認知症の母の元に来た買取業者が怪しいです。詐欺でしょうか?対策方法も知りたいです。

質問

質問者認知症があるものの、介護保険を利用してひとり暮らしをしている母がいます。先日ヘルパーさんがサービスのために訪問すると、知らない男性が室内におり、祖母の形見を含めた貴金属数点を、2万円で買い取ろうとしていたそうです。ちゃんとした鑑定であればそんな価格が付くわけがありません。ヘルパーさんが事業所に報告をしていると、男性は「また来ます」と言って帰っていったとのこと。これも詐欺の一種なのでしょうか?

以前も勝手に浄水器の契約をしていたことがあり、クーリング・オフをしたことがあります。大切な品物を安い金額で買われてしまったら、もう取り戻せないのではないかと心配しています。

その日は何の被害もありませんでしたが、次はどうなるかわかりません。どんな対策をしたらいいでしょうか。教えてください。

 

 

専門家恐らく家にいたのは訪問や出張買取の業者の方だったのでしょう。電話でアポイントを取って訪問し、不用品を買い取る業者の方です。非常に便利なサービスなのですが、近年では悪質な業者によるトラブルが急増しています。この記事では、そんな訪問・出張買取のトラブル、そしてあわせて知っておきたい最新詐欺、対策についてご紹介します。現在や今後の生活の参考にしてください。

高齢者詐欺 手口

知っておこう!トラブルの増えている訪問・出張買取とは

トラブルの増えている訪問・出張買取

まずは、トラブルが増えている訪問・出張買取とはどのようなものなのかをみていきましょう。

訪問・出張買取とは

訪問・出張買取とは、自宅を訪れて不用品を回収または買い取りしてくれる業者のサービスのことです。事前に電話やWEB、FAXなどで利用者本人が申し込み、業者が決められた日時に自宅を訪れます。宅配や店頭で買い取りを受け付けている業者もあります。

業者によって着物、ブランド品、家具、家電、切手などのコレクション物など、買い取ってくれる品目は異なります。家具や家電などは、買取基準に満たなければ回収の費用がかかってしまうことがあるので注意が必要です。基本的に出張費や搬出費用はかかりませんが、搬出時にクレーンが必要な場合など、別途費用がかかることもあります。事前に確認しておきましょう。

不用品を少しでもお金に換えたい方、まだ使えるものを捨ててしまうことに抵抗がある方、近くに買い取りをしてくれるお店がない方、家から持ち出せないものを処分したい方に、訪問・出張買取サービスは選ばれています。

訪問・出張買取で禁止されていること

このように、訪問・出張買取サービスは非常に便利なものなのですが、「自宅の不用品を処分したい」という気持ちを利用した悪質な事業者には注意が必要です。

訪問・出張買取で禁止されている行為には、次のようなものがあります。

    • いきなりの訪問 買取事業者が突然訪問し、不用品の買い取りを勧誘することは禁止されています。
    • アポイントメントとは異なる品目の売却を迫る 古着の買い取りのために訪問した業者が、「これではガソリン代にもならない。貴金属はないか」と、予定にはない品目の売却を求めることは禁止されています。
    • 「売らない」と意思表示した後の再勧誘の禁止 「売らない」と伝えた後にしつこく迫ること、「売るまで帰らない」と居座ることは禁止されています。

質問者さんのケースでは、再び電話や訪問があった際に「売らない」とはっきり意思表示するように伝えておきましょう。紙に書いておき、電話機の近くや玄関に貼っておくことをおすすめします。

交付義務のある書類を渡さないこと 買取業者には、事業者の連絡先、買い取りをした物品の種類や価格、クーリング・オフ制度について記載された書面の交付義務があります。

こんな訪問にも要注意!

