78歳の義父が認知症だと診断されました。認知症と診断された後はどれくらい長生きするものなのでしょうか?

10:00質問

質問者最近、2世帯住宅で同居している78歳の義父が、認知症の診断を受けました。今のところ同じ話を繰り返したり、時間を間違えたりしていますが、義母とヘルパーさんの手を借りて生活できています。

まだ義母も若いので私たちの手を借りるつもりはないとのことですが、これから義母も義父も年を取っていきます。私たち夫婦はまだどちらも働いているのですが、介護期間が長くなるようであれば、これからについて心構えをしておく必要があると思っています。認知症の方は診断後、どれくらい長生きするのかについて教えてください。

 

 

専門家認知症の方の平均余命についての質問ですね。認知症にはいくつかの原因疾患があり、それぞれで進行や平均余命が異なります。また、発症年齢や個人差によっても大きく異なります。

この記事では、3大認知症であるアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症の進行と診断後の平均余命を中心に説明していきます。ぜひ、現在や今後の生活の参考にしてください。

 

78歳の義父が認知症だと診断されました。認知症と診断された後はどれくらい長生きするものなのでしょうか?

 

認知症ごとの症状の進行について知っておこう

認知症の種類によって、初期症状や進行の仕方は異なります。3大認知症と呼ばれるアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症の進行の特徴をみていきましょう。

3大認知症の進行

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症では、次のような経過を緩やかにたどります。

初期のアルツハイマー型認知症では、記憶力や集中力の問題が現れてきます。言葉や名前が出てこない、新しい知り合いの名前を覚えられない、物を置き忘れて無くしてしまう、計画を立てて行動できない、といった症状がみられるようになります。

症状が進むにつれて前日、数時間前、数分前のことが分からなくなり、徐々に思い出せる時間軸が短くなっていきます。数分前に聞いた話が思い出せなくなると、同じことを何度も聞くという状態がみられます。また、時間が分からなくなる見当識障害が起こります。

中等度になると、見当識障害が進行し、場所や日付、曜日、季節が分からなくなります。問診で、現住所、電話番号、卒業した学校名といった情報が思い出せないこともあるでしょう。トイレや食事などは自立しています。

やや重度になると、記憶障害が進行し、最近の経験や出来事、周囲の環境を認識することが難しくなります。何年も前に退職した仕事場に行こうとしたり、昔住んでいた家に戻ろうとしたりします。人や環境などによっては、徘徊、「盗まれた」などの妄想、昼夜逆転、失禁などの症状が現れることもあります。性格が大きく変化したと感じることもあるでしょう。また、適切な着衣やトイレの使用に、手助けが必要になります。

重度になると、食事やトイレなど、ほぼ全ての日常的行為に介助が必要となります。知っている人を見ても誰かわからなくなり、言葉が理解できなくなり発語もほとんどできなくなります。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症では、具合の良い時と悪い時を繰り返しながら、アルツハイマー型認知症よりも速いスピードで進行していきます。

前兆として現れる症状には、抑うつ症状や睡眠中の異常行動があります。そして初期には、実行機能障害や判断力の低下などの認知機能障害が現れ、パーキンソン症状、人や小動物の幻視、立ちくらみや便秘などの自律神経症状も見られるようになります。記憶障害については軽度であることが多く、簡単な検査では記憶力は正常範囲内と判断されることもあります。

中期になってくると、認知機能障害が進行して、もの忘れや時間や場所がわからなくなる見当識障害が目立ってきます。幻視やそれによる妄想が目立つようになる、パーキンソン症状による歩行障害がひどくなり転倒しやすくなるなどの症状が出てきます。

末期では、パーキンソン症状が進行して、歩行ができなくなる、飲みこみが困難になる、飲食物などが気管に入ることで起る誤嚥性肺炎を繰り返しやすくなるなどの症状や、ふらつきや立ちくらみなどの自律神経症状の進行により、介護にかかる時間が増えていきます。また認知機能の低下によって他者とのコミュニケーションが難しくなります。

脳血管性認知症

脳梗塞や脳出血といった脳血管障害に起因して起こる脳血管性認知症では、アルツハイマー型認知症の症状と現れ方が似ています。しかし、初期には本人が認知症であることを自覚していることが多いです。また、手足の麻痺などの身体的症状がみられます。

同じことでもできたりできなかったりする「まだら認知症」の症状や、感情のコントロールができなくなる症状が特徴です。徐々に症状が進行するアルツハイマー型認知症とは異なり、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら進行していきます。

認知症の平均余命は?

続いて、認知症の平均余命についてみていきましょう。

3大認知症の10年生存率

認知症診断後の平均余命は研究によっても異なります。ここでは日本で行われた久山町研究を例に10年生存率を見ていきましょう。久山町研究とは、50年間以上にわたるもので、人口約8,400人の福岡県久山町の住民を対象とした、認知症を含めた生活習慣病の疫学調査です。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症の診断からの10年生存率は18.9%。アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症が併発した混合型では、10.4%でした。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症の診断からの10年生存率は2.2%でした。

脳血管性認知症

脳血管性認知症の診断からの10年生存率は13.2%でした。

その他の平均余命の調査

上記の久山町研究の他に、認知症診断後の平均余命を調べる研究は複数あります。アルツハイマー病のケア、サポート、研究を行う国際ボランティア組織であるAlzheimer's Associationは、アルツハイマー病の方の平均余命を発症から8年としています。また、認知症患者の診断から死亡までの期間は平均4.5年とするイギリスの調査もあれば、アルツハイマー型認知症と診断後の生存期間を男性で4.2年、女性で5.7年とするアメリカの調査もあります。

平均余命には発症年齢も影響を与えます。65歳時に認知症と診断された人の平均余命は8.3年、90歳時に診断された人では3.4年との調査結果があります。また、個人差によっても大きく異なるので、あくまでも参考としてください。

まとめ

家族が認知症だと診断されると、これからの生活に不安を感じるのは当然のことです。大切なのは、初期の段階から本人も含めて家族で認知症が進んだ後に、どんな介護を受けたいのかについてしっかりと話し合っておくこと。自宅で介護を受けたいのか、施設に入りたいのか、キーパーソンを誰にしたいのか、資金はどれくらいあるのかなど、早いうちから介護の方向性をつけておくことが、本人のためだけではなく、家族のためにもなります。

 

 

医師:谷山由華
監修者:谷山 由華(たにやま ゆか)

医師:谷山 由華(たにやま ゆか)

【経歴】
・防衛医科大学校医学部医学科卒業
・2000年から2017年まで航空自衛隊医官として勤務
・2017年から2019年まで内科クリニック勤務
・2019年から内科クリニックに非常勤として勤務、AGA専門クリニック常勤

内科クリニックでは訪問診療を担当。内科全般、老年医療、在宅医療に携わっている