実家で認知症がある要介護4の母と2人で暮らしています。平日は、朝一緒に起きて朝ご飯を食べ、デイに送り出してから仕事に行っています。今度私が2ヵ月ほど入院することになり、ショートステイを利用しようと思っています。しかし、30日までしか連続して使用できないとのことで、どうしたらいいかと悩んでいます。
夕方にデイサービスから帰ってきてからの1、2時間はひとりで過ごせていますが、一晩過ごしたり、起床したりするのは無理そうです。
ショートステイを31日以上利用したい場合、どのような方法がありますか? 教えてください。
介護中に2ヵ月間入院されるとのこと。心配ですよね。短期入所生活介護(ショートステイ)は、原則として30日までしか連続して利用できません。
ただし、31日以上の利用が絶対にできないわけではありません。連続して31日以上の利用が必要な場合、市区町村に申請をして認められれば、いわゆる「ロングショートステイ」の利用が可能です。もし認められなかった場合には、①1度家に帰る②超えた分は自費で利用する…の2つの選択肢があります。
ここでは、ロングショートステイの内容や費用、注意点、認められなかった場合の方法などを中心に紹介します。ぜひ参考にしてください。
短期入所生活介護(ショートステイ)が利用できる日数
まずは、短期入所生活介護(ショートステイ)を利用できる日数について確認していきましょう。ショートステイの利用日数には2つの決まりがあります。
連続して30日まで
ショートステイを利用できるのは、連続して30日間までです。31日以降の利用には、原則として介護保険は適用されません。
認定期間の半分の日数まで
介護認定期間の半数までという規定もあります。介護認定期間は、新しく要介護認定を受けた方で原則6ヵ月、更新の方で原則12ヵ月(更新認定の二次判定で前回と同じ結果が出た方は、最長48ヵ月)です。
支給限度額にも注意
また、介護保険には、要介護度ごとに支給限度額があり、その金額内に収まるように利用します。30日以内であっても、支給限度額内に収まらなかった場合には、超えた分が全額自己負担となります。
他のサービスの利用状況にもよりますが、自己負担額が出ないように30日間ショートステイを利用するには、要介護5以上である必要があります。質問者さんは要介護4なので、数日分は自己負担となってしまいます。
ショートステイを長期利用できない理由
ショートステイは、介護者の出張や冠婚葬祭、リフレッシュが必要な時に短期的な利用を目的としたサービスです。特別養護老人ホームやグループホームなどの施設入居とは異なり、生活の拠点になることを目的とはしていないため、利用日数が制限されています。
事業者にもよりますが、ショートステイ中のリハビリやリクリエーションなどはデイサービスのように充実していません。長期的なショートステイの利用により、筋力の低下や認知症の進行といったリスクが高くなることがあります。
短期入所生活介護(ショートステイ)を30日以上利用する3つの方法
それでは、質問者さんのように事情があって、30日を超えてショートステイを利用したい場合には、どうしたらいいのでしょうか。
申請をしてロングショートステイを利用する
質問者さんのように、やむを得ない理由がある場合には、自治体に申請をすれば31日以上の利用が可能です。
やむを得ない理由としては、介護者の入院、自宅にエアコンがなく熱中症危険性がある…などがあります。
ただし、どの程度申請が認められるかは、自治体によって差があるようです。詳しくはケアマネジャーにご相談ください。
ショートステイ以外で2泊する
上記の申請が通らなかった場合、31日目に別の施設に移動する、31日目だけ自費扱いにする…といった方法をとっても、ショートステイの日数はリセットされません。30日まで利用したあとは、ショートステイ施設以外で丸1日を過ごす必要があります。つまり、ショートステイ施設以外で2泊する必要があるということです。
もし親戚の方にお願いができるようであれば、その期間だけ面倒を見てもらうと良いでしょう。ただし、ショートステイの送迎ができるのは利用者の自宅だけです。親戚の家に送迎してもらうことはできません。
超えた分を自費で利用する
ショートステイ以外での2泊が難しいようであれば、31日以降を自費で利用する必要があります。
それぞれの費用について
ショートステイのロング利用が認められた場合の費用についてみていきましょう。
介護保険でカバーされる基本料金(1日ごと)
短期入所生活介護(ショートステイ)でかかる、1日ごとの基本料金は、以下の金額となります。
●要介護1~5
単独型 | 短期入所生活介護費 従来型個室 多床室 |
要介護1 | 638円 |
要介護2 | 707円 | ||
要介護3 | 778円 | ||
要介護4 | 847円 | ||
要介護5 | 916円 | ||
ユニット型短期入所生活介護費 ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 |
要介護1 | 738円 | |
要介護2 | 806円 | ||
要介護3 | 881円 | ||
要介護4 | 949円 | ||
要介護5 | 1,017円 | ||
併設型 | 短期入所生活介護 従来型個室 多床室 |
要介護1 | 596円 |
要介護2 | 665円 | ||
