嚥下が衰えた母にミキサー食を作ります。作り方や注意点を教えてください。

食事介助を受ける高齢者

 

質問

質問者

母がひとり暮らし中に誤嚥性肺炎を起こして入院しました。退院後は私たち夫婦も定年退職をして家にいることから、同居をすることに。介護サービスをフルに使うことで、無理のない介護をしていくつもりなのですが、一番心配なのが食事です。

胃ろうは嫌だということで、リハビリをしながら口からの食事をがんばっていくことになりました。現在はミキサー食です。初めての介護食、そして初めてのミキサー食で戸惑っています。

自宅でミキサー食を作る際に、おいしく食べたもらうため、安全に食べてもらうために、初心者として気を付けたほうがいいことはありますか? 教えてください。

 

専門家

高齢者の食事では、噛む力・飲みこむ力にあわせた食事の形状にすることが大切です。ミキサー食は、噛む力と飲みこむ力が低下している高齢者向けの食事です。ミキサーにかけるなどしてなめらかにした食事に、適切なとろみをつけて提供します。自宅で作るのには手間がかかり、さらにはおいしく食べてもらうにはコツが必要です。

この記事では、ミキサー食とはなにか、ミキサー食を調理するコツ、食べるときに注意したいことなどをまとめました。無理をしない範囲で、おいしく食べてもらいたいものですね。

自分たちの食事とは別に、ミキサー食を準備するのは簡単なことではありません。ぜひこの記事の内容を、今後の生活にお役立てください。

ミキサー食とは

ミキサーを使った調理のイメージ

まずは、ミキサー食の基礎知識についてみていきましょう。

高齢者がミキサー食をとる理由

ポタージュ状の形状であるミキサー食は、細かく刻んだ食事に比べて、口の中でまとまりやすくて飲みこみやすい食事です。ピューレ食やペースト食とも呼ばれています。スプーンですくって食べることができます。飲みこむ力に合わせて、あえて柔らかい粒を残すこともあります。

そのまま丸飲みできるゼリー食やムース食とは異なり、舌や下顎を使って口の中で飲みこむ準備をする必要がある形状です。リハビリによって、咀嚼嚥下機能(噛む機能や飲みこむ機能)が向上すると、舌でつぶせる程度に柔らかいソフト食などに変更します。

噛む力がほとんど無い方、食事を小さく刻んでも飲みこみづらい方、口が開きにくい方に適した介護食です。

ミキサー食のメリットとデメリット

ミキサー食は、噛む力や飲みこむ力が低下した方でも食べやすい点がメリットです。

ただし、適切なとろみをつけないと誤嚥しやすいこと、液状にするために加えた水分で量が増えてしまい、少食の方は栄養をとるのに十分な量を食べられないこと、見た目が悪くなるので工夫が必要なことがデメリットとしてあげられます。

ミキサー食を調理するコツ

食事の解説をする管理栄養士

続いて、ミキサー食を調理するコツをみてみましょう。

ミキサー食の作り方

ミキサー食は、食事や食材に必要に応じて水分を足し、ミキサーやフードプロセッサーなどにかけるなどして、ポタージュ状にするのが基本的な作り方です。必要に応じて、とろみ剤やゼラチンなどでとろみをつけて提供します。

食材について知っておきたいこと

ミキサー食には、向いている食材と向いていない食材があります。

《向いている食材》

  • ほうれん草などの葉物野菜
  • トマトやカブなど繊維質の少ない野菜
  • でんぷん質が多いイモや豆類
  • 脂肪分の多い肉や魚
  • バナナや缶詰のフルーツ

《向いていない食材》

  • ゴボウなどの繊維質が多い野菜
  • キノコ類
  • こんにゃくなどの弾力のある食べ物
  • 脂肪分が少ない肉や魚
  • パインやキウイなど繊維や種が口の中に残るフルーツ
  • 酢の物などすっぱくてむせてしまうもの

《食材を食べやすくするコツ》

野菜は生のままよりも、火を通してからミキサーにかけた方が、えぐみが減って食べやすくなります。

脂肪分が少ない肉や魚については、だし汁と一緒に山芋や木綿豆腐を加えることで、食べやすさと栄養をプラスすることが可能です。口の中に繊維や種が残るパインやキウイなどのフルーツでも、裏ごしすると食べやすくなります。

おいしく食べてもらうコツ

食材に水分を足すことが多いミキサー食は、薄味になりがちです。もともと高齢者は味を感じにくくなっているため、濃い味を好む傾向があります。

だしをしっかり感じられる味付けにすることで、味をはっきり感じてもらえます。また、薄味の状態から本人に味見をしてもらい、少しずつ味を足しながら本人にも確認をしてもらうことで、そこまで味を濃くしなくても、味付けに納得してもらえるかもしれません。

見た目の工夫をしましょう

食材や食事を全て一緒にミキサーにかけてしまうと、見た目が悪くなってしまいます。食材ごとにミキサーにかける、ミキサーにかける前の料理を見てもらうなどの工夫が必要です。