「無料で(床下や屋根、浄水器などを)点検します」、「無料で排水溝の高圧洗浄をします」、「屋根の瓦がずれていて心配だ」などと突然訪問するケースには注意が必要です。

「地震が来たら大変」、「このままでは白アリやネズミが入ってくる」など、不安をあおって不要な契約を締結させことがあります。気を付けなくてはいけないのは、突然訪問してくる業者だけではありません。外装工事などを紹介するサイトに登録し、連絡が来た事業者が見積もりに来たその日のうちに、高額な契約を迫るケースもあります。契約は必ず、複数の業者に見積もってもらってからにしましょう。

「契約の効力はないから、とりあえず署名と捺印をして欲しい」としつこく勧誘するケースもあるようです。焦らずに頼りになる誰かに連絡をするようにしましょう。

知っておきたい最新詐欺の手口

最新詐欺の手口

続いて、知っておきたい最新詐欺の手口をみてみましょう。

従来の詐欺の手口

不特定多数の相手に電話をかけ、現金などをだまし取る手口を特殊詐欺と呼びます。

警察庁によると、令和2年度の認知件数は13,550件。前年に比べて2割近く減少しました。大都市圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、兵庫県、愛知県)の高齢者が被害を受ける割合が高く、被害の7割以上が大都市圏に集中しています。

特殊詐欺には、次のような手口があります。

オレオレ詐欺

オレオレ詐欺とは、詐欺師が息子や孫などになりすまして電話をかけ、事件や事故に対する示談金などとして現金やクレジットカードなどをだまし取る手口のことです。振り込め詐欺とも呼ばれています。被害者への最初の連絡手段は、約99%が電話とのこと。

預貯金詐欺

警察官や銀行員などを装って自宅を訪れ、「あなたの口座が犯罪に使われている」などの理由でキャッシュカードなどをだまし取り、手続きのためなどと称して暗証番号を聞き出す手口です。

キャッシュカードを封筒に入れさせ、その封筒を別の封筒とすり替えて、キャッシュカードを奪うこともあります。キャッシュカードを一瞬でも相手に渡さないようにしましょう。クレジットカードをだまし取ろうとすることもあります。

架空請求詐欺

実際には支払う必要のない代金や手数料などを、支払う義務があるように思い込ませてお金をだまし取る手口です。「〇〇が未納のため今すぐ入金してください」「老人ホームに優先入居する権利が手に入ります」「払わなければ裁判になります」など、さまざまな文言で被害者をだまします。最初の連絡は電子メールが約6割、電話が約3割だそうです。

アダルトサイト閲覧中に架空請求画面が表示され、支払う必要のない代金を請求されたり、Amazon、楽天、銀行など有名な名前を語ってメールを送りつけ、口座番号やクレジットカード番号、個人情報などを盗みとられたりします。

還付金詐欺

公的機関などの職員を名乗り、医療費や年金の還付金があると嘘をつく手口です。「払い戻しには期限があります。ATMで手続きができるので、今すぐ向かってください」などと説明し、電話をつなげたままATMまで誘導し、操作方法を指示してお金を送金させます。

知っておきたい! 最新の詐欺の手口

宅配便などで現金を送らせる手口

従来の詐欺で多かったのが、お金を預貯金口座に振り込ませる方法や自宅などに直接詐欺グループの一員がやってくる方法です。

近年では、現金を宅配便やレターパック、現金書留で送らせる「送付型詐欺」が増えています。警察庁は“「宅配便等で現金送れ」はすべて詐欺”と、注意を促しています。

また、コンビニなどでアマゾンギフト券などの電子マネーを購入させ、番号を教えるようにと言ってくる詐欺もあります。

時事ネタに関する詐欺

オリンピックや自然災害、新型コロナウィルスなどの時事ネタを持ち出して騙そうとする手口もあります。例えば、慈善団体の名を語って自然災害への寄付金をだまし取ったり、新型コロナウィルスのワクチン接種の予約金や一時金などの名目で、現金や通帳をだまし取ったりするケースなどです。

高齢者を詐欺などから守るには

高齢者を詐欺から守るには

高齢者を詐欺などの悪徳業者から守るために知っておきたいことをまとめます。

クーリング・オフについて知っておきましょう

クーリング・オフとは、訪問販売や電話勧誘による販売など、冷静に判断できないまま契約してしまったもの、仕組みを理解しないまま結んでしまった契約に対して、一定の期間であれば、無条件で契約の撤回や解除ができる制度です。

訪問販売や電話勧誘による販売では、契約日から8日以内にクーリング・オフをする通知を郵送します。期間内に業者が通知を受け取らなくても、期間内の消印が押されていればクーリング・オフをすることができます。訪問・出張買取でお金を受け取ってしまった後でも、品物を返してもらうことが可能です。