要介護3 | 737円 | ||
要介護4 | 806円 | ||
要介護5 | 874円 | ||
ユニット型短期入所生活介護費 ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 |
要介護1 | 696円 | |
要介護2 |
764円 |
||
要介護3 | 838円 | ||
要介護4 | 908円 | ||
要介護5 | 976円 |
●要支援1~2
単独型 | 短期入所生活介護費 従来型個室 多床室 |
要支援1 | 474円 |
要支援2 | 589円 | ||
ユニット型短期入所生活介護費 ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 |
要支援1 | 555円 | |
要支援2 | 674円 | ||
併設型 | 短期入所生活介護 従来型個室 多床室 |
要支援1 | 446円 |
要支援2 | 555円 | ||
ユニット型短期入所生活介護費 ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 |
要支援1 | 523円 | |
要支援2 | 649円 |
※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。
※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。サービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。
自己負担で利用される場合には、上記の金額×10が1日当たりに掛かります。
その他の料金(1日ごと)
上記以外にも、部屋代と食費が1日ごとにかかります。介護保険施設をショートステイ利用した場合の目安の料金を紹介します。
- 食費:1,445円
- 従来型個室(特養など):1,171円
- 従来型個室(老健、療養など):1,668円
- 多床室(特養など):855円
- 多床室(老健、療養など):377円
- ユニット型個室:2,006円
- ユニット型個室的多床室:1,668円
これらの費用には、利用者の所得に応じた負担軽減制度が利用できます。詳しくは担当のケアマネジャーにご確認ください。その他、夜勤職員配置加算などの介護保険の各種加算、おむつ代や洗濯代などの日常生活費(実費相当額)がかかります。
ロングショートステイの注意点
ショートステイを長期利用する際に、気を付ける点をみていきましょう。
福祉用具について
短期間のショートステイであれば、レンタル中の福祉用具をそのまま利用することができます。ただし、15日または30日以上利用する場合には、一度返却する必要があります。何日以上だと返却が必要なのかは、自治体によって異なるのでケアマネジャーにご確認ください。
生活保護について
生活保護を受けている方でも、ショートステイを利用することが可能です。ただし、年金を受給している方の場合、一定期間以上利用することでショートステイでかかる費用よりも年金額の方が高くなり、生活保護から外されてしまうことがあるので注意しましょう。
まとめ
ショートステイは生活の拠点となる施設ではないため、原則として連続30日まで、そして認定期間の半分までしか利用できません。しかし、申請することで31日以上のロングショートステイの利用が認められることがあります。ただし、要介護度ごとに支給限度額が決まっており、その金額を超えた場合には、超えた分が全額自己負担となるので注意しましょう。
ロングショートステイの申請がどの程度認められるかは、自治体によって差があります。詳しくはケアマネジャーにご確認ください。ショートステイのロング利用が認められた場合でも、部屋代や食事代を含めて、費用は30日間で10~15万円ほどになります。特定入所者介護サービス費などの負担軽減策を利用するようにしましょう。
一定期間以上ショートステイを利用する場合には、レンタル中の福祉用具を返却する必要があります。また、年金を受給している方は生活保護の対象から外れてしまうことがあるので、注意しましょう。
質問者さんのように介護中に、介護者に入院が必要になってしまうと、何かと不安も大きいことでしょう。ケアマネジャーと相談をしながら、安心して治療に専念できる体制が整うと良いですね。
※この記事は2021年11月時点の情報で作成しています。
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【経歴】
1982年生まれ。
医療福祉系学校を卒業後、約11年医療ソーシャルワーカーとして医療機関に勤務。
その後、一生を通じた支援をしたいと思い、介護支援専門員(ケアマネジャー)へ転身。
2017年1月 株式会社HOPE 設立
2017年3月 ほーぷ相談支援センター川越 開設
代表取締役と共に、介護支援専門員(ケアマネジャー)として、埼玉県川越市で高齢者の相談支援を行っている。
他に、医療機関で、退院支援に関するアドバイザーと職員の指導・教育にあたっている。
医療・介護に関する新規事業・コンテンツ開発のミーティングパートナーとしても活動。大学院卒(経営研究科)MBA取得している。
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