適切なとろみを

誤嚥を防ぐためには、高齢者の状態にあわせた、適切なとろみをつけることが大切です。片栗粉などでもとろみをつけることはできますが、市販の「とろみ剤(とろみ調整食品)」であれば、食べ物や飲み物に入れて30秒ほどかき混ぜるだけで簡単にとろみがつけられます。加熱の必要もありません。

とろみがつきすぎるとのどに張り付いてしまい、誤嚥や窒息のリスクが高くなるので注意しましょう。どの程度のとろみをつけたらいいのかは、嚥下リハビリをしてくれている言語聴覚士や訪問看護師などにご確認ください。

手間をかけないコツ

自宅で毎日作るのは大変です。食材ごとに柔らかく煮た状態で冷凍しておく、市販品を利用するなどして、無理なく続けていけるようにしましょう。 市販品はカロリーや栄養なども計算されているので、上手に活用してください。

食事の際に気を付けたいこと

食事介護のイラスト

最後に、飲みこむ力が弱くなった高齢者が、誤嚥を防いで安全に食事をする際に気を付けたいことを紹介します。

正しい姿勢で食べましょう

食事中の誤嚥を防ぐには、正しい姿勢で食事をとることが大切です。

イスや車いすで食べる場合には、かかとまで足が床についており、前かがみの姿勢をとるようにしましょう。半身マヒがある方は、マヒがある方の腕をテーブルの上に置くと、姿勢を保ちやすくなります。

ベッド上で食事をとる場合には、ベッドが30度以上になるようにギャッチアップし、膝の裏にクッションを置き、足の裏にクッションや台などを置いて踏ん張れるようにします。ベッドの上ですが、下半身はイスに座ったような形になるイメージです。こうすることで腹筋に力が入り、嚥下をしやすくなります。

顔はあごが上がると誤嚥を起こしやすくなるので、見上げる位置にテレビがあったり、上から食事介助をしたりしないようにしましょう。

また、正しい姿勢を保ち、きちんと飲みこむためには、しっかりと目を覚ました状態で食事をとってもらうことが大切です。

自分で食べてもらうことも大切です

介助をする人とペースが合わないと、誤嚥を起こしやすくなってしまいます。できるだけ自分で食べてもらうことも大切です。

滑りにくい、軽い、握りやすいなどの工夫が施された食器を利用すると便利です。「自助食器」や「ユニバーサル食器」と検索すると、たくさん商品が出てきます。また、利用している福祉用具の専門員やケアマネジャーに相談してみてもいいでしょう。

食事にかける時間を決めましょう

食事に時間がかかると疲れて誤嚥を起こしやすくなります。1回の食事は30~45分で終わらせるようにしましょう。かかりつけ医や訪問看護師、言語聴覚士などと相談し、「食事中に2回ムセたら止める」など、中止の目安を決めておくと安心です。

食事の時間を決めて、1日のリズムを作ることも大切です。1度にたくさん食べられない場合には、食事と食事の間に水分補給やおやつの時間をつくると良いでしょう。

専門職との連携を

食事をおいしく、安全に食べてもらうためには、専門職との連携も大切です。言語聴覚士をはじめ、歯科医師や看護師、理学療法士などの利用者とかかわりのある専門家に、その時の状態に応じた食事の形態や食事の前の準備体操などについて、相談してみると良いでしょう。

まとめ

ミキサー食は、噛む力や飲みこむ力が低下した方に適した食事の形態です。自宅でも簡単に取り入れられますが、ミキサーにかけるために水分を足して味がぼやけてしまったり、見た目が悪くなってしまったりして、なかなか食べてもらえなくて悩んでしまうことがあります。

この記事では、自宅でミキサー食を取り入れる際のコツや食事の際に注意したいことをまとめました。かかりつけ医やケアマネジャーなどの専門職と連携を取り、市販品を上手に取り入れながら、無理なくミキサー食を続けていきましょう。

※この記事は2022年3月時点の情報で作成しています。

ケアマネジャー:森裕司(株式会社HOPE)
ケアマネジャー  森 裕司(もり ゆうじ)

【経歴】 1982年生まれ。
医療福祉系学校を卒業後、約11年医療ソーシャルワーカーとして医療機関に勤務。
その後、一生を通じた支援をしたいと思い、介護支援専門員(ケアマネジャー)へ転身。
2017年1月 株式会社HOPE 設立
2017年3月 ほーぷ相談支援センター川越 開設
代表取締役と共に、介護支援専門員(ケアマネジャー)として、埼玉県川越市で高齢者の相談支援を行っている。
他に、医療機関で、退院支援に関するアドバイザーと職員の指導・教育にあたっている。
医療・介護に関する新規事業・コンテンツ開発のミーティングパートナーとしても活動。大学院卒(経営研究科)MBA取得している。

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