移動用リフトについて教えてください。自宅で義父を介護していますが、日中はほかに人手がなくベッドからの移動の介助が辛くなってきました。介護する側が腰を痛めている状況です。移動を楽にするためのリフトがあることを知りましたが、価格や家の改装の必要性など、わからないことばかりです。できれば大がかりなことをせず、負担を抑えて導入したいのですが可能でしょうか?
今はデイサービスでお願いしている入浴介助も、将来的には訪問看護での入浴に切り替える必要があるかもしれません。浴室で使えるリフトについても知っておきたいです。どうぞよろしくお願いいたします。
腰痛はつらいですよね。負担を軽減できるリフトはとても便利ですよ。
リフトにもさまざまな種類がありますが、据置式リフトの場合には家の改装を行わなくても設置可能です。 据置式リフトは、ベッド上にやぐらを組み、身体を吊り上げて、車椅子やポータブルトイレへの移乗をサポートします。 浴室で使えるリフトも、床や壁にネジを使用せずに利用できるものもありますのでご心配はいりません。
要介護2~5の方がレンタルの対象となっていますが、対象に合致していない軽度者であっても、医師の判断や市区町村が必要と認めた場合にはレンタル可能になる場合があります。 移動用リフト本体はレンタル対象ですが、吊り具部分のみ購入対象になります。 メーカーにより多少の値段の差はありますが、ベッド据置式移動用リフトは1か月レンタルで約2万円、自己負担1割の方の場合1か月約2,000円程度になると考えていただければよろしいかと思います。
介護に関してはさまざまなお悩みや疑問などがあるかと思います。そのような時はひとりで抱えず、ケアマネージャーに聞いていただくことをおすすめいたします。
移動用リフトとは
介護を始めたばかりの人にとって、リフトはなかなかイメージがもちにくいものです。まずは、介護に使われる移動用リフトの基本的な知識から見ていきましょう。
介護シーンの移動用リフト
自力での移動が困難な場合に、身体を吊り上げて、ベッドから車椅子への移乗や、トイレまでの移動をサポートします。また浴室の中で入浴を介助する際にも利用します。
介護用の移動用リフトでは、利用者の身体への負担を最小限に抑える設計となっており、介助者が簡単に操作できる工夫がなされています。
また使う場所や利用者の身体の状態、シーンに合わせたさまざまなタイプが提供されています。
厚生労働省では、介護現場における腰痛防止策として『人を抱え上げる作業は、原則、人力では行わせない。福祉用具を活用する。』と、提唱しています。国の指針という観点からも、移動用リフトの使用が推奨されます。
移動用リフトを使うメリット
移動用リフトを活用することで、身体の不自由な利用者に無理な姿勢をさせずに、移動をすることができます。移動の際に無理な姿勢で思わぬところに力がかかり、関節などを痛めては大変です。
また人力だけで移動をさせるためには、介助者に大きな負担がかかります。
自分ではほとんど力を入れることができない利用者であっても、移動用リフトの適切な選択で双方が苦痛を感じない介護を実現できます。
移動用リフトはこんな時に便利
介護度の高い利用者であっても、生活の中での移動は意外に多いものです。姿勢を維持できない人の移動は、非常な労力を要します。
移動用リフトであれば、身体を包み込むように支えながら優しく移動ができます。
介護をする人がひとりしかいない場合や、女性であっても、リフトのサポートがあれば移動が容易です。
移動用リフトの種類
移動用リフトには必要な機能や、形状によりさまざまな種類があります。設置場所の状況と合わせて確認していきましょう。
いろいろな移動用リフト
介護シーンでの移動用リフトには、主に3つの種類があります。
床走行式リフト
本体についたキャスターにより、利用者を吊り上げたまま走行できるタイプです。支柱とアーム、吊り具がかけられるハンガー部分で構成され、油圧または電動式により昇降します。
車椅子からの吊り上げや、高さの低いベッドから直接吊り上げできるタイプもあります。
固定式リフト
固定リフトは固定する場所によって、さまざまな形態があります。フレームを設置したり天井に固定したりすることで、安定させて駆動範囲を確保します。
ベッド下にフレームをしいて、ベッドの重さを利用して固定するタイプもあります。 固定方法によってリフトの動き方が変わってくるため、部屋の広さや必要な移動方向でタイプを選択していきます。
最近の動力の主流は電動によるものですが、水力圧利用や人の手で巻き上げる方式もあります。
据置式リフト
据置式では、ベッドの上にやぐらを組むことで、住宅への大がかりな工事をせずにリフトを移動させる方式です。やぐらを四角形に組むことによって、縦横への移動も可能となります。
やぐらを設置するスペースが必要となるため、部屋のレイアウトを考える必要があります。
自宅を改装する必要はあるの?
