近距離別居の実父ですが、食が細くなり、食も偏っていてお肉や野菜はほとんど食べていません。どんどん痩せていますし、栄養不足が心配です。いい対策はありますか?

質問

質問者近距離別居の実父についての相談です。元々食事に興味がない人でしたが、母が亡くなって独り暮らしになってからはさらに食事量が減り、どんどん痩せて今では160センチで45キロ程度しかありません。食後に飲む薬があるので、朝と夜は冷凍の焼きおにぎりを電子レンジで温めて食べるようにしているのですが、昼は食べずに過ごしているようです。食も偏っていて、お肉や野菜などはほとんど食べていません。家が近いので食事を作って持っていくこともあるのですが、結局食べずに腐らせてしまっています。

栄養失調になるのではないかと心配ですし、最近では筋肉も落ちてきたように思えます。何かいい対策はありますか? 

専門家高齢になると食が細くなりがちなため、栄養不足やカロリー不足を心配するご家族は多いものです。160センチで45キロですと確かに痩せているので心配でしょう。健康な体を維持するための栄養素が慢性的に足りない状態を低栄養といいます。

75歳以上の高齢者に必要なカロリーは、女性で1,400~1,650キロカロリー、男性では、1,800~2,100キロカロリーだと言われています。カロリーだけではなく、筋肉の元になるたんぱく質など、できるだけ栄養バランスの良い食事で、低栄養を防ぎたいものです。

この記事では、低栄養の原因や起こりえるリスクや対策についてまとめています。ぜひ、現在や今後の参考にしてください。

 

低栄養

 

低栄養について知ろう

まずは、高齢者に起こりがちな低栄養の基礎知識についてみていきましょう。

低栄養とは

低栄養とは、健康な体を維持するための栄養素が慢性的に足りない状態のことです。75歳以上になると、低栄養状態になるリスクが増加するといわれています。

高齢者によくみられるのは、エネルギーとたんぱく質が食事から十分に取れていないタイプの低栄養です。たんぱく質には、内臓や筋肉、骨、皮膚など体をつくり、臓器を正常に機能させる働きがあります。また、血液中のたんぱく質(特にアルブミン)が低下すると、むくみを引き起こし、免疫力も下がります。

低栄養状態になると、体重が減少する、筋肉が減って転倒しやすくなる、骨がもろくなって骨折しやすくなる、免疫力が低下して感染症にかかりやすく治りにくくなる、褥瘡が治りにくくなる、といったことがみられるようになります。また、疲れやすくなることで活動量も減り、さらに食欲も低下して低栄養が進んでしまう危険性があります。

低栄養かどうかを判断する目安

低栄養かどうかを判断する3つの基準を紹介します。あくまでも目安となるものですので、気になる項目があればかかりつけ医などにご相談ください。

① 1ヵ月から6ヵ月以内に、体重減少率が3%を超えている人は注意が必要
※体重減少率の計算方法:(通常の体重-現在の体重)÷通常の体重×100

例えば、通常の体重が55キロの人が、3ヵ月で50キロになった場合、
(55-50)÷55×100
で、体重減少率は約9%となります。

②体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数のBMI(ボディマス指数)が、20以下の人は低栄養のリスクが高まる

※BMIの計算方法:体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

計算をする際には、高齢者は若い時よりも身長が縮んでいることが多いことを忘れないようにしましょう。また、BMIが18.5を下回ると、低体重となります。質問者さんのお父様は160センチで45キロなので、約17.6となるため低体重であり、低栄養状態だと考えられます。

③血液中の血清アルブミン値が3.5g/dlより低いと低栄養の疑い

血清アルブミン値は、血液検査でわかる数値です。低栄養以外の原因でも低下するため、あくまでも目安の数値となります。

低栄養の原因

高齢者が低栄養になる原因は様々です。食事量が減る原因としては、噛む機能や飲みこむ機能の低下、胃や腸の消化吸収機能の低下、薬の副作用、味覚の低下、偏食、生活環境などが考えられます。認知症などの病気や体調不良、ストレス、孤独感などが、食欲不振や食事への無関心を引き起こしている場合もあります。

低栄養の予防・改善方法

続いて、低栄養を予防・改善するための方法をみていきましょう。

栄養補助食品を利用する

食事の量が減っている場合には、市販の栄養補助食品の利用も考えましょう。たんぱく質や微量栄養素、エネルギーを強化した飲料やゼリー状の製品は、食欲のないときでも手軽に摂取できます。

