを引き起こすリスクも高いため、自分の家族には特に気を付けてほしいものではないでしょうか。骨粗しょう症とはどういったものなのか、どうすれば家族が骨粗鬆症にならないかについてご紹介します。

高齢者に多い骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは?

高齢者に多い骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは?

骨粗鬆症とは、骨の量が減ってスカスカになり、骨折をおこしやすくなっている状態、もしくは骨折をおこしてしまった状態のことをいいます。通常は痛みはありませんが、転ぶ、手をつく、ドアに手や足をぶつけるなどのはずみで簡単に骨折してしまします。骨折しやすい箇所は、背骨、手首、太ももの付け根が多く、特に背骨は、尻もちをついた際に背骨の圧迫骨折が発生したり、いくつもの場所が椎体骨折すると背中が丸くなり、身長が低くなります。

一昔前までは骨粗鬆症は骨の老化現象であると考えられてきました。ですが、現在では、骨粗鬆症は立派な全身性の骨疾患であるといわれています。また、WHOの定義では「骨粗鬆症は低骨量と骨組織の緻密構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し骨折の危険性が増大する疾患」としています。

骨粗鬆症になりやすい部位

骨粗鬆症は脊椎椎体といわれるいわゆる背骨、大腿骨近位骨といわれるいわゆる脚の付け根・太ももの部分、橈骨といわれる手首の部分、上腕骨といわれる腕の部分です。この部位別に骨粗鬆症の有病率を40歳以上の方を対象にした調査で見てみると腰椎で男性3.4%・女性19.2%、大腿骨は男性12.4%、女性26.5%となります。

また、年齢別でみると60歳代から増え始め、70歳代で約2倍ほど増加します。そして、年齢を重ねるごとに有病率はどんどん増加していく傾向にあります。日本には約1000万人以上、骨粗鬆症に罹患している人がいるといわれています。

骨粗鬆症の原因

骨粗鬆症は骨強度が低下することによって起こります。骨強度は骨密度と骨質を合わせたものです。すなわち、骨強度と骨質に何かしらの原因が加わることによって骨強度が弱くなり骨粗鬆症が起こるものとなります。

骨密度が低下する理由としては古い骨を壊す『骨吸収』と新しい骨を作る『骨形成』の量がアンバランスになることによって起こります。例えば骨吸収が異様に活性化してしまっても骨形成によって十分に補充ができていなければ骨密度の低下につながり、スカスカな骨になってしまいます。骨吸収と骨形成ではそれぞれ期間が異なります。骨吸収は数週間で終了してしまうのに対して骨形成は数か月の時間を要します。

このバランスがうまくマッチングしなければ骨強度を低下させる原因となるのです。 他にも、骨粗鬆症の原因には生活習慣やライフスタイル、性差も関係しています。

若い時の骨量が少ない

そもそも骨密度は小児から思春期にかけて急激に増加するものです。5歳から18歳の間に骨密度は2倍にかけて増強し、18歳でピークを迎えます。18歳以降であっても20~40歳くらいであれば骨密度を増加させることは可能ですが、増加率は2~3%ほどにすぎずやはり、18歳までの期間には匹敵しません。つまり、この骨密度がピークとなる18歳までにしっかりと骨密度を増やすことができないと恒例となった時に骨密度がさらに低下し、骨粗鬆症の原因になりうるのです。

閉経によるエストロゲンの欠乏

前述したデータからもお分かりいただけるように骨粗鬆症は女性に多いという特長があります。その理由がこのエストロゲンの欠乏です。エストロゲンとは女性ホルモンの1つであり骨形成を進めるとともに、骨吸収を抑えるという働きがあります。閉経をする少し前からエストロゲンの分泌が低下するため骨量が減少します。もともと女性は男性に比べて骨量が少ないため、さらに骨吸収が抑えられてしまうことで骨量の減少が進んでいきます。

ちなみに男性の場合は男性ホルモンが女性のエストロゲンと同じ働きをしています。ですが、男性ホルモンは女性ホルモンのように加齢で減少をすることがないため男性の骨量は女性ほど著しく減少しないとされています。

