1.認知症が軽度な場合
認知症とは、何らかの病気によって判断能力が下がる状態のことを指します。
認知症の進み具合によっては成年後見制度の利用が必要になってくる場合があります。
とはいえ、認知症が比較的軽度で、日常生活を送ることが出来るレベルであれば、日常生活自立支援事業を利用した方がよいケースもあります。
では早速、どんな制度なのか見ていきましょう。
⑴日常生活自立支援事業の概要
日常生活自立支援事業とは、能力が不十分である方が自立した生活を送れるよう、社会福祉協議会が、必要なサービスを行うものです。
具体的に対象者を区分すると以下のようになります。
- 認知症高齢者
- 知的障害者
- 精神障害者
いずれも、日常生活を送るうえで、必要な情報の入手や理解、判断、意思表示がうまく出来ない方が対象です。
なお、運営者は、都道府県・指定都市社会福祉協議会になります。
都道府県・指定都市社会福祉協議会のホームページ(リンク集)|全国社会福祉協議会
⑵日常生活自立支援事業のサービス内容
日常生活自立支援事業の内容について確認していきましょう。
援助の内容は、大きく以下の3つに分けることが出来ます。
①福祉サービスの利用の手助け
人が生きていくうえで、買い物や食事などは、必要不可欠なものです。
まずは、利用者が各市区町村の社会福祉協議会に相談することから始まります。
その後、専門員が利用者の状況を調査して、判断能力や各障害の度合いによって、それぞれに合った支援計画を作成します。
更につけ加えると、利用者に福祉サービスの契約を締結できる能力があるかどうかの確認も行います。
判断能力がある場合には、利用契約が締結され、日常生活をサポートしてくれる生活支援員が派遣されるといった運びになります。
②苦情解決制度を利用する手助け
苦情解決制度とは、福祉サービスの利用者からのサービス改善の要望や、苦情を適切に解決するものです。
考えられる苦情や相談としては以下のような例が挙げられます。
職員の対応や態度が悪い
説明を受けていたサービス内容と実際のサービスが異なる
事前に説明を受けていた料金と、実際の料金が違う
このような場合、苦情の申出が可能な人は、利用者及びその家族、代理人の方などです。 ただ、利用者やその家族が申出をする場合、どのように対処すればよいのか分からない方もいらっしゃるでしょう。
そこで、解決困難な場合は、各事業所には苦情受付担当者がおり、利用者の立場を考えて、苦情を解決します。
また、利用者から直接、福祉サービス運営適正化委員会へ申出をすることもできます。
③高齢者の住む家の改造、住宅の貸借、日常生活における消費契約、住民票の届出等の行政手続の手助け
現代の日常生活には、さまざまな契約がつきものです。
マンションやアパートなどの賃貸契約や携帯を購入するときの契約、ネットショッピングなどの売買契約が挙げられます。
契約には契約書がつきものですが、年齢を重ねるにつれて契約書面の内容がうまく頭に入らなくなることがあります。
そのため、利用者が悪質な業者と契約を交わさないように、サポートを行うのです。
また、悪質な業者と契約を交わしてしまった場合のクーリングオフや契約解除の手伝いも行います。
他方で、引っ越しなどによって転出・転入などの届け出をする際、わからない場合には行政上の手続きのサポートも受けられます。
加えて、バリアフリーを目的とした住宅改造や住宅の賃借についても、情報提供やアドバイスを受けることが可能です。
⑶日常生活自立支援事業の利用方法
ここで、改めて、日常生活支援事業の流れを追ってみましょう。
- 相談
- 専門員の訪問
- 契約締結審査会
- 支援計画作成・利用契約
- 利用の開始
上記が、おおよその流れになりますが、イメージがつきにくいかと思いますので、もう少し掘り下げていきましょう。
1.相談
各市区町村にある社会福祉協議会に相談、申請をおこないます。
相談や申請は利用者本人でなくてもよく、家族など利用者の身近にいる方でも可能です。
2.専門員の訪問
相談を受けた後、専門員が利用者の自宅に訪問します。
具体的に、どんなことに困っているのか、利用者がどのような希望を持っているのかを確認する運びになります。