様々な味や形態のものがあり、ドラッグストアやインターネットショップで購入が可能です。必要な栄養が含まれているもの、本人の好みや状態に合ったものを選ぶと良いでしょう。

食事の形態の確認を

噛んだり飲みこんだりするのが難しくなっていることが、食事の量が減少した原因かもしれません。食事に時間がかかったり、食事中にむせたりといった症状が出ている場合には、食事の形態が合っていないのかもしれません。柔らかくしたり、とろみをつけたりして飲みこみやすくするなど、本人に合った食事の形態にする必要があります。詳しくは、かかりつけ医や訪問看護師、言語聴覚士などにご相談ください。また、しっかりと噛めているかどうかの確認も重要です。

栄養指導を受けましょう

高齢になると同じものばかり食べてしまったり、偏食が強くなったりすることがあります。全体のエネルギー量の不足、特にたんぱく質などの足りない栄養素を補えるように、食事の内容をチェックしましょう。

質問者さんは介護認定を受けていないということですが、地域包括支援センターによっては、介護予防のための栄養指導に力を入れていますので、要介護認定の申請についても含めて、一度相談してみると良いでしょう。また、介護保険サービスには、居宅療養管理指導により管理栄養士から指導を受けられるものがあります。栄養補助食品の提案、調理指導、食事内容や量の指導を受けられるサービスです。詳しくは市町村の介護保険関連窓口や地域包括支援センターにご相談ください。

食欲がない時の工夫を考えておく

食欲がなく、食べようとしても食べられないときもあります。そのようなときには、好きなものを食べたり、食事の回数を増やして少しずつ摂取したりすることも一つの方法です。

また、間食(おやつ)で不足している食品群のものを摂取すると、効果的に栄養を補えます。例えば、乳製品が不足している場合はヨーグルト、水分不足の場合は果物などです。ゼリーやプリン、ムース、アイスクリームなどは口当たりがよいので、食欲がないときも食べやすいですね。

主治医に相談をする

栄養については、なかなか個人で気を付けるのは難しいものです。また、病気や体調不良、薬の副作用により、食欲が低下している場合があります。食事の量が減ったと気づいたら、主治医や医療機関に相談することも大切です。

食欲を出すためにしたいこと

食欲が出ないという方に試して欲しいことを紹介します。

日中に適度な運動を

食欲増進のために、毎日、適度な運動や活動を行えるように生活を組み立てましょう。外出をしたり、適度に運動をしたりすることで食事の摂取量が増えるだけではなく、筋肉がつくことも期待できます。

食欲を刺激しましょう

盛り付けを工夫し、見た目で食欲を刺激することも大切です。唾液の少ない高齢者には水分の多い方が味を感じられます。高齢になると塩分は感じにくくなるので、酸味で味にアクセントをつける、出汁を効かせるなどの工夫をするといいでしょう。

質問者さんのように同居していない場合や毎日の食事の準備が大変な場合には、高齢者向けの食事宅配サービスを利用すると良いでしょう。栄養バランスや盛り付け、食事の形態に配慮した、高齢者向けの食事を宅配してもらえます。

人と一緒に食べる機会を増やしましょう

一人分の食事を作るのは面倒、一人で食べてもつまらないといった理由で食事量が減っている場合は、趣味のサークルに入ったり、デイサービスを利用したりして、誰かと一緒に食べる機会を増やすようにするといいでしょう。高齢男性向けの料理教室などもあります。

まとめ

高齢になると様々な原因で食事の量が低下したり、食事が偏ったりして低栄養状態になってしまうことがあります。低栄養になると免疫力の低下や筋力の低下などを引き起こし、さらに活動量が減って食欲がなくなる…という悪循環に陥ってしまいがちです。食事の形態や食事の内容、生活を見直して、早めに対策を取るようにしましょう。

まずは市町村の介護保険関連窓口や地域包括支援センターにご相談ください。また、原因を知るために、主治医に相談してみることも大切です。

※この記事は2022年1月の情報を元に作成しています。

 

 

医師:谷山由華
監修者:谷山 由華(たにやま ゆか)

医師:谷山 由華(たにやま ゆか)

【経歴】
・防衛医科大学校医学部医学科卒業
・2000年から2017年まで航空自衛隊医官として勤務
・2017年から2019年まで内科クリニック勤務
・2019年から内科クリニックに非常勤として勤務、AGA専門クリニック常勤

内科クリニックでは訪問診療を担当。内科全般、老年医療、在宅医療に携わっている

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