移動用リフトを導入したいと考えても、自宅の改装が必要になるのではと悩む場合もあります。
先に見てきたように、移動用リフトにもいろいろなタイプがあります。据置式リフトであれば、家そのものへの影響を与えず、寝室のベッドの上にやぐらを組むだけの作業となります。
工事をする必要がないため、導入までの作業時間も短くてすみます。
ただ、やぐらを置くスペースや駆動部分に『デッドスペース』が生じるなどのデメリットもあります。部屋の広さや移動の状態を見ながら検討をしていくことが大切です。
お風呂で使える移動用リフト
自宅での介護では入浴は大変な作業です。浴室にもリフトが設置できれば、介護をする側、される側ともに、安全にゆっくりとお風呂を楽しめるようになります。
浴室内にもやぐらを組むなどして、床や壁にネジを使用せずに利用できるタイプがあります。水回りの工事となると金銭的な負担も大きくなりますが、据置タイプであれば設置後その日のうちに使うことができます。
移動用リフトと介護保険
移動用リフトを導入する際の、介護保険との関係について確認します。
介護保険が適用されるのは?
介護保険でレンタルが適用できるのは、要介護2~5度の方が対象となります。ただし、医師の判断や、管轄する市区町村で必要と認める場合にはレンタルが可能となる場合もあります。
介護保険が適用となる移動用リフトは、床走行式、固定式、据置式のカテゴリに入るものです。身体を吊り上げることができる、または体重を支えることができるもので、利用者の移動の補助となる機能を有する必要があります。
介護保険を利用して移動用レンタルを行う場合には、ケアマネージャーによる居宅介護サービス計画の作成が必要です。それ以外の方法では介護保険の適用外となるため、注意しなければなりません。
移動用リフトはすべてレンタルできる?
移動用リフト本体は介護保険によるレンタルの対象となりますが、身体を直接包んで支える吊り具は購入対象となります。
介護用品の中でも、不特定多数が利用することに抵抗をもたれるものについては、「特定福祉用具販売」の対象となります。
移動用リフトの吊り具購入については、利用者がいったん代金を支払い、介護保険の負担割合に従って後から払い戻しが行われる形となります。
介護保険内で購入できる金額は1年間で10万円を限度としています。例えば利用負担割合が1割の場合は、最大9万円までが給付の対象となりますが、それ以上は自己負担となるため注意しなければなりません。
レンタルの自己負担額は?
介護保険を利用すると、費用の1割(所得に応じて2割または3割)でレンタルが可能です。移動用リフト本体をレンタルした場合の金額の目安は、ベッド据置式では1か月レンタルで約2万円です。
介護保険の自己負担割合が1割であれば、1か月約2,000円の料金負担が発生します。
移動用リフトにも機能により、料金差があります。保険適用との関連を見ながら、必要に応じて機種を選ぶようにしていきましょう。
移動用リフトを導入する際の注意点
移動用リフト導入に際して、ポイントとなる注意点を見ておきましょう
利用者の状態に合う器具の選択
移動用リフトの駆動に関しては、現在は電動や油圧など機械の力を使うことが多いため、それほどの違いがなくなっています。
問題となるのが、利用者に直接触れる吊り具部分の形状です。 吊り具には、足の入れ口が左右に分かれている脚分離型と、ぶらんこのように足をそろえるシート型があります。
脚分離型は片足ずつ分けて移動できるので、車椅子からの移乗が容易です。トイレや入浴などの際には便利ですが、比較的障害が軽くないと身体を支えられません。
シート型はすっぽりと包み込む形になるため、安定しますが、ベッドなどに横たわった状態からでないと使うのが難しいというデメリットがあります。
また、それぞれのタイプには首まで支えられるハイバック型と、自力で頭を上げられる方向きのローバック型があります。
吊り具部分の形状を理解して、利用者の状態に適応するものを選ぶことが大切です。
利用する場所に合わせた器具の選択
移動用リフトの種類によっては、設置場所となる床の補強が必要となる場合もあります。 また介助者がそばに立ち、操作をするための十分なスペースを見ておかなければなりません。 機能が多彩になればなるほど、操作ボタンも複雑になります。操作する側の能力も見ながら、必要に応じた機能の機種を選択する必要があります。
階段昇降機は介護保険対象外
階段昇降機は業者やメーカーによってはリフトのカテゴリに含まれていますが、介護保険の適用対象外となるものもあります。
先にもあったように、「移動用リフト」として扱うためには規定の要件を満たしていることが求められます。
介護保険の対象外となった場合でも、自治体によっては在宅介護支援のための補助金制度を設けているところがあります。
必要な移動用リフトが保険対象となっていることに加えて、活用できる補助金制度もチェックしておくことをおすすめします。
移動用リフトの活用で負担のない介護生活を
社会が高齢化に進む中で、深刻化しているのが介護する側の負担です。自宅で介護している人には女性が多く、年齢層もシニア世代以上となっています。いくら高齢者とはいえ、身体の不自由なひとりの大人を移動させるのには、とても大きな負担がかかります。
厚生労働省でも介護現場では、支援器具の使用を推奨しています。移動用リフトは動力を使い、介護する側もされる側にも、安全で快適な移動をサポートします。
改装をしなくても導入ができる機種も多いので、最小限の負担に抑えることも可能です。少しでも移動に不便を感じているのであれば、まずはケアマネージャーなどに相談をし、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

理学療法士。臨床経験は7年。
急性期から慢性期、スポーツ分野など幅広い分野を経験。医療・介護・スポーツなど幅広い分野のリハビリに携わり、老若男女に正しい運動で、健康的な生活を送るサポートしている。