介護疲れの解消法

 介護疲れの解消法

介護は明確な終了の時期がなく、要介護者の状態に合わせて延々と続いていくものです。時に体調が悪化したり要介護度が高くなったりと、日々変わる要介護者の方を介護されている介護者の方の中には、介護疲れに悩まされる方も少なくないでしょう。終わりの見えない「介護」だからこそ、介護者がしっかりと休息をとり介護疲れを解消しないとすることは最も大切なことです。今回は介護疲れの解消法をご紹介します。「疲れていても介護を頑張らなきゃ」と無理をする必要は絶対にありません。この記事を読んで介護疲れ解消のために実践に移していただければと思います。

介護疲れの症状

まず、なぜ介護疲れをためてはいけないかというと、介護疲れによってさまざまな症状が出現してし、介護に影響を及ぼしてしまうためです。まずは、介護疲れによって出現する症状をしっかりと押さえておきましょう。

介護うつ

介護うつとは介護をしている方が介護に伴いうつを発症することをいいます。介護うつは介護中だけではなく介護終了後にいきなり発症することもあります。介護うつになりやすい人の特徴は責任感がある、自責心が強い、真面目な気質がある、周囲に相談せずに自分自身で解決しようとする人とされています。

また、介護うつを引き起こす要介護者の状態は認知症や寝たきりなどで特に妄想、暴行、徘徊などが見られる場合や、昼夜逆転になった場合が多いといわれています。元気なころの要介護者の姿を思い出して精神的に辛くなりうつを発症するという方もいるようです。

くわえて、介護者自身の不眠や食欲不振など体調悪化,世帯の経済的困窮などいくつかの要因も影響します。

症状は食欲不振や不眠が初期症状となり、悪化すると口数が減る、気分の変調が激しくなる、自殺企図といった症状が出現します。初期症状のうちであれば気分転換などをすることによって症状が改善することもあります。

介護うつに関して特に心にとめておいていただきたいのは「介護は終わっても介護うつに終わりはない」ということです。なので、介護が終われば楽になるから辛抱しようとは思わず、介護うつと思わしき症状が出たら早めに心療内科を受診するなどしましょう。

介護放棄

介護放棄は後にご説明する虐待の中の1種にも当てはまるもので、要介護者の世話や介護を放棄してしまうことです。ただ数時間程度の放棄ではなく、長時間あるいは長期間にわたり介護を放棄することで高齢者の生活環境や身体的・精神的状態を悪化させることを介護放棄と位置づけています。自分では何もできない方の介護を放棄することは死へもつながりかねない危険なこととなります。

特に、前述した介護うつを発症していた場合、介護うつによって判断力が落ち、物事を冷静に考えられなくなることから介護放棄に至ってしまうことも少なくないようです。

2014年に厚生労働省が発表したデータによると虐待全体のうち介護放棄は約20%を占めています。特に要介護4、要介護5の方に対する介護放棄は、虐待全体のうち2番目に多いものとなっています。そのため特に要介護度が高い方を介護している方は介護放棄に陥る前に介護うつを回避する対策をとることが必要です。

虐待

高齢者への虐待は年々増加傾にあり、平成29年に厚生労働省が発表したデータによると虐待と認識された件数は17,078件で前年度よりも4.2%増加、高齢者虐待疑いで通報された件数は30,040件で前年度よりも7.5%高くなっています。