カルシウムやビタミンK、ビタミンDの欠乏

カルシウムはみなさんご存知の通り骨を作るための大切な栄養です。それに加えてビタミンK、ビタミンDはカルシウムの吸収を増強させる栄養です。これらが不足することによって骨粗鬆症になりやすくなります。

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加齢や寝たきり

前述したホルモンバランスの乱れに加えて胃酸分泌の低下や腸の吸収能の低下、腎臓での尿へのカルシウム排泄の増加などが起こることによって骨粗鬆症になりやすくなると考えられています。

また、高齢になると多くの人では運動量が減少し活動量も減少します。それに加えて何かしらの病気になり寝たきりとなると必然的に動く時間が減り、筋力の低下にもつながります。これも、骨粗鬆症の一因とされています。

骨粗鬆症になりやすい人がいる!

実は骨粗鬆症にはなりやすい人がいます。骨粗鬆症になりやすい人は以下のような人です。

家族に骨粗鬆症にかかった人がいる

骨粗鬆症は遺伝的な部分も強いと考えられています。そのため、家族に骨粗鬆症にかかった方がいる場合にはその人も骨粗鬆症になりやすいといわれています。また、遺伝的にやせ型であるという人や閉経が早かったというのも関係していると考えられています。骨密度の遺伝率は40~80%ともいわれています。

若いころ偏食だった

前述したようにカルシウムやビタミンの定期的な摂取が骨を作るためには必須です。特にカルシウムは少なくとも1日600mg、成長期の若い人、閉経を迎えた人などは1,000~1,500mgが必要です。そのため、骨形成が十分になされる若いころに不規則な食生活だったという人も骨粗鬆症になりやすいと考えられています。

日光にあまり当たらない生活をしていた

日光はビタミンDが腸でカルシウムの吸収をすることを促す効果があります。紫外線を皮膚から吸収することでその効果を発揮します。そのため、日光にあまり当たらない生活をしていた方も骨粗鬆症のリスクが高いとされます。

喫煙や飲酒、カフェインの多量摂取をしていた

喫煙は胃腸の働きを低下させます。そのためカルシウムの吸収を阻害してしまいます。また、過量のカフェインは尿へのカルシウムの排泄を増やしてしまいます。さらに、過量のアルコールはカルシウムの吸収を減らして、排泄を増やします。これらのことから喫煙、飲酒、カフェインの多量摂取をしていた人は骨粗鬆症になりやすいといわれています。

以下の病気にかかっている、ステロイドを使用している

胃切除をしている他、糖尿病、甲状腺機能亢進症、高カルシウム尿症、原発性副甲状腺機能亢進症、腎不全の疾患にかかっているという人も骨粗鬆症になりやすいといわれています。これらの病気にかかると骨代謝に影響を及ぼすホルモンが不足したり、骨形成に必要な細胞などに異常が起こったりして骨密度が減少します。また、骨の中に骨質を劣化させる物質が増えることで骨が脆弱になります。特にステロイド(グルココルチコイド剤)を長期間投与している方においては、骨吸収の亢進と骨形成の低下を生じてしまうことから、著明な骨量減少を来たすことが知られています。

骨粗鬆症の予防

骨粗鬆症は予防をしていくことが可能な病気です。骨粗鬆症はどのように予防していけばよいのでしょうか。以下のことに関して、なるべく早い段階で取組めば効果は高いと言われています。

食生活の見直し

まず手軽に始められるのが食生活の見直しです。特にカルシウムの摂取は大切です。閉経後の女性であれば1日800mgのカルシウム摂取が望ましいとされています。毎日の食事に加えて牛乳1本分、豆腐であれば半丁分を加えてみてください。また、カルシウムだけ取るのではなくすべての食材をバランスよく取ることが必要です。