3.契約締結審査会
利用契約を希望する方に、契約を理解して締結できる能力の可否を審査します。
審査を行う人たちは、医師や弁護士、福祉関係、行政関係の方など5名で構成されるのが通常です。
サービスが始まってからも、サポートの定期確認や、サポート内容が現状と一致しているか、また判断能力の定期確認も行います。
4.支援計画作成・利用契約
2、3の結果をもとに、利用者に合った支援計画とそれに伴う利用契約を作成します。利用者がそれを理解し、了承のうえ契約を締結します。
5.利用の開始
利用者にあったサービスが開始されます。通常は、生活支援員が利用者宅を訪問し、金銭管理やその他利用契約に書かれたサービスを提供します。
そして専門員は、定期的に生活支援員から状況報告を受けます。状況報告を受ける中で、利用者の判断能力が低下したと思われる場合には、成年後見制度につなげる手続き等を行います。
⑷日常生活自立支援事業と成年後見制度の違い
ここまで日常生活自立支援事業をご説明させていただきましたが、「成年後見制度」と似ているなと感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、日常生活の支援といった点では、似ています。
しかし、このふたつの制度は明確に違う部分があるのです。
日常生活支援事業は、ある程度の判断能力があることを前提として、その名の通りあくまで「日常生活」をする上での、支援しかできません。
これに対して、成年後見制度は、法定代理人として包括的、あるいは一部の代理権が与えられて、日常生活にとらわれない財産管理、また身上監護に関する契約をすることができます。監督も社会福祉協議会ではなく家庭裁判所が行います。次章で詳しくお話しますが、日常生活支援事業を利用する上で、利用者の判断能力が十分でないケースでは、まず後見人等を選任してから手続きをおこなうこともあります。
2.認知症が中度以上の場合
認知症が中度に進むと、日常生活を送れるが重要な契約を行うには、能力不十分と判断されます。
日常生活支援事業も利用するには契約を伴いますから、契約締結審査会で、利用者の判断能力が契約を結ぶには不足であると判断された場合には、後見人等を立てる必要があります。
⑴成年後見制度を利用
成年後見制度とは、判断能力が欠けている場合、後見人等が本人の代わりに財産管理や契約の締結や取り消しを行うことです。
利用者の判断能力が欠けているが、介護施設にいれるほどではないと判断された場合には、成年後見制度と生活自立支援事業を併用することもできます。
ただし、生活自立支援事業の範囲ではサポートしきれないと判断された場合には、生活自立支援事業の利用を解除し、成年後見制度を利用することになります。
⑵親族が後見人になる
家庭裁判所に成年後見人の申立てをする際、本人が信頼している親族が、後見人等に選任された方が良いですよね。
実際に、最高裁判所でも成年後見人は家族から選任されるのが望ましいという発言もありました。
しかしながら、家庭裁判所は親族を含め、幅広く適任者を選択し、選任します。
⑶専門家が後見人になる
現在、成年後見制度の後見人等は親族以外から選任されることが多くなりました。
選任される専門家は、弁護士・司法書士・行政書士等です。
平成30年度、厚生労働省が公表した「成年後見人制度の現状」では、成年後見人等の73.8パーセントが専門家の方でした。
3.さいごに…
今回は、生活自立支援事業についてご説明をさせていただきました。
年齢を重ねると、老化により次第に判断能力が鈍ってしまうことは、仕方がないことです。
そこで家族がサポートをしますが、それぞれに事情があり、行き届かないことがあるかと思います。
そんな時は、家族内でどうにかしようとせず、お住まいの地域の社会福祉協議会に相談し、日常生活支援事業を利用することを選択肢の一つとしてお考えになるといいでしょう。
専門員の方に相談することによって、必要な介護情報を得られると思いますので、一度検討してみてはいかがでしょうか。
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