店舗で購入したもの、通信販売で購入したもの、現金で3000円未満のもの、消耗品を購入してすでに使用したものなど、クーリング・オフができないものもあります。

詳しくは、お近くの消費生活センターにご相談ください。固定電話や携帯電話から「188」を押すと消費者ホットラインにつながり、近くの消費生活センターや消費生活相談窓口を案内してくれます(通話料金がかかります)。

詐欺などの電話対策グッズを活用する

詐欺電話や悪質な業者の訪問アポイントメント電話から、高齢者を守るためのグッズを利用しましょう。例えば、電話をかけてきた相手に対して「この通話を録音します」というアナウンスが流れる詐欺対策機能がついた電話機があります。今持っている電話機に後付できるタイプのものもあります。

また、詐欺に注意するように警告するステッカーが販売されているので、電話機の近くの目立つ場所に貼っておいても良いでしょう。市販のステッカーではなくても、家族が手書きした注意メモを張っておいても良いでしょう。

家族間でコミュニケーションをとりましょう

家族が普段からコミュニケーションをとっておくことも、大切な詐欺対策です。

日常的に電話などでコミュニケーションをとって相談できる関係を作っておく、「あれ?」と思った時の合言葉などを決めておく、家族の話し方や近況を把握しておくことで、詐欺から守ることができます。

地域で起きた詐欺情報については、地域包括支援センターから発信されています。また、町内会の回覧板で情報が回って来ることがありますので、情報収集をしておくと良いでしょう。

成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害といった理由で、判断能力が十分ではない方の権利や財産を守るための制度です。

成年後見制度を利用すると、判断力が低下した高齢者が、不用意に高額で不必要な物品やサービスの提供を受ける契約をした場合に、取消ができるようになります。また、「後見人が付いている」と訪問販売や電話勧誘の事業者に伝えることで、消費者トラブルが防げる可能性が高くなります。

家族信託という制度も

家族信託 という、判断能力があるうちに大切な財産を信頼できるご家族に託すことにより、たとえ認知症などにより判断能力が低下した後でも、ご本人の希望やご家族のニーズに沿った、柔軟な財産の管理や運用を実現することを目的とした仕組みもあります。

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もし被害にあってしまったら

もし被害にあってしまったら

 

最後に、もし被害にあってしまった時の対応方法について確認しておきましょう。

警察に相談を

「詐欺にあった」と感じたら、すぐに警察に相談しましょう。最寄りの交番や警察署に足を運ぶのが難しい場合には、警察相談専用電話「♯9110」に電話をすると、お住まいの地域を管轄している警察本部の相談窓口に接続されます。

犯人の口座を凍結することも

犯人の口座にお金を振りこんでしまった場合には、振込先の金融機関に連絡すると「振り込め詐欺救済法」に基づいて口座の凍結を求めることができます。犯人がまだお金を引き出していなければ、だまし取られたお金が返ってくる可能性があります。

まとめ

高齢者をターゲットとした詐欺などは、残念なことに手口が巧妙になってきています。自宅にいる時間の長い高齢者は、詐欺電話や悪質な業者からの電話に出てしまう機会も多いです。

普段から家族間でどんな詐欺や悪質な業者の手口があるのかを話し合っておくこと、詐欺電話の対策グッズを利用すること、必要に応じて成年後見制度を利用することが大切です。

また、不用品の処分やリフォームなどを依頼する際には、自分で事業者を調べ、事前見積もりを比較したうえで依頼することも大切です。何かがおかしいと思った時には、警察やお住まいの地域の消費生活センターに電話をしましょう。

※この記事は2022年2月の情報を元に作成しています。

 

i.ansinkaigo.jp

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監修者:鵜沢静香
監修者:鵜沢静香

訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。

家族信託 とは、判断能力があるうちに大切な財産を信頼できるご家族に託すことにより、たとえ認知症などにより判断能力が低下した後でも、ご本人の希望やご家族のニーズに沿った、柔軟な財産の管理や運用を実現することを目的としたしくみです。

家族信託についてこちらから無料でご相談頂けます