虐待の種類は全部で5つあります。

1つ目は身体的虐待といい、暴力的な行為よって身体に傷やアザ、痛みを与える行為や外部との接触を意図的、継続的に遮断する行為をいいます。

2つ目は心理的虐待といい、暴言や話しかけられているのに無視をする、嫌がらせをする、脅しや侮辱をすることで精神的な苦痛を与えることをいいます。

3つ目は性的虐待で、性的な嫌がらせを本人の同意なしで強要することをいいます。

4つ目は経済的虐待で、本人の合意なしに財産や金銭を使用したり、本人が希望する金銭の使用を理由なく制限したりすることをいいます。

5つ目は前述もした介護放棄で、必要な介護サービスの利用を妨げる、世話をしない等により、高齢者の生活環境や身体的・精神的状態を悪化させることをいいます

。 厚生労働省のデータによると精神的虐待が割合として最も多く、次いで心理的虐待、介護放棄、経済的虐待、性的虐待となっています。

高齢者への虐待に至る原因として最も多いのが介護者の介護疲れで、虐待に至る理由の1/4を占めています。高齢者に対する虐待は法律で罰せられることもあるため、虐待を予防するためにも介護疲れを解消することが重要だと言えます。

介護疲れの対策

前述してきたように介護者の介護疲れは介護者自身だけでなく要介護者にも影響を及ぼすものと考えられます。前述したような状態になるのを防ぐためにも介護者の介護疲れ対策は必要不可欠です。では、介護疲れを解消するためにはどうすれば良いのでしょうか。

介護保険サービスを利用

介護疲れの対策でまず利用したいのが介護保険サービスです。介護保険サービスの中でも介護疲れへの対策に利用できるものは、在宅介護サービスがあり、そのかなでも、自宅から通って利用するサービスと自宅まで来てもらいサービスを受けるものがあります。さらに、施設介護サービスとして生活の場を移すものがあります。

在宅介護サービスの自宅から通って利用するサービスは、朝施設に行き、夕方に自宅に戻ってくる通所介護(デイサービス)や通所リハビリテーション(デイケア)、があります。通所系のサービスは、日中は要介護者が不在となるため、その間にゆっくりと休んで介護疲れを解消させることができます。

また、送迎や食事の準備に加え、ケアプラン内容や利用する施設によっては入浴もすべて施設がやってくれます。

自宅まで来てもらい受けるサービスは、訪問介護や訪問リハビリなどがあります。訪問系のサービスは家族だけでは対応が難しい時間帯に来てもらうことにより、身体的な負担を軽減できます。

通所サービスをどのくらい利用できるかは介護度に応じて設定してある『支給限度額』によって決っており、ケアマネとの相談でサービスの量が決ります。そのため、もし介護疲れを感じているという方は早めにケアマネに伝えサービスを増やすとよいでしょう。また、自宅から通って利用するサービスのうち数日から数週間程度施設に泊まるサービスである短期入所生活介護、短期入所要介護(ショートステイ)では1ヶ月につき最長30日間利用することができます。これに加えて介護認定期間の半数利用することができます。まとまった期間リフレッシュしたいという方は活用していきたいサービスの1つとなります。

生活の場を移すサービスとは具体的に施設への入所です。ですが、要介護度によっては利用できない施設もあったり、施設の定員がいっぱいで空きを待たなければならなかったりと諸々事情が出てきてしまいます。そのため、いますぐに介護疲れを解消したいという方にはお勧めできません。今後の介護疲れを危惧して検討するなど長い目で見た対策として考えるのが妥当かもしれません。

介護保険外サービス

介護保険外サービスとは介護保険を使用しないサービスです。そのため前述した介護保険サービスと異なりサービス利用費は全額自己負担となります。

介護保険外で利用されているサービスには配食サービス、家事代行、なんでも頼めるコンシェルジュなどさまざまなサービスがあります。これらを自分の生活に併せて洗濯することで介護疲れか仕様につながることが期待できます。

例えば配食サービスを利用すれば自分のご飯はもちろん、咀嚼・嚥下機能に合わせた食事を作らなくてよくなりますし、家事代行サービスを頼めば家事の負担がなくなり、少しでも休息する時間ができます。なんでも頼めるコンシェルジュは保険内の時間以外でも要介護者の世話を頼むことができますし、病院への通院サポートや外出サポートもしてもらえるので、要介護度が低い人ならば少し外出してもらってその間1人でゆっくり休めるなんていうこともできます。