カルシウム以外にも骨粗鬆症の予防としてビタミンD、ビタミンK、リン、マグネシウム、適量のたんぱく質の摂取を心がけましょう。

運動習慣を身に着ける

運動をすることによって骨に負荷をかけると骨に弱いマイナスの電気が発生し、カルシウムの吸収が促されます。また血流も良くなるため骨形成も活発になります。ウォーキングやストレッチといった軽い運動。散歩や自転車乗りでも良いかもしれません。急に運動は、難しいという方は、椅子に座った状態から立ち上がる動作を1日10回ほど繰り返すだけでも効果はあります。

この際に外で日光を浴びながら運動をすることができれば紫外線を吸収するため骨吸収能を高めることができます。

アルコールや喫煙をやめる

アルコールや喫煙を控えるあるいは完全にやめることも骨粗鬆症の予防につながります。特に喫煙においては、非喫煙者と比較して喫煙者女性は60歳代で17%、70歳代で41%、80歳代で71%、90歳代で108%も大腿骨近位部の骨粗鬆症リスクが高まるといわれています。

また、アルコールの摂取もエタノール24g以上(ビール中瓶1本)で男女とも骨粗鬆症が原因となる骨折が38%上昇、大腿骨においては68%の上昇が見られています。そのため、禁酒、喫煙をするだけでも骨粗鬆症を予防することができます。

骨粗鬆症検診を受ける

骨粗鬆症は症状がない病気のため自分自身が骨粗鬆症であるかどうかは検査をしなければわかりません。また、検査をして今現在の自分自身の骨について知ることは骨粗鬆症を予防するための働きかけへとつながります。骨粗鬆症検診は問診に加えて骨量を測ることでできますので、一度整形外科で検査をし意識付けをすることにより予防につながるでしょう。

高齢者は転倒による骨折に気を付けましょう

骨粗鬆症において最も気を付けたいのが骨折です。骨折によって寝たきりになれば不動となり骨粗鬆症がさらに進行するのみとなり、健康寿命を縮小させたり、最悪の場合死に至る場合もあります。この骨折の誘因となるのが転倒です。転倒は骨折発生原因の80%以上を占めており、転倒を防止することは骨折の予防につながりますので、転倒に気を付けた生活を送るように心がけましょう。 例えば、家庭内で最も転倒リスクが高いのが「居室」になります。以下に気を付けるだけでも転倒リスクを減らすことができます。

  • 履物に気を付ける(脱げ易いもの、滑りやすいものは履かない)
  • 室内の床を改善する(デコボコ、(小さい)段差、滑りやすいところは滑りにくくする)
  • 夜間などの足元の明るさを確保する
  • 床の障害物を撤去する(電気コード、カーペットなどの折れ端、滑りやすいマット)
  • 必要に応じて手すりを設置する

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まとめ

骨粗鬆症は女性に多く、骨粗鬆症のみを検査を受けずに知ることは非常に難しいです。ですが、骨粗鬆症に罹患している場合、骨折などによって健康寿命を短縮させてしまうことも考えられます。骨粗鬆症の予防は日常生活の見直しをすることでもできますので、まず一度日常生活を見直してみてはいかがでしょうか。

骨粗鬆症は予防をすることが可能です。ですが高齢者は自分で管理をしながら予防行動に移すことが難しいともいわれています。そのためこの記事を読まれた家族が高齢者に骨粗鬆症について伝え一緒に予防策を考えていただければと思います。こうした予防策を考えていきたいという方はシェアをしていただき多くの方と情報を共有していただけると嬉しいです。

※この記事は2019年9月時点の情報で作成しています。

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監修者:陽田 裕也
陽田 裕也 (ひだ ゆうや)

2001年、介護福祉士養成校を卒業と同時に介護福祉士を取得し特別養護老人ホームにて介護職員として勤務する。
その後、介護支援専門員や社会福祉士も取得し、介護以外でも高齢者支援に携わる。現在はソーシャルワーカーとして、 特別養護老人ホームで勤務しており、高齢者虐待や身体拘束、成年後見制度などの権利擁護について力を入れて取り組んでいる。