介護疲れの解消法

介護保険サービスあるいは介護保険サービスを利用して身体的、精神的な負担を減らすことはできます。ですが、具体的にどのような方法が介護疲れの解消を期待することができるのでしょうか。

介護の相談先、介護仲間を作る

介護予防を解消するためには今抱えている不安や悩みを解消することが必要です。そのため、介護に関する相談先を利用したり介護仲間を作ったりするとよいでしょう。

介護の相談先は、行政でさまざまな機関を用意しています。介護の相談として最も親身に、的確に相談に乗ってくれるのは市町村の地域包括支援センターです。地域包括支援センターには介護のための相談窓口があるところもあります。家から出られないという場合は電話でも可能ですので、まず電話連絡をして相談をして具体的な解決方法を知ることが良いでしょう。

介護仲間を作ることで気楽に愚痴をこぼすことができるほか、介護の方法について勉強になったり同じように頑張っている仲間がいることを知り安心感を得られたりします。地域によっては介護者のためのサークル活動をしているところもありますし、地域包括支援センターからそういった集まりを紹介されることもあります。

自由時間を作る

知らない人と気を使って話すのが苦手、行政に相談するまでもないと考えている方は積極的に自由時間を作りましょう。前述したように介護サービスを利用して日中だけあるいは数日間高齢者のいない時間を作りましょう。空いた時間は体を休めても良し、趣味に費やしても良し、出かけても良しです。とにかく自分の自由なやりたいことだけをやれる時間を作ることが息抜きにもなり介護疲れの解消へとつながります。

介護施設への入居も検討する

介護施設へ入居して生活を完全に分離することも介護疲れ解消へとつながります。もしかしたら介護をされてきた方によっては「施設に入れたらかわいそう」と思ったり、「今まで頑張ってきたからまだできる」と思ったりするかもしれません。ですが、介護はいつ終わりが来るかわかりません。そして介護疲れは自覚をしていないだけで実はすでに起こっているかもしれません。早い段階で生活を分離することで、長い介護生活を余裕をもって過ごせる可能性が高まります。

前述したように介護施設によって入居できる介護度が違うこと、施設によっては定員に達していてすぐには入れないということもあります。また、要介護者と施設の相性の善し悪しもあるかもしれないので、長いスパンで施設を探してみるのもいいかもしれません。

介護に対する考え方を変える

在宅介護は100%の力で取り組む必要はありません。60~70%の力で構いませんので、完璧を求めない介護をするようにします。

多少の失敗に対しては「こんなこともあるか!」ぐらいの気持ちで、自分自身を追い込まないで肩の力を抜く事を意識した介護をするように心がけます。

まとめ

介護疲れによって介護者がうつなどの疾患に見舞われたり虐待などで要介護者を傷つけてしまうのはお互い本望ではありません。お互いに負担なく長い介護を続けていくためには介護者の介護疲れの解消が必要不可欠です。介護保険サービスなど行政のサービスも活用しつつ介護疲れを解消してみてはいかがでしょうか。

終わりの見えない介護ですので、介護をしていて疲れが出ることは至極当たり前です。自分のことも大事にして介護疲れを解消しながら介護を続けていくのが、長く介護を続けていくためのコツかもしれません。この記事を読んで介護疲れ解消のための具体的な策がイメージできた方はぜひシェアをしていただき、介護に疲れている方へこの情報を届けていただけると嬉しいです。

※この記事は2019年10月時点の情報で作成しています。

監修者:陽田 裕也
陽田 裕也 (ひだ ゆうや)

2001年、介護福祉士養成校を卒業と同時に介護福祉士を取得し特別養護老人ホームにて介護職員として勤務する。
その後、介護支援専門員や社会福祉士も取得し、介護以外でも高齢者支援に携わる。現在はソーシャルワーカーとして、 特別養護老人ホームで勤務しており、高齢者虐待や身体拘束、成年後見制度などの権利擁護について力を入れて取り組